ジメチル水銀
ジメチル水銀 | |
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ジメチル水銀 | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | 593-74-8 |
特性 | |
化学式 | C2H6Hg |
モル質量 | 230.659 g/mol |
外観 | 無色の液体 |
密度 | 2.96 g/ml, 液体 |
融点 |
-43 ℃ |
沸点 |
87 - 97 ℃ |
水への溶解度 | 不溶 |
危険性 | |
EU分類 | T+ N |
EU Index | 080-007-00-3 |
主な危険性 | 猛毒 (T+) 環境への危険性 (N) |
NFPA 704 | |
Rフレーズ | R26, R27, R28, R33, R50, R53 |
Sフレーズ | S13, S28, S36, S45, S60, S61 |
引火点 | N/A |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
ジメチル水銀(ジメチルすいぎん、Dimethylmercury)は、無色の可燃性の液体で、強い神経毒の一つである。わずかに甘い香りを持つとされている。0.001ml吸入しただけで致命的である。ジメチル水銀の高い蒸気圧では、どのように漏洩したとしても直ちに危険なレベルに達する。分子は直線形である。
システインと錯体を形成するため、ジメチル水銀は容易に血液脳関門を突破する。ジメチル水銀はこの錯体から非常にゆっくりと遊離するため、生物濃縮される傾向がある。中毒の兆候は暴露より何か月も遅れて現れるため、効果的な治療を行うのに手遅れになる恐れがある。
ジメチル水銀は速やかにラテックス、PVC、ポリイソブチレン、ネオプレンを通過し、皮膚を通して吸収される。したがって、ほとんどのゴム手袋は手を保護するために不十分である。唯一の安全策は、長い折り返しのついたネオプレン手袋などの下に、強力なラミネート加工をされた手袋をしてジメチル水銀を扱うことである。また、換気フードの下で顔にシールドをつけて扱うことも重要であると示されている[1]。
アメリカ合衆国ダートマス大学の化学教授カレン・ヴェッターハーン (Karen Wetterhahn) は、1996年8月にラテックス手袋に数滴のジメチル水銀をこぼし、被曝した。5か月以内に水銀中毒の症状を示し、治療が行われたが、更に5か月後に死亡した。これにより、ジメチル水銀の毒性が注目されることとなった[2]。
使用
[編集]ジメチル水銀はその強力な毒性のため、一定の判断の基準として、毒物学実験にしばしば使われる。また、毒性の弱い水銀化合物の方が好まれるが、水銀の検出用のNMR器具を調整する際にも使用されている[3][4]。
参考文献
[編集]- ^ Simon Cotton, Dimethylmercury and mercury poisoning. The Karen Wetterhahn story. Molecule of the Month.
- ^ Hazard Information Bulletin - Dimethylmercury. OSHA Safety and Health Information Bulletins (SHIBs), 1997-1998
- ^ Chris Singer (1998年3月10日). “199Hg Standards”. 2006年11月19日閲覧。
- ^ Hoffman, Roy (2007年2月21日). “Mercury NMR” (英語). 2019年1月3日閲覧。