Kh-25 (ミサイル)
Kh-25ML/MLT/MR (NATO識別名称:AS-10 Karen) Kh-25MP (AS-12 Kegler) | |
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Kh-25ML | |
種類 |
戦術空対地ミサイル 対レーダーミサイル(Kh-25MP) |
原開発国 | ソビエト連邦 |
運用史 | |
配備期間 | 1975年-現在 |
配備先 | ロシア |
開発史 | |
開発期間 | 1971年-1975年 |
製造業者 | Zvezda-Strela |
諸元 | |
重量 |
Kh-25ML:299 kg (659 lb)[1] Kh-25MP:315 kg (694 lb)[2] |
全長 |
Kh-25ML:370.5 cm (12 ft 2 in)[1] Kh-25MP 1VP:425.5 cm (167.5 in)[2] Kh-25MP 2VP:435.5 cm (171.5 in)[2] |
直径 | 27.5 cm (10.8 in)[1] |
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弾頭 | 高性能爆薬、シェル形 |
炸薬量 | Kh-25MP:86 kg (190 lb)[2] |
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翼幅 | 75.5 cm (29.7 in)[1] |
誘導方式 | 派生機種によってレーザー, パッシブ レーダー, TV, IR, satnav, アクティブ レーダー |
発射 プラットフォーム |
MiG-21,[3] MiG-23/27,[3] MiG-29,[3] Su-17/20/22,[3] Su-24,[3] Su-25,[3] Su-27[3] Kh-25MP : MiG-23/27,[4] Su-17/22,[4] Su-24,[4] Su-25[4] |
Kh-25(Х-25、NATOコードネーム AS-10 Karen)は、1960年代末から1970年代にかけて開発されたソビエト連邦(ロシア)の第2世代戦術空対地ミサイル。Kh-23/66Grom(NATOコードネーム AS-7 Kerry)の改良版と思われ、非常に良く似ている。モジュラー式の誘導装置を備え、射程は10 km.[1]である。対レーダーミサイル仕様(Kh-25MP)の派生機種はNATOでAS-12 Keglerとして知られ、射程は最大40 km.[2]である。Zvezda-Strelaによって設計されたKh-25はレーザー誘導仕様のKh-23(AS-7 Kerry)から派生した機種である。現在は後継機種のKh-38シリーズが受け継ぐが、Kh-25も幅広く使用される。
開発
[編集]1968年に運用が開始された空対空ミサイルを元に開発されたビームライディング誘導式のKh-66は、ソビエト連邦にとって初の戦術航空機用空対地ミサイルだった[5]。しかし、発射時に航空機は急降下する必要があり、運用には困難が伴った。電波指令誘導式の派生機種であるKh-23は1968年に初めて試験されたが誘導装置に問題を抱えており、運用開始までに5年を要した[6]。 そのため、1971年にセミアクティブレーザーシーカーの派生機種の作業が開始され、Kh-25になった[5]。これは当初、西側諸国においてKh-23Lとして知られた[7]。 1974年11月24日に試験が開始され、Kh-25は1975年から量産に入った[5]。 パッシブシーカーとSUR-73自動操縦装置を使用した[5]Kh-66からの対レーダーミサイル仕様の派生機種の作業は1972年に開始された[4]。
長射程のKh-31対レーダーミサイルも同じ計画からできた[5]。Kh-27の試験はMiG-27に搭載して1975年8月8日に開始[5]されたが、運用開始は1980年9月2日だった[5]。NATO識別名称はAS-12 Keglerであり、Kh-28(AS-9 Kyle)を置き換えた[4]。
1973年に設計局の技師長である"Victor Bugaiskii"は、費用を削減して戦術の柔軟性を増やすためにKh-23M, Kh-25とKh-27を単一のモジュラーシステムへ統合する作業を開始した[5]。この作業は1978年末に完了し[5]、その結果Kh-25MP(対レーダー)、Kh-25ML(レーザー誘導)とKh-25MR(電波誘導)シリーズができた。今やシーカーヘッドを簡単に交換できるにもかかわらずNATOは引き続きこれらをAS-12とAS-10として指定した。
設計
[編集]Kh-25はKh-23の後期型と十字型のカナードと翼がとてもよく似ている。
Kh-25MP対レーダーミサイルはホーミングヘッドが1VPと2VP2種類あり、異なる周波数を受信する[2]。
運用実績
[編集]原型のKh-25は1973年-1975年にソ連空軍でMiG-23、MiG-27、Su-17Mに搭載されて運用が開始された[3]。
それ以来MiG-21、MiG-29、Su-17/20/22シリーズ、Su-24、Su-25、Su-27で使用されている事が確認されている[3]。Ka-50のようなヘリコプターでも同様に搭載される。
Kh-25MPは、MiG-23/27、Su-17/22、Su-24、Su-25に搭載できる[4]。
データ
[編集]- 全長:3.83m(MR)、4.255m(ML)
- 直径:27.5cm
- 翼幅:82cm
- 弾頭:140kg HE(MR)、89.6kg HE(ML)
- 誘導方式:ラジオ指令(MR)、セミアクティブレーザー(ML)
- 射程:10km(MR)、20km(ML)
- 設計:Zvezda設計局
- 主な搭載機:MiG-27、Su-17、Su-20、Su-22、Su-24、Su-25
バージョン
[編集]NATOは、対レーダー用以外の全てのKh-25シリーズをAS-10 Karenとして指定する。"M"は"Modulnaya" - モジュール(シーカー)の略である。
- Kh-25(Izdeliye 71, Kh-23L)
- 原型となるレーザー誘導式。
- Kh-25ML
- セミアクティブレーザー誘導式。二重弾頭を備えることで1メートル (39 in)厚のコンクリート壁を貫通する[8]。
- Kh-25MA
- アクティブレーダー誘導式。1999年に初めて輸出された[3]。
- Kh-25MAE
- Kh-25MAの更新版で、2005年8月にKa-バンドのシーカーを搭載した仕様の輸出が発表された。Phazotron社のPSMは4,000 m (4,370 yd)彼方の戦車を捕らえられる能力を有し、Kh-25MAにも使用されていると推定される[8]。
- Kh-25MS
- GPSまたはGLONASS衛星誘導装置を搭載[3]。
- Kh-25MTP
- イメージングIR誘導式[3]。
- Kh-25R/Kh-25MR
- 電波指令誘導式[3]。
- Kh-27(Kh-27/M, AS-12 Kegler)
- 対レーダーミサイルの原型機種。
- Kh-25MP(AS-12 Kegler)
- モジュール式対レーダーミサイル[4]。
- Kh-25MPU(AS-12 Kegler)
- 改良されたKh-25MP[4]。
訓練弾は"U"が指定される。Kh-25MLでは以下の機種がある
運用国
[編集]現用
[編集]- ベラルーシ - 2023年時点で、ベラルーシ空軍および防空軍がKh-25を保有している[9]。
- カザフスタン - 2023年時点で、カザフスタン防空軍がKh-25を保有している[10]。
- ロシア - 2023年時点で、ロシア航空宇宙軍がKh-25MLおよびKh-25MPを、ロシア海軍航空隊がKh-25MPを保有している[11]。
- ウクライナ - 2023年時点で、ウクライナ空軍がKh-25およびKh-25MPを保有している[12]。
- ウズベキスタン - 2023年時点で、ウズベキスタン空軍および防空軍がKh-25およびKh-25MPを保有している[13]。
類似のミサイル
[編集]- Kh-23M(AS-7 ケリー) - Kh-25の前の機種で、いくつかの技術はKh-25から還元された。
- Kh-29(AS-14 ケッジ) - Kh-25レーザー誘導弾に大型の弾頭を装備した。
- Kh-59(AS-13 キングボルト) - 長射程のKh-25で、大型の弾頭とTV誘導を装備した。
- Kh-38 - Kh-25の後継機種。
- AGM-65 マーベリック - アメリカで運用される類似の軽量ミサイルで、複数の誘導装置と弾頭がある。
- AGM-45 - アメリカが装備するKh-25MPと同等の対レーダーミサイル。
脚注
[編集]- ^ a b c d e f g h i j “Kh-25ML”. Tactical Missiles Corporation (2004年). 2012年10月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。 Template:Cite webの呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。
- ^ a b c d e f g h “Kh-25MP”. Tactical Missiles Corporation (2004年). 2018年3月27日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n “Kh-25 (AS-10 'Karen')”, Jane's Air-Launched Weapons, (2008-08-01) 2009年2月7日閲覧。 [リンク切れ]
- ^ a b c d e f g h i “Kh-25MP, Kh-25MPU (AS-12 'Kegler')”, Jane's Air-Launched Weapons, (2008-08-01) 2009年2月7日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i “History of JSC Tactical Missile Corporation” (Word 97 DOC). pp. 4–6. 2009年2月26日閲覧。
- ^ Friedman, Norman (1997). The Naval Institute Guide to World Naval Weapons Systems. Naval Institute Press. p. 235. ISBN 9781557502681
- ^ “Kh-23, Kh-66 Grom (AS-7 'Kerry')” (2008年8月1日). 2009年2月7日閲覧。 [リンク切れ]
- ^ a b c Friedman, Norman (2006). The Naval Institute Guide to World Naval Weapon Systems (5 ed.). Naval Institute Press. p. 838. ISBN 9781557502629
- ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 176. ISBN 978-1-032-50895-5
- ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 180. ISBN 978-1-032-50895-5
- ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. pp. 190-191. ISBN 978-1-032-50895-5
- ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 203. ISBN 978-1-032-50895-5
- ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 206. ISBN 978-1-032-50895-5
出典
[編集]- Gordon, Yefim (2004), Soviet/Russian Aircraft Weapons Since World War Two, Hinckley, England: Midland Publishing, ISBN 1-85780-188-1