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だいち4号

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
先進レーダ衛星「だいち4号」
ALOS-4
所属 宇宙航空研究開発機構 (JAXA)
主製造業者 三菱電機[1]
公式ページ 先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)
国際標識番号 2024-123A
カタログ番号 60182
状態 運用準備中
目的 地球観測
観測対象 地球
設計寿命 7年[1]
打上げ機 H3ロケット 3号機[1]
打上げ日時 2024年7月1日 12:06(JST)[1]
先代 だいち2号
物理的特長
最大寸法 10.0 m x 20.0 m x 6.4 m
質量 2,990kg 以下[1]
発生電力 7,200W以上[2]
軌道要素
周回対象 地球
軌道 太陽同期準回帰軌道[1]
高度 (h) 628km[1]
軌道傾斜角 (i) 97.9°[1]
回帰日数 14日[1]
降交点通過
地方時
12:00±15分[1]
観測機器
PALSAR-3 フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ-3
Phased Array L-band Synthetic Aperture Radar-3[3]
SPAISE3 衛星搭載船舶自動識別システム実験3
Space-based Automatic Identification System Experiment3[3]
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だいち4号(だいち4ごう、ALOS-4)は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発・運用する地球観測衛星。計画時の名称は先進レーダ衛星

だいち2号の後継機として、防災・災害対策、国土保全・管理、海洋監視、食料資源・エネルギーの確保、地球規模の環境問題の解決等への貢献を目的としている。だいち2号と同じ高度628kmの太陽同期準回帰軌道を14日で回帰し、フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダーPALSAR-3により地表を観測するレーダ衛星である[4]2016年(平成28年)度から開発が開始され、H3ロケット 3号機により、日本時間の2024年7月1日 12:06に打ち上げ、軌道投入に成功した[5][6]。開発費は316億円[4]

概要

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だいち」シリーズは高分解能と広域観測幅と連続撮像可能時間の両立が特徴であり、このうちレーダ衛星はLバンド合成開口レーダのPALSARシリーズを搭載することで、CバンドやXバンドなどの高周波数帯域を使用する他のレーダ衛星と比べて効果的に植生を透過して地盤や地殻変動を観測することができる[4][7][8]

だいち4号の打ち上げ後もだいち2号は運用されており, これらの2つの衛星は同時に運用されるコンステレーションとなる。

搭載機器

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PALSAR-3(フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ-3)

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新技術のデジタルビームフォーミングSARが採用された新型合成開口レーダのPALSAR-3 (Phased Array type L-band Synthetic Aperture Radar-3) を搭載することでだいち2号からさらに高性能化する。だいち2号のPALSAR-2は分解能1m×3mのスポットライトモードでの観測範囲は25km四方であったが、だいち4号では35km四方の観測が可能となる。まただいち2号では分解能3mの高分解能モードの観測幅が50kmであったが、だいち4号では同分解能で200kmの観測幅が可能となる。さらにだいち2号では分解能100mの広域観測モードの観測幅が350kmであったが、だいち4号では分解能25mで700kmの観測幅が可能となる。前例のない高分解能と広域観測幅の両立が実現することで、高分解モードによる日本全域観測がだいち2号では年4回しかできなかったが、だいち4号では年20回(2週に1回)できるようになる[4][7][8]

観測モード

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  • スポットライト(Spotlight)
    • 分解能:3m(Rg:電波照射方向)×1m(Az:衛星進行方向)[9]
    • 観測幅:35km(Rg)×35km(Az)
  • 高分解能(Stripmap)
    • 分解能:3m、6m、10m
    • 観測幅:200kmまたは100km
  • 広域観測(ScanSAR)
    • 分解能:25m(1look)
    • 観測幅:700km(4scan)[9]

観測可能範囲は、衛星進行方向に直交する方向に左右各1160km、入射角にして8°から70°、通常の高分解能モードでの観測では右観測・観測幅200km・入射角にして30°から44°である[10][3]

SPAISE3(衛星搭載船舶自動識別システム実験-3)

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だいち2号に引き続いて船舶自動識別信号受信機(AIS)が搭載され、AIS陸上局の受信範囲が沿岸から最大55km程度なのに対し、衛星搭載型では直径約5,000kmの範囲から発せられるAIS信号を受信できる[11]。新型AISの「SPAISE3」は5mの大型アンテナに8つのアンテナ素子で構成されデジタルビームフォーミングによる信号合成処理[12]するなど混信域対策がされ、船舶過密海域での船舶の検出性能がだいち2号に比べて向上する[4]。サクセスクライテリアは東シナ海で1日積算300隻以上の船舶AISを受信すること[13]としている。受信したAIS信号は政府機関に提供され、SARによる観測データと重ね合わせることでAIS信号を発していない船舶等を確認する[12]など、海洋状況把握(MDA)に貢献する[14]。衛星搭載・地上システムは日本電気が開発[12]

通信機器

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高速直接伝送系

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地上との直接伝送にはKaバンドを使用し、2台のアンテナで各1.8Gbpsの通信を多重化させ3.6Gbpsの通信を実現する[3][2]。通信信号の高出力化で課題となる信号のひずみへの対策として、デジタル変調器でひずみを保証するDPD機能を搭載しており、降雨による信号減衰でも安定した通信を実現する[3]。通信する地上局は筑波宇宙センター地球観測センター[15]

光衛星間通信システム(LUCAS)

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静止軌道上に配置した光データ中継衛星との光通信で地上との通信を中継することにより、だいち4号が地上局と直接通信する場合に比べて約4倍の通信時間を確保することが可能となる。通信速度は1.8Gbps[3]。地上と直接通信不可能なエリアを観測しながらデータをリアルタイムに地上へ伝送したり、地上からだいち4号に向けてコマンドを送ることも可能となる[16]

脚注

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  1. ^ a b c d e f g h i j ALOS-4の概要|ALOS-4@EORCホームページ”. ALOS利用推進研究プロジェクト. 宇宙航空研究開発機構. 2024年3月7日閲覧。
  2. ^ a b 岡田祐 (2018-2). “広範囲かつ高分解能な地球観測を実現する先進レーダ衛星ALOS-4”. 三菱電機技報 92(2) (三菱電機). https://dl.ndl.go.jp/pid/12988375. 
  3. ^ a b c d e f だいち4号 PRESS KIT”. JAXA. 2024年10月9日閲覧。
  4. ^ a b c d e 鈴木新一 (2017年1月10日). “先進レーダ衛星プロジェクト移行審査の結果について” (PDF). 宇宙航空研究開発機構. 2017年1月28日閲覧。
  5. ^ 宇宙基本計画工程表(令和4年度改訂)p.30ほか” (2022年12月23日). 2023年1月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月26日閲覧。
  6. ^ H3ロケットの打ち上げ成功、「だいち4号」分離…実用化に大きく前進 https://www.yomiuri.co.jp/science/20240701-OYT1T50075/
  7. ^ a b 文部科学省におけるリモートセンシング衛星の取組について” (PDF). 文部科学省研究開発局. 2016年6月22日閲覧。
  8. ^ a b H3ロケット開発状況について” (PDF). 文部科学省研究開発局 (2016年3月8日). 2016年6月22日閲覧。
  9. ^ a b ALOS-4 SOLUTION BOOK”. JAXA. 2024年10月9日閲覧。
  10. ^ PALSAR-3|ALOS-4@EORCホームページ”. ALOSシリーズ@EORCホームページ. 2024年10月9日閲覧。
  11. ^ SPAISE(スパイス;衛星搭載AIS)”. JAXA 第一宇宙技術部門 サテライトナビゲーター. 2024年10月15日閲覧。
  12. ^ a b c 先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)搭載SPAISE3「衛星AIS(船舶自動識別装置)」の初期機能確認に成功しました”. JAXA 第一宇宙技術部門 サテライトナビゲーター. 2024年10月15日閲覧。
  13. ^ 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構の令和6年度の業務運営に関する計画 (年度計画)(令和6年4月1日~令和7年3月31日)令和6年3月26日制定 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構”. JAXA. 2024年10月9日閲覧。
  14. ^ 海洋状況把握(MDA)”. JAXA 第一宇宙技術部門 Earth-graphy. 2024年10月15日閲覧。
  15. ^ だいち4号(ALOS-4)”. JAXA 第一宇宙技術部門 サテライトナビゲーター. 2024年10月9日閲覧。
  16. ^ JAXA | 光衛星間通信システム(LUCAS)と先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)間での世界最速「通信速度1.8Gbps」の光衛星間通信に成功”. JAXA | 宇宙航空研究開発機構. 2024年10月9日閲覧。

関連項目

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外部サイト

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