Line Rider
ジャンル | スポーツゲーム |
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対応機種 | Microsoft Silverlight、Adobe Flash、ニンテンドーDS、Wii、Microsoft Windows、iOS |
発売元 |
inXile Entertainment(移植版) Genius Products (DS版) ディープシルバー (移植版、ヨーロッパ) |
プロデューサー | Boštjan Čadež |
デザイナー | Boštjan Čadež |
人数 |
1人 2人(移植版のみ) |
発売日 |
Silverlight、Flash版 2006年9月23日 DS版 2008年9月16日 2009年7月17日 Windows版 2008年9月23日 2009年5月22日 Wii版 2008年10月7日 2009年7月31日 |
Line Rider(ライン・ライダー)とは、インターネット上で公開されている、Adobe FlashやMicrosoft Silverlightを利用したコンピュータゲームである。2006年9月23日にスロベニアの大学生であったボスジャン・チャデジュ(Boštjan Čadež)によって公開された[1][2]。タイム誌のオンライン版や『Games for Windows: The Official Magazine』にて特集された他[3][4]、マクドナルドのCMの題材として使われ[5]、ゲームのレビューサイト「Jay Is Games」ではBest Webtoy of 2006に選出された[6]。
システム
[編集]このゲームの基本的なシステムは、マウスで線を引きプレイヤーが「Play」をクリックした後、そりに乗った人型のキャラクターがその上を滑るというものである[7]。また、このゲームには物理演算エンジンが利用されているため[3]、そりが落ちないように線を円滑に引く必要がある。製作者であるチャデジュは、目標が無くスコアも存在しないLine Riderのことを、「ゲーム」ではなく「おもちゃ」として述べている[1][8]。
操作の単純さに反して、ループなどのギミックを取り入れた複雑なコースが多く制作されている。コミュニティによって制作されたコースの多くは楽曲にあわせるように作られている他、コースの線を山の斜面や木などの背景アートとして利用したコースも作られている。作成されたこれらのコースは、YouTubeやGoogle ビデオといった動画共有サービス上にアップロードすることで共有されている[3][7]。
2008年7月1日にFlash版からSilverlight版への移行が行われた[5][9]。この移行により、Windows Live メッセンジャーを利用してユーザー間でコースを共有できる機能が追加された[9]。
2009年10月にはBeta 3版がリリースされ、2つのそりを操作できるモードやカメラモード、減速する効果をもつギミックなどが追加された[10]。
沿革
[編集]構想と開発
[編集]ボスジャン・チャデジュは2005年に、自身が当時所属していた大学である「アカデミー・オブ・ファインアーツ・アンド・デザイン(Akademija za likovno umetnost in oblikovanje、ALUO)」での美術の授業において、アートプロジェクトを担当することになった。チャデジュは自身のスケッチブックにて、傾いた線とその上をそりで滑る男の子の絵が描かれたページを見つけたことで、子どもの頃の記憶を思い出し、その絵がアートプロジェクトの基礎となった[11]。
チャデジュはビデオジョッキーのセットやFlashゲーム、Advanced Visualization Studio用プリセットの開発の経験があったため、当初からアニメーションソフトウェアをコード化することで開発する計画を立てていた。初期の構想では、ユーザーがプレイ中に変更を加えることが可能であり、線を引くだけでアニメーションを作ることが出来るような設計にする予定であった。チャデジュはアンドレアス・ジシン(Anderas Gysin)によって作られたプログラムである「Cronodraw」がゲームのコンセプトに合ったものであると気付いた後に、ジシンの描画プログラムやマウスの挙動制御を行うプログラムをLine Riderに組み込んだ[12]。
Line Riderの制作期間は1年以上であり、合計で4か月分の作業量で作られた。この作業には、物理学や数学の学習が含まれており、特にベクトルに関しては、N+を開発したMetanet Softwareによるチュートリアルから多くを学んだと言われている。チャデジュは、元のバージョンに線を消す機能を付けなかった理由として、ゲームのプレイを人生のように体験して欲しかったからと述べている[11]。
キャラクターの名前に関して、チャデジュはスロベニア語で「そり」を意味する「sanke」を提案していたものの、定着しなかった。しかし、ある日、inXile Entertainment社の創設者であるブライアン・ファーゴが「なぜ、彼(キャラクターのこと)をボッシュ(Bosh)と呼ばないのか。」と発言したことで、キャラクター名がボッシュに決まった[12]。
リリースと初期の人気
[編集]2006年9月23日にチャデジュはLine Riderを「fšk」のアカウント名でDeviantART上に投稿し[3]、24時間以内に1万回の閲覧回数を獲得した[12]。2006年秋に、Diggにて「Unconed」というユーザーがLine Riderに関する投稿を行ったことで人気が高まり、その結果として、複数のユーザーがYouTube上に自身らが作った作品を投稿し始め、2006年12月時点で1500万回の再生回数を獲得した[11][12]。また、2006年10月時点でのDeviantARTでの閲覧回数は4000万回以上、ダウンロード回数は32万5000回に達し、Google Zeitgeistの検索クエリチャートでは7位となり、DeviantARTの創設者の1人であるアンジェロ・ソティラ(Angelo Sotira)も人気の急上昇ぶりを賞賛した[3]。Line Riderのリリース後数週間で、LineFlyerやJeep Flyer、Line Border、Chair Flyerといったコピー商品がオンライン上で公開された[3][7]。
デビッド・ポーグは、線を消す機能をあえて搭載しなかったことで難しくしたLine Riderを賞賛した[7]。また、このゲームのファンサイトである「LineRider.org」の創設者であるヴィーツェ・デ・ヴリーズ(Wietse de Vries)は、このゲームが人気になった要因として、プレイヤーが創造性を発揮できることを挙げている[10]。
その後
[編集]2006年12月19日に、チャデジュはLine Riderの新バージョンを公開した。このバージョンにて線を消去する機能やズーム機能、新しい線の種類が追加された。当初は1か月前に公開する予定であったが、ファーゴからSkype経由で権利を購入する連絡を受けたため、公開を延期した。ファーゴはLine Riderを「もう1つのテトリス」と形容して高く評価し、このゲームのプレイヤーはアーティストであると賞賛した[11]。
学術的利用
[編集]Line Riderは、サウスイースタン・ルイジアナ大学物理学科での物理教育におけるコンピュータの利用に関する論文での題材に利用され、The Physics Teacher誌に掲載された[13]。また、アルスター大学で開かれた第7回e-ラーニング会議では、Line Riderを教育用アニメーション作成のツールとして利用することに関する議論が行われた[14]。
移植版
[編集]『Line Rider 2: Unbound』はニンテンドーDS、Wii、Microsoft Windows用に移植されたゲームである。2006年12月19日にinXile Entertainment社がLine Riderのコンソール版での版権を獲得し、コピー品を法的に規制したことと、ニンテンドーDS版とWii版を2008年春頃に発売する予定であることを発表した[15][16]。その後、2008年9月に発売された[17]。
このゲームで新たにベイリー(Bailey)とチャズ(Chaz)という2人のキャラクターと、その2人が登場するストーリーモードが追加された。ストーリーの内容は、プレイヤーがボッシュを操作してチャズと競争し、究極のそりとベイリーの愛を勝ち取るというものであった。このモードには40種類のコースがあり、全てLine Riderの著名なコース製作者であるTechDawgが作成したコースである。また、インターネット上のコミュニティからコースデータをダウンロードできる機能も搭載された[17]。
欧州版は『Line Rider: Freestyle』としてディープシルバーから発売された[18]。
その後、iOS版が『Line Rider iRide』としてinXile Entertainmentからリリースされ、加速度計などといったiPhone固有の機能を利用した機能が追加された[19]。
評価
[編集]Rine Rider | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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コンピュータゲームのレビュー収集サイトであるMetacriticでは、全てのプラットフォーム版で「Mixed or average reviews」の評価を得た[35][36][37]。
また、2008年のIGNゲームオブザイヤーアワードでは、ニンテンドーDS部門にてベストパズルゲーム賞[38]とベストオリジナルスコア賞[39]の2つの賞でノミネートされた。
脚注
[編集]- ^ a b “News” (英語). Linerider.com. 2009年6月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年6月8日閲覧。
- ^ “About Line Rider” (英語). Linerider.com. 2007年10月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年8月16日閲覧。
- ^ a b c d e f Ressner, Jeffrey (2006年10月19日). “The Newest Time Waster: Line Rider” (英語). Time 2020年7月18日閲覧。
- ^ Murdoch, Julian (8 2007). “Line Rider” (英語). Games for Windows: The Official Magazine (9): 36-37. ISSN 1933-6160.
- ^ a b Stewart, Ryan (2008年7月2日). “LineRider releases a Silverlight 2 version” (英語). ZDNet 2020年7月19日閲覧。
- ^ “Best of Casual Gameplay 2006 - Webtoy Results” (英語). Jay is games. 2020年7月18日閲覧。
- ^ a b c d Pogue, David (2006年11月22日). “Crazy for Line Rider” (英語). The New York Times 2020年7月26日閲覧。
- ^ Čadež, Boštjan (2006年9月23日). “Line Rider - beta” (英語). deviantART. 2020年7月18日閲覧。
- ^ a b Heuer, Tim (2008年6月30日). “Line Rider rides on Silverlight 2” (英語). 2020年7月19日閲覧。
- ^ a b JC Fletcher (2009年10月27日). “Line Rider now lets you torture two riders at once” (英語). Engadget 2020年7月19日閲覧。
- ^ a b c d Chuang, Tamara (2006年12月19日). “If you draw it, line rider will come” (英語). Orange County Register 2020年7月19日閲覧。
- ^ a b c d Wallis, Alistair (2008年4月11日). “Q&A: Riding The Lines With Bostjan Cadez” (英語). Gamasutra. 2020年7月25日閲覧。
- ^ Allain, Rhett; Richard, J. Williams (2 2009). “An Analysis of a Video Game” (英語). The Physics Teacher 47 (2): 115-117. doi:10.1119/1.3072460 .
- ^ “Educational Animation with Line Rider” (英語). Ulster University. 2020年7月26日閲覧。
- ^ “InXile Entertainment acquires console rights to hit internet game Line Rider!” (英語). Line Rider (2006年12月19日). 2008年6月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年7月27日閲覧。
- ^ Dobson, Jason (2006年12月19日). “inXile To Bring Line Rider Flash Game To Nintendo DS, Wii” (英語). Gamasutra. 2020年7月27日閲覧。
- ^ a b Gamin, Mike (2008年7月8日). “Line Rider 2: Unbound Preview” (英語). Nintendo World Report. 2020年7月27日閲覧。
- ^ “Line Rider Freestyle” (英語). GamesIndustry.biz (2009年4月30日). 2020年7月27日閲覧。
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- ^ a b Grimm, Michael (2008年10月7日). “Line Rider 2: Unbound Review (Wii, PC)” (英語). 1UP.com. 2016年6月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年12月13日閲覧。
- ^ “Line Rider 2: Unbound (DS)”. Edge (195): 99. (12 2008).
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- ^ Hatfield, Daemon (2008年10月3日). “Line Rider 2 Wii Review” (英語). IGN. 2020年7月27日閲覧。
- ^ “Line Rider 2: Unbound (DS)”. Nintendo Power 234: 102. (11 2008).
- ^ “Line Rider 2: Unbound (Wii)”. Nintendo Power 234: 98. (11 2008).
- ^ Miller, Zachary (2008年10月9日). “Line Rider 2: Unbound Review” (英語). Nintendo World Report. 2020年7月27日閲覧。
- ^ Orry, Tom (2009年7月22日). “Line Rider: Freestyle Review” (英語). VideoGamer.com. 2020年7月27日閲覧。
- ^ a b “Line Rider 2: Unbound for DS Reviews” (英語). Metacritic. CBS Interactive. 2020年7月27日閲覧。
- ^ a b “Line Rider 2: Unbound for PC Reviews” (英語). Metacritic. CBS Interactive. 2020年7月27日閲覧。
- ^ a b “Line Rider 2: Unbound for Wii Reviews” (英語). Metacritic. CBS Interactive. 2020年7月27日閲覧。
- ^ “DS: Best Puzzle Game 2008” (英語). IGN. 2013年11月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年12月12日閲覧。
- ^ “DS: Best Original Score 2008” (英語). IGN. 2013年11月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年12月12日閲覧。
外部リンク
[編集]- Webブラウザ版
- Line Rider - beta - deviantARTで公開されたベータ版