けんご
けんごは、日本のTikTokクリエイター、BookToker、小説紹介クリエイター、会社員、インフルエンサーである[1][2][3][4][5][6]。TikTok上での活動名は「@けんご 小説紹介」である[3][7][8]。2022年1月現在は、TwitterやInstagramを中心に活動している[4][5][9]。
経歴
[編集]クリエイター活動開始前
[編集]小学校時代から大学時代まで野球一筋を貫いていた[10]。両親が読書家だったため、福岡県にある実家にも小説はあったが、自身は読書をするタイプではなかったという[11]。2人の兄がおり、1人は10歳上で、もう一人は8歳上である[12]。8歳上の兄は実業団の選手として野球を続けていたため、大学入学前までは兄と同じように実業団の選手になることを漠然と夢見ていた[12][13]。しかし、野球のスポーツ推薦で大学入学を果たした後は強豪校のキャプテンを務めていた人々に囲まれ、自身の限界を感じた[12][13]。大学の野球部の自由時間が高校の時に比べて多かったことから、コスパを重視して趣味として読書を選んだ[11][14]。ドラマの原作になったことがあるという理由で東野圭吾の小説『白夜行』を読んだことを機に大学1年生の時から読書に没頭し、以後5年間の間に800冊の本を読んだという[1][10][11]。
TikTokでの活動開始
[編集]背景
[編集]2020年11月に野球部を引退する少し前に野球以外のことに挑戦するのを検討し始め、同年11月末からTikTok上で小説紹介を始めた[1][3][11][14]。本人曰く、読書に興味がない人によりアプローチしていくことを考えた際に、YouTubeではなく中学生や高校生の利用者が多いTikTokを中心に活動することを決めたという[2][15]。また、SNSを中心に活動することを決めた背景には、大学4年生の時に営業職に絞って就職活動に励んだものの、内定者研修会の時に自身の限界を感じて4年生の7月に内定を辞退し、その後、現在も務めている小さな会社のインターン生としてSNSの運営に携わった経歴があったことも関係しているという[6][9][13]。
紹介動画開始当初
[編集]初期は表紙にイラストがついた小説を中心に紹介していた[2]。TikTokに投稿し始めてから4本目の動画でこがらし輪音の『冬に咲く花のように生きたあなた』を紹介した後に重版が決定したことからTikTokの影響力を感じ始めた[16]。その後、ジャック・ケッチャムや小林泰三などの小説を紹介してからも反響があったことからは素直に紹介したい作品を紹介し始めた[2]。2020年12月28日の動画で紹介した櫻いいよの小説『交換ウソ日記』は、動画公開後1ヶ月で約1.5万部の増版が決まり、その後も2021年3月までに合計2.5万部の重版が行われた[5][17]。
『残像に口紅を』の増版・重版
[編集]2021年7月27日、TikTok上でけんごが1989年に発表された筒井康隆の小説『残像に口紅を』を30秒ほどの間で紹介した動画をハッシュタグ「#本の紹介」と共に投稿すると、同月中に『残像に口紅を』がAmazonの「日本文学」部門で1位を獲得した[7][8][18][19]。なお、『残像に口紅を』を紹介したけんごの動画は同年10月3日時点で661万回のいいねが押されている[18]。『残像に口紅を』は同月12日に3万5000部の重版、20日には2万部の増版がかけられ、1ヶ月で計8万5000部、3カ月で計10万5000部、約4ヶ月間で計6回の重版と計11万5千部の増版がかけられた[10][18][20][21][22]。「7月1日~27日の27日間」に比べて、けんごの動画投稿後にあたる「7月28日~31日までの4日間」における主要な書店チェーン店での『残像に口紅を』の売上部数は約17倍になっていた[7]。このため、NEWSポストセブンでは、けんごは「小説のTikTok売れ」という動きを生み出した人物だとしている[2]。ライターの西崎圭一はこの出来事に関して、けんごの名前に触れながら、本のTikTok売れについて分析している[23]。
2021年10月末からアプリ「ほんらぶ」でテーマに沿った小説をけんごがお薦めする連載が始まっている[11]。2021年12月には「けんご大賞」と称した文学賞を始めている[24][25]。2022年3月半ばに小説を刊行する予定である[26]。
書評家・豊崎由美の発言を巡る騒動
[編集]2021年12月9日、書評家の豊崎由美がTwitter上でTikTokで本を紹介するクリエイターを批判する発言を行った[27]。これに対して、けんごは読書紹介で他の人に自分の好きな本を紹介し、読書の楽しみや作品の素晴らしさを知ってもらうために活動していると主張した[27]。また、豊崎由美の発言を受けて、けんごはこれまでTikTokを仕事とせず、PR動画を一本も上げずに純粋な楽しさで活動してきたことを話しつつ、TikTokでの活動を今後も楽しめそうにないとしてTikTokの活動を休止することを宣言した[27]。また、この騒動に関連して、けんごは2021年の夏頃から活動に対して批判的なダイレクトメッセージが寄せられていたことを明かしている[24]。
ライターの飯田一史は、けんごが中学生・高校生の女子に与えた影響について触れつつ、けんごのTikTok活動休止は出版業界に大損害を与えるほどのものだとした[27]。また、かつて一部の文芸評論家が書評家を見下していたように、書評家がTikTokerを見下す発言をしたことに対して苦言を呈している[27]。
2021年12月のインタビューで、TikTokを休止したことに関してけんごは自身が反論などをすることによって、自身の投稿を見ている中学生や高校生が悪影響を受けることや、フォロワーなどが巻き込まれることを懸念した結果だと話している[24]。また、同時にインスタグラム中心に活動スタイルに切り替えることを発表している[24]。また、2022年1月のインタビューでも、TikTokでの投稿を2021年1月現在ではするつもりはなく、インスタグラムのショートムービーやテキストで発信する意向を示している[4][5]。
小説紹介に対する姿勢・考え
[編集]動画制作
[編集]学生時代に動画の編集自体は学んでいたため、編集と撮影は割とすぐに終わるものの、動画内で話す内容は事前に「脚本」として一言一句書き出してから動画を制作しているため、事前準備に時間がかけていると話している[11][12][26]。1つの撮影あたり5分ほどカメラを回し、一区切りずつ文章を話し、不要な部分をあとで削ぎ落とすという作り方を採用している[26]。TikTokの動画は最初の3秒が9割だと話し、冒頭の1秒から3秒の使い方の工夫も行っていると話している[4][9][17][28]。また、動画では対面の5分の1ほどしか感情が伝わらないと考えているため、動画では5倍増しほどのオーバーリアクションの姿勢を貫いているという[4]。
小説紹介
[編集]自分が面白いと思い、満足した作品だけを紹介することをポリシーとしているため、献本されたとしてもPR動画の依頼を受けることはしないと語っている[28][29]。また、自身が面白いと思う小説を広めることを小説好きとして掲げているため、漫画の紹介動画を作ることはしていないと話している[26]。これらの行動の背景には「素直に純粋な目で作品を読んでもらいたい」という信念がある[29]。
若者の読書離れ
[編集]「若者の読書離れ」に関しては疑問視しており、実際にはただ単に多数のエンターテイメントがある中で若者が小説に出会うきっかけが少なくなっていることによって行ったものだと主張している[9][15][28]。
けんご大賞
[編集]日本出版販売株式会社および、けんご大賞実行委員会が発表した賞。 2021年8月・9月頃に「けんご大賞」の構想をTwitter上でけんごが呟いたことを機に始まった[24][25][30]。その年に出版された単行本を中心に大賞を決めていき、特別賞のみ文庫本から選定する方式となっている[24][25][30]。受賞作品は、けんごが全て選定している[24][25][30]。
回 | 賞 | 受賞作品 | 作者 | 出版社 | 出典 |
---|---|---|---|---|---|
第1回
(2021年) |
ベストオブけんご大賞 | 死にたがりの君に贈る物語 | 綾崎隼 | ポプラ社 | [24][25][30] |
けんご大賞 | N | 道尾秀介 | 集英社 | ||
オーラの発表会 | 綿矢りさ | 集英社 | |||
君の顔では泣けない | 君嶋彼方 | KADOKAWA | |||
月曜日の抹茶カフェ | 青山美智子 | 宝島社 | |||
白鳥とコウモリ | 東野圭吾 | 幻冬舎 | |||
ばにらさま | 山本文緒 | 文藝春秋 | |||
星を掬う | 町田そのこ | 中央公論新社 | |||
夜行秘密 | カツセマサヒコ | 双葉社 | |||
檸檬先生 | 珠川こおり | 講談社 | |||
特別賞 | 白い薔薇の淵まで | 中山可穂 | 河出書房新社 |
出演
[編集]ラジオ
[編集]- 「JUMP UP MELODIES TOP 20」(2021年9月24日)[31]
- 「サステナ*デイズ」(2021年11月18日)[32]
- 「TALK ABOUT」(2021年9月4日、2021年9月11日)[33][34]
書籍
[編集]- 「TikTok ショート動画革命」(著: 日経エンタテインメント!、2021年12月13日、日経BP、ISBN 978-4-296-11143-5)[35]
イベント
[編集]- 小説『さよならの空はあの青い花の輝くとよく似ていた』オンライントークイベント(2021年9月24日、対談相手: みあ)[36]
- 小説『死にたがりの君に贈る物語』スペシャルトークショー(2021年10月16日、対談相手: 綾崎隼)[37]
- 小説『赤と青とエスキース』発売記念スペシャル対談(2021年11月19日、対談相手: 青山美智子)[1]
脚注
[編集]- ^ a b c d “青山美智子さん×小説紹介クリエイターけんごさんスペシャル対談YouTubeLive開催決定【11/19(金)19時】”. PHP研究所. 2022年1月29日閲覧。
- ^ a b c d e “TikTokでバズって書籍が重版 小説紹介動画クリエイターの流儀”. NEWSポストセブン. 2022年1月29日閲覧。
- ^ a b c “30秒で小説の魅力を発信。フォロワー27万人、TikTokからトレンドを起こす「けんご@小説紹介」インタビュー”. ダ・ヴィンチニュース. 2022年1月29日閲覧。
- ^ a b c d e “読書経験ゼロから“小説紹介”の寵児へ けんごが語る、動画で本を読まない人を巻き込む極意”. Real Sound ブック. 2022年1月29日閲覧。
- ^ a b c d “「小説紹介クリエイター」のけんごさんに見るTikTokが中高生に刺さり本が売れるワケ”. cnet Japan. 2022年1月29日閲覧。
- ^ a b “けんご@小説紹介さん インタビュー連載「私の本」vol.16 第3回”. 小説丸. 2022年1月29日閲覧。
- ^ a b c “「TikTok売れ」で30年前の実験的SF小説が3万5000部の緊急重版……メガヒットに出版社も熱視線”. BUSINESS INSIDER. 2022年1月29日閲覧。
- ^ a b “筒井康隆『残像に口紅を』30年越しのヒットに見るTikTokの可能性 若年層へのアプローチに出版社が熱視線”. Real Sound ブック. 2022年1月29日閲覧。
- ^ a b c d “TikTokで書籍を紹介 爆発的ヒット。話題のTikTokerけんごさんが「〈若者の活字離れ〉は間違っている」と言う理由”. 婦人公論.jp. 2022年1月29日閲覧。
- ^ a b c “文学系インフルエンサー4人が伝授!本を読むコツと今おすすめの一冊”. radiko news. 2022年1月29日閲覧。
- ^ a b c d e f “TikTokで話題!小説紹介クリエイター・けんごインタビュー「読んだことのない人の目線に立って」”. ほんのひきだし. 2022年1月29日閲覧。
- ^ a b c d “けんご@小説紹介さん インタビュー連載「私の本」vol.16 第2回”. 小説丸. 2022年1月29日閲覧。
- ^ a b c “「コスパよく暇を潰したくて、大学生で初めてSNSを…」 “就活で大失敗”した元野球少年がTikTok690万再生のクリエイターになったワケ”. 文春オンライン. 2022年1月29日閲覧。
- ^ a b “筒井康隆さん止まらぬ増刷 TikTokで紹介、けんごさん23歳”. 朝日新聞デジタル. 2022年1月29日閲覧。
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- ^ “TikTok 小説紹介クリエイター けんごさんを紹介!”. AuDee. 2022年1月29日閲覧。
- ^ a b “発売から3年後の小説が2.5万部増刷! 奇跡のメガヒットを支えたのは大学4年生のTikTokクリエイターだった! 櫻いいよ先生×スターツ出版さん×けんごさんインタビュー”. TikTok Japan【公式】ティックトック note. 2022年1月29日閲覧。
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- ^ “日販、TikTok書籍フェアに本腰 30年前の小説がバズって重版「影響力は絶大」”. ITmedia NEWS. 2022年1月29日閲覧。
- ^ “日本上陸から4年、TikTokに起きた変化──ユーザーの平均年齢が34歳に上がった背景を“中の人”に聞く”. DIAMOND SIGNAL. 2022年1月29日閲覧。
- ^ “TikTok映えがもたらす「TikTok売れ」の威力-書籍やチーズ、ブランドバッグまで”. cnet JAPAN. 2022年1月29日閲覧。
- ^ “動画クリエーター・けんごさん 小説紹介30秒、中高生が注目 古い作品も続々重版”. 毎日新聞. 2022年1月29日閲覧。
- ^ “お菓子、書籍、賃貸物件まで「TikTok売れ」がいよいよスゴいことになっていた…!”. 現代ビジネス. 2022年1月29日閲覧。
- ^ a b c d e f g h “小説紹介クリエイターのけんごさんが「けんご大賞」を発表 今後はインスタグラムで活動”. 好書好日. 2022年1月29日閲覧。
- ^ a b c d e “TikTokクリエイター・けんご「けんご大賞」発表 ベストオブけんご大賞は『死にたがりの君に贈る物語』”. Real Sound ブック. 2022年1月29日閲覧。
- ^ a b c d “TikTokでブレイク!『死にたがりの君に贈る物語』綾崎隼さん×TikTokerけんごさん対談”. 好書好日. 2022年1月29日閲覧。
- ^ a b c d e “書評家が本紹介TikTokerけんごをくさし、けんごが活動休止を決めた件は出版業界にとって大損害”. Yahoo!ニュース. 2022年1月29日閲覧。
- ^ a b c “「けんご重版」で注目の小説紹介クリエイターが語る。「若者の読書離れは偏見」!?”. 幻冬舎plus. 2022年1月29日閲覧。
- ^ a b “「若い子には小説が本屋で売っていると分かっていない人もいるけど…」 動画クリエイターけんごさんが、小説紹介を“ビジネス”にしない理由”. 文春オンライン. 2022年1月29日閲覧。
- ^ a b c d “TikTokクリエイター・けんごが選ぶ 第1回けんご大賞 決定!ベストオブけんご大賞は『死にたがりの君に贈る物語』”. 日本出版販売株式会社. 2022年1月29日閲覧。
- ^ “9/24 放送 JUMP UP MELODIES”. AuDee. 2022年1月29日閲覧。
- ^ “サステナ*デイズ2021年11月18日 第83回放送音声”. AuDee. 2022年1月29日閲覧。
- ^ “読書の秋。小説を初めて読む、苦手…むしろ嫌い!な人にオススメな三冊をTikToker・けんごが紹介!”. TBS Radio. 2022年1月29日閲覧。
- ^ “TikToker・けんごがオススメ!「悩みがある学生に読んで欲しい3冊」”. TBS Radio. 2022年1月29日閲覧。
- ^ “TikTok ショート動画革命”. 日経BP. 2022年1月29日閲覧。
- ^ “小説『さよならの空はあの青い花の輝くとよく似ていた』オンライントークイベントが決定!”. 三月のパンタシア Official Website. 2022年1月29日閲覧。
- ^ “”綾崎隼×けんご・小説紹介”『死にたがりの君に贈る物語』スペシャルトークショー開催!”. ポプラ社. 2022年1月29日閲覧。