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コンプソグナトゥス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
コンプソグナトゥス
生息年代: 中生代ジュラ紀後期, 150.8 Ma
コンプソグナトゥス
地質時代
中生代ジュラ紀後期
(約1億5,080万年前)
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 竜盤目 Saurischia
亜目 : 獣脚亜目 Theropoda
下目 : テタヌラ下目 Tetanurae
: コンプソグナトゥス科 Compsognathidae”(疑わしい分類群[1])?
: コンプソグナトゥス属 Compsognathus
学名
Compsognathus
Wagner1859

コンプソグナトゥス (Compsognathus) は、中生代ジュラ紀後期、ヨーロッパに生息した肉食恐竜である[2]竜盤目 - 獣脚亜目 に属する。属名は Comps(かわいい、上品な)+ gnathus(顎)の意味である。化石ドイツフランスで発見された。

形態的な特徴と生態

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現在まで見つかっている骨格は、小型個体と、やや大型の個体の2つの標本が存在する。体長70 - 140センチメートル。フランスの個体は125センチメートルあったとされる[3]。これらはいずれもきわめて幼い個体の標本であった[4]

長年にわたり小型肉食恐竜のなかで保存状態のよい化石が知られた唯一の種であった。そして始祖鳥と比較され、恐竜と鳥類を結ぶ重要な祖先とされてきた。今日ではミクロラプトルなど、より鳥類に近い恐竜が発見されている。前肢は指が2本で特徴的である。この特徴に基づいて同じく指が2本のティラノサウルス科と関連が考えられたこともあったが今日では収斂であることがわかっている。また、本当は2本ではなく化石の保存状態が不十分なせいであるという指摘もある。かつてフランスの個体は前肢の状態が良くわからず、また化石の発見状況から海辺に生息していたと推測されるために、前肢がであったと考えられたこともあった。骨格は極めて軽量な作りであり、また大腿骨より脛骨がかなり長く、走行に適した形態であった[3]。これにより秒速17.8メートルのスピードで走れた可能性がある[5]

成体とされる大型の骨格の腹部、胃の付近からトカゲSchoenesmahl[6]の骨格が発見されており、こうした小型の爬虫類などを捕食していたと考えられている[7]。かつて始祖鳥を襲う姿で描かれることがしばしばあったが今日では始祖鳥の飛行能力の見直しなどから不可能とされる。

他に一緒に見つかった恐竜はいないので、コンプソグナトゥスがすんでいた場所では一番のハンターだった。プテロダクティルスランフォリンクスなどの翼竜も同じ場所にすんでいた[8]

系統

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コンプソグナトゥスは慣習的にコエルロサウルス類であるとされ、他の属と共にコンプソグナトゥス科を形成すると考えられてきた。しかし、これは幼い標本に基づいた誤った分類で、実際は何らかの大型テタヌラの幼体であった可能性が高いとされる[4]

2023年の研究では、コンプソグナトゥスはティラノサウルス上科に近い位置に配置された[9]

2024年、アンドレア・カウによる“コンプソグナトゥス科”の再評価では、メガロサウルス上科である可能性が示唆された[10][11]

『ジュラシック・パーク』におけるコンプソグナトゥス

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マイケル・クライトンの小説『ジュラシック・パーク』および『ロスト・ワールド -ジュラシック・パーク2-』においては「コンピー」と呼ばれ、アパトサウルスなど草食恐竜の出したを食べる、いわゆる掃除屋として描かれた。小説版ではこの恐竜はプロコンプソグナトゥスであったが、その後、実はプロコンプソグナトゥスがキメラであって実在しない恐竜であることが分かった。そこで映画版2作目(1作目には登場しない)の『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』では良く似ているとされるコンプソグナトゥスになったが、設定として現実には存在しないコンプソグナトゥス・トリアシクス Compsognathus triassicusという三畳紀の種ということになっていた。もともとがプロコンプソグナトゥスであるための相違点を配慮しての設定である。劇中ではピラニアのように集団で自分よりも巨大な獲物(映画の場合は人間)に襲いかかる獰猛な肉食恐竜として描かれていた。

脚注

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  1. ^ Cau, Andrea (07 settembre 2021). “Theropoda: Carcharodontosauri d'Italia”. Theropoda. 2023年8月29日閲覧。
  2. ^ デジタル大辞泉プラスの解説”. コトバンク. 2018年3月11日閲覧。
  3. ^ a b リチャードソン 2005, p. 68.
  4. ^ a b Cau, Andrea (07 settembre 2021). “Theropoda: [ex-Carcharodontosauri d'Italia [AGGIORNAMENTO DEL 18 APRILE 2024]]”. Theropoda. 2024年11月21日閲覧。
  5. ^ Estimating dinosaur maximum running speeds using evolutionary robotics (William Irvin Sellers:2007)
  6. ^ Conrad, Jack L (2017-12-18). “A new lizard (Squamata) was the last meal of Compsognathus (Theropoda: Dinosauria) and is a holotype in a holotype”. Zoological Journal of the Linnean Society 183 (3): 584–634. doi:10.1093/zoolinnean/zlx055. ISSN 0024-4082. https://doi.org/10.1093/zoolinnean/zlx055. 
  7. ^ 世界哺乳類図鑑 2005, p. 69.
  8. ^ 『ビジュアル版 生きている!? 恐竜の世界』 2 ヴェロキラプトルと小型肉食恐竜、岩崎書店、2012年。ISBN 9784265020829 
  9. ^ Kotevski, Jake; Duncan, Ruairidh J.; Pentland, Adele H.; Rule, James P.; Vickers-Rich, Patricia; Rich, Thomas H.; Fitzgerald, Erich M. G.; Evans, Alistair R. et al. (2023-11-02). “A megaraptorid (Dinosauria: Theropoda) frontal from the upper Strzelecki Group (Lower Cretaceous) of Victoria, Australia”. Cretaceous Research: 105769. doi:10.1016/j.cretres.2023.105769. ISSN 0195-6671. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0195667123002975. 
  10. ^ A Unified Framework for Predatory Dinosaur Macroevolution”. 2024年11月21日閲覧。
  11. ^ http://theropoda.blogspot.com/2024/04/the-rise-of-tyrannies-fall-of-nursery.html?m=1

参考文献

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  • ジュリエット・クラットン=ブロック、ダン・E.ウィルソン『世界哺乳類図鑑』渡辺健太郎(訳)、新樹社〈ネイチャー・ハンドブック〉、2005年。ISBN 4-7875-8533-9 
  • ヘーゼル・リチャードソン、ディビッド・ノーマン(監修)『恐竜博物図鑑』出田興生(訳)、新樹社〈ネイチャー・ハンドブック〉、2005年。ISBN 4-7875-8534-7 

関連項目

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