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イフ・アイ・ウォズ・ユア・ガールフレンド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
「イフ・アイ・ウォズ・ユア・ガールフレンド」
プリンスシングル
初出アルバム『サイン・オブ・ザ・タイムズ
B面 ショッカデリカ (Shockadelica)
リリース
規格 7インチ・レコード12インチ・レコードカセットシングル
録音 サンセット・サウンド・レコーダーズ
1986年11月・12月
ジャンル R&Bファンクソウルポップミネアポリス・サウンド
時間
レーベル ペイズリー・パーク・レコード英語版ワーナー・ブラザース・レコード
作詞・作曲 プリンス
プロデュース プリンス
チャート最高順位
プリンス シングル 年表
サイン・オブ・ザ・タイムズ」(Sign o' the Times)
(1987年)
イフ・アイ・ウォズ・ユア・ガールフレンド」(If I Was Your Girlfriend)
(1987年)
ユー・ガット・ザ・ルック」(U Got the Look)
(1987年)
ミュージックビデオ
If I Was Your Girlfriend - Prince - YouTube
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イフ・アイ・ウォズ・ユア・ガールフレンド」(If I Was Your Girlfriend)はプリンスのシングル。2枚組の9thアルバム『サイン・オブ・ザ・タイムズ』(Sign o' the Times)からの2枚目のシングルとして1987年5月6日に発売された[5]

この楽曲はイギリス全英シングルチャートで20位、イタリアでも7位になるなどヨーロッパでは比較的高いチャート順位であったが[3][4]、本国のアメリカではビルボードR&Bチャートで12位を記録したものの、全米シングルチャートの方では67位止まりとなり、同アルバムからの他のシングル「サイン・オブ・ザ・タイムズ」(Sign o' the Times)や「ユー・ガット・ザ・ルック」(U Got the Look)のような大ヒットにはならなかった[1][注釈 1]

しかしながら、作品の質的には高く評価する声もあり[7]1994年にはTLCにカバーされるなど楽曲的に好評で[8][9]レディー・ガガジェイ・Zなど、多くのラッパーの楽曲でサンプリングに使われている人気の高い作品である[10]

制作・録音

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作詞作曲とプロデュースは、従来の楽曲同様にプリンス自身が手掛けている。当時プリンスが、恋人だった歌手のスザンナ・メルヴォワン英語版ザ・ファミリー英語版のメンバー)と彼女の一卵性双子の姉妹ウェンディ・メルヴォイン英語版ザ・レヴォリューションのギタリスト)との間の親密な絆に対して嫉妬を感じたことから出来上がった歌詞だとされ[5]、男性目線で「もしも僕が君のガールフレンドだったら」と想像しながら、僕が君の男(恋人)だった時には忘れていたことを話してくれるのか、ガールフレンド(親友)だったら、もっと自分に心を開いてくれるのかを問う内容になっている[5][11]

1983年から交際し婚約していたスザンナとプリンスは、1986年の映画『プリンス/アンダー・ザ・チェリー・ムーン』の公開後に別れたが、彼女はプリンスにとっての「最愛の女性」だったと言われており[12][13][注釈 2]、プリンスが突然とザ・レヴォリューションを解散させた理由も、失恋したスザンナと瓜二つのウェンディがバンドのメンバーにいることが耐えられなかったからではないかと推察されている[13]

録音は、カリフォルニア州ハリウッドサンセット・サウンド・レコーダーズで、プリンス、コーク・ジョンソン (Coke Johnson)、スーザン・ロジャース英語版によって1986年に行われ[11][5]、マスタリングは、バーニー・グランドマンが担当した[11][5]

曲の冒頭には、フェリックス・メンデルスゾーンの『結婚行進曲』の一部が使用され、スパイダー・D英語版1980年のシングル「ビッグ・アップル・ラッピン」(Big Apple Rappin’ (National Rappin’ Anthem))と、ドイツのバンド・タンジェリン・ドリーム1985年の楽曲「イエローストーン・パーク」(Yellowstone Park (Rocky Mountains))がサンプリングされている[5][14][注釈 3]

「イフ・アイ・ウォズ・ユア・ガールフレンド」は、元々はプリンスが1986年に「カミーユ」(Camille)という架空の女性アーティストになりきりながら、自身のボーカルを両性具有的な声に人為的にピッチアップして制作された未発表の覆面アルバム『カミーユ』(Camille)用に作成された女性視点の楽曲であった[5][15][注釈 4]

この人為的なピッチアップは、まずリズム・トラックや演奏を女性歌手のキーに合わせてレコーディングした後、その女性キーでプリンスが歌う際に、テープの回転数を大幅に落として(必然的にキーも下がる)録音し、再生時に元の回転数に戻して早めて高音にするやり方である[15]。当時は録音の際にテープが使用されていた[15]

『カミーユ』リリースのプロジェクトが破棄された時に、女性視点で歌われた楽曲は修正されて、『クリスタル・ボール』(Crystal Ball)という別のアルバムのために収録することにしたが、そのプロジェクトも結局はレコード会社との意見の相違で取り消しとなり、3枚組の大作『クリスタル・ボール』に入れた「イフ・アイ・ウォズ・ユア・ガールフレンド」を含む15曲を1987年の9thアルバム『サイン・オブ・ザ・タイムズ』に収録することになった経緯がある[5][17]

前述したように、この「イフ・アイ・ウォズ・ユア・ガールフレンド」で採用している子供のような甲高い特徴的な声を実現するため、プリンスは、あえて意図したピッチより数オクターブ下で、ゆっくりと歌って、その後にボーカルの速度を上げる操作をし、ピッチが上がるようにしている[5][15]。この操作技術は、『カミーユ』の他の楽曲の「ストレンジ・リレイションシップ」(Strange Relationship)、「ハウスクウェイク」(Housequake)、「フィール・ユー・アップ」(Feel U Up)、「ショッカデリカ」(Shockadelica)、「グッド・ラヴ」(Good Love)、「ロックハード・イン・ア・ファンキー・プレイス」(Rockhard in a Funky Place)などでも応用されている[5][注釈 5]

評価

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ロックンロール雑誌『トラウザー・プレス英語版』は、「イフ・アイ・ウォズ・ユア・ガールフレンド」をアルバム中のハイライトの一つに挙げながら、「驚くほど成熟した方法で関係を再定義している楽曲」(which redefines a relationship in a surprisingly mature way)だと評価している[7]

トラック・リスト

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7インチ・シングル

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US・7インチレコード[19]
#タイトル作詞作曲・編曲時間
1.「イフ・アイ・ウォズ・ユア・ガールフレンド (If I Was Your Girlfriend)」(エディット Edit)  
2.「ショッカデリカ (Shockadelica)」  

12インチ・シングル

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US・12インチレコード[20]
#タイトル作詞作曲・編曲時間
1.「イフ・アイ・ウォズ・ユア・ガールフレンド (If I Was Your Girlfriend)」  
2.「ショッカデリカ (Shockadelica)」(エキステンデッド・ヴァージョン Extended version)  

レコーディング・ミュージシャン

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出典は[11][5]

  • プリンス - リード・ボーカル、インストゥルメンション、レコーディング・エンジニア
  • コーク・ジョンソン (Coke Johnson) – レコーディング・エンジニア
  • スーザン・ロジャース英語版 - レコーディング・エンジニア
  • バーニー・グランドマン - マスタリング・エンジニア

ライヴ・パフォーマンス

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アルバムの発売に合わせて行われたヨーロッパ・ツアーを中心に撮影されたライヴ映画『サイン・オブ・ザ・タイムズ』(Sign o' the Times)に収められているパフォーマンスでは、セクシー・ダンサーのキャット・グローバー英語版もバック・ボーカルに加わり、曲の最後ではキャットとのエロティックな絡みを見せている[21]

チャート記録

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週間

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チャート(1987) 最高位
アメリカ「ホット100・シングルチャート」(Billboard Hot 100) 67[1]
アメリカ「ホットR&B/ヒップホップ・シングルチャート」(Billboard Hot R&B/Hip-Hop Songs) 12[2]
アメリカ「ダンス・シングル・セールス」(Dance Singles Sales) 32[22]
イギリス「全英シングルチャート」(UK Singles Chart) 20[3]
ベルギー「ウルトラトップ50」(Ultratop) 14[23]
イタリア「音楽ディスク・チャート」(Musica e dischi) 7[4]
オランダ「シングル・トップ100」(Dutch Single Top 100) 17[24]
スイス「シュヴァイツァー・ヒットパラーデ」(Swiss Hitparade) 15[25]

オールタイム・ランキング

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出版媒体(国) ランキング名称 発表年度
ブレンダー誌(米)
(Blender)
あなたが生れてからの最も偉大な500曲(1980–2005)
(The 500 Greatest Songs Since You Were Born)
412[26] 2005
アメリカン・ソングライター(米)
(American Songwriter)
プリンス・ソングス・トップ10
(The Top 10 Prince Songs)
10[27] 2022

カバー・アーティスト

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他の楽曲へのサンプリング

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出典は[5][10]

他の楽曲へのインターポレイト(補間)

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出典は[5][30]

  • ブラックストリートBooti Call (T.R. Pop Mix)」「Booti Call (T.R. Doggie Mix)」「Booti Call (Doggie Dub Mix) 」「Booti Call (No Rap Radio Mix) 」(1994年) - シングル「Booti Call」に収録。
  • プリンス「パープル・メドレー」(Purple Medley)(1995年)

脚注

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注釈

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  1. ^ アルバムと同名シングル「サイン・オブ・ザ・タイムズ」(Sign o' the Times)は、全米ホット・チャートで3位となり、シーナ・イーストンをフィーチャリングした「ユー・ガット・ザ・ルック」(U Got the Look)は2位を記録[1]。1987年の年間チャート100でもこの2曲はそれぞれ、60位、38位にランクインしている[6]
  2. ^ プリンスの女性遍歴は、有名人では映画『プリンス/パープル・レイン』の共演者のアポロニア・コテロアポロニア6英語版のメンバー)、映画『プリンス/アンダー・ザ・チェリー・ムーン』の共演者のクリスティン・スコット・トーマス、その他、マドンナキム・ベイシンガーなどが挙げられているが、身近な音楽スタッフなどの証言などからプリンス研究家たちは、プリンスが生涯最も愛した女性はスザンナ・メルヴォワン英語版だったとしている[12]
  3. ^ タンジェリン・ドリームの「イエローストーン・パーク」(Yellowstone Park (Rocky Mountains))は、アルバム『Le Parc』(Le Parc)中の収録曲である。
  4. ^ カミーユ (Camille)という女性名義の幻のアルバム『カミーユ』(Camille)のオリジナル音源アルバムが、サード・マン・レコード英語版からリリースされることが2022年3月時点で発表されてはいるが[16]、2023年2月時点でも未発売状態。
  5. ^ 「ロックハード・イン・ア・ファンキー・プレイス」(Rockhard in a Funky Place)は、1987年に制作され発売中止したアルバム『ブラック・アルバム』(1994年発売)に収録された[18]

出典

[編集]
  1. ^ a b c d PRINCE「Billboard Hot 100」(Billboard)
  2. ^ a b PRINCE「Hot R&B/Hip-Hop Songs」(Billboard)
  3. ^ a b c Prince「Singles」(UK Official Charts)
  4. ^ a b c Prince-If I was your girlfriend (Paisley Park)(Musica e dischi)
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n Prince-If I Was Your Girlfriend(Genius)
  6. ^ 1987 The Year in Music & Video: Top Pop Singles(Billboard Vol.99、1987年12月26日号)
  7. ^ a b Prince(Trouser Press)
  8. ^ a b c クレイジー 1994
  9. ^ 「R&B 1993-1996 アルバム・ガイド――TLC『CrazySexyCool』」(出田 2001, p. 63)
  10. ^ a b Prince-If I Was Your Girlfriend「Songs That Sample If I Was Your Girlfriend」
  11. ^ a b c d サイン 1989
  12. ^ a b 「第3章 ペイズリー・パーク王朝――プリンスの愛した女性たち」(西寺 2015, pp. 132–136)
  13. ^ a b 「第3章 ペイズリー・パーク王朝――再出発の3つの理由」(西寺 2015, pp. 144–147)
  14. ^ Prince-If I Was Your Girlfriend「If I Was Your Girlfriend Samples」
  15. ^ a b c d 「第3章 ペイズリー・パーク王朝――幻の名盤」(西寺 2015, pp. 136–139)
  16. ^ 故プリンス、カミーユ名義で録音したアルバムが<サードマン・レコード>からリリースへ(ビルボード・ジャパン、2022年3月17日)
  17. ^ 「第3章 ペイズリー・パーク王朝――レコード会社との攻防戦」(西寺 2015, pp. 139–141)
  18. ^ Prince-Rockhard in a Funky Place(Genius)
  19. ^ Prince – If I Was Your Girlfriend(7インチレコード)(discogs)
  20. ^ Prince – If I Was Your Girlfriend(12インチレコード)(discogs)
  21. ^ サインDVD 2014
  22. ^ PRINCE「Dance Singles Sales」(Billboard)
  23. ^ Prince – If I Was Your Girlfriend(Ultratop)
  24. ^ PRINCE - IF I WAS YOUR GIRLFRIEND(Dutch Single Top 100)
  25. ^ Prince – If I Was Your Girlfriend(Swiss Hitparade)
  26. ^ 「The 500 Greatest Songs Since You Were Born」(Blender)
  27. ^ 「The Top 10 Prince Songs」(American Songwriter)
  28. ^ a b c TLC-If I Was Your Girlfriend(Genius)
  29. ^ a b Eels- If I Was Your Girlfriend
  30. ^ Prince-If I Was Your Girlfriend「Songs That Interpolate If I Was Your Girlfriend」

参考資料

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  • サイン・オブ・ザ・タイムズ (Media notes). プリンス. Warner Bros. Records. 10 March 1989. 36P2-2615、36P2-2616。
  • プリンス『サイン・オブ・ザ・タイムズ』(ブックレット)ハピネット・是空、2014年6月3日(原著1987年)。BIBF-8460。  - HDニューマスター版
  • クレイジーセクシークール (ライナーノーツ). TLC. LaFace・Arista. 21 December 1994. BVCA-663。
  • 出田圭『R&B/HIP-HOP DISC GUIDE』スペースシャワーネットワーク、2001年11月10日。ISBN 978-4860200183 
  • 西寺郷太『プリンス論』新潮新書、2015年9月。ISBN 978-4106106347 

関連項目

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外部リンク

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