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アンザック級フリゲート

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アンザック級フリゲート
FFH-150「アンザック (Anzac) 」(AMCAP改修後)
基本情報
建造所 ドイツの旗ブローム・ウント・フォス
オーストラリアの旗テニックス
運用者  オーストラリア海軍
 ニュージーランド海軍
建造期間 オーストラリア1993年 - 2006年
ニュージーランド1994年 - 1999年
就役期間 オーストラリア1996年 - 現在
ニュージーランド1997年 - 現在
同型艦 オーストラリアアンザック級
ニュージーランドテ・カハ級
建造数 10隻(オーストラリア8隻:ニュージーランド2隻)
前級 オーストラリアアデレード級
ニュージーランドリアンダー級
次級 オーストラリアハンター級
要目
基準排水量 3,300 t
満載排水量 3,600 t
全長 117.50 m
最大幅 14.80 m
吃水 5.99 m
機関方式 CODOG方式
主機
推進器 可変ピッチ・プロペラ×2軸
出力 30,172馬力 (ガスタービン)
最大速力 27ノット
航続距離 6,000海里 (18kt巡航時)
乗員 士官22名+下士官41名+兵100名
兵装 #兵装・電装要目を参照
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アンザック級フリゲート(アンザックきゅうフリゲート、英語: Anzac-class frigate)は、オーストラリア海軍ニュージーランド海軍が使用する汎用フリゲートドイツMEKO 200型フリゲートの設計を採用しており、オーストラリア海軍向けに8隻、ニュージーランド海軍向けに2隻が建造された[1]。建造単価は4億2000万ドル(ニュージーランド艦)[2]

来歴

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オーストラリア海軍では、1960年代から1970年代初頭にかけて、イギリス海軍ロスシー級およびリアンダー級の準同型艦を国内で建造し、リバー級護衛駆逐艦として運用していた。これらは艦隊のワークホースとして活躍していたものの、老朽化に伴い、1980年代には更新が必要となった[3]。当時、バトル級デアリング級駆逐艦の更新用としてアデレード級アメリカ海軍オリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲートの準同型艦)の建造計画が進められており、1980年9月には、リバー級の更新用として6隻を追加建造する計画が発表されたものの、実際には1983年に2隻が追加発注されたのみとなった[4]

その後、1986年の報告書 (Dibb Reportおよび1987年の防衛白書で、哨戒フリゲートによる更新が提案された。これは既存のパース級駆逐艦(DDG)やアデレード級(FFG)よりも安価な二線級戦闘艦として位置付けられていたが、必要であれば一線級戦闘艦として改装できるものとされていた[5]。この計画に対して、各国から12個の設計案が提出された[注 1]

一方、ニュージーランド海軍でも、1960年代から1970年代初頭にかけてロスシー級およびリアンダー級の同型艦2隻ずつをイギリスから輸入しており、この時期、オーストラリアと同様に更新が検討されていた。一度は新造を断念し、イギリス海軍を退役したリアンダー級2隻を取得したものの、これは弥縫策に過ぎないことは明らかだった[6]

このことから、両者の計画は合流することになり、1987年3月には覚書が取り交わされた。これを受けて、オーストラリア国防省に統合プロジェクトマネジメントチームが編成され、設計案の検討に着手した。10月には、候補はドイツのMEKO 200型とオランダのM級、イギリスの23型に絞り込まれており、同年末までに23型も脱落した。最終的にコスト面のメリットが評価されてMEKO 200型が選定され、1989年11月10日、AMECON社(後のテニックス社)とのあいだで建造契約が調印された。これによって建造されたのが本級である[6]。ニュージーランドとの契約にはオプション2隻が含まれていたが、1997年11月、この追加発注は行わないことが決定され、ニュージーランド向けの建造は2隻で終了することとなった[2]

設計

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上記の経緯により、本級はMEKO 200型フリゲートの設計を採用しており、特にポルトガル海軍向けのヴァスコ・ダ・ガマ級(MEKO 200 PN型)と近い設計となっている[1]。これらの艦は、中央船楼型やV字型煙突、モジュール化などの基本設計は最初期のMEKO 200型と同様だが、ステルス性や抗堪性の向上を図った改良型とされている[7][8]。安定化装置としてフィンスタビライザーが装備されている。なお2002年秋の検査で、前期建造艦4隻で船体やビルジキールに亀裂が発見され、強化工事が行われた[1]

当初計画では、ヴァスコ・ダ・ガマ級と同様にディーゼルエンジンゼネラル・エレクトリック LM2500ガスタービンエンジン2基ずつによるCODOG方式の主機を搭載して最大速力31.75ノットとする予定だったが、コスト削減のため、右舷側のガスタービンエンジンは削除された。ディーゼルエンジンはMTU 12V1163 TB83(単機出力4,420馬力)が採用されており、両舷機のどちらでも両舷の推進器を駆動でき、18ノットを発揮できる[1]

燃料搭載量は他国のMEKO 200型より多い423トンとされ、航続距離の延伸が図られている。その他の消耗品の搭載量は、通常の糧食が29立方メートル、冷凍食品が26立方メートル、清水54トンとされている[1]

電源としては、MTU 8V396 TE54ディーゼルエンジンを原動機とするシーメンス社の発電機4セットが搭載されており、合計出力は2,480キロワットを確保した。電気方式は60ヘルツの交流、電圧は400ボルトで、配電盤2基が設置されている[1]

装備

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C4ISR

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CEAFAR多機能レーダー

就役当初、戦術情報処理装置としてはサーブ 9LV 453 Mk.3、対空捜索用レーダーとしてはAN/SPS-49(V)8 ANZ、低空警戒・対水上捜索用レーダーとしてはシージラフ150HCが搭載されていた[1]

その後、オーストラリア海軍では、2010年より対艦ミサイル防御(ASMD)能力向上を主眼としたSEA 1448改修を発動し、2017年3月9日に全艦の改修が完了した[9]。サーブ 9LV 453 Mk.3はMk.3Eにバージョンアップされたほか、CEAFAR多機能レーダーおよびCEA-MOUNT火器管制レーダーが搭載された。これに伴い、煙突直前のラティスマストのかわりに大形の塔状構造物が新設され、これらのレーダーのアクティブ・フェーズドアレイ・アンテナが設置された。従来のシージラフ150HCは撤去され、AN/SPS-49はこの塔状構造物の頂部に移設された。またこれとあわせて、ヴァンピールNG赤外線捜索追尾システムも搭載された[1]。そして2018年からは、AMCAP(ANZAC Mid-life Capability Assurance Programme)改修が発動された。これはサーブ 9LVのソフトウェアの更新のほか、AN/SPS-49のLバンド版のCEAFAR(CEAFAR2-L)への換装も含まれており、艦容は再び大きく変化することになった[10]

ソナーとしてはスフェリオン・ソナーをハル・ドームに収容して搭載した。なお本級搭載のモデルでは、TRDTモードを追加して音圧レベルを6 dB増強したほか、魚雷警戒装置とも連接されている[1]。また2005年には、UMS-5424「ペトレル」機雷探知機も搭載された[11]

武器システム

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船楼前端にハープーン艦対艦ミサイルを搭載したFFH-152「ワラムンガ」
後方から見たFFH-153「スチュアート」

煙突直後の上部構造物内に16セルのMk.41 mod.5 VLS 1基が設置されており、更にもう1基を増設する余地も確保されている。ここに収容される艦対空ミサイルは、就役当初はシースパロー個艦防空ミサイルだったが、上記のSEA 1448改修に伴って、射程延伸・性能向上を図ったESSMに更新された。3番艦「ワラムンガ」は、現役軍艦としては世界で初めて同ミサイルを搭載した艦となった[1]。なおこれに先行して、1990年代中盤には、SEA1443改修としてスタンダードミサイルの搭載が計画されたが、最終的に、予算面の問題で中止された[12]

艦砲としては、当初は62口径76mm単装速射砲(76mmコンパット砲)が予定されていたが、オーストラリア陸軍からの要請を受けて54口径127mm単装砲(Mk.45 mod.2 5インチ単装砲)に変更された[13]。3・5番艦は新しいMk.45 mod.4と同じステルス化砲塔を搭載しているが、砲身は従来どおりの54口径長のままとされた。また艦砲と短SAMの管制に用いられる火器管制レーダーとしては、CEROS 200が1基のみ搭載されたが、2基目を搭載する余地も確保された[1]

ニュージーランド艦ではファランクス 20mm CIWS 1基が搭載されたほか、2011年には12.7mmタイフーンRWS 2基も追加装備された[2]。一方、オーストラリア艦ではCIWSは省かれたものの、モジュール設計を生かして後日装備余地は確保されている。またタイフーンRWSも、海外展開時には追加装備される場合がある[1]

対潜兵器としては、艦中部両舷に324mm3連装短魚雷発射管(Mk.32 mod.5)を備えている。ここから発射される魚雷としてはMk.46が用いられていたが、オーストラリア艦では、2008年よりMU90が導入された[11]。また就役当初は艦対艦ミサイルをもたなかったが、オーストラリア艦では、SEA 1348改修としてハープーンの搭載が開始されている[12]

艦載機

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艦尾甲板はヘリコプター甲板、その直前の船楼後端部は格納庫とされている。オーストラリア艦では、インダル社の軽量版RAST(Recovery Assist, Secure and Traverse)着艦拘束・移送装置が装備されており、艦載機としては、S-70B-2シーホークLAMPSヘリコプターまたはエキュレイユ連絡ヘリコプターが搭載される[1]

一方、ニュージーランド艦では、ヘリコプター甲板にハープーン・グリッド着艦拘束装置が設置されているものの、機体移送装置はない。艦載機としてはSH-2G LAMPSヘリコプターが搭載される[2]

兵装・電装要目

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テ・カハ級
 ニュージーランド海軍
アンザック級
 オーストラリア海軍
竣工時 ASMD改修後
兵装 54口径127mm単装砲×1基
M2 12.7mm機関銃×複数
ファランクス 20mm CIWS ×1基 ハープーン SSM 4連装発射筒×2基
Mk.41 mod.5 VLS×1基
(8セル; シースパロー/ESSM短SAM用)
324mm3連装短魚雷発射管 ×2基
艦載機 SH-2G LAMPSヘリコプター×1機 S-70B-2 LAMPSヘリコプター×1機
C4I セルシウステック・サーブ 9LV Mk.3戦術情報処理装置
レーダー SPS-49(V)8 ANZ 対空捜索用
シージラフ150HC
低空警戒/対水上捜索用
CEAFAR 多機能用
CEA-MOUNT 火器管制用
CEROS 200 火器管制用×1
エレクトロニック9600 ARPA 航法用
ソナー スフェリオン-B 船底装備式
電子戦
対抗手段
ラカル-ソーン セプター電波探知装置
テレゴン-10短波方向探知機
Mk.137 6連装デコイ発射機×4基 Mk.137 6連装デコイ発射機×2基
NULKA連装発射機×2基
AN/SLQ-25 対魚雷デコイ装置

同型艦

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一覧表

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運用 艦番号 艦名 起工 進水 就役 退役 母港・退役
オーストラリア FFH-150 アンザック
HMAS Anzac
1993年
11月05日
1994年
9月16日
1996年
5月18日
2024年
5月18日
西方艦隊基地
FFH-151 アランタ
HMAS Arunta
1995年
7月22日
1996年
6月28日
1998年
12月12日
2026年(予定)
FFH-152 ワラムンガ
HMAS Warramunga
1997年
7月26日
1998年
5月23日
2001年
3月28日
FFH-153 スチュアート
HMAS Stuart
1998年
7月25日
1999年
4月17日
2002年
8月17日
東方艦隊基地
FFH-154 パラマッタ
HMAS Parramatta
1999年
6月04日
2000年
6月17日
2003年
10月04日
FFH-155 バララット
HMAS Ballarat
2000年
8月04日
2002年
5月25日
2004年
6月26日
FFH-156 トゥーンバ
HMAS Toowoomba
2002年
7月26日
2003年
5月16日
2005年
10月08日
西方艦隊基地
FFH-157 パース
HMAS Perth
2003年
7月24日
2004年
3月20日
2006年
8月26日
ニュージーランド F77 テ・カハ
HMNZS Te Kaha
1994年
9月19日
1995年
7月22日
1997年
7月26日
デヴォンポート海軍基地英語版
F111 テ・マナ
HMNZS Te Mana
1996年
6月28日
1997年
5月10日
1999年
12月10日

運用史

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2018年から、アンザック級フリゲート艦は、ヘンダーソンにあるオーストラリア・マリン・コンプレックスのドックで、中期能力保証プログラム(AMCAP)の近代化改修が実施された。アルンタは2019年、アンザックとワラマンガは2020年に、それぞれ改修を完了した[14][15]

2020年7月、オーストラリア海軍のアンザック級は「プロジェクト・シー1408フェーズ2」と呼ばれるソナー能力向上改修を概ね完了したと発表された[16]。就役当初から搭載していたスフェリオンBの一部を残しつつ、シグナル処理機能が更新されている[16]

2020年、「バララット」はシーベル・カムコプターS100回転翼式UAVを搭載した[16]。有用性の確認のための艦上試験が目的とみられている[16]

後継艦

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2024年2月、豪政府は、アンザック級の維持運用経費を削減し、ハンター級建造計画の資金を確保するため、本級1番艦を2024年に退役、2番艦を2026年に退役させるとともに、残る同型艦の近代化改修も打ち切ることを発表した[17]。同時に、本級後継艦として汎用フリゲート11隻の取得を発表した。検討候補には日本もがみ型護衛艦ドイツMEKO A-200型フリゲートスペインのAlfa3000、韓国大邱級フリゲートBatchIIもしくはBatchIIIが入っている[17][18]。同年5月18日、1番艦「アンザック」が退役した[19]

同年11月7日、豪メディアは、同国国家安全保障委員会が韓国とスペインの艦艇を候補から除外し、日本とドイツに絞り込んだと報じた[20]。選定は2025年中に行われる。新型艦の最初の3隻は海外で建造され、1番艦は2030年に就役、残りの8隻は同国パースで建造される計画。総額は111億豪ドル(約1兆1300億円)を見込む[21]

脚注

[編集]

注釈

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  1. ^ このとき提出された案は下記の通りであった[6]

出典

[編集]
  1. ^ a b c d e f g h i j k l m Wertheim 2013, pp. 23–24.
  2. ^ a b c d Wertheim 2013, pp. 485–486.
  3. ^ 岡部 2000.
  4. ^ Gardiner 1996, pp. 17–19.
  5. ^ australiandefence.com.au 2008.
  6. ^ a b c Greener 2009, pp. 23–52.
  7. ^ 藤木 2002.
  8. ^ 吉原 2002.
  9. ^ Kerr 2017.
  10. ^ Xavier Vavasseur (27 Jun 2020). “Third ANZAC-Class Frigate Gets Her New Mast As Part Of AMCAP Upgrade”. NavalNews. https://www.navalnews.com/naval-news/2020/06/third-anzac-class-frigate-gets-her-new-mast-as-part-of-amcap-upgrade/ 
  11. ^ a b Saunders 2009, pp. 28–29.
  12. ^ a b Scott 2014.
  13. ^ Gardiner 1996, p. 19.
  14. ^ Vavasseur, Xavier (2020年6月27日). “Third ANZAC-class Frigate gets her new mast as part of AMCAP upgrade” (英語). Naval News. 2024年6月18日閲覧。
  15. ^ HMAS Warramunga completes upgrade - Australian Defence Magazine” (英語). www.australiandefence.com.au. 2024年6月18日閲覧。
  16. ^ a b c d 世界の艦船 2020年10月号(通巻第933集)』海人社、2020年9月15日、220頁。 
  17. ^ a b Felton, Ben (2024-02-20), “Australia to Double Fleet Size with Small Warships” (英語), Naval News, https://www.navalnews.com/naval-news/2024/02/australia-to-double-fleet-size-with-small-warships/ 2024年6月18日閲覧。 
  18. ^ Trevithick, Joseph (2024-02-20), “Australia To Bet Big On Heavily Armed, Optionally Crewed Warships” (英語), The War Zone, https://www.twz.com/sea/australia-to-bet-big-on-heavily-armed-optionally-crewed-warships 2024年6月21日閲覧。 
  19. ^ Thomas, Richard (2024年5月20日). “HMAS Anzac retired as RAN fleet enters long-term restructure process” (英語). Naval Technology. 2024年6月18日閲覧。
  20. ^ 豪海軍の次期フリゲート選定、日独に絞られる もがみ型護衛艦が最終候補に残る 韓国とスペインは脱落(高橋浩祐) - エキスパート”. Yahoo!ニュース. 2024年11月14日閲覧。
  21. ^ 共同通信 (2024年11月8日). “豪新型艦、日本と独に絞り込みか もがみ型候補、総額1兆円超 | 共同通信”. 共同通信. 2024年11月14日閲覧。

参考文献

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外部リンク

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