Wikipedia:名誉毀損の主張があった場合の法的状況の判断と法的対応に関する議論

このページは過去に議論された内容をまとめたページです。問題解決のための参考資料として残されています。

管理者の取るべき措置に関する見解(プロバイダ責任制限法の視点から)[編集]

Tomosさんの要請もあったことですし、法的な視点から若干コメントしておきましょう。

このページで甲さんが提起なさった議論は大変に興味深いもので、私も皆さんの議論の行方をきわめて興味深く見守っておりましたが、どうも法的な解決が必要となるかたちに発展してしまったようで、たいへん残念です。このような事態にいたってしまった以上、「管理者」の方々が適切に措置を講ずることが必要になってきます。そして、2002年に施行された「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(いわゆるプロバイダ責任制限法)は、特定電気通信役務提供者(プロバイダや「管理者」)の免責を規定することにより、法的なリスクを負うことなく適切な措置を講ずることを容易にしています。以下では、総務省の逐条解説を基に、この件に関して、ウィキメディア財団及び「管理者」の方々が法的なリスクを適切に回避できる形で、「管理者」の方々が適切な措置を講ずるには、どのようにすればよいかを解説します。おそらく、このような事例は今後一つならず起こっていくでしょうから、マニュアルづくりの意味合いも込めて、厳密に議論を行っておきます。

前提となる問題[編集]

まず、話の前提となる問題をいくつか片付ける必要があります。

国際裁判管轄[編集]

第一に、国際裁判管轄がどの国に認められるか、という点を検討する必要があります。この点、逐条解説36~37頁は、「不法行為事件については、一般に、 (a)被告の住所地国、(b)不法行為地国に管轄が認められる。不法行為地管轄については、加害行為地国と結果発生地国が異なる場合には、原則として、いずれの国にも管轄を認めるのが一般的である」と述べています。これをこの場合に当てはめると、(a)による国際裁判管轄は、ウィキメディア財団の存在するフロリダ州の裁判所、管理人の方々がお住まいの国(日本に住んでいれば日本)の裁判所に認められます。(b)による国際裁判管轄のうち、加害行為地国とはフロリダ州、結果発生地国については、「違法な情報が放置されたことによる被害が生じた国が結果発生地となるから、違法な情報が放置されたことによる被害が日本で生じたと認められる場合に、原則として、日本の裁判所に裁判管轄が認められる」(逐条解説37頁)ことになります。しかし、「プライバシー侵害や名誉毀損等の違法な情報に対して多数の国からアクセスが可能な場合に、いずれの国を当該不法行為の結果発生地と認定するかについては、議論が分かれている(拡散的不法行為の問題)」(同所)ともされています。しかし、この場合は、もし乙さんが日本にお住まいのようであれば、まず間違いなく日本の国際裁判管轄は認められると思います。以上を要するに、フロリダ州・日本には、まず間違いなく国際裁判管轄が認められると思いますが、他の国でも国際裁判管轄が認められる場合も考え得ます。そして、いずれの裁判所に出訴するのも、ふつうは、原告の自由であるということになります(例外として、英米法には、いわゆる「forum non conveniens」の法理があるため、アメリカでは、国際裁判管轄があっても、裁判所から門前払いを喰らうということもあり得ます。日本の場合にはそういうことはありません)。財団や管理者から見れば、どの国で訴えられるかわからないということですから、可能性のあるすべての国に関して対策をとっておくことが、理論的には必要になります。しかし、現実問題として、日本の裁判所以外で訴えられることは稀でしょうから、これ以降は、日本の裁判所に事案が繋属した場合に絞って、対策を考えることにします(とはいえ、その他の裁判所に繋属した場合のことも想定して、対策を立てたほうがベターです。フロリダ州法に詳しい方等、この点に関しフォローできる方は、よろしくお願いします)。


準拠法[編集]

そうすると、次に論じなければならないのは、準拠法の問題です。すなわち、この事案には、どこの国の法律が適用されるのか、という点を明らかにしておく必要があります。日本の裁判所の準拠法を決めるのは、日本の法例です。法例11条によると、原則として、「不法行為ニ因リテ生スル債権ノ成立及ヒ効力ハ其原因タル事実ノ発生シタル地ノ法律ニ依ル」ことになっていますが(1 項)、「外国ニ於テ発生シタル事実カ日本ノ法律ニ依レハ不法ナラサルトキ」には、この規定を適用しないとしています(2項)。

まずは、ウィキメディア財団が不法行為責任を問われるかを考えて見ましょう。この場合、事実発生地はフロリダ州ですから、フロリダ州不法行為法により不法行為の成立が決まることになりますが、もしその場合でも、日本法により不法行為ではないとされれば、結局、ウィキメディア財団は、責任を負わないことになります。要するに、原告は、フロリダ州法と日本法の両方において、ウィキメディア財団が不法行為であると立証しなければなりません。これに対し、ウィキメディア財団は、少なくともいずれか一つで免責されると立証すれば、責任を負わずに済みます。ですから、日本のプロバイダ責任制限法により免責されれば、日本の裁判所で賠償責任を課されるリスクからは解放されます。

管理者についても、同じことです。日本法による免責があれば、日本の裁判所における法的なリスクを回避することができます。

それでは、どのようにすれば、日本のプロバイダ責任制限法の免責を享受することができるのでしょうか。

プロバイダ責任制限法3条の要件の検討[編集]

プロバイダ責任制限法のうち、特定電気通信役務提供者の免責を規定するのは、3条です。この条文にのっとって事案を処理すれば、特定電気通信役務提供者は免責されます。

条文の検討に移る前に、背景となる思想を説明しておいたほうが分かりやすいでしょうから、まずはそれについて述べます。条文は、二つの項から成っていますが、第一項と第二項は、正反対の方向性のことを規定しています。すなわち、第一項は情報の流通による権利の侵害から生じる損害についての免責、第二項は情報の流通を阻止することによる権利侵害から生じる損害についての免責について、規定しています。

それはなぜかというと、現在問題となっている事案を例にとって考えてみると、甲さんの表現の自由という法益と、乙さんの社会的評価という法益が衝突していて、そのいずれもを適切に衡量した形で解決する必要があるからです。しかし、そのようなことは、最終的に裁判所がやることであって、プロバイダなり管理者なりというのは、裁判官ではないわけですから、裁判官と同じようにそれをやることは不可能です。もしそこまでのことを要求すると、今度はプロバイダなり管理者を萎縮させてしまうことになるわけです。それは表現の自由の観点からは望ましくない、ということで、プロバイダなり管理者なりが相当性のある一定の手順を践めば、画一的に免責されることにして、プロバイダや管理者が萎縮しないようにしようということなのです。

第1項[編集]

それでは、具体的に条文を見てみましょう。第1項は、情報の流通による権利(この場合は、乙さんの名誉権)の侵害を保護するような措置をとった場合に、どのような要件の下で免責されるかを定めています。

「第三条 特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたときは、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下この項において「関係役務提供者」という。)は、これによって生じた損害については、権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって、次の各号のいずれかに該当するときでなければ、賠償の責めに任じない。ただし、当該関係役務提供者が当該権利を侵害した情報の発信者である場合は、この限りでない。
 一 当該関係役務提供者が当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたとき。
  二 当該関係役務提供者が、当該特定電気通信による情報の流通を知っていた場合であって、当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき。」

この条文の要件のうち、検討する必要のあるものについて順次検討を加えていきます。

「特定電気通信役務提供者」[編集]

「特定電気通信役務提供者」というのは何か、誰がそれに該当するのかということを明らかにしておく必要があります。この語については、2条3号に定義があり、「特定電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、その他特定電気通信設備を他人の通信の用に供する者」であるとされています。逐条解説は、この定義の趣旨を次のように説明しています。

「プロバイダは、自らが設置している特定電気通信設備を用いた特定電気通信によって他人の権利を侵害する情報が流通している場合に、(a)当該情報の送信を防止するための措置をとる、(b)発信者の特定に資する情報(発信者情報)を開示する、という対応をとることが可能な場合があるため、本法律では、このようなプロバイダを対象とし、特定電気通信による情報の流通によって権利が侵害された場合について、(i)適切かつ迅速な対応を促進するための損害賠償責任の制限、(ii)権利の侵害を受けた者が当該情報の発信者情報の開示を受けることができるための権利を規定することとしている。」
「企業・大学等は、特定電気通信設備を設置して、企業の従業員、大学の職員・学生に外部の者との通信のために当該設備を使用させている場合がある。このような場合、企業・大学等は、プロバイダと同様の役務を営利を目的とせずに提供しているものと考えられ、上記(i)、(ii)の対応をとることのできる者という意味では、プロバイダと何ら異なるものではない。そこで、本法律においては、役務を提供する者を営利目的で限定することとはせず、企業・大学等を含めた特定電気通信設備を用いて電気通信役務を提供しているすべての者を対象者とすることとしている。」
「具体的には、ウェブホスティング等を行ったり、第三者が自由に書き込みのできる電子掲示板を運用したりしている者であれば、電気通信事業法の規律の対象となる電気通信事業者だけでなく、例えば、企業、大学、地方公共団体や、電子掲示板を管理する個人等も特定電気通信役務提供者に該当しうるものである。」(5頁)

この立法趣旨に鑑みれば、プロバイダであるウィキメディア財団が「特定電気通信役務提供者」に該ることはもとより、(a)(b)の対応をとることのできる者という意味で(上の文中の2段落目の「上記(i)、(ii)の対応をとることのできる者」というのは、「上記(a)、(b)の対応をとることのできる者」の誤植でしょう)、「管理者」も該当することになると解されます。特に、日本語版ウィキペディアでは「適切かつ迅速な対応」を行いうるのは、日本人管理者のみですから、そう解すべきでしょう。もしそう解さないと、これらの管理者は免責を享受できないという理不尽な結論となりますが、それは法の予定したところではないでしょう。

結局、ウィキメディア財団および管理者の双方が「特定電気通信役務提供者」に該当すると考えられます。ウィキペディア日本版の運営形態を考えると、管理者が適切な行動をとる必要があります。

「権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって」[編集]

管理者は、このような措置(つまり、削除)を講ずることが技術的に可能ですから、この要件を満たします。したがって、「次の各号のいずれ」にも該当しない行動をとる必要があります。

「次の各号のいずれかに該当するとき」[編集]

「次の各号」として掲げられているのは、次の場合です。

 一 当該関係役務提供者が当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたとき。
  二 当該関係役務提供者が、当該特定電気通信による情報の流通を知っていた場合であって、当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき。

どうも条文の書き方に問題がある気もしないでもないですが、総務省の逐条解説によると、結局、「情報の流通に関する認識」があり、かつ、「権利侵害に関する認識」があった場合には、この要件を満たすということのようです。だったら素直にそう書いていただきたいという気がしますが:-)。当該事案の場合、管理者のみなさんに情報の流通に関する認識があることについては、問題なく肯定してよいと思います。そうなると、権利侵害に関する認識があるか否かという点が決め手となります。

この点、総務省の逐条解説は、具体例を挙げて解説しています(12~13頁)。

「ここで、「認めるに足りる相当の理由」とは、通常の注意を払っていれば知ることができたと客観的に考えられることである。どのような場合に「相当の理由」があるとされるのかは、最終的には司法判断に委ねられるところであるが、例えば、関係役務提供者が次のような情報が流通しているという事実を認識していた場合は、相当の理由があるものとされよう。
・通常は明らかにされることのない私人のプライバシー情報(住所、電話番号等)
・公共の利害に関する事実でないこと又は公益目的でないことが明らかであるような誹謗中傷を内容とする情報」

「逆に、以下のような場合には、「相当な理由があるとき」には該当せず、関係役務提供者は責任を負わないものと考えられる。
・他人を誹謗中傷する情報が流通しているが、関係役務提供者に与えられた情報だけでは当該情報の流通に違法性があるのかどうかが分からず、権利侵害に該当するか否かについて、十分な調査を要する場合
・流通している情報が自己の著作物であると連絡があったが、当該主張について何の根拠も提示されないような場合
・電子掲示板等での議論の際に誹謗中傷等の発言がされたが、その後も当該発言の是非等を含めて引き続き議論が行われているような場合」

さて、ここで問題となっているのは「xxxxxxxxxxxxxx」及び「xxxxxxxxxxxx」という二つの表現です。この表現に公益目的があるとは考えづらいですし、また、書き込みを読むだけで違法性の判断が可能ですから、「十分な調査を要する場合」ともいえません。「その後も当該発言の是非等を含めて引き続き議論」が行われれば別という考え方もあるかもしれませんが、これは、おそらく「あの企業はひどい企業だ」とかそういう種類の誹謗中傷を念頭においた具体例だと思いますから、この場合とパラレルに考えられるようなものではないと思います。

結局、本件事案は、1項の場合に該当せず、管理者の方々は、当該発言を残しておくと、不法行為責任に問われるリスクを回避できないことになります。したがって、削除が必要になるわけですが、削除した場合に今度は甲さんの表現の自由(憲法21条)を侵害してしまう(その結果、民法709条、710 条により損害賠償責任を負う)リスクがあります。このリスクを回避するためには、プロバイダ責任制限法3条2項の要件を満たし、法定の免責を得る必要があります。

それでは、2項の条文をみて要件を検討していきましょう。

第2項[編集]

第2項の条文は、次の通りです。

2特定電気通信役務提供者は、特定電気通信による情報の送信を防止する措置を講じた場合において、当該措置により送信を防止された情報の発信者に生じた損害については、当該措置が当該情報の不特定の者に対する送信を防止するために必要な限度において行われたものである場合であって、次の各号のいずれかに該当するときは、賠償の責めに任じない。
 一 当該特定電気通信役務提供者が当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があったとき。
 二特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者から、当該権利を侵害したとする情報(以下「侵害情報」という。)、侵害されたとする権利及び権利が侵害されたとする理由(以下この号において「侵害情報等」という。)を示して当該特定電気通信役務提供者に対し侵害情報の送信を防止する措置(以下この号において「送信防止措置」という。)を講ずるよう申出があった場合に、当該特定電気通信役務提供者が、当該侵害情報の発信者に対し当該侵害情報等を示して当該送信防止措置を講ずることに同意するかどうかを照会した場合において、当該発信者が当該照会を受けた日から七日を経過しても当該発信者から当該送信防止措置を講ずることに同意しない旨の申出がなかったとき。

問題となる要件を順に検討しましょう

「次の各号のいずれかに該当するとき」[編集]

今回の件では、乙さんは「侵害情報の送信を防止する措置を講ずるよう申出」ているわけではありませんから、2号の場合には該りません。検討する必要があるのは、1号です。この点に関して、逐条解説は次のように解説しています(以下引用)。

(i)「権利が不当に侵害されている」

「権利が侵害されている」とは、民法第709条の「他人ノ権利ヲ侵害シタル」と同義であるが、「権利が不当に侵害されている」とは、単に違法な権利侵害があることに加えて、正当防衛のような違法性阻却事由等がないことをも含む意である。これは、表現の自由との関係で本項の要件についてはできる限り限定的に規定することが望ましいことによるものである。また、一般的に不法行為における違法性阻却事由についての主張・立証責任は加害者側にあるとされているが、本条においても、特定電気通信役務提供者が違法性阻却事由がないことを主張・立証するのではなく、その情報の発信者が違法性阻却事由があることを主張・立証することになる。

(ii)「信じるに足りる相当の理由があった」

特定電気通信役務提供者が情報の送信を防止するための措置を講じている場合には、当然、当該情報が他人の権利を侵害するものと考えた上で措置をしているはずであるが、当該情報が他人の権利を侵害するものでなかった場合であっても、通常の注意を払っていてもそう信じたことが止むを得なかったときには、責任を負わないこととするものである。どのような場合に「相当の理由」があるとされるのかは、最終的には司法判断に委ねられるところであるが、例えば、次のような場合は、相当の理由があるものとされよう。
・発信者への確認その他の必要な調査により、十分な確認を行った場合
・通常は明らかにされることのない私人のプライバシー情報(住所、電話番号等)について当事者本人から連絡があった場合で、当該者の本人性が確認できている場合

(以上引用、逐条解説15頁)

違法性阻却事由については、民法720条が定めています。「他人ノ不法行為ニ対シ自己又ハ第三者ノ権利ヲ防衛スル為メ已ムコトヲ得スシテ加害行為ヲ為シタル」場合(1項、正当防衛)、「他人ノ物ヨリ生シタル急迫ノ危難ヲ避クル為メ其物ヲ毀損シタル場合」(2項、緊急避難)ということですが、今回の甲さんの行為はいずれにも該当しないように思います。いずれにせよ、解説にもある通り、甲さんが立証する事柄です。

(ii)については、相当な理由が認められるだろう例として、「発信者への確認その他の必要な調査により、十分な確認を行った場合」が挙げられています。ですから、管理者の方々は、甲さんにきちんと確認をとってから消去するのが無難です。

「当該措置が当該情報の不特定の者に対する送信を防止するために必要な限度において行われたものである場合」[編集]

管理者による削除は、「当該措置が当該情報の不特定の者に対する送信を防止するために必要な限度において」行われなければなりません。本件の場合には、「xxxxxxxxxxxxxxx」及び「xxxxxxxxxxxxxx」という部分のみが問題となっているわけですから、原則として、この部分のみを削除する必要があります。技術的にそういうことが可能なのであれば、そうすべきですし、それが可能であるにもかかわらず、特定の版をまるまる削除してしまうと、免責を受けられない可能性があります。もしそのようなことが不可能であるのであれば、特定の版をまるまる削除するしかありませんが、その場合でも、その版から当該発言のみを取り除いた版を新たに作成し、それをアップロードするということをしておくとよいと思います(そういうことは技術的に可能なわけですから)。

ちなみに、逐条解説は、「特定電気通信役務提供者が故意に他人の権利を侵害するとされる情報を隠匿する目的で複製をすることなく論理的に消去した場合などは、必要な限度を超えているものと解されることとなろう」「このように規定しているのは、その情報やその情報の流通に関する情報に証拠として意味がある場合があることにも配意したものである」と言っていますから(14頁)、削除する版についてはどこかに複製しておく必要があります。「不特定多数に対する送信を防止」すれば構わないわけですから、管理者のような特定の者のみが閲覧できるという状態は、問題ありません。

まとめ、例外[編集]

以上、管理者のとるべき措置について論じてきました。まとめて言えば、「甲さんに確認をとり、複製をして、該当部分のみを削除する」 のがプロバイダ責任制限法による免責を受けるために必要な行為であるということになります。なお、甲さんは、当該発言の発信者に該当するため、プロバイダ責任制限法3条1項但書により、当該法律による免責を受けることはできません。通常の不法行為法によって不法行為の成否は検討されます。

それから、さしあたりプロバイダ責任制限法4条に関するコメントはしていません。


条文[編集]

特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律
公布:平成13年11月30日法律第137号
施行:平成14年5月27日

(趣旨)
第一条 この法律は、特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害があった場合について、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示を請求する権利につき定めるものとする。

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 一 特定電気通信 不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。以下この号において同じ。)の送信(公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信を除く。)をいう。
 二 特定電気通信設備 特定電気通信の用に供される電気通信設備(電気通信事業法第二条第二号に規定する電気通信設備をいう。)をいう。
 三 特定電気通信役務提供者 特定電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、その他特定電気通信設備を他人の通信の用に供する者をいう。
 四 発信者 特定電気通信役務提供者の用いる特定電気通信設備の記録媒体(当該記録媒体に記録された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報を記録し、又は当該特定電気通信設備の送信装置(当該送信装置に入力された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報を入力した者をいう。

(損害賠償責任の制限)
第三条 特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたときは、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下この項において「関係役務提供者」という。)は、これによって生じた損害については、権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって、次の各号のいずれかに該当するときでなければ、賠償の責めに任じない。ただし、当該関係役務提供者が当該権利を侵害した情報の発信者である場合は、この限りでない。
 一 当該関係役務提供者が当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたとき。
 二 当該関係役務提供者が、当該特定電気通信による情報の流通を知っていた場合であって、当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき。
2 特定電気通信役務提供者は、特定電気通信による情報の送信を防止する措置を講じた場合において、当該措置により送信を防止された情報の発信者に生じた損害については、当該措置が当該情報の不特定の者に対する送信を防止するために必要な限度において行われたものである場合であって、次の各号のいずれかに該当するときは、賠償の責めに任じない。
 一 当該特定電気通信役務提供者が当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があったとき。
 二 特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者から、当該権利を侵害したとする情報(以下「侵害情報」という。)、侵害されたとする権利及び権利が侵害されたとする理由(以下この号において「侵害情報等」という。)を示して当該特定電気通信役務提供者に対し侵害情報の送信を防止する措置(以下この号において「送信防止措置」という。)を講ずるよう申出があった場合に、当該特定電気通信役務提供者が、当該侵害情報の発信者に対し当該侵害情報等を示して当該送信防止措置を講ずることに同意するかどうかを照会した場合において、当該発信者が当該照会を受けた日から七日を経過しても当該発信者から当該送信防止措置を講ずることに同意しない旨の申出がなかったとき。

(発信者情報の開示請求等)
第四条 特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、次の各号のいずれにも該当するときに限り、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下「開示関係役務提供者」という。)に対し、当該開示関係役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報(氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の開示を請求することができる。
 一 侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。
 二 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。
2 開示関係役務提供者は、前項の規定による開示の請求を受けたときは、当該開示の請求に係る侵害情報の発信者と連絡することができない場合その他特別の事情がある場合を除き、開示するかどうかについて当該発信者の意見を聴かなければならない。
3 第一項の規定により発信者情報の開示を受けた者は、当該発信者情報をみだりに用いて、不当に当該発信者の名誉又は生活の平穏を害する行為をしてはならない。
4 開示関係役務提供者は、第一項の規定による開示の請求に応じないことにより当該開示の請求をした者に生じた損害については、故意又は重大な過失がある場合でなければ、賠償の責めに任じない。ただし、当該開示関係役務提供者が当該開示の請求に係る侵害情報の発信者である場合は、この限りでない。

さしあたり以上です。T. Nakamura 04:52 2003年12月22日 (UTC)

日本法上不法行為でなくとも、フロリダ州において損害賠償を命じる判決が確定した場合には、準拠法に関する問題を経るまでもなく、外国判決の執行としてフロリダ州の判決を日本国内において執行することが可能ですから、日本法またはフロリダ州法の一方において免責されれば足りるとするのは不正確な表現であるかと思います。Falcosapiens 08:56 2003年12月22日 (UTC)

Falcosapiensさんのような専門家でもお読み落としになるのですから、おそらく私の書き方が分かりにくかったのでしょう。注意を喚起する意味で、「国際裁判管轄」の末尾で申し上げたことを、もう一度ここで繰り返しておきます。
「財団や管理者から見れば、どの国で訴えられるかわからないということですから、可能性のあるすべての国に関して対策をとっておくことが、理論的には必要になります。しかし、現実問題として、日本の裁判所以外で訴えられることは稀でしょうから、これ以降は、日本の裁判所に事案が繋属した場合に絞って、対策を考えることにします(とはいえ、その他の裁判所に繋属した場合のことも想定して、対策を立てたほうがベターです。フロリダ州法に詳しい方等、この点に関しフォローできる方は、よろしくお願いします)。」
準拠法に関する話も「これ以降」の話ですから、日本の裁判所に事案が繋属した場合に射程は限られています(つまり、フロリダ州の裁判所に繋属した場合については論じていません)。もちろん、フロリダ州の裁判所に繋属して判決が下りればFalcosapiensさんのおっしゃるとおりになるのだと思います(わたしが括弧内でお願いした「フォロー」をしていただき、ありがとうございました)。T. Nakamura 03:35 2003年12月23日 (UTC)

Tomosのコメント[編集]

T.Nakamuraさん、詳しいお話をして頂いてどうもありがとうございました。Falcosapiensさんもフォローをありがとうございます。

準拠法と管轄の話は別として、プロバイダ責任制限法については、おおよそ考えていたことを確認できた部分や、迷っていた部分について知ることができた点も多かったです。予想がつくかと思いますが、大変参考になりました。

さて、少し調べたり考えたりしたことを書いてみます。

1)

まず、この件が侮辱なり名誉毀損なり、民法の不法行為の方の名誉毀損なりに該当するのかどうかですが、僕にはそれらの内どれが成立するのかはよくわからなかったのですが、とりあえずどれかが成立してもおかしくはないかも知れない、という感触を得ました。T.Nakamuraさんの解説では、書き込みの内容を読めばそれが名誉毀損であることが判断できる、というような話になっているようですが、法的な定義やその運用実態をよく知らない僕のような者にはとりあえず自明とはほど遠いことを書いておきます。

2)

それから、ISP責任制限法で特定されている免責の条件について。これは乙さんが甲さんの書き込みに問題を感じたために、削除を依頼されている、ということであれば話がまだわかりやすいのですが、乙さんはその逆に、削除をしないように依頼されています。この場合でも、管理者としては、管理者自身やウィキメディア財団の免責のために、乙さんの依頼を押し切ってこのページを削除してしまうのがよいのかどうか、ちょっと不明のように感じました。免責は、管理者や財団が削除することの責任を甲さんから問われない、ということだと思うのですが、それと同時に、後々乙さんが何かの理由で財団や管理者を訴えることにした場合とか、そうせざるをえない場合(というのがあるかどうか知りませんが)にも、財団や管理者の賠償責任がなくなる、ということがあるのでしょうか? だから乙さんのお願いにも関わらず削除した方がよいのだ、と?

3)

更にもう一点、どういう削除が可能かについて。T.Nakamuraさんの前提とはだいぶ違う仕組みになっているので、ウィキペディアの管理者には何ができて何ができないかをちょっと書いてみます。

管理者に与えられている権限では、「特定の部分の削除」は不可能です。また「特定の版」の削除も、管理者の権限では不可能です。開発者がサーバ内のデータベースに(通常のウィキペディアのインターフェースを通さずに)アクセスして操作をすると、どうやら可能なようですが。これができるのは、日本語版の管理者の中ではいつも不在のBrion_VIBBERさんだけ(開発者権限も持っている)ですね。

Brionさんは、日本語を読む力も当然限られていますので、今回の件やそこから発生する責任などを知り得たと考えるに足る相当の理由があるかどうか、ちょっとわかりませんが。

そこで、僕に早急に、直接できる削除は、甲さんの発言ばかりか、乙さんの発言も、その前後の他の方々の発言もまとめてこのページ(Wikipedia‐ノート:管理者)を丸ごと削除してしまうことだけです。これがまず厄介な点です。

(乙さんが、このページが削除されることがないように、という風に上に書き込まれているのは、ウィキペディアでは削除は記事を丸ごと削除するのが基本だということをご存知だからでしょう。)

また、特定の版の削除、という点については、管理者であろうとなかろうと、Brionさんに連絡をする(英語かエスペラントかフランス語じゃないと通じないのではないかと思いますが。。)ことは誰でもできます。連絡をすることは管理者の権限とは関係がないので、特にこれをやったから管理者として僕や他の方々の責任が限定されることになるか、ウィキメディア財団の責任が限定されることになるか、というとよくわかりませんが。

ただ、僕はいつもバグやサーバの不具合を報告したりしてお世話になっているので、メールを出すことはできますし、乙さんは英語が苦手だということは以前伺っているので、そういう措置が望ましければ、とりあえず特定の版の削除を至急してくれるように、という風に頼んでみることはできます。

上にある乙の書き込みを受けて、とりあえずその逆に、当面はサーバから記録が消去されないようにしてくれ、というようなことを既に伝えてありますが。

ただ、そのようにして削除されたデータが、果たしてどこかに保存される・できるのかどうかは僕は知りません。とりあえずそれについて尋ねてみるのがよさそうなので、Brionさんにでも聞いてみます。

もうひとつ別の対処方法として、このページを削除した上で、その文面の一部をコピーしたものを僕が投稿する、ということは技術的には可能です。具体的には、甲さんの発言について問題のある部分をとり除いて、最新版の全ての書き込みをそのまま再現する、というようなことですね。

ところが、これをやると、ページの履歴情報は失われ、あたかもぼくが全てを投稿したかのような記録しか残らないことになります。

これを無断でやると、これまで書き込みをした方々に著作権を侵害することになってしまう可能性があります。具体的にはGFDLにある、履歴を保存しておけという条件を満たせないことが問題になるわけです。 これが本当にGFDLに反するのかどうか、僕は未だ自信がなく、最近Wikilegal-lで話題を提起した時にも、結局これだ、という結論には至りませんでした。ただ、他の方々が了解して下さるなら、そういう対処もありですね。

4)

そこで、これまでこのページに書き込まれた方に特に質問です。

  1. このページが丸ごと削除されてしまうことに反対の方がいらっしゃるでしょうか? 管理者としては、放置して乙さんの名誉が傷つく可能性が増大するのも問題だ、と思う部分はあります(乙さんにしてみればそれは余計なおせっかいかも知れませんが)。 特定の版の削除はBrionさんが忙しいせいなのか、対処されないまま依頼が積もって行く一方です。また、証拠の保存という点では、サーバから記録が抹消されなければ(そうしないように、とはBrionさんとJimboさんに伝えてあります)問題ないようです。
  2. 削除したとしたら、「自分の書き込みの内容は是非復活して欲しい」「復活してもらってもいい」という方はいるでしょうか? つまり、これは僕がコピペをして僕の投稿であるかのように見える形になってしまうわけですが、それで構わない方ですね。
  3. 逆にそれは絶対して欲しくない、という方はいますか?

何をどうしたらよいのかはまだよくわかりませんが(ご意見などある方はお願いします)、とりあえず何ができるのかを模索しておくのはよいと思うので、上記3点について教えて頂ければと思います。Tomos 11:50 2003年12月22日 (UTC)

1 刑事上の名誉毀損・侮辱の成否、および民事上の名誉毀損の成否について。
私は、いずれの成立をも認めることができないと考えます。
名誉毀損罪・侮辱罪は社会的評価を保護するためのもの、民事上の名誉毀損(以下、民事については『名誉毀損』、刑事については『名誉毀損罪』として区別します)は、侵害された社会的評価を回復するためのものです。これらは社会生活上の関係に基づく評価を害された場合には、これによって社会的な生活そのものが害されるおそれがあることを制度を定めた趣旨としています。
今回は、Wikipediaという一定のコミュニティにおいて使用されるハンドルネームに対する「軽蔑」の表明でありこれが社会的評価に対する侵害であるといえるかという点に疑問があります。
さらに、仮にこれが社会的評価に対する侵害であるとしても、私人による名誉毀損的表現により社会的評価を害された者が対等の反論をすることができる場合には、これに国家が介入すべきではないという観点から裁判所が侵害の存在またはその違法性を認めない可能性があります。学説上「対抗言論の法理」(more speech)と呼ばれているものです。
今回の事例では、対等に反論がなされていますから、日本法上の名誉毀損罪、侮辱罪、名誉毀損が認められないのではないかと思います。

アメリカは日本以上に名誉毀損の成立に対して厳格(虚偽であることを知っていたか真実性に注意を払わなかった場合くらいにしか認められない)ですし、今回の発言は一応反論の一環としてなされていることから、アメリカ法上の問題もないかと思います。

以上が理論的理由です。仮に理論上の問題がなかったとしても刑事については侵害軽微を理由として不起訴(犯罪不成立)。民事も棄却になるかと思います。

2 保存の依頼に反しても削除すべきか
仮に削除しなかったことを理由として後日訴えを提起しても、乙さんご自身が保存を依頼されているのですから、主張自体が信義誠実の原則に反するものとして棄却されるかと思います。

3は質問でないのでパスして

4 私の発言は必要により削除して頂いても結構です。Falcosapiens 16:33 2003年12月22日 (UTC)


T. Nakamuraのコメント[編集]

Tomosさん、Falcosapiensさん、ご意見をどうもありがとうございました。以下では、Tomosさんの問題提起に即した形でコメントしておきます。

1)について[編集]

私のした話はプロバイダ責任制限法上の免責に射程を絞ってありました。それ以外の点についてフォローしていただいたFalcosapiensさん、どうもありがとうございました。

刑事上の帰結(不起訴)については、 Falcosapiensさんのおっしゃっる通りだと思います。但し、不起訴の場合、裁判所の判決がないから犯罪とは確定しないというだけの話で、行為自体は、構成要件をみたし、違法で有責な行為ですから、もし起訴されれば有罪になる行為だということです(確か、十円だけ電話を不正使用して有罪になったという、十円事件というのがありませんでしたっけ?)。ですから、どなた様も、ご発言にはどうぞお気をつけください。

民事については、Falcosapiensさんと見解を異にします。乙さんが甲さんに対して不法行為責任を追及した場合には、 Falcosapiensさんのおっしゃったようになるのかもしれませんが(私はこの件に関しては立ち入らないことにしますので、そうだとも違うとも言いません)、プロバイダ及び管理者の責任については、まったく同じには考えられないと思います。それはなぜか。

第一に、それは、プロバイダ及び管理者の責任については、プロバイダ責任制限法の免責があるのですから、そちらによって対応を判断すべきです。プロバイダ責任制限法は、民法上の問題について、プロバイダなり管理者なりが、「裁判所の判断はどうなんだろう?」ということを思い悩まずに、自分でどんどん適切な対処ができるようにするための法律ですから、民法上の不法行為成立要件よりも、プロバイダ責任制限法上の権利侵害要件(3条2項1号)のほうが、広く解されることになるはずです。つまり、不法行為の賠償責任を必ず負うというような、リスクぎりぎりのところまで発言を残しておく必要はなく、これを残しておくと賠償責任を負う危険がある、というようにリスクを感じるレヴェルまで来たら、法の手続に従って削除してしまって構わないというということであるはずです。文言上も、「他人の権利が不当に侵害されている場合」ではなく、「他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があったとき」となっていますね。

いま申し上げたことは、Tomosさんの1番のお問い合わせの回答にもなっています。つまり、われわれの判断は、必ずしも裁判所の判断とぴったり重なり合う必要はなくて、その間のズレの部分に関しては、プロバイダ責任制限法3条にのっとっているかぎり、免責されるということです。

第二に、ウィキメディア財団・プロバイダが民法上の不法行為責任(709条以下)を負うかどうかという点の判断に関しても、結構微妙であると私は考えます。つまり、必ずしも「不法行為は成立しない」と言い切れないということです(ということは、プロバイダ責任制限法のところで述べた、リスクを感じるレヴェルでもあるということです)。

どうしてそう考えるのかというと、平成14年12月25日の東京高裁判決がインターネット上の名誉毀損を扱っていて、今回の事案についても参考になる部分が多いのですが、それを読む限り、本件の事案でもウィキメディア財団・管理者に法的リスクがないとは言い切れないと考えられるからです。以下、順に判決文を引用しながら、その理由を説明します。ちなみに事案は次のようなものです。

「第2 事案の概要
1 本件は,控訴人の管理運営するインターネット上の本件掲示板において,被控訴人らの名誉を毀損する発言が書き込まれたにもかかわらず,控訴人がそれらの発言を削除するなどの義務を怠り,被控訴人らの名誉が毀損されるのを放置したことにより被控訴人らが損害を被ったなどとして,被控訴人らが控訴人に対し,不法行為に基づき,それぞれ損害賠償金250万円及び遅延損害金の支払を求めるとともに,民法723条又は人格権としての名誉権に基づき,本件掲示板上の被控訴人らの名誉を毀損する発言の削除を求めた事案である。原審は,名誉毀損による不法行為の成立を認め,控訴人に対し,被控訴人らそれぞれに損害賠償金200万円及びこれに対する平成13年8月5日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払並びに本件掲示板上の名誉毀損発言(ただし,請求に係る発言の一部を除く。)の削除を命じた。控訴人は,これを不服として本件各控訴を提起した。
2 基本的事実(証拠等の掲示のない事実は,当事者間に争いがない。)
 (1)  被控訴人Аは,動物病院の経営等を目的とする有限会社であり,Cの名称で動物病院を経営している。被控訴人Bは,獣医であり,昭和58年にCを開業し,平成6年3月1日,被控訴人Аを設立し,以来被控訴人Аの代表取締役を務め,Cの院長として動物の診療を行うとともに,日本獣医学会,日本臨床獣医学会等に論文を発表してきた。Cには,日本各地から動物の飼主多数が訪れている。(甲27ないし32,弁論の全趣旨)
 控訴人は,インターネット上で閲覧及び書き込みが可能な電子掲示板である本件掲示板を開設し,そのシステムを管理運営している者である。
 (2)  平成13年1月16日以降,本件掲示板の(省略)と題するスレッド(以下「本件1のスレッド」という。「スレッド」とは掲示板に提供される話題のことをいう。)において,原判決の別紙発言目録1記載の文言(以下「本件1の発言」という。)が,本件掲示板の(省略)と題するスレッド(以下「本件2のスレッド」という。)において,同目録2記載の文言(以下「本件2の発言」という。)が,それぞれ書き込まれた。(甲1,2,21,弁論の全趣旨)」

事案自体には、本件と似ている部分と本件と似ていない部分の両方が混在するのですが、本件と関係のある部分だけピックアップすると、以下のようになると思います。

名誉毀損と認められる発言・権利を侵害された者の匿名性[編集]

判決を読む限り、裁判所は少しでも侮蔑的な発言であれば、積極的に名誉毀損を認める傾向にあります。これについては、この段落のあとにある引用を参照してください。本件についても、消去しないで残しておく場合には、管理者及びウィキメディア財団が不法行為責任に問われる可能性があるくらいのレヴェルにある発言であると思われます。ただ、「被控訴人らを指し示すことが容易に推測される文言を記載した」、「本件1のスレッドの他の発言と併せ読めば,その内容に照らし,これらの発言がいずれも被控訴人らに向けられていることは明らか」という事情が、社会的評価の低下という評価にどの程度影響を与えているのかが、判示からはいまいち明らかではありません。ですから、Falcosapiensさんのおっしゃったように、「乙さんの匿名性が保障されている限り社会的評価の低下にはつながらない」となる可能性もないわけではありません。しかし、だからといって、わざわざ当該発言を残しておいて、ウィキメディア財団および管理者を法的リスクに直面させる、というのは、あまり賢明でない選択肢であるように思います。プロバイダ責任制限法による免責手続が折角存在するのですから、それを使っておいたほうが賢明であるように思います。

「2 争点(1)(本件各発言は名誉毀損に当たるか。)について
  (1)  本件1の発言の番号16,32,35,36,96,427,457,623,662,669,678,682,683,685,686,696,761,765,772,773,788,811ないし813,815,817,823,826,828ないし831,833,848,874ないし876,882,912,918,921,922,925,929,930の各発言,本件2の発言の番号6ないし8,10,23,297,308,312,320,344,605,711,712,791,792,801の各発言は,いずれも,(省略)又は(省略)という題の各スレッドの下で,被控訴人らあるいは被控訴人A又は被控訴人Bのいずれかの名前を挙げ,又は被控訴人らの名前の一部を伏字,あて字等にするものの,被控訴人らを指し示すことが容易に推測される文言を記載した上,「ブラックリスト」,「過剰診療,誤診,詐欺,知ったかぶり」,「えげつない病院」(発言1-16,32,35,36,96),「ヤブ(やぶ)医者」(発言1-677,678,811,882,発言2-792),「ダニ(以下省略)」(発言1-773,912,918,921,925,929,発言2-711),「精神異常」(発言1-427,848,),「精神病院に通っている」(発言1-812,発言2-801),「動物実験はやめて下さい。」(発言1-623),「テンパー」(発言1-669),「責任感のかけらも無い」(発言1-682),「不潔」(発言1-683,761),「氏ね(死ねという意味)」(発言1-685),「被害者友の会」(発言1-696,761,788,930,発言2-23),「腐敗臭」(発言1-696,788),「ホント酷い所だ」(発言1-815),「ずる賢い」(発言1-817),「臭い」(発言1-826)などと侮辱的な表現を用い,又は「脱税してる」のではないかとの趣旨の直近のいくつかの発言を引用する(発言1-823)などして誹謗中傷する内容であり,被控訴人らの社会的評価を低下させるものである。
 また,本件1の発言の番号18,425,664,697,789,814,919,920の各発言は,その発言自体には被控訴人らを特定する文言はないものの,本件1のスレッドの他の発言と併せ読めば,その内容に照らし,これらの発言がいずれも被控訴人らに向けられていることは明らかであり,被控訴人らの社会的評価を低下させるものであるといえる。
 さらに,本件3の発言は,本件1の発言の番号662,682,683,812の各発言と同一の文言が書き込まれたものであるから,上記のとおり被控訴人らの社会的評価を低下させるものである。
 したがって,本件各発言中上記本件1の発言(番号764,872を除く。),本件2の発言及び本件3の発言(以下これらを「本件各名誉毀損発言」という。)は,いずれも被控訴人らの名誉を毀損するものというべきである。」


発言者の匿名性・対抗言論の法理の不採用[編集]

次に、対抗言論の法理についてです。まず裁判所は、発言者の匿名性が名誉毀損の成立に与える影響につき、発言者の匿名性は、名誉毀損の成立に影響を与えないことを確認しています。

「(2) 控訴人は,本件各発言について,匿名であり,読者は各発言に根拠があるとは限らないことを十分認識していると考えられるから,被控訴人らの社会的評価を低下させるものではなく,各発言は名誉を毀損するものではないと主張する。
 しかし,ある発言の意味内容が他人の社会的評価を低下させるものであるかどうかは,一般人の普通の注意と読み方とを基準として判断すべきものであり(新聞記事についての最高裁判所昭和31年7月20日第二小法廷判決・民集10巻8号1059頁参照),インターネットの電子掲示板における匿名の発言であっても,(省略)と題して不正を告発する体裁を有している場での発言である以上,その読者において発言がすべて根拠のないものと認識するものではなく,幾分かの真実も含まれているものと考えるのが通常であろう。したがって,その発言によりその対象とされた者の社会的評価が低下させられる危険が生ずるというべきであるから,控訴人の上記主張は採用することができない。」

そして、その直後に、裁判所は、発言が匿名である場合には、「匿名という隠れみのに隠れ,自己の発言については何ら責任を負わないことを前提に発言しているのであるから,対等に責任をもって言論を交わすという立場に立っていないのであって,このような者に対して言論をもって対抗せよということはできない」と論じています(この段落のあとに引用をおきます)。もちろんその他の状況も総合的に考慮して、最終的に対抗言論の法理を否定しているわけですが、それにしても、発言者が匿名であるという事情が、対抗言論の法理を否定するのに大きな役割を果たしています。ウィキペディアにおいても、発言者は匿名ですから、本件事案と判例の事案がパラレルではないにせよ、対抗言論の法理の適用は否定される可能性は少なくないと考えられます。

「(3) 控訴人は,電子掲示板における論争には「対抗言論」による対処を原則とすべきであり,本件においても,被控訴人らを擁護する趣旨の発言がされ,十分な反論がされているから,被控訴人らの社会的評価は低下していないことになると主張する。
 言論に対しては言論をもって対処することにより解決を図ることが望ましいことはいうまでもないが,それは,対等に言論が交わせる者同士であるという前提があって初めていえることであり,このような言論による対処では解決を期待することができない場合があることも否定できない。そして,電子掲示板のようなメディアは,それが適切に利用される限り,言論を闘わせるには極めて有用な手段であるが,本件においては,本件掲示板に本件各発言をした者は,匿名という隠れみのに隠れ,自己の発言については何ら責任を負わないことを前提に発言しているのであるから,対等に責任をもって言論を交わすという立場に立っていないのであって,このような者に対して言論をもって対抗せよということはできない。そればかりでなく,被控訴人らは,本件掲示板を利用したことは全くなく,本件掲示板において自己に対する批判を誘発する言動をしたものではない。また,本件スレッドにおける被控訴人らに対する発言は匿名の者による誹謗中傷というべきもので,複数と思われる者から極めて多数回にわたり繰り返しされているものであり,本件掲示板内でこれに対する有効な反論をすることには限界がある上,平成13年5月31日に被控訴人らを擁護する趣旨の発言(本件1のスレッドの番号857)がされたが,これによって議論が深まるということはなく,この発言をした者が被控訴人Bであるとして揶揄するような発言(発言1-882)もされ,その後も被控訴人らに対する誹謗中傷というべき発言が執拗に書き込まれていったのである。
 このような状況においては,名誉毀損の被害を受けた被控訴人らに対して本件掲示板における言論による対処のみを要求することは相当ではなく,対抗言論の理論によれば名誉毀損が成立しないとの控訴人の主張は採用することができない。」

違法性阻却・責任阻却[編集]

裁判所は、違法性阻却・責任阻却の要件について、次のように述べています。

「(3)ア ところで,事実を摘示しての名誉毀損にあっては,その行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあった場合に,摘示された事実がその重要な部分について真実であることの証明があったときには,上記行為には違法性がなく,仮に上記事実が真実であることの証明がないときにも,行為者において上記事実を真実と信ずるについて相当の理由があれば,その故意又は過失は否定され,また,ある事実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損にあっては,その行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあった場合に,上記意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには,人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り,上記行為は違法性を欠くものとされ,上記意見ないし論評の前提としている事実が真実であることの証明がないときにも,行為者において上記事実を真実と信ずるについて相当の理由があれば,その故意又は過失は否定されると解される(最高裁判所平成9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3804頁参照)。」

以上を本件にあてはめると、

  • 事実の公共性:「xxxxxxxxxxxxxxxxxxxx」及び「xxxxxxxxxxxxxxxxxx」という発言は、公共性のある問題について論じたものであるか?
  • 目的の公益性:同発言は公益を目的としたものか?
  • 主張の真実性:同発言は真実か?

私の感覚からすれば、以上のいずれもみたさないものと思われますし、万が一みたされても、当該発言は、「人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したもの」ですから、どう考えても違法性は阻却されないものと思われます。

しかも、裁判所は、以下のように、プロバイダ責任制限法の施行後であっても、プロバイダないし管理者側に立証責任があるといっています。つまり、プロバイダ・管理者が、上記のこと(公共性があり、目的の公共性があり、主張の真実性があり、かつ、人身攻撃に及んでいない)を証明しなければならないことになりますが、おそらくそれは不可能でしょう。

「控訴人は,本件掲示板に書き込まれた発言について,その公共性,目的の公益性,内容の真実性等が明らかでない場合には控訴人は削除義務を負わない,すなわち,名誉を毀損されたという被控訴人らにおいて,当該発言の公共性,目的の公益性,内容の真実性等の不存在につき主張立証する必要がある旨主張する。  しかしながら,人の品性,徳行,名声,信用等の人格的価値について社会的評価を低下させる事実の摘示,又は意見ないし論評の表明となる発言により,名誉毀損という不法行為は成立し得るものであり,名誉を毀損された被害者が,その発言につき上記のとおり社会的評価を低下させる危険のあることを主張立証すれば,発言の公共性,目的の公益性,内容の真実性等の存在は,違法性阻却事由,責任阻却事由として責任を追及される相手方が主張立証すべきものである。
 被控訴人らは,本件掲示板における匿名の者の発言によって名誉を毀損されたものであり,前記(2) のとおり,本件掲示板の匿名の発言者を特定して責任を追及することが事実上不可能であること,控訴人は,単に第三者に発言の場を提供する者ではなく,電子掲示板を開設して,管理運営していることから,控訴人は名誉毀損発言について削除義務を負うものであり,控訴人が発言者そのものではないからといって,被害者側が発言の公共性,目的の公益性及び内容の真実性が存在しないことまで主張立証しなければならないとは解されない。
 したがって,本件において,控訴人が,本件各発言の公共性,目的の公益性,内容の真実性が明らかではないことを理由に,削除義務の負担を免れることはできないというべきである。
 イ この点に関し,控訴人は,本件にプロバイダー責任法が適用され,同法の制定経緯,規制範囲等に照らすと,プロバイダーは直接名誉毀損に当たる発言をした者ではなく,発言の公共性,目的の公益性,内容の真実性を判断することができないから,名誉毀損における真実性等の存否についても,プロバイダーの責任を追及する者が主張立証責任を負うと解すべきであると主張する。同法は平成14年5月27日に施行されたものであるから,本件に直ちに適用されるものではないが,その趣旨について一応検討する。
 プロバイダー責任法3条1項には,特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたときは,プロバイダー等は,権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって,当該プロバイダー等が当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたとき,又は,当該プロバイダー等が,当該特定電気通信による情報の流通を知っていた場合であって,当該電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるときでなければ,当該プロバイダー等が当該権利を侵害した情報の発信者である場合を除き損害賠償責任を負担しない旨が定められている。
 これは,当該情報の内容が,人の品性,徳行,名声,信用等の人格的価値について社会的評価を低下させる事実の摘示,又は意見ないし論評の表明であるなど,他人の権利を侵害するものである場合に,プロバイダーが当該情報が他人の権利を侵害することを知っていたときはもちろん,プロバイダーが当該情報の流通を知り,かつ,通常人の注意をもってすればそれが他人の権利を侵害するものであることを知り得たときも責任を免れないとする趣旨であり,権利侵害の認識又はその認識可能性の主張立証責任を被害者側に負わせたものと解されるが,それ以上に権利侵害についての違法性阻却事由,責任阻却事由の主張立証責任についてまで規定をしているものではないと解される。」

結論[編集]

以上のような法的状況に鑑みれば、ウィキメディア財団および管理人が法的リスクを回避するに、プロバイダ責任制限法に則った形で、当該発言を削除しておくのが無難であると考えます。

2)について[編集]

私の書き方が十分明確ではなかったのだと思いますが、本件の場合、プロバイダ責任法3条の1項が、乙さんからの責任追及を回避するための要件です。ところが、本件の場合、削除しない限りは、免責の要件をみたしません。ということは、削除しなければ、乙さんからの責任追及があり得るということです(乙さんが実際にそうするといっているわけではありません。法的リスクを管理していく上では、そういうことを検討に入れないといけないということです)。逆に、乙さんの意思に反して甲さんの発言を削除したところで、これは甲さんの表現の自由の問題にはなりますが(だから、3 条2項にのっとって処理しなければならないわけですが)、乙さんの表現の自由を侵害することにはなりません。証拠保全の目的であれば、管理者が複製を保存しておけば十分です。つまり、甲さんの発言を乙さんの意思に反して削除しても、乙さんの権利を侵害していることにはならず、法的な問題にはなりません。私は、そうするのがよいと考えます。

もちろん、禁反言で処理されるならそれに越したことはありませんが、乙さんは、証拠保全のために保存を依頼したのであって、恒久的に当該発言を残しておいてくれと依頼したのではないはずです。(仮定の話ですが)乙さんが甲さんを訴え、その証拠が裁判所によって採用された場合、その時点までは禁反言で処理されるでしょうが、その後に発言が残った場合に、その残っている発言は更なる名誉毀損を構成します。そう考えると、初めから削除しておくのが無難であると考えます。


3)及び4)について[編集]

削除についていろいろと教えていただき、どうもありがとうございました。

過去の版をすべてコピーし、当該発言のみを取り除いた上で、ノートに列挙する(この記事自体がノートですから、このノート最新版を新たな記事にして、そのノートということです)というのは、どうでしょうか(その際、「前の版との差分」もコピーしておくと、誰がどこまで著作権をもっているのかひと目で分かりますから、より便利でしょう)。もちろん、すべての著作者の承諾を得れば、記事をまるごと消去できるのでしょうが、執筆者の多い記事では、そういう処理は、迅速な対応が必要な状況ではあまり現実的ではないような気がします。しかも、返事をもらえない場合に「黙認があった」という形で処理してしまうと、あとあと厄介なことになることもあるでしょうし。

さしあたり以上です。T. Nakamura 03:44 2003年12月23日 (UTC)T. Nakamura 04:32 2003年12月23日 (UTC)補足

再び非常に参考になるご意見を書き込んで頂いてありがとうございます。>Falcosapiensさん、T.Nakamuraさん

あと、個人的には、Sushiさんが書かれたことは僕も自分で書こうかと思ったことでした。みなさんウィキペディアのあるべき姿について考えている点では共通しますし、お互いの考え方の内に納得できるものを認めるということがあってもよいのではないかな、と僕も思いました。ともすると相互批判だけが先行するようなこともあったようですが。

削除についてですが、全員の了解を得るのは実質的に無理かも知れないと思います。8月のGさんに始まり、KimKimさんのように最近お見えになっていない方や、IPからの投稿などもありますし。

対処については考えて見ますが、このページが削除されることに対する他の方々のご意見を教えていただけたらと思います。Tomos 07:30 2003年12月23日 (UTC)

やや逸脱気味ですが
対抗言論の法理の採否について、東京高裁の裁判例(2ちゃんねるの事件ですね)は先例とはなり得ません。この裁判例は対抗言論の法理そのものを一般に否定したものではなく、匿名の者が実名をあげて他者を批判したという点をとらえて、両者対等の立場にないとするものです。今回はハンドルネーム対ハンドルネームの論争であり、いわば双方匿名の場合ですから、裁判例とは事案を異にします。双方に匿名性が認められることから、通常の事案以上に対抗言論を認めやすい事案かとおもわれます。
さらに、前にも述べましたが、双方がハンドルネームであることからそもそも社会的評価に対する侵害が認められるのかというレベルで疑問があります。
2)について、訴訟リスクを徹底して考慮するなら、削除した場合にこれにより甲さんに対する責任追及が困難になったという主張の可能性も考慮すべきですから、必要な保存措置を取った上での削除が妥当かと思います。
法的な評価については以上で。個人的意見はいまのところありませんので。。。Falcosapiens 10:57 2003年12月23日 (UTC)