WBCダイヤモンド王座
WBCダイヤモンド王座 (WBC Diamond Championship) は、世界ボクシング評議会(以下、WBC)が2009年に創設したプロボクシングの王座である。
歴史
[編集]2009年8月に、WBCは「WBCダイヤモンド王座」(WBC Diamond Championship) の創設を発表した。創設の際に行われた投票では、理事会の全員が賛成した。翌9月には、メキシコシティのCorona Auditoriumで行われた記者会見で、WBC会長が実際に贈呈されるベルトを披露した[1]。
2011年12月13日に改正されたWBCルールは、ダイヤモンド王座について概ね以下のように規定している。
- WBCは裁量により、各階級で1名のWBCダイヤモンド王者を指定することがある。 この王座は階級で最も非凡な精鋭ボクサーを評価するために報酬あるいはタイトルとして授与されることがある。特殊な状況では、ダイヤモンド王者はWBCが単独の裁量で課したり許可したりする時に防衛戦を行う義務にのみ従うことで、WBC理事会の賛成票によって、階級で最高の王者と指定されることがある。ダイヤモンド王者は選択防衛戦(指名試合としてではなく、相手を選んでの防衛戦)を許可されることがあるが、WBCから特別な認可を受けない限り、ダイヤモンド王座が挑戦者に移譲されることはない。 WBCはまた、WBCの世界王者に適用される防衛戦その他の義務を遵守するようにダイヤモンド王者に命ずることがある[2]。
- (※この短い規定文の中に、原文では「裁量により」もしくは「単独の裁量で」という文言が5度も登場する。)
しかし2019年現在、この王座の防衛戦を行ったのはセルヒオ・マルチネス、カラム・スミスとレジス・プログレイスの3名で、中でもマルチネスはHBOの干渉で名誉王座に認定された後にダイヤモンド王座を獲得し[3][4][5][6]、2012年9月15日にフリオ・セサール・チャベス・ジュニアと対戦し勝利するまで正規王者との対戦が実現していないという経緯があった[7][8]。スミスは2017年9月16日にWorld Boxing Super Series準々決勝で対戦したエリック・スコーグランドとの間で行われたWBCダイヤモンド王座決定戦を制し[9][10]、2018年9月28日にはジョージ・グローブスとの対戦も制し[11][12][13]、2019年11月23日にはジョン・ライダーとの対戦も制し[14][15][16]、プログレイスは2018年7月14日にはWBC暫定王者のままWBCダイヤモンド王座決定戦を制し[17]、2019年4月27日にはキリル・レリクとの対戦も制したものの[18][19]、2019年10月26日にはジョシュ・テイラーとの対戦に敗れるといった他団体王者となったWBCダイヤモンド王者の防衛戦となっている[20][21]。
その後テイラーが2021年5月22日、ラスベガスのヴァージン・シアターでWBC・WBO世界スーパーライト級統一王者のホセ・カルロス・ラミレスとの4団体王座統一戦でダイヤモンド王座と正規王座との対戦が実現した[22]。
2017年のWorld Boxing Super Seriesの初回大会優勝者にダイヤモンドベルトを授与することを表明した[23]。しかし、2018年には同じ大会である第二回World Boxing Super Seriesバンタム級1回戦のノニト・ドネアVSライアン・バーネットの勝者となったドネアに[24][25]、第二回World Boxing Super Seriesクルーザー級第2シーズン準々決勝でのマイリス・ブリエディスVSノエル・ゲボールの勝者になったブリエディスにもダイヤモンドベルトを贈っており[26]、異なった基準で設定されている。
チャンピオンベルト
[編集]最初に公開されたベルトは通常の世界王座のベルトをベースに、18カラットの金プレート、598個のダイヤモンド、196個のエメラルド、6個のルビー、150個のスワロフスキー・クリスタル・ガラスなどの宝石が埋め込まれている[27][28]。また、王座を争った両名の選手の顔写真と、モハメド・アリ、ジョー・ルイスの計4名の顔写真が埋め込まれている。
最初に公開されたベルトの生産コストは約50万ドル(約4500万円)かかったと謳われているが[27]、5万ドル相当とする報道もある[28][29]。
王者
[編集]これまでWBCダイヤモンド王者として認定されたことのある主な選手。
- マニー・パッキャオ(ウェルター級)
- セルヒオ・マルチネス(ミドル級)
- バーナード・ホプキンス(ライトヘビー級)
- アナ・マリア・トーレス(女子バンタム級)
- フロイド・メイウェザー・ジュニア(スーパーウェルター級)
- ノニト・ドネア(バンタム級・スーパーバンタム級)
- アバ・ナイト(女子フライ級)
- ジャン・パスカル(ライトヘビー級)
- セルゲイ・コバレフ(ライトヘビー級)
- レオ・サンタ・クルス(フェザー級)
- サウル・アルバレス(ミドル級)
- ホルヘ・リナレス(ライト級)
- アマンダ・セラノ(女子スーパーバンタム級)
- ミゲル・アンヘル・ガルシア(スーパーライト級・ウェルター級[30])
- カラム・スミス(スーパーミドル級、World Boxing Super Series優勝)
- レジス・プログレイス(スーパーライト級)
- ジェシカ・チャベス(女子フライ級)
- オレクサンドル・ウシク(クルーザー級、World Boxing Super Series優勝)
- ラジャ・アマシェ(女子スーパーフライ級)
- マイリス・ブリエディス(クルーザー級、World Boxing Super Series優勝)
- エロール・スペンス・ジュニア(ウェルター級)
- クラレッサ・シールズ(女子ミドル級)
- ジョシュ・テイラー(スーパーライト級、World Boxing Super Series優勝)
- アレクサンデル・ポベトキン(ヘビー級)
- ローマン・ゴンサレス(スーパーフライ級)
- 井上尚弥(スーパーバンタム級)
脚注
[編集]- ^ 「世界のトップ・ニュース」『ボクシング・ビート』2009年10月号、株式会社フィットネススポーツ、2009年10月15日発行、42頁。
- ^ “WBC Rules and Regulations amended and approved 13 Dec 2011 - Rule 3.21”. WBC. p. 15. 2012年5月27日閲覧。
- ^ Steve Kim (2011年12月). “The Mandate”. MaxBoxing.com. 2012年5月27日閲覧。
- ^ Chris Mannix (2011年1月12日). “WBC embarrasses itself with treatment of Sergio Martinez”. SI.com. 2012年5月27日閲覧。
- ^ Michael Woods (2011年12月29日). “Super salty Sergio hits WBC, dumps HBO”. ESPNNewYork.com. 2012年5月27日閲覧。
- ^ “マルティネス名誉王者、ズビック正規王者に WBCミドル級”. ボクシングニュース「Box-on!」 (2011年1月19日). 2012年5月27日閲覧。
- ^ Lem Satterfield (2012年4月5日). “Q&A: Martinez anxious to meet Chavez Jr.-Lee winner”. RingTV.com. 2012年5月27日閲覧。
- ^ “アリーナ大興奮 マルティネス、大差でチャベスJr下す”. ボクシングニュース「Box-on!」 (2012年9月18日). 2013年4月28日閲覧。
- ^ Callum Smith wins by unanimous decision over Erik Skoglund in World Boxing Super Series Sky Sports 2017年9月17日
- ^ Smith: "I’m in this tournament to win it” World Boxing Super Series 2017年9月18日
- ^ World Boxing Super Series final: Callum Smith knocks out George Groves BBC Sport 2018年9月28日
- ^ Groves vs Smith: Callum Smith stops George Groves to win WBA super-middleweight world title Sky Sports 2018年9月29日
- ^ スミスがグローブスをKO WBSS・S・ミドル級制覇 Boxing News(ボクシングニュース) 2018年9月29日
- ^ Callum Smith beats John Ryder in controversial super-middleweight title fight win The Daily Star 2019年11月23日
- ^ Callum Smith Overcomes John Ryder With Questionable Scores Boxing Scene.com 2019年11月23日
- ^ スーパー王者スミスが暫定退治 WBA・S・ミドル級 Boxing News(ボクシングニュース) 2019年11月24日
- ^ New Orleans Results: Regis Prograis takes WBC Diamond belt into WBSS at 140 with stoppage World Boxing News 2018年7月15日
- ^ ドネアが6回KO勝ち WBSSバンタム級決勝進出 井上尚弥vsロドリゲスの勝者とファイナル Boxing News(ボクシングニュース) 2019年4月28日
- ^ Regis Prograis dominates Kiryl Relikh to become WBA Super Lightweight Champion Ringnews24 2019年4月29日
- ^ WBSS S・ライト級はテイラーV WBA・IBF王座統一Boxing News(ボクシングニュース) 2019年10月27日
- ^ Josh Taylor defeats Regis Prograis in London to win unified super-lightweight world titles Express.co.uk 2019年10月27日
- ^ “テイラーがS・ライト級4冠統一 ラミレスを2度倒して小差判定勝ち”. Boxing News(ボクシングニュース) (2021年5月23日). 2021年5月23日閲覧。
- ^ “WBC puts ‘diamond’ titles on the line in World Boxing Super Series”. Bad Left Hook (2017年6月7日). 2017年7月7日閲覧。
- ^ ドネア4回終了TKO勝ち バーネット負傷による棄権 Boxing News(ボクシングニュース) 2018年11月4日
- ^ “Ryan Burnett suffered torn oblique in TKO loss to Nonito Donaire”. ESPN.com (2018年11月10日). 2019年1月6日閲覧。
- ^ “Mairis Briedis Struggles, Beats Noel Mikaelian in Tough Fight”. BoxingScene.com (2018年11月10日). 2019年6月10日閲覧。
- ^ a b 原功 (2011年4月). “ボクシング「エキサイトマッチ」対戦カード”. WOWOW. 2012年5月27日閲覧。
- ^ a b “WBC Diamond Belt explained”. Fightnews.com (2011年3月7日). 2021年1月31日閲覧。
- ^ マルティネス、ジンジルクをKO WBCダイヤモンドベルト戦 Boxing News(ボクシングニュース)2011年3月13日
- ^ “Mikey Garcia vs. Jessie Vargas fight results: Garcia proves power in decision win, wants Manny Pacquiao”. CBS Sports (2020年3月1日). 2020年3月18日閲覧。