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パラオ語 (パラオご、ベラウ語 とも、パラオ語 : a tekoi er a Belau 、英語 : Palauan )は、パラオ共和国 の現地人の母語 で、同国の公用語である。オーストロネシア語族 のマレー・ポリネシア語派 の西語群に属し、チャモロ語 と並びミクロネシア の2言語のうちの1つと考えられている。話者は、パラオ国内を中心に約1万5,000人いると推定されている[ 1] 。
パラオ語における音素 には、6個の母音 と10個の子音 があるとされる[ 2] 。 国際音声記号 (IPA)に従うと、以下のように示される。
パラオ語の音素 は比較的少ないが、多くの音素が前後の音環境に応じ異音 として現れる(b→pʰなど)。異音を含めた完全な子音の一覧は、以下の通りとなる。
パラオ語には複数の二重母音が存在する。そのリストは以下のとおりである(Zuraw (2003) )。
二重母音
IPA
単語例
意味
/iɛ/
babier
紙(ドイツ語からの借用)
/ɛi/
mei
来る
/iu/
chiukl
(歌)声
/ui/
tuich
トーチ
/io/
kikiongel
汚い
/oi/
tekoi
言葉、単語
/ia/
diall
船
/ai/
chais
ニュース
/ɛu/
teu
広さ、幅
/uɛ/
sueleb
午後
/ɛo/
Oreor
コロール (パラオの旧首都)
/oɛ/
beroel
槍
/ɛa/
beached
缶
/aɛ/
baeb
パイプ (英語からの借用)
/uo/
uos
馬 (英語からの借用)
/ou/
merous
配る、分配する
/ua/
tuangel
ドア
/au/
mesaul
疲れた
/oa/
omoachel
川
/ao/
taod
フォーク
パラオ語
読み方
意味
Alii!
アリー
こんにちは/やあ
Ungil tutau.
ウンギル ツ(トゥ)タウ
おはようございます
Ungil sueleb.
ウンギル スウェルブ
こんにちは
Ungil kebesengei.
ウンギル カブスゲイ
こんばんは
Choi, o'oi.
オ オイ
はい
Ng diak.
ディアック
いいえ
Mesulang.
メスーラン
ありがとう
Mechikung.
メイクン
さようなら
1. Tang
2. Cherung
3. Chedei
4. Cheuang
5. Cheiim
6. Chelolm
7. Cheuid
8. Cheiai
9. Chetiu
10. Machod
パラオ語では数える対象によって異なる数詞セットを用いる。例えば人数を数えるときはtang(1人)、terung(2人)、tedei(3人)……、バナナ の房はteliud(1房)、ereiud(2房)、edeiud(3房)……、長さのある物はteluo(1本)、eruo(2本)、edeuo(3本)……のように表現する。「どのような事物の数量であるか」を表す点は日本語 等における助数詞 と同じだが、接尾辞 でなく単語自体が独立している点は特徴的である。
パラオは19世紀 から20世紀 にかけてスペイン 、ドイツ 、日本 、アメリカ によって統治されたため、パラオ語の単語には数多くの外来語 がある。本項ではその一部を下の表にまとめる[ 3] 。
スペイン語 からは、主にキリスト教 関連の語彙が定着した。
パラオ語
意味
元となったスペイン語
Baskua
イースター
Pascua
Changhel
天使
Angel
Ikerasia
教会
Iglesia
Kusarang
スプーン
Cuchara
Mais
トウモロコシ
Maíz
Papa
教皇
Papa
Rosario
ロザリオ
Rosario
Soldau
軍人
Soldado
ドイツ語 からは日用品 語彙の借用が多い。
パラオ語
意味
ドイツ語
備考
Babier
紙
Papier
Benster
窓
Fenster
日本語由来madoも使われている。
chasbering
アスピリン
Aspirin
アセチルサリチル酸 、日本語経由。
Chausbengdik
覚える
Auswendig (-lernen)
Hall!
止まれ!
Halt!
現在では英語由来のStob(Stop)の方がよく使われている。
Rrat
自転車
Rad
Slibs
ネクタイ
Schlips
Taber
黒板
Tafel
日本語由来のKokubangも使われる。
反対票を訴える立て看板。文中の「SENKYO」は、日本語の「選挙」に由来を発するパラオ語である。
歴史的経緯から、パラオ語における日本語からの借用語 は非常に多く、政治 用語・学術用語 から日常表現まで幅広く用いられる。さらに単語にとどまらず、たとえば聖歌隊 の練習中に「Ichirets ni narande! (一列に並んで!)」「Genki dasite! (元気出して=もっと元気良く!)」と言い合う[ 4] など、フレーズとして日本語が定着している。日本語教育を受けていない若い世代や子どもたちも「それが日本語由来であると意識せずに」用いており、定着につながっている[ 5] 。日本語由来の語を人名に用いることもあり、「タロウ」「クニオ」「ヨシコ」などの他、「ジンジャ(神社)」「クルマ」など日本では人名に用いない語を用いる例もある。
以下に、パラオ語の単語とその元になった日本語の単語の例を載せる[ 6] 。
パラオ語
意味
元の日本語及び備考
Basio
場所
Bengngos
弁護士
Bento
弁当
Bungsu
分数
Chambang
あんパン
Chabulabang
あんドーナツ
「油 」「パン 」
Chabunai
危ない
Chaikodetsiu
「あいこでしょ」
Chameiu
飴湯
Chanzeng
安全
Chazi daiziob
おいしい
「味」「大丈夫」
Chazinomoto
味の素
Daitorio
大統領
Daiziob
大丈夫
Dengki
電気
Dengkibasira
電信柱
「電気柱」
Denwa
電話
Dosei
どうせ
Emonkake
ハンガー
「衣紋掛け 」
Haibio
結核
「肺病」
Iakiu
野球
Iorosku
よろしく
Katsudo
映画
「活動写真 」
Keizai
経済
Kets
けち
Kigatsku
気が付く
Kigatskani
気が付かない
Kimots
気持ち
Komeng
ごめんなさい、すみません
「ごめん」
Mahobing
魔法瓶
Mame
豆
Manaita
まな板
Mangnga
マンガ
Mazui
不味い、へた
Mihong
見本
Mongk
文句
Motsio
盲腸
Musiba
虫歯
Namari
鉛
Nappa
菜っ葉
Nas
ナス
Nengi
ネギ
Nezimauas
ねじ回し
Nimots
荷物
Ninzin
ニンジン
Sapporo Ichibang
インスタントラーメン
「サッポロ一番」。商標の普通名称化 。
Sarumata
下着
「猿股 」
Seizi
政治
Sempuki
扇風機
Senkyo/Senkio
選挙
Sensei
先生
Simpai
心配
Siotots
乾杯 (掛け声)
「衝突 」。戦前の日本語俗語。
Sirangkao
知らん顔
Skoki
飛行機
Skozio
空港
「(水上飛行艇)飛行場」 [ 7]
Sodang
相談
Songngai
損害
Tabi
前ゴムシューズ
「足袋 」
Taiheio
太平洋
Tobo
逃げる
「逃亡 」
Tokuni
特に
Tongang
カボチャ
「冬瓜 」。同じウリ科 植物から転用。
Toseng
渡船
Uatasibune(渡し船)とも。
Tsitsibando
ブラジャー
「乳バンド」
Tsios
調子
Tskarenaos
ビール を飲む
「疲れ」「治す」
Zeitak/Seitak
贅沢
Ziangkempo
ジャンケンポン
Zibiki/Ziteng
辞書
「字引き」「辞典」
英語 の単語は戦後 になってから入った単語もあるが、日本統治時代に日本語を経由して入った単語や和製英語 もある。
パラオ語
日本語
英語
備考
Boi
少年
Boy
Bor
ボール
Ball
Chaiskeeki
アイスケーキ
Ice cake
日本語経由(和製英語)。アイスキャンディー のこと。
Chaiskurim
アイスクリーム
Ice cream
Chambelangs
救急車
Ambulance
Chasuart
アスファルト
Asphalt
Dainamo
発電機
Dynamo
Homrang
ホームラン
Home run
Kab
曲線
Curve
Kare
カレー
Curry
日本語経由。ご飯にかけた場合はRaiskare(ライスカレー)。
Kasorin
ガソリン
Gasoline
日本語経由。現在ではアメリカ英語 由来のKas(Gas)の方がよく使われている。
Keik
ケーキ
Cake
Kurob
手袋
glove
Mahura
マフラー
Muffler
襟巻き 、消音機
Masku
マスク
Mask
Miuzium
博物館
Museum
Ranningngu
ランニング(シャツ)
Running (-shirt)
日本語経由(和製英語)
Razio
ラジオ
Radio
日本語経由
Sabis
サービス
Service
Tenis
テニス
Tennis
Tibi
テレビ
Television
Televisionの略(TV)から。
Tsuingam
チューイングガム
Chewing gum
Flora, Jo-Ann (1974), Palauan Phonology and Morphology , PhD Dissertation: University of California, San Diego
Wilson, Helen (1972), “The Phonology and Syntax of Palauan Verb Affixes” , University of Hawaii Working Papers in Linguistics 4 (5), http://tekinged.com/misc/pdfs/phonology_wilson.pdf
Zuraw, Kie (2003), “Vowel Reduction in Palauan Reduplicants” , in Andrea Rackowski; Norvin Richards, Proceedings of the Eighth Annual Meeting of the Austronesian Formal Linguistics Association , Cambridge: MITWPL #44, pp. 385–398, http://roa.rutgers.edu/files/787-1205/787-ZURAW-0-0.PDF
英語: