オルニトスケリダ

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オルニトスケリダ(鳥肢類)
生息年代:
後期三畳紀完新世, 231.4–0 Ma
トリケラトプス Triceratops horridus 組立骨格
雄のイエスズメ Passer domesticus
地質時代
後期三畳紀 - 完新世(現在)
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
階級なし : 鳥肢類 Ornithoscelida
学名
Ornithoscelida Huxley1870[1]
和名
鳥肢類[2]
下位分類群[3]

オルニトスケリダ類[4]またはオルニソスケリダ類[5]Ornithoscelida)は、恐竜類の様々な有名な分類群を内包するクレードの一つ。鳥肢類(ちょうしるい)ともいう[2]鳥盤類ヘレラサウルス類を除く獣脚類をまとめたものであり、従来の竜盤類に獣脚類を含める系統仮説とは対立関係にある[6][2]。鳥肢類の元々の定義はトーマス・ヘンリー・ハクスリーが唱えたものだが、ハリー・シーリーが竜盤類と鳥盤類を定義づけたことを期に考慮されなくなった。そして2017年のバロンらによる分岐分析の中で新しいクレードとして再び提唱された[3]

ハクスリーの構想[編集]

1869年にハクスリーが発表したオリジナルの鳥肢類は、当時発見されたばかりだったコンプソグナトゥスの分類のために設けられたコンプソグナタ (Compsognatha) と恐竜類(当時はイグアノドン科メガロサウルス科スケリドサウルス科のみで構成されていた)をまとめるために提唱されたクレードだった[1]。この分類群はシーリーが竜盤目と鳥盤目を設立したのですぐに使われなくなった[7]

現在の鳥肢類の仮説[編集]

21世紀初頭、初期の鳥盤類ヘテロドントサウルスレソトサウルスの分類が見直され、鳥盤類の起源に関する情報が大幅に増えた。2017年3月、マサチューセッツ工科大学のマシュー・バロン、デイヴィッド・ノーマン、そしてポール・バレットはそれまで骨盤の特徴だけで行われていた分類法に疑問をもち、74種の恐竜の数万の特徴から分岐分析を行い、ネイチャーに論文を起稿した。その論文ではヘレラサウルス類獣脚類に含まれず、獣脚類は竜脚形類よりも鳥盤類に近縁であると指摘された。これまでの分析では、竜脚形類と獣脚類を組み合わせ、竜盤類を構成し、鳥盤類と共に恐竜類を二分すると考えられていた。そこに属する下位分類もこれを反映するよう正式に定義されていた。この標準的な定義を用いつつ新しい分析結果を反映させると、竜盤類であるはずの獣脚類が鳥盤類に内包されることになってしまう。さらに竜脚形類は恐竜ではないことにもなる。これを避けるため、バロンらはこれらのグループすべてを再定義した。鳥盤類と獣脚類が姉妹群であるとするには、それらを組み合わせたクレードのために新しい名前が必要だった。そこで「イエスズメトリケラトプス・ホリドゥスを含む最も包括的なクレード」と定義し、この新クレードを鳥肢類と命名した。これは、このクレードが現存する鳥類とトリケラトプスの最近の共通祖先とその全ての子孫で構成されていることを意味する。最近まで(このクレードが提唱されるまで)はこれが恐竜類の定義だった。ハクスリーの名付けたオルニトスケリダが名称として選ばれた理由は、それが「鳥の足」を意味し、このクレードに属する恐竜たちの後肢の特徴によく合っていたからだと言う。実際にハクスリーが鳥肢類を定義した際も竜脚形類とヘレラサウルス類は含んでいなかったので、ハクスリーが構想したものに近いと言える[3]。 以下のクラドグラムは2017年のバロンらによる分析を参照したもの。

恐竜型類

マラスクス

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シレサウルス類

恐竜類
竜盤類

ヘレラサウルス類

竜脚形類

鳥肢類

鳥盤類

獣脚類

(比較)鳥肢類仮説を用いないクラドグラムの一例
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マラスクス(Marasuchus)

シレサウルス科(Silesauridae)

 恐竜類 

鳥盤類イグアノドントリケラトプスステゴサウルスなど)

 竜盤類 

竜脚形類ブラキオサウルスサルタサウルスなど)

獣脚類メガロサウルスティラノサウルスなど)

出典[編集]

  1. ^ a b Huxley, T.H. (1870). “On the classification of the Dinosauria with observations on the Dinosauria of the Trias”. Quarterly Journal of the Geological Society of London 26: 32–51. 
  2. ^ a b c 冨田幸光・對比地孝亘・三枝春生・池上直樹・平山廉・仲谷英夫「恐竜類の分岐分類におけるクレード名の和訳について」『化石』第108巻、日本古生物学会、2020年、23–35頁、doi:10.14825/kaseki.108.0_23 
  3. ^ a b c Baron, M.G., Norman, D.B., and Barrett, P.M. (2017). A new hypothesis of dinosaur relationships and early dinosaur evolution. Nature, 543: 501–506. doi:10.1038/nature21700
  4. ^ 『[新版] 恐竜の世界 DVD付』真鍋真監修、Gakken、2018年、11頁。ISBN 978-4-05-406663-2 
  5. ^ 『新版 恐竜』真鍋真監修、Gakken、2022年、19頁。ISBN 978-4-05-205184-5 
  6. ^ ダレン・ナイシュポール・バレット 著、小林快次久保田克博千葉謙太郎田中康平 監訳 吉田三知世 訳『恐竜の教科書 最新研究で読み解く進化の謎』創元社、2019年2月20日、45頁。ISBN 978-4-422-43028-7 
  7. ^ Padian, Kevin (2017). “Palaeontology: Dividing the dinosaurs”. Nature 543 (7646): 494–495. doi:10.1038/543494a. 

関連項目[編集]