コーマス級コルベット
コーマス級コルベット | |
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基本情報 | |
艦種 | コルベット→三等巡洋艦 |
運用者 | イギリス海軍 |
就役期間 | 1879年 - 1931年 |
前級 | バッカンテ級 |
次級 | カリプソ級 |
要目 | |
排水量 | 2,380トン |
全長 | 68.58 m |
幅 | 13.56 m |
吃水 | 5.86 m |
主缶 | スコッチボイラー×6缶 |
主機 | 複式機関 |
推進器 | スクリュープロペラ×1軸 |
速力 | 約13ノット |
乗員 | 265名 |
コーマス級コルベット(英語: Comus-class corvette)は、イギリス海軍のコルベットの艦級[1][2]。その後、1878年に既存のコルベットは一括して3等巡洋艦に類別変更された[3]。
来歴
[編集]アメリカ海軍が高速の「ワンパノアグ」を建造したことを受けて、イギリス海軍も、「インコンスタント」を端緒として、1869年から1876年にかけて3隻のフリゲートを竣工させた[4]。当時、まだ艦種呼称として採用されてはいなかったものの、後顧的には、イギリス巡洋艦の嚆矢として評価されている[5]。
その後、1879年には、これらを小型化するかたちで設計されたアイリス級2隻が相次いで竣工した[5][6]。そしてこれらに続いて、より在来型に近い巡洋艦としてナサニエル・バーナビーによって設計されたのが本級である。1876年6月6日、第三海軍卿は設計を承認し、1876-77年度計画で5隻、1878-79年度計画で1隻、1879-80年度計画で2隻が建造された、更に1881-82年度計画では、発展型のカリプソ級2隻が追加された[2]。
設計
[編集]設計面では、先行するオパール級の発展型とされた。1876年の時点では、肋骨構造の変更と燃料搭載量の増大のみを図る予定だったが、その後、装甲防御の追加が決定された。これは機関部と弾薬庫の上方に相当する部分について、水線下2.5–3.5インチ (6.4–8.9 cm)の位置に1.5インチ (3.8 cm)厚の装甲を付加するものであった。これにより、アイリス級より更に一歩進んで、ヴィクトリア朝の鋼製巡洋艦への先駆者として評価されている[2]。
防護甲板を艦の前後に全通させることも検討されたものの、84トンの重量増になり、兵装の削減が必要になると考えられたことから、断念された。水線装甲はなく、舷側防御は炭庫に頼っているが、炭庫のなかで砲弾が爆発した場合にどうなるかは未検証であった[2]。
本級は、3,000トン未満で金属製船体を備えた最初の巡洋艦となった。船体の水線以下には木板を張った上に銅板で覆っていた[1]。また同時に、完全なシップ型帆装を備えた最後のイギリス巡洋艦でもあった。エルダー社で建造された6隻はシップ型帆装と3気筒(高圧1気筒+低圧2気筒)の複式機関を備えた。一方、王立造船所 (Royal Navy Dockyard) で建造された艦は、バーク型帆装と4気筒(高圧2気筒+低圧2気筒)の複式機関を備えた[2]。ボイラーは6缶を搭載した[1]。
なお、オパール級よりも船体が大型化しているが、機関出力も強化されており、13ノット台の速力は確保した。ただしその後、イギリス巡洋艦が高速化を図っていったことから、本級は最後の低速巡洋艦のひとつともなった[2]。
装備
[編集]当初設計での艦砲装備は、砲甲板に16cm前装施条砲(MLR 64ポンド砲Mk.III)12門を備える点ではオパール級と同様だが、スポンソンの砲は、同級では64ポンド砲2門だったのに対し、本級では18cm前装施条砲(RML 7インチ砲)2門に強化されることになっていた[2]。
1879-80年度計画艦が建造されるまでに、イギリス海軍は前装砲を廃し、新しい後装砲の採用へと舵を切っていた。「コーマス」は当初計画通りの装備で竣工したものの、1884年には、スポンソンの追撃砲 (Chase gun) にかえて25.5口径15.2cm砲(BL 6インチ砲Mk.II)4門を搭載した。また1895年にはMLR 64ポンド砲を廃止して、15.2cm砲を10門に増備した。「チャンピオン」では舷側の砲を25.5口径15.2cm砲(BL 6インチ砲Mk.III)4門と25口径12.7cm砲(BL 5インチ砲Mk.III)8門に換装するとともに、40口径4.7cm砲(QF 3ポンド砲)4門、機砲2門、機銃6挺、魚雷発射筺2基を備えた。その他の艦も、下記のように換装した[1]。
- クレオパトラ - 12.7cm砲をMk.IVに更新した。
- クラコア - 15.2cm砲をMk.IVに更新するとともに、機銃を9挺、4.7cm砲を1門とした。
- コンクエスト - 25.5口径15.2cm砲(BL 6インチ砲Mk.IV)9門と機銃8挺、機砲2門、魚雷発射筺2基を搭載した。
一方、「カリスフォート」「コンスタンス」は兵装の換装を行わなかった[1][2]。
同型艦一覧
[編集]計画年度 | 艦名 | 造船所 | 起工 | 進水 | 竣工 | 売却 |
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1876-77 | コーマス HMS Comus |
エルダー | 1876年8月17日 | 1878年4月3日 | 1879年10月23日 | 1904年 |
クラコア HMS Curacoa |
1878年4月18日 | 1880年2月24日 | ||||
チャンピオン HMS Champion |
1878年7月1日 | 1880年8月24日 | 1919年 | |||
クレオパトラ HMS Cleopatra |
1878年8月1日 | 1880年8月24日 | 1931年 | |||
カリスフォート HMS Carysfort |
1878年9月26日 | 1880年9月15日 | 1899年 | |||
コンクエスト HMS Conquest |
1878年10月28日 | 1882年10月3日 | ||||
1878-79 | コンスタンス HMS Constance |
チャタム | 1878年9月14日 | 1880年6月9日 | 1882年10月3日 | 1899年 |
1879-80 | カナダ HMS Canada |
ポーツマス | 1879年7月7日 | 1881年8月26日 | 1883年5月1日 | 1897年 |
コーデリア HMS Cordelia |
1879年7月17日 | 1881年10月25日 | 1887年1月25日 | 1904年 |
出典
[編集]参考文献
[編集]- Friedman, Norman (2012). British Cruisers of the Victorian Era. Naval Institute Press. ISBN 978-1591140689
- Gardiner, Robert (1979). Conway's All the World's Fighting Ships 1860-1905. Naval Institute Press. ISBN 978-0870219122
- 中川, 務「イギリス巡洋艦史」『世界の艦船』第517号、海人社、1996年11月、ISBN 978-4905551577。
- 青木, 栄一「船体 (技術面から見たイギリス巡洋艦の発達)」『世界の艦船』第517号、海人社、1996年11月、176-181頁、ISBN 978-4905551577。
関連項目
[編集]ウィキメディア・コモンズには、コーマス級コルベットに関するカテゴリがあります。