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イソクロトン酸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
イソクロトン酸
Isocrotonic acid
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識別情報
CAS登録番号 503-64-0 チェック
PubChem 643792
ChemSpider 558890 ×
EC番号 207-973-2
ChEBI
特性
化学式 C4H6O2
モル質量 86.09 g mol−1
外観 無色の液体
匂い 特異な刺激臭
密度 1,03 g·cm−3 [1]
融点

15 °C, 288 K, 59 °F [2]

沸点

169 °C, 442 K, 336 °F [2]

への溶解度 可溶
有機溶媒への溶解度 アルコール及びエーテルに易溶[2]
関連する物質
関連するカルボン酸 クロトン酸 (trans 異性体)
アンゲリカ酸 (2-メチルイソクロトン酸)
セネシオ酸 (3-メチルクロトン酸)
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

イソクロトン酸とは、(Z)-2-ブテン酸のことである。不飽和カルボン酸の1種であり、クロトン酸シス型幾何異性体に当たる。

性質

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イソクロトン酸は、常温常圧において、ブラウン・シュガーのような香りを持つ油状の液体である。171.9 ℃で沸騰すると共に、構造が変化してクロトン酸へと変換する。封管中でイソクロトン酸を170〜180 ℃に加熱すると、クロトン酸への異性化が完了する。また、分子内に存在するC=C二重結合とC=O二重結合は共役二重結合であり、重合反応を起こしやすいため、市販品には重合禁止剤としてメキノールが添加される。

危険性

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人体に有害であり、刺激性を持ち、咳などを引き起こす他、皮膚からも吸収され、皮膚に薬傷を生ずる場合もある[2]

法規制

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上記のように、イソクロトン酸はやや不安定な化合物である上に、日本の消防法では危険物第4類 第三石油類(非水溶性)に区分される[2]

用途

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イソクロトン酸は、メタクリル樹脂や医薬品原料の中間体となる。

誘導体について

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ヴィルヘルム・ルドルフ・フィッティッヒ英語版ヒューゴ・エルトマンは、イソクロトン酸の二重結合の位置に関する構造異性体である3-ブテン酸のγ-フェニル置換体((Z)-スチリル酢酸)が脱水すると1-ナフトールを形成することを示した。これはナフタレンの性質を理解する上で重要である[3]

(Z)-(C6H5)CH=CHCH2COOH   →   1-naphthol   +   H2O


出典

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  1. ^ The Merck Index. An Encyclopaedia of Chemicals, Drugs and Biologicals. 14. Auflage, 2006, S. 894, ISBN 978-0-911910-00-1.
  2. ^ a b c d e イソクロトン酸” (PDF). 神戸海難防止研究会. 2019年2月24日閲覧。
  3. ^ Fittig, Rudolph; Erdmann, Hugo (1883). “Synthese des α-Naphtols [Synthesis of α-Naphtol]” (German). Ber. Dtsch. Chem. Ges. 16 (1): 43-44. doi:10.1002/cber.18830160115.