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WASP-107b

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
WASP-107b
主星の前面を通過するWASP-107bの想像図
主星の前面を通過するWASP-107bの想像図
星座 おとめ座[1]
分類 太陽系外惑星
スーパーネプチューン?
パフィー・プラネット
天文学における意義
太陽系外で初めて大気中からヘリウムが検出された惑星
発見
発見年 2017年
発見者 Tom Evans, Jessica Spake
スーパーWASP
発見方法 トランジット法
位置
元期:J2000.0[2]
赤経 (RA, α)  12h 33m 32.844s[2]
赤緯 (Dec, δ) −10° 08′ 46.13″[2]
距離 ~200 光年[3]
(~61.3 パーセク
軌道要素と性質
軌道の種類 周回軌道
軌道長半径 (a) 0.0553 ± 0.0013 au[4]
(8,272,880 ± 194,480 km)
離心率 (e) 0[1]
公転周期 (P) 5.72149242 ± 0.00000046 [4]
軌道傾斜角 (i) 89.560 ± 0.078°[4]
通過時刻 2456514.4106 ± 0.0001 (BJD)[1]
準振幅 (K) 17 ± 2 m/s[1]
WASP-107の惑星
物理的性質
直径 134,405 km
半径 0.924 ± 0.022 RJ[4]
表面積 5.31×1010 km2
体積 1.13×1015 km3
質量 0.119 ± 0.014 MJ[4]
平均密度 0.152 ± 0.017 ρJ[4]
(0.202 ± 0.023 g/cm3
表面重力 2.49 ± 0.05 (log g)[1]
表面温度 770 ± 60 K[1]
(497 ± 60
大気の性質
大気圧 不明
ヘリウム 割合不明
他のカタログでの名称
EPIC 228724232 b
TYC 5530-1795-1 b
2MASS J12333284-1008461 b
Template (ノート 解説) ■Project

WASP-107b は、おとめ座の方角に約200光年離れた位置にある恒星 WASP-107公転している太陽系外惑星である[1][3]太陽系外惑星としては初めて大気中からヘリウムが検出された惑星として知られている。

特徴

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大きさの比較
木星 WASP-107b
木星 Exoplanet

WASP-107b は、2017年にハッブル宇宙望遠鏡の観測結果を利用した、太陽系外惑星探索プロジェクトスーパーWASPの天文学者達によって、トランジット法で発見された。

WASP-107b の大きさは木星の0.924倍で、主星から約820万km離れた軌道を6日弱で公転している、ガス惑星とされている[4]。大きさは木星と同程度だが、質量海王星の2倍ほどしかないため、密度土星(0.70 g/cm3)の約5分の1しかなく、これは既知の太陽系外惑星の中でも特に低密度である[3]。こうした低密度な惑星はパフィー・プラネットと呼ばれる。表面温度は、金星とほぼ同程度の 770K (497℃) とされている[4]

2021年の研究で、ロシター・マクローリン効果の測定結果から WASP-107b の軌道面は主星の自転軸に対して118+38
−19
度傾いており、主星の自転とは逆方向に公転している逆行惑星であることが判明した[5]

大気

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主星の恒星活動が非常に活発であるため、WASP-107b の大気は高速で宇宙空間に放出されており、WASP-107bは10億年ごとに総質量の 0.1 ~ 4%(10×1010 ~ 3×1011 g)を失っているとされている[3][6][7]。また、主星からの極紫外線放射によって大気が大きく膨張することで、その形状は彗星のように引き延ばされており、その長さは惑星半径の7倍にまで及んでいると考えられている[8]

2018年5月、ハッブル宇宙望遠鏡の広視野カメラ3 (WFC3) を用いた観測で、WASP-107b の大気からヘリウムが検出されたと発表された[6]。太陽系外惑星からヘリウムが検出されたのはこれが初めてであった。大量のヘリウムが検出された事により、WASP-107bの大気が高度数万kmまで広がっている事も判明した[3]。また、この WASP-107b は大きく広がった大気が赤外線波長の観測で検出された初めての惑星でもある[6][7][注 1]

2023年11月、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を用いた観測により、WASP-107b の大気中からは当初存在が予想されていたメタンが含まれておらず、水蒸気二酸化硫黄が含まれている兆候がみられると発表された。また、大気中に発生する雲にはケイ酸塩鉱物が存在していることが示され、地球上でみられるよりもさらに粒子が小さなケイ酸塩鉱物が含まれている可能性が高いとされている。気候シミュレーションによると、大気中の風速は 16,000 km/h(4.44 km/s)を超えるとみられている[9][10]

主星

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WASP-107b が公転している恒星 WASP-107 は、スペクトル分類がK6型[1]で、太陽の0.691倍の質量と0.657倍の大きさを持つ[4]金属量は太陽とほぼ同程度で、有効温度は4,430 K (4,157℃) である[1]視等級は11.6等と暗く、肉眼では観測出来ない。

脚注

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注釈

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  1. ^ 広がった大気の検出は、これまでは紫外線可視光線での観測によって行われてきた[6][7]

出典

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  1. ^ a b c d e f g h i D. R. Anderson et al. (2017). “The discoveries of WASP-91b, WASP-105b and WASP-107b: Two warm Jupiters and a planet in the transition region between ice giants and gas giants”. Astronomy and Astrophysics 604: 8. arXiv:1701.03776. Bibcode2017A&A...604A.110A. doi:10.1051/0004-6361/201730439. https://www.aanda.org/articles/aa/abs/2017/08/aa30439-17/aa30439-17.html. 
  2. ^ a b c SIMBAD Astronomical Database”. Rusult for WASP-107b. CDS. 2018年5月13日閲覧。
  3. ^ a b c d e 系外惑星の大気からヘリウムを初検出”. AstroArts (2018年5月11日). 2018年5月13日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i T. Močnik; C. Hellier; D. R. Anderson; B. J. M. Clark; J. Southworth (2017). “Starspots on WASP-107 and pulsations of WASP-118”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 469 (2): 1622-1629. arXiv:1702.05078. Bibcode2017MNRAS.469.1622M. doi:10.1093/mnras/stx972. https://academic.oup.com/mnras/article-abstract/469/2/1622/3752449?redirectedFrom=fulltext. 
  5. ^ Rubenzahl, Ryan A.; Dai, Fei; Howard, Andrew W. et al. (2021). “The TESS–Keck Survey. IV. A Retrograde, Polar Orbit for the Ultra-low-density, Hot Super-Neptune WASP-107b”. The Astronomical Journal 161 (3): 119. arXiv:2101.09371. Bibcode2021AJ....161..119R. doi:10.3847/1538-3881/abd177. 
  6. ^ a b c d Hubble detects helium in the atmosphere of an exoplanet for the first time”. www.spacetelescope.org. ESA (2018年5月2日). 2018年5月13日閲覧。
  7. ^ a b c J. J. Spake et al. (2018). “Helium in the eroding atmosphere of an exoplanet”. Nature 557: 68-70. arXiv:1805.01298. Bibcode2018Natur.557...68S. doi:10.1038/s41586-018-0067-5. http://www.nature.com/articles/s41586-018-0067-5. 
  8. ^ Spake, J. J.; Oklopčić, A.; Hillenbrand, L. A. (2021). “The Posttransit Tail of WASP-107b Observed at 10830 Å”. The Astronomical Journal 162 (6): 284. arXiv:2107.08999. Bibcode2021AJ....162..284S. doi:10.3847/1538-3881/ac178a. 
  9. ^ Dyrek, Achrène; Min, Michiel; Decin, Leen et al. (2023). “SO2, silicate clouds, but no CH4 detected in a warm Neptune”. Nature. doi:10.1038/s41586-023-06849-0. ISSN 0028-0836. 
  10. ^ Nell Greenfieldboyce (2023年11月15日). “Clouds made of sand make for a strange kind of rain on this hot planet”. NPR News. 2023年11月23日閲覧。

外部リンク

[編集]