PRISM (監視プログラム)
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PRISM(プリズム)とは、アメリカ国家安全保障局 (NSA) などが2007年から運営する、極秘の大量監視(英: mass surveillance)プログラムである。大手IT企業を経由してインターネット上の情報を広範に収集し監視する。正式名称はUS-984XN。コードネームは、名前のとおりプリズムにちなむ[1]。
概要
[編集]マイクロソフトの「So.cl」(ソーシャル)、Google、Yahoo!、Facebook、Apple、AOL、Skype、YouTube、Paltalkの、合わせて9つのウェブサービスを対象に、ユーザーの電子メールや文書、写真、利用記録、通話など、多岐に渡るメタ情報の収集を意図している[1]。また、クラウドストレージサービスのDropboxが10番目の監視対象サービスとして追加されることが予定されていた[2][3][4]。
2013年6月6日、当時NSA勤務者だったエドワード・スノーデンからの内部告発による調査報道記事を、ガーディアンとワシントン・ポスト両紙が掲載した。これにより、極秘プログラムの存在が明らかとなり、アメリカ合衆国連邦政府筋もこの機密計画の存在を認めた[5][6][7][8][9]。
報道で名指しされたシリコンバレーのIT企業は、一様に関与を否定していたが、のちに『コンピュータプログラムのNSA用バックドアの存在』を間接的に認めるところも現れている[10]。バラク・オバマ政権関係者からは「合衆国内に居住するアメリカ合衆国国民を標的にしたものではない」との情報もある[11]。
事実、エドワード・スノーデンからの情報として、日本、ブラジル、フランス、ドイツなどの首相など35人が電話盗聴の対象になっていたと、マスメディア各社は報じている[12][13][14]。ドイツでは、連邦議会の対応に関する情報をアメリカ合衆国に売っていた連邦情報局局員とドイツ連邦軍職員がスパイ容疑で逮捕され、アメリカ大使館の情報担当書記官がペルソナ・ノン・グラータ指定を受けた[15]。UKUSA協定に加盟するイギリス連邦諸国は、PRISMの監視対象になっていない[16]。
また、NSAによって電子メールを監視されていた第36代ブラジル連邦共和国大統領のジルマ・ルセフは、国際連合本部での演説で「プライバシーの権利がないのならば、真の表現と言論の自由は存在せず、したがって民主主義もあり得ない」と述べた[17]。
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流出したアメリカ合衆国連邦政府の極秘パワーポイント資料の表紙
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情報収集の詳細を示すパワーポイント資料。左側に対象インターネットサービスプロバイダ9社、右側に電子メール・音声通話・動画・写真など、入手可能な情報が記されている。
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プロバイダ別の情報収集開始日を示すパワーポイント資料。「マイクロソフト2007年9月11日、ヤフー2008年3月12日・・・アップル(2012年10月追加)」などと説明され、PRISM経費は最大で年間2千万ドルと付記されている。
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パワーポイント資料。外国情報監視法702条 (FAA702) に基づき、2つの方法で情報収集できるとしている。
沿革
[編集]- 2007年9月、Microsoftがプログラムに参加[1]。
- 2008年、Yahoo!がプログラムに参加[1]。
- 2009年、Google、Facebook、Paltalkがプログラムに参加[1]。
- 2010年、YouTubeがプログラムに参加[1]。
- 2011年、Skype、AOLがプログラムに参加[1]。
- 2012年、Appleがプログラムに参加[1]。
- 2013年6月6日、元NSA・CIA局員エドワード・スノーデンの内部告発により、PRISMの存在が報道された[5][6][7][8][9]。
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d e f g h “Google・Apple・Yahoo!などのサーバにある個人情報を直接のぞき見できる極秘システム「PRISM」とは?”. GIGAZINE (2013年6月7日). 2019年4月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年9月10日閲覧。
- ^ 株式会社インプレス (2014年7月28日). “【海外ITトピックス】 Dropbox、Box、Amazon、法人向けクラウドストレージサービス (「Dropboxは“プライバシーの敵”」Snowden氏)”. クラウド Watch. 2019年9月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年9月10日閲覧。 “同紙によると、Snowden氏はDropboxがPRISMに加わることになっていたとした上で、「考えうる限り最もアンチプライバシーな政治家」であるRice氏の取締役就任は、Dropboxがプライバシーを尊重していないことの象徴であると断言した。”
- ^ Kiss, Jemima (2014年7月17日). “Snowden: Dropbox is hostile to privacy, unlike 'zero knowledge' Spideroak” (英語). The Guardian. ISSN 0261-3077 2019年9月10日閲覧。
- ^ Ha, Anthony. “スノーデンのプライバシーに関する助言:Dropboxは捨てろ、FacebookとGoogleには近づくな”. TechCrunch Japan. 2019年9月10日閲覧。
- ^ a b “米スキャンダル 当局が市民のメールなどを収集か”. ロシアの声日本語版 (2013年6月7日). 2013年6月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年6月27日閲覧。
- ^ a b “米当局が市民の通話記録を大量収集、大手9社のネット監視も”. AFPBB日本語版. (2013年6月7日)
- ^ a b “米当局、グーグルなどIT大手のサーバーからデータ収集”. ロイター. (2013年6月7日)
- ^ a b Greenwald, Glenn; MacAskill, Ewen (2013年6月7日). “NSA Prism program taps in to user data of Apple, Google and others” (英語). The Guardian. ISSN 0261-3077 2019年9月10日閲覧。
- ^ a b “U.S., British intelligence mining data from nine U.S. Internet companies in broad secret program”. The Washington Post (2013年6月7日). 2019年9月10日閲覧。
- ^ 瀧口範子 (2013年6月15日). “米政府の個人監視に逆らえないテクノロジー企業”. ニューズウィーク日本版
- ^ 三国大洋 (2013年6月7日). “米NSAの極秘計画『PRISM』が明るみに - 大手ウェブサービスの情報を多岐にわたって収集 -”. WirelessWire News. 2013年6月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年6月27日閲覧。
- ^ “ルセフ・ブラジル大統領:訪米延期 NSAのメール傍受に反発”. 毎日jp (2013年9月18日). 2013年10月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年10月25日閲覧。
- ^ 共同通信社 (2013年10月24日). “米機関が独首相の携帯も盗聴か オバマ大統領は報道否定”. 2013年10月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年10月25日閲覧。
- ^ 共同通信社 (2013年10月25日). “米機関、外国指導者35人盗聴か 英紙報道、非難激化も”. 2013年10月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年10月25日閲覧。
- ^ “ドイツ、米大使館の情報責任者を国外退去に”. CNN. (2014年7月11日)
- ^ イギリス・オーストラリア・ニュージーランド・カナダは、対象国として登場していない
- ^ ミッコ・ヒッポネン. “Transcript of "NSAはいかにして世界の信頼を裏切ったのか——今、行動の時"” (英語). www.ted.com. 2019年9月10日閲覧。
関連項目
[編集]- 米国愛国者法
- アメリカ国家安全保障局
- イギリス政府通信本部 (GCHQ)
- 連邦捜査局 (FBI)
- UKUSA協定 - ベノナ文書 - エシュロン
- 全情報認知
- XKeyscore (NSAの分析ツール)
- ビッグ・ブラザー
- Bitmessage
- HTTPS
- 通信の秘密 - エンドツーエンド暗号化
- エドワード・スノーデン - PRISMを内部告発した人物。
外部リンク
[編集]- The NSA Files - ガーディアン
- NSA slides explain the PRISM data-collection program - ワシントン・ポスト
- “米諜報、姿を見せた 情報収集プログラム「PRISM」 NSA長官、正当性を強調.” (Archive) 朝日新聞デジタル 6月14日(金)5時20分配信 (有料記事) .
- King, Rachel (ZDNET.com). “FBIとNSA、米大手IT企業サーバ内のユーザーデータを収集か--「PRISM」プログラム資料が流出.” (Archive) CNET Japan. 翻訳校正: 編集部. 2013/06/07 11:51.
- Musil, Steven (CNET News). “「PRISM」の告発者、自ら正体を明かす--The Guardianとのインタビューで.” (Archive) CNET Japan. 翻訳校正: 編集部 2013/06/10 10:55.
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