コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

ヴィシュヌ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナーラーヤナから転送)
ヴィシュヌ
維持
デーヴァナーガリー विष्णु
サンスクリット Viṣṇu
位置づけ ブラフマンヴィシュヌ派
トリムルティ
デーヴァ
住処 ヴァイクンタ英語版
マントラ オーム・ナモー・ナーラーヤナーヤ
Oṃ Namo Nārāyaṇāya
武器 スダルシャナ・チャクラ英語版
カウモダキ英語版
シンボル シャンカハスシェーシャ
配偶神 ラクシュミー
ヴァーハナ ガルダ
テンプレートを表示

ヴィシュヌ: विष्णु Viṣṇu)は、ヒンドゥー教である。ブラフマーシヴァとともにトリムルティの1柱を成す重要な神格であり[1][2][注 1]、特にヴィシュヌ派では最高神として信仰を集める[4][5]

ヴィシュヌ派ではヴィシュヌは形の無い形而上的なコンセプトであるブラフマンと同一視され、至高のスヴァヤン・バガヴァン英語版であるとされ、また、ヴィシュヌは世界が悪の脅威にさらされたとき、混沌に陥ったとき、破壊的な力に脅かされたときには「維持者、守護者」として様々なアヴァターラ(化身)を使い分け、地上に現れるとされている[6]。ヴィシュヌのアヴァターラのうち有名なものでは『マハーバーラタ』のクリシュナや『ラーマーヤナ』のラーマが含まれている。また、ヴィシュヌはナーラーヤナジャガンナータヴァースデーヴァヴィトーバ英語版ハリ英語版といった異名でも知られ、スマールタ派パンチャーヤタナ・プージャー英語版では5柱の信仰対象の神々の1人に数えられている[5]

偶像としてはヴィシュヌは通常青い肌の色で4本の腕を持つ姿で描かれる。下の左手にはパドマ英語版、下の右手にはカウモーダキー英語版、上の左手にはパーンチャジャニヤ英語版、上の右手にはスダルシャナ・チャクラ英語版を持つ[注 2]。また、とぐろを巻くアナンタ英語版の上に横になってまどろむ姿を描いたものも多くみられる。これは現実世界はヴィシュヌの夢に過ぎないという神話の1場面を切り取ったもので、通常彼の配偶神であるラクシュミーが一緒に描かれる[7]

概要

[編集]

名前

[編集]

「ヴィシュヌ」という名前には「遍く満たす」という意味があるとされる[8][9]

紀元前5世紀頃のヴェーダーンガの学者ヤースカ英語版は彼のニルクタ(語源に関する書物)の中でヴィシュヌの語源を「どこにでも入る者[注 3]」、「枷や束縛から離れたものがヴィシュヌである[注 4]」としている[10]

中世インドの学者メーダーティティ英語版は「浸透する」という意味の「ヴィシュ」(viś)にヴィシュヌの語源を求めている。すなわち「ヴィシュヌ」は「どこにでも存在し、全ての中に存在する者」という意味を含むとする[11]

特徴

[編集]

比較神話学ジョゼフ・キャンベルの『千の顔をもつ英雄』で、ヴィシュヌが扱われている[12]。ヴィシュヌについてアルジュナの言葉では、「あなたの終わりも中間も、また始まりもわたしはみとめない」[12]。「あなたは全世界をあまねく貪りつつ、燃えたつで舐めわたす」[13]

ヴィシュヌの描写は次のようにある。

幾多のとをもち、さまざまなこの世のものとも思えぬ姿をあらわし、多くの神々しい装飾で飾りたて、多くの神々しい武器を携え、素晴らしい花冠衣服を身にまとい、聖なる香料を塗り、あらゆる奇瑞よりなり、眩くも無際限の、あらゆる方角にさまざまな容顔をさらす神 … 神々のなかの最高神のみ姿のなかに、多様に分かたれた全世界がただ一つのものに収められているのを、アルジュナはそのときそこでみたのであった。[14]

ヴィシュヌ自身の言葉はこうある。

わたしはであり、この世を滅ぼす「時間」である。ここに集まる者どもを殺さんがためにここに出現した。たとえ汝がいなくとも、敵陣に並び立つ戦士らはみな生きつづけはしないだろう。 … わたしによってすでに殺された、ドローナビーシュマジャドラタカルナ、またその他の勇士たちを殺せ。これらの者どもはすでにわたしが殺し終えている者どもである。[15]

聖典

[編集]
様々な文化に見るヴィシュヌ
バクトリア語が書かれた封印。4-6世紀。
紀元前1世紀、バクトリアのコイン
13世紀、カンボジアのヴィシュヌ。
ヒンドゥーの神ヴィシュヌは長い歴史の中で信仰を集め続けてきた。

ヴェーダ

[編集]

ヴェーダの時代にはヴィシュヌはインドラアグニのような目立った神格ではなかった[16]。紀元前2000年頃の『リグ・ヴェーダ』に含まれる1028の賛歌の内、ヴィシュヌに捧げられたものは5つにとどまる[11]。ヴィシュヌはブラーフマナ(紀元前900-500年)で言及され、それ以降存在感を増していき、やがてブラフマンと同等の最高位の神格として信仰を集めるようになった[16][17]

ヴェーダの全体でみるとヴィシュヌに関する言及は多くなく、神格としての設定もありきたりと言えるが、ヤン・ホンダは『リグ・ヴェーダ』にはいくつか目をひく言及も見られるとしている[16]。たとえば『リグ・ヴェーダ』にはヴィシュヌは死後のアートマン(魂)が住まうというもっとも高い所に住むという言及があり[注 5]、これが後にヒンドゥー教の救済論と結びつきヴィシュヌの人気を高める原因のひとつになったのではないかという指摘がある[16][18]。またヴェーダには、ヴィシュヌは天と地を支えるものであるとする記述も見られる[11]

ヴェーダでは他の神へ向けた賛歌でヴィシュヌが触れられる例がたびたび見られ、とくにインドラとのつながりが感じられる[11][19]。インドラが悪の象徴であるヴリトラを倒す際にはヴィシュヌが手を貸している。

トリヴィクラマ

[編集]
様々なヒンドゥー寺院でトリヴィクラマ(三界を3歩で跨ぐ者)をテーマにした偶像を見ることができる。まるで体操選手のように足を上げた造形でヴィシュヌの大きな1歩が表現される。左: ネパール、バクタプルのトリヴィクラマ。右: インド、バダミの石窟寺院群(英語版)。6世紀のもの。 様々なヒンドゥー寺院でトリヴィクラマ(三界を3歩で跨ぐ者)をテーマにした偶像を見ることができる。まるで体操選手のように足を上げた造形でヴィシュヌの大きな1歩が表現される。左: ネパール、バクタプルのトリヴィクラマ。右: インド、バダミの石窟寺院群(英語版)。6世紀のもの。
様々なヒンドゥー寺院でトリヴィクラマ(三界を3歩で跨ぐ者)をテーマにした偶像を見ることができる。まるで体操選手のように足を上げた造形でヴィシュヌの大きな1歩が表現される。左: ネパールバクタプルのトリヴィクラマ。右: インド、バダミの石窟寺院群英語版。6世紀のもの。

『リグ・ヴェーダ』の複数の賛歌でトリヴィクラマ(Trivikrama)と呼ばれるヴィシュヌにまつわる神話が語られており、これはヒンドゥー教の最も古い時代から継続的に語られている神話のうちの1つである[20]。トリヴィクラマは古今を問わずヒンドゥーの宗教美術に着想を与えており、例えばエローラ石窟群のものはヴィシュヌのアヴァターラとしてのヴァーマナのトリヴィクラマが描かれる[21][22]。トリヴィクラマとは「3歩」という意味を持つ。この神話では、取るに足らない風貌をしたヴィシュヌが一息に巨大化し、最初の一歩で地上をまたぎ、二歩目で天をまたぎ、三歩目で天界の全てをまたいだと語られる[20][23]

Viṣṇornu kaṃ vīryāṇi pravocaṃ yaḥ pārthivāni vimame rajāṃsi / yo askabhāyaduttaraṃ sadhasthaṃ vicakramāṇas tredhorugāyaḥ // (...)

私はヴィシュヌの偉業をここに宣言しよう。彼は地上を実測し、天界をうち立てた。大股の三歩で(略)

『リグ・ヴェーダ』1.154.1、ヤン・ホンダ訳からの重訳[24]

ヴィシュヌスークタとも呼ばれるこの賛歌には救済論が含まれているとされる。この賛歌ではヴィシュヌは三歩目に、死を免れない者たちの領域を超えたことが示されている。そこはもっとも高い場所であり、神に帰依したものたちが幸せに暮らすとされている[20]。『シャタパタ・ブラーフマナ』(紀元前8-6世紀)ではこのテーマをより深く掘り下げている。ここでは3つの世界(トリロカ)をアスラに奪われた神々をヴィシュヌが代表し、トリヴィクラマにより世界を奪い返す。ここではヴィシュヌはすなわち死を免れない者たちの救済者であり、神々の救済者でもあると読み取れる[20]

ブラーフマナ

[編集]

シャタパタ・ブラーフマナ』にはヴィシュヌ派の護持する汎神論的アイデアを見つけることができる[25]。ヴィシュヌ派では最高神であるヴィシュヌは経験的に知覚できる宇宙に遍く宿っているとされる[25]。『シャタパタ・ブラーフマナ』にてプルシャ・ナーラーヤナ(ヴィシュヌ)は以下のように語る。「全ての世界に私自身を置いた。私自身に全ての世界を置いた」[25]。さらにこの『シャタパタ・ブラーフマナ』はヴィシュヌとすべての知識(すなわちヴェーダ)を等価であるとする。すなわち宇宙の全ての本質を不滅であるとし、全てのヴェーダと宇宙の原則を不滅であるとし、ヴィシュヌであるこの不滅の物は全てであると主張する[25]

ヴィシュヌは全ての物と生物に染みわたっていると描写されている。これをジオラ・ショーハム英語版は、ヴィシュヌは、本質的な原則として、超越的な自己として常に全ての物と生物の中に存在しつづけている、と表現する[26]。ブラーフマナを含むヴェーダの聖典はヴィシュヌを称賛しながらも、ヴィシュヌの下に他の神々を従属させない。ヴェーダが提示するのは包括的、多元的な単一神教である。時には明確に、「偉大な神々も卑小な神々も、若い神々も年老いた神々も」[注 6]という呼びかけが行われることもあるが、これは神々の神聖な力をわかりやすく表現するための試みであり、いずれかの神がいずれかの神に従属しているという表現は見つけられない。一方でヴェーダの賛歌の中から、全ての神々がそれぞれ至高であり、それぞれ絶対的であるという表現を見つけることはたやすい[27]

ウパニシャッド

[編集]

ムクティカー英語版と呼ばれる108のウパニシャッドのうち、ヴァイシュナヴァ・ウパニシャッド英語版(ヴィシュヌ派のウパニシャッド)が14存在する[28]。これらがいつ編纂されたものかははっきりとはわかっていないが、紀元前1世紀頃から17世紀頃までと幅を持って見積もられている[29][30]

これらヴァイシュナヴァ・ウパニシャッドはブラフマンと呼ばれる形而上的な現実としてのヴィシュヌ、ナーラーヤナ、ラーマやあるいはヴィシュヌのアヴァターラの1つに焦点を当てる[31][32]。そして倫理から信仰の方法まで広範な話題を取り扱う[33]

プラーナ文献

[編集]
バーガヴァタ・プラーナ英語版はヴィシュヌのアヴァターラであるクリシュナに焦点を当てる。

ヴィシュヌ派のプラーナ文献ではヴィシュヌに主眼が置かれる。ルド・ロシェ英語版によればこれらヴィシュヌ派のプラーナとして特に重要なものには『バーガヴァタ・プラーナ英語版』、『ヴィシュヌ・プラーナ英語版』、『ナーラディーヤ・プラーナ英語版』、『ガルダ・プラーナ英語版』、『ヴァーユ・プラーナ英語版』が挙げられる[34]。プラーナは様々な立場から語られる宇宙論や、神話、様々な生き方に関する博物学的内容、加えて中世に書かれたものにはマーハートミヤ(māhātmya)と呼ばれる地域ごとのヴィシュヌ寺院を紹介する旅行ガイドのようなものが含まれる[35]

ヴィシュヌ派のプラーナに語られるさまざまな宇宙論を例として挙げると、例えばヴィシュヌの目は南の天極にあり、そこから宇宙を観察しているとされる[36]。また、ヴァーユ・プラーナの4章80節ではヴィシュヌはヒラニヤガルバ英語版(金の卵の意)であったとされ、そこから一斉にすべての生物の雄と雌が生まれ出る[37]。プラーナによってはシヴァやブラフマー、シャクティが宇宙論の中心となるが、『ヴィシュヌ・プラーナ』はヴィシュヌを中心に宇宙論を展開する。『ヴィシュヌ・プラーナ』の22章では、彼の多くの異名(称号)、例えばハリ、ジャナルダナ、マダーヴァ、アチユタ、フリシケシャなどを以ってヴィシュヌを礼賛する[38]

ヴェーダーンタ学派ラーマーヌジャはウパニシャッドで議論のあった根本原理ブラフマンをヴィシュヌと同一視し、シュリー・ヴァイシュナヴァ派英語版の基礎を築いた[39]。『バーガヴァタ・プラーナ』のたとえば1巻2章11節などではヴィシュヌはブラフマンと同一視される。いわく、よく学び絶対の真理を知る超越主義者はこの無二の本質をブラフマン、あるいはパラマートマ(Paramātma)、バガヴァーン(Bhagavān、ヴィシュヌのこと)と呼ぶ[40]

ヴィシュヌのアヴァターラであるクリシュナに焦点を当てる『バーガヴァタ・プラーナ』は、最も人気があり、最も広く親しまれているプラーナで、ほぼすべてのインドの言語に翻訳されている[41]。この文献も他のプラーナと同様に宇宙論、系譜学、地理学、神話、伝説、音楽、舞踊、ヨーガ、文化などあらゆるテーマを扱っている[42][43]。バーガヴァタ・プラーナでは、慈悲深い神々と邪なアスラ(悪魔)との戦争でアスラが勝利するところから物語が始まり、そしてその結果としてアスラが宇宙を支配する。ヴィシュヌはまずはアスラと和解し、彼らを理解し、その後に独創的な方法で彼らを倒し、そして希望と正義と自由と善をとり戻す。これは様々な伝説に繰り返し登場するテーマとなっている[44]。『バーガヴァタ・プラーナ』はヴィシュヌ派において特に信仰を集めている[45]。このプラーナに見られるヴィシュヌの活躍は演劇、舞台芸術の世界にも影響を与えており、例えばサトリヤ英語版マニプリオリッシークチプディ英語版カタカリカタックバラタナティヤムバーガヴァタ・メーラ英語版モヒニアッタム英語版という形で祭りの期間などに上演される[46][47][48]

ヴェーダやウパニシャッドには見られないことだが、プラーナのいくつかのバリエーションではヴィシュヌが最高神であり、他の神々が依存する存在であると語られる。たとえばヴィシュヌ派のプラーナでは、ヴィシュヌは創造神ブラフマーの根源であるとされる。ヴィシュヌの宗教美術ではしばしばヴィシュヌの臍から伸びる蓮からブラフマーが生まれる様子が描かれる。したがって、ブラフマーは宇宙の全ての物を創造したが、原初の海は創造しなかったとされる[49]。対照的にシヴァ派のプラーナではブラフマーとヴィシュヌはアルダナーリーシュヴァラ(シヴァとパールヴァティの融合した神)から誕生したと語られている。あるいは、ルドラ(シヴァの前身)がブラフマーを創造したり、またはカルパ(宇宙の寿命)ごとにヴィシュヌ、シヴァ、ブラフマーが持ち回りでお互いを創造するとされる[50]

また、ヴィシュヌ派のプラーナの中にはヴィシュヌがルドラ(すなわちシヴァ)の姿を借りて、あるいはルドラに命じて世界を破壊するというエピソードも存在する。その結果宇宙は崩壊し、「時間」とともにヴィシュヌに再吸収される。その後宇宙はヴィシュヌから再び創造され、新しいカルパが始まる[51]。他にも様々な宇宙論が存在し、宇宙はヴィシュヌではなくシヴァに吸収されるのだとするものも存在する[51][52]

サンガムおよびサンガム以降

[編集]
幼いときにバターを盗む話、横笛を吹く話など、ヴィシュヌのアヴァターラであるクリシュナにまつわる神話は広範にわたる。これらのテーマは古代や中世に作られた南アジアのコインにも描かれている[53]。また3世紀の詩人、ハラも同じテーマを描いた[54]

タミル語で書かれた古典文芸、サンガム文学が1世紀から3世紀を中心に盛んになった。これらタミルの文献はヴィシュヌや、クリシュナ、ラーマといったヴィシュヌのアヴァターラ、それからその他、シヴァやムルガン(スカンダ)、ドゥルガーインドラといった汎インドの神々を信仰した[55]。これらサンガムではヴィシュヌはマヨン(Mayon)と呼ばれる。マヨンは「色の黒い者」を意味し、これは北インドの言葉における「クリシュナ」と同じ意味を持つ[55]。その他にもヴィシュヌを指す言葉としてサンガムには、マヤヴァン(mayavan)、マミヨン(mamiyon)、ネチヨン(netiyon)、マル(mal)、マヤン(mayan)といった言葉を見つけることができる[56]

サンガム以降、おそらく5世紀に書かれたと考えられているタミルの叙事詩シラッパディハーラム英語版マニメーハライ英語版ではクリシュナが主題となっている[57][58]。これらの叙事詩には、例えば幼い時にバターを盗んだ話や、少年期には沐浴をする女の子たちの服を隠してからかった話など、インド各地でそれぞれに発展したクリシュナにまつわる神話の共有が見られる[57][59]

バクティ運動

[編集]

5世紀前後に発展したヴィシュヌに関わる様々なアイデアは12世紀以降にインド全土で優勢となるバクティ運動英語版バクティ参照)において重要な意味を持つ。5世紀から10世紀にかけてアールワール英語版[注 7]と呼ばれるタミル・ヴィシュヌ派の詩人たちが活躍し、彼らはヴィシュヌを称える歌を歌いながら各地を巡った[61]。彼らはシュリーランガムをはじめとする寺院サイト(巡礼地)の形成に関わり、ヴィシュヌ派の思想を広めた。ディヴィヤ・プラバンダ英語版にまとめられた彼らの詩はその後ヴィシュヌ派の重要な聖典へと発展する。『バーガヴァタ・プラーナ』ではバクティ思想を強調する一方でアールワールへの言及が見られ、これらはバクティ思想が南インドに起原を持つとする学説の根拠となっている。ただしこの論拠はバクティ思想が南と北で同時発生した可能性を否定しきれないという指摘も存在する[62][63]

ヴィシュヌ派

[編集]
アンコール・ワットはヴィシュヌを奉る寺院である[64]

『バーガヴァタ・プラーナ』にはヴィシュヌ派の思想がまとめられており、そこにはシャンカラの哲学、すなわちアートマンブラフマンを融合するといった議論や、個の本質の中にブラフマンを戻すといったアドヴァイタ的(不二一元論)な議論が語られている[42][65][66]。このプラーナではモークシャ(解脱)がエーカトヴァ(Ekatva、単一性)とサーユジャ(Sāyujya、没入)として説明され、そこでは個は完全にブラフマンに没頭すると語られる[67]。ルクミニ(T.S Rukmani)によれば、『バーガヴァタ・プラーナ』は個の魂(アートマン)の絶対(ブラフマン)への回帰と絶対への融合を提示しており、これは疑いなくアドヴァイタ的傾向であるとする[67]。『バーガヴァタ・プラーナ』はこれと同じ節にバガヴァン(ヴィシュヌ、とりわけクリシュナのこと)を専念する対象として触れており、そのため『バガヴァッド・ギーター』で語られる3つの道のうちのバクティ・ヨーガを提示しているとされている[67][68][注 8]

『バガヴァッド・ギーター』は知覚可能な物と知覚不可能な物、すなわち魂と物質の双方を扱っている。ハロルド・カワード英語版とダニエル・マグワイア( Daniel Maguire)は、『バガヴァッド・ギーター』は宇宙をヴィシュヌ(クリシュナ)の体として描いていると表現する。この文献の中ではヴィシュヌは全ての魂、全ての物質、時間を遍く満たしていると語られる[9]シュリー・ヴァイシュナヴァ派英語版ではヴィシュヌとシュリー(ラクシュミー)は分離不可能な存在として描かれ、2柱がともに宇宙を遍く満たすとしている。2柱がともに創造神であり、その創造自体にも2柱が偏在し、創造を超越するとされる[9]

『バーガヴァタ・プラーナ』では多くの節でブラフマン(特にニルグナ・ブラフマン英語版)とシャンカラの不二一元論が並列に語られる[66]。下に一例を挙げる。

人生の目的は真理の探究であり、儀式の実践を通して天国での享楽を欲求することではない
真理の知識を得たものはアドヴァイタ(不二)を真理と呼ぶ
これはブラフマンと呼ばれ、至高のアートマンと呼ばれ、バガヴァーンと呼ばれる。

『バーガヴァタ・プラーナ』1.2.10-11、ダニエル・シェリダン(Daniel Sheridan)からの重訳[69]

研究者たちはヴィシュヌ派の理論を、ウパニシャッドに見られる梵我一如の議論を基礎に置くものと考えており、これを「一元論的有神論」(一元論#東洋)と呼んでいる[66][70]。『バーガヴァタ・プラーナ』はヴィシュヌとすべての物に宿る魂(アートマン)は同一のものであると主張している[65]エドウィン・ブライアント英語版は『バーガヴァタ・プラーナ』に語られる一元論はヴェーダーンタ(ウパニシャッドとほぼ同義)を基礎に置く物だとしながら、しかしシャンカラの一元論とは明確に同じものだとは言えないとする[71]。『バーガヴァタ・プラーナ』では知覚可能、および知覚不可能な宇宙はともに同一の単一の存在の顕現であり、これはちょうど太陽から熱と光という違う現実が出現するのと同じようなことであると語られている[71]

ヴィシュヌ派のバクティ信仰では、ヴィシュヌには例えば全知の存在、活力に満ちる、大力の、君臨する、輝くような、といったさまざまな性格が付与される[72]。マドヴァチャーリヤーの説く『マドヴァ・ヴェーダーンタ』ではクリシュナの姿をするヴィシュヌを、最高位に位置する創造神として、1つの神格として、偏在する神、全てを飲み込む神として、解脱(モークシャ)へと導いてくれる知識と恩寵を与えてくれる者として扱っている[73]。加えて『マドヴァ・ヴェーダーンタ』では最高神であるヴィシュヌ(ブラフマン)と生命の持つ魂(アートマン)を2つの別々の現実と本質を持つと捉える(二元論)。一方でラーマーヌジャの説くシュリー・ヴァイシュナヴァ派では別の物であるが同じ本質を共有するものとしてとらえている(一元論)[74][75][76]

他の神々との関係

[編集]

ラクシュミー

[編集]
ヴィシュヌとラクシュミー(ラクシュミ・ナラヤン英語版、2柱の集合名)、インド、ハレービードゥ英語版

富と幸運と繁栄の女神、ラクシュミーはヴィシュヌの妻であり、ヴィシュヌのエネルギーの源であるとされている[77][78]。ラクシュミーはまた、ヴィシュヌの8つの力の源であることからシュリー英語版、ティルマガル(Thirumagal)とも呼ばれる[79][80]。ヴィシュヌがアヴァターラ、例えばラーマやクリシュナとして地上に現れる時にはラクシュミーもそれぞれ彼の配偶者であるシータールクミニーとして転生するとされている[81]

ブラフマー、シヴァとの関係

[編集]

トリムルティ(3つの形の意)は、創造、維持、破壊という宇宙の持つ3つの機能は創造を司るブラフマー、維持を司るヴィシュヌ、破壊/再編を司るシヴァという形で神格化されるというヒンドゥー教のコンセプトである[82][83]

シヴァとヴァシュヌは宗派によっては最高神としてとらえられる場合がある。ハリハラは右半身がシヴァで、左半身がヴィシュヌの神格であり西暦500年頃から宗教芸術として登場するようになり、例えば6世紀のバダミ石窟寺院英語版でも見られる[84][85]。またそれとは別にハリルドラと呼ばれる半身がヴィシュヌ、半身がシヴァの神格が『マハーバーラタ』に触れられている[86]

ガルダ

[編集]

ヴィシュヌのヴァーハナガルダと呼ばれるである。

ヴィシュヌのアヴァターラ

[編集]
ヴィシュヌの10のアヴァターラ、ダシャーヴァターラ。マツヤクールマヴァラーハヴァーマナクリシュナカルキブッダパラシュラーマラーマナラシンハが描かれる。ジャイプルヴィクトリア&アルバート博物館所蔵。

トリムルティの中で維持という機能を任されるヴィシュヌは、ブラフマー(創造)やシヴァ(破壊)よりも強くアヴァターラというコンセプトに関連づけられる。ヴィシュヌのアヴァターラは善に力を与えるため、悪と戦うため、すなわちダルマを修復するために地上に現れる。ヴィシュヌのアヴァターラの持つ役割は『バガヴァッド・ギーター』の一節によく表れている[87][88]

実に、ダルマ(正法)が衰え、アダルマ(非法)が栄える時、私は自身を現すのである。
善人を救うため、悪人を滅ぼすため、美徳を確立するために、私はユガごとに出現する。

バガヴァッド・ギーター 上村勝彦訳、(第4章7節、8節)

ヴィシュヌのアヴァターラは、典型的な例では悪が勢力を強め宇宙を不均衡に陥れた場合など、宇宙が危機にさらされたときにはいつでも現れるとされている[89]。ヴィシュヌは知覚可能な形を持って現れ、悪をあるいはその源を破壊し、善と悪という宇宙に常に存在し続ける力の均衡を修復する[89]

ヴィシュヌ派に語られるヴィシュヌのアヴァターラのうち、最もよく知られ、よく信仰されるものはクリシュナ、ラーマ、ナーラーヤナ、ヴァースデーヴァである。これらのアヴァターラは多くの文献に語られ、それぞれの性格、神話を持ち、宗教芸術という形で表現されている[88]。たとえばクリシュナは『マハーバーラタ』ではクリシュナが、『ラーマーヤナ』ではラーマが活躍する[90]

ダシャーヴァターラ

[編集]

『バーガヴァタ・プラーナ』ではヴィシュヌのアヴァターラは無数に存在すると語られているが、中でも10のアヴァターラ、すなわちダシャーヴァターラは重要なものとして特に信仰されている[88][91]。ヴィシュヌの10の重要なアヴァターラは『アグニ・プラーナ英語版』、『ガルダ・プラーナ英語版』、『バーガヴァタ・プラーナ』に語られており[92][93][注 9]、10世紀以前にはすでに重要なアヴァターラは10という数で定着していたようである[92]

もっともよく知られる10の組み合わせがダシャーヴァターラ(10のアヴァターラの意)と呼ばれており、『バーガヴァタ・プラーナ』に語られているのだが、名前の並びに違いがあり5パターン存在する。フレダ・マチェットはこのバリエーションに関して、優先順を暗示することを避けるために、あるいは抽象的な並びに定義を付けるため、解釈を制限するために編集者が意図的に変更した可能性を指摘している[96]

  • 画像の列のソートボタンで元の順序に戻る。
ヴィシュヌのアヴァターラ
名前 画像 描写 出典
マツヤ 001/ 半魚、半人のアヴァターラ。彼はヴェーダ(知識)の舟を作り、マヌ(人間の祖先)とすべての生物を救い、さらに宇宙規模の洪水から世界を救うとされる。また、アスラがヴェーダを盗み、それを破壊しようと試みるがアスラを見つけ出し、それを討ち果たしヴェーダを奪い返す。 [97]
クールマ [注 10] 002/ のアヴァターラ。宇宙を支える亀であり、乳海攪拌の際には不死の霊薬アムリタを得るためにヴァースキを手伝った。攪拌はアムリタとともに毒も生み出したが、アスラがアムリタを奪いったためにヴィシュヌはモーヒニーとして姿を現す。すると皆モーヒニーに惚れ込み、アスラたちはモーヒニーにアムリタを返した。 [98]
ヴァラーハ 003/ イノシシのアヴァターラ。大地の女神がヒラニヤークシャにさらわれ海の底へと連れ去られたときに彼女を追い、見つけ出して助け出した。 [99]
ナラシンハ 004/ 半獅子、半人のアヴァターラ。アスラの王ヒラニヤカシプは、いかなる人にもいかなる動物にも殺されないという特別な力を得ると、人々を迫害し始める。その中にはヒラニヤカシプの実の息子プラフラーダも含まれた。ナラシンハは独創的な方法でヒラニヤカシプの特殊能力を破り、このアスラの王を仕留めた。父であるヒラニヤカシプに異を唱えていたプラフラーダはナラシンハによって助け出される。この神話の一部はホーリー祭のバックグラウンドになっている。 [100]
ヴァーマナ 005/ 小人のアヴァターラ。アスラの王バリは不釣り合いに強大な力を得、宇宙の全土を支配し権力を濫用した。僧侶の恰好をしたヴァーマナを見たバリは、自分の力を誇示しようと考え、この僧侶に施しを与えることを思いつく。バリはヴァーマナに「なんでも望むものを与えてやろう」と持ち掛けると、ヴァーマナは3歩分の土地を貰いたいと頼む。バリは承諾する。するとヴァーマナは一息に成長し、最初の一歩で地上を跨ぎ、つぎの一歩で天界を跨ぎ、三歩目で冥界を跨いだ。バリはその冥界へと帰って行った。 [101]
パラシュラーマ 006/ 斧を持ったリシ(聖仙)のアヴァターラ。一部のクシャトリヤ(戦士たち)が極端に力をもち、己の愉楽のために人々の財産を奪うようになった。斧をもったパラシュラーマが現れ、邪悪なクシャトリヤを滅ぼした。 [102]
ラーマ 007/ ラーマーヤナ』の主要なキャラクター。 [103]
クリシュナ 008/ マハーバーラタ』、『バガヴァッド・ギーター』の主要なキャラクター。 [104]
ブッダ 009/ 仏教の主要キャラクター[105]。いくつかの文献ではブッダをバララーマ、またはリシャバ(ジャイナ教の始祖の一人)に置き換えている[106] [107][注 11]
カルキ [注 12] 010/ 翼の生えた白馬とともに現れる最後のアヴァターラ。宇宙を更新するためにカリ・ユガの終わりに登場するとされる。 [101]

ヴィシュヌの1000の名前

[編集]

ヴィシュヌの多くの名前と信奉者がヴィシュヌ・サハスラナーマ[109]に集められている。有名なものは『マハーバーラタ』に収められているもので、ビーシュマクルクシェートラの戦場にて、クリシュナの前でこれを暗唱し、ヴィシュヌを最高神として称える。

比較神話学者ジョゼフ・キャンベルの『千の顔をもつ英雄』では、次の例が挙げられている[12]

  • 宇宙神
  • それ[注 13]
  • 神としての姿
  • ヨーガの主
  • 不滅
  • 超自然的であり、とりどりの色や形をもつさまざまの姿
  • すべての神の群れと天使の群れ
  • いまだかつてみたことのない、多くの奇瑞
  • 統一されている、動と不動の全世界
  • あなたがみたいと願う、他の〔いかなる〕もの[12]
  • 世界の主
  • 至高の形姿
  • 偉大な一者
  • 生きとし生けるものの群れ
  • 蓮華の座にある主たる梵天ブラフマー
  • すべての聖仙
  • 聖なる竜王たち
  • 無数の
  • 無数の
  • 無数の
  • 無数の
  • 一切方に無限の形姿をしめすあなた
  • 全世界の主
  • あらゆる形をもつ者
  • あらゆる方向に光輝を放つ凝視しがたいあなた
  • はかり知ることのできないあなた
  • この世の至高の安息所
  • 恒久的正義の不滅な守護
  • 永遠の霊我
  • 王子の御者[14]
  • 眉目麗しき神
  • 数知れぬ恐ろしい口
  • 天までとどき、さらには多彩に輝く燃えさかる姿
  • 世界終滅時の火にも似た恐ろしげなをもつあなた
  • 神々の主[111]
  • かくも恐ろしい形姿をまとうあなた
  • 神々のなかの最高の者
  • 太初
  • 時間
  • 神々のはじめ
  • 太初の魂
  • 宇宙の至高の安息所
  • 知るもの
  • 知られるべきもの
  • 最後の目的地
  • 無限の形姿をもつ者
  • 風神
  • 死神
  • 火神
  • 水神
  • 最初の人間
  • 太祖(ブラフマー)[15]
  • 千臂をもつ者
  • 普遍
  • 無限
  • いまだ汝のみたことのないわたしの姿
  • マドゥースダナ(Madhusudana,Madhusudanah)
  • 宇宙の光り輝く真髄[112]
  • 宇宙
  • 宇宙
  • 宇宙
  • 宇宙蟷螂[113]

シク教

[編集]

シク教の文献にはゴラク(Gorakh)という名前でヴィシュヌが登場する[114]。例えばジャプジ・サーヒブ英語版ではゴラクは言葉を与え、知恵を示してくれるグルとして賞揚され、彼を通して内在性の気づきを得られるのだとする。クリストファー・シャックル英語版、アーヴィンド・パル=シン・マンディール(Arvind Pal-Singh Mandair)によればグル・ナーナクは、グルはシヴァ(isar)であり、ヴィシュヌ(gorakh)であり、ブラフマー(barma)でありパールヴァティ(parbati)であると説き、一方で全てであり真実である神は記述できないと記している[115]

シク教の文献、チャウビス・アヴタル英語版にはヴィシュヌの24のアヴァターラが紹介されており、リストにはヒンドゥー教のクリシュナ、ラーマと、仏教のブッダがヴィシュヌのアヴァターラとして含まれている。同様にシク教の文献、ダサム・グラント英語版にはヴィシュヌ派に見られるヴィシュヌに関する神話がそのまま取り込まれている[116]。後者は特にサナターニ・シーク(Sanatan Sikhs[注 14])に重視されている[116][117]

仏教

[編集]
ヴァーハナであるガルダに乗るヴィシュヌ像、バンコクタイ王国でもっとも古いヒンドゥースタイルのヴィシュヌ像はスラートターニー県のワット・サラ・トゥン(Wat Sala Tung)にあり、西暦400年ころの物となる[118]

ヒンドゥー教のいくつかの宗派がブッダをヴィシュヌのアヴァターラとして捉えている一方で、スリランカの仏教徒の間ではヴィシュヌはスリランカの守護神であり、かつ仏教の守護神として信仰を集めている[119]。スリランカではヴィシュヌはウプルヴァン英語版、またはウタパラ・ヴァルナとして知られている。ウタパラ・ヴァルナは「青い蓮の色をした者」という意味になる。スリランカでは多くのヒンドゥー寺院、仏教寺院がヴィシュヌを奉っている。明確にヴィシュヌを奉る寺院(コビル英語版デヴァラヤ)に加えて、全ての仏教寺院は必然的にメインの仏殿(デヴァラヤ)近くにヴィシュヌを奉る堂を備えている[120]

ヴィシュヌに関する宗教美術は、今は上座部仏教が広く信仰を集める東南アジアの遺跡から見つかっている。たとえばタイ王国マレーシア国境付近では4世紀から9世紀ごろのものと思われる4本の腕のヴィシュヌ像が見つかっており、インドからも同じデザインの物が見つかっている[118]。 同様にタイ中部のプラーチーンブリー県ペッチャブーン県から、またベトナムドンタップ省アンザン省から見つかっている[121]カンボジアタケオ州やその他の州からは7世紀から9世紀頃のクリシュナ像が見つかっている[122]インドネシアの島々からは早いものでは5世紀ごろのヴィシュヌ像が複数見つかっている[123]。像に限らず、ヴィシュヌに関する石碑や彫刻、例えばトリヴィクラマをモチーフにしたものなども東南アジアの各地で見つかっている[124]。それらの中にはスールヤや、ヴィシュヌとブッダを融合させたようなものも存在する[125]

日本の仏教ではヴィシュヌは那羅延天や毘紐天として知られ、13世紀に日蓮のまとめた文献などに登場する[126]。音写語としては、「毘紐天」、「韋紐天」、「微瑟紐」、「毘瑟怒」などがある。

寺院

[編集]
パドマナバスワミ寺院英語版ケーララ州ティルヴァナンタプラム

現存するヴィシュヌ寺院の中で初期のものは6世紀頃までさかのぼる。例えばウッタル・プラデーシュ州ジャーンシーのサルヴァトバドラ寺院(Sarvatobhadra temple)は6世紀の初期のもので、テーマとしてダシャーヴァターラに焦点を当てている[127][54]。四角に配置されたこの寺院のデザインやヴィシュヌの表現は10世紀頃に書かれたヒンドゥー建築に関する文献、例えば『ブリハット・サンヒター』(Bṛhat-saṃhitā)や『ヴィシュヌダルモーッタラプラーナ』(Viṣṇudharmottarapurāṇa)のインストラクションにおおむね合致する[128]

考古学的な研究からヴィシュヌに関する寺院や偶像は紀元前1世紀にはすでに存在していたことがわかっている[129]。これら初期の痕跡としてはたとえばラージャスターン州のヴィシュヌに関する石碑が2つ見つかっており、これらはともに紀元前1世紀頃のものでサンカルシャナ(Sankarshana)とヴァスデーヴァに関する記述がみられる。また、紀元前1世紀以前の物と考えられるベスナガルのガルダ石柱ではバーガヴァタ寺院について触れられている。マハーラーシュトラ州ネインガット英語版の洞窟で見つかったナーガニカー(Nāganikā)女王の碑文にも多数の神々の中にサンカルシャナとヴァスデーヴァの名前を見つけることができる。マトゥラーでもいくつかの発見があり、それぞれ西暦の始めころのものと考えられている[129][130][131]

ケーララ州ティルヴァナンタプラムパドマナバスワミ寺院英語版はヴィシュヌを奉っている。この寺院はその長い歴史の中で金や宝石など多くの寄進を集めている[132][133][134][135]

タミル・ナードゥ州ティルチラーパッリシュリーランガムランガナータスワーミ寺院 (シュリーランガム)英語版はヴィシュヌを奉る。この寺院の敷地は63万平方メートルを占め、周囲は4,116メートルに及ぶ。インドでも最大の寺院であり、世界的に見ても最大級の宗教施設である[136]

その他の文化でのヴィシュヌ

[編集]

ジェームス・フリーマン・クラーク英語版によれば古代エジプトの神ホルスもヴィシュヌと同様に三神一体を成す1柱である[137]リチャード・レヴィトン英語版はそれを受けて若いころのホルスが年上のホルスに乗る姿はガルダに乗るヴィシュヌに似ているとして関連を指摘している[138]ジェームス・カウルズ・プリチャード英語版は一方で、三神一体の理論がエジプトとインドの双方に存在するとはいえ、ホルスとヴィシュヌにつながりがあるとする見方は疑わしいとする[139]

4034ヴィシュヌ英語版エレノア・ヘリンによって発見された小惑星である[140]

ヴィシュヌ片岩英語版アリゾナ州グランド・キャニオンで見つかる火山堆積物である。その結果として巨大なヴィシュヌ片岩の塊はヴィシュヌ寺院と呼ばれるようになった[141]

2007年、ロシアヴォルガ川の打ち捨てられた村から7世紀から10世紀頃のものと思われるヴィシュヌ像がみつかっている[142]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 古代の文献ではヴィシュヌの含まれない3柱を最高神の3人組に数えているものもある[1][2]ヤン・ホンダはヒンドゥー教のトリムルティというコンセプトは、アグニという1柱の神の持つ3つの性格についての古代の宇宙論的な、儀式的な思索から発展したのではないかとしている。アグニは3度、あるいは3倍誕生し、3倍の光であり、3つの体と3つの地位を持つとされている[3](アグニは火であり光であり日である)。一般的なトリムルティとされるブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァの他には古代や中世の文献には「インドラ、ヴィシュヌ、ブラフマナスパティ」や、「アグニ、インドラ、スーリヤ」、「アグニ、ヴァーユ、アーディティヤ」、「マハーラクシュミー、マハーサラスヴァティ、マハーカーリー」等といった組み合わせが見られる[1][2]
  2. ^ パドマ: ; カウモダキ: ガダー英語版と呼ばれる武器、こん棒のようなもの; パンチャジャナ: シャンカほら貝; スダルシャナ・チャクラ: チャクラムと呼ばれる武器
  3. ^ "viṣṇur viṣvater vā vyaśnoter vā""
  4. ^ "atha yad viṣito bhavati tad viṣnurbhavati"
  5. ^ 1.154.5, 1.56.3, 10.15.3.
  6. ^ Rig veda 1:27:13
  7. ^ 「神の瞑想(めいそう)に自らを沈めた者[60]」の意。詩人かつ聖人とされ、12人いるとされる。
  8. ^ 『バガヴァッド・ギーター』は解脱へ至る道としてカルマ・ヨーガ、バクティ・ヨーガ、ギャーナ・ヨーガの3つを提示する。
  9. ^ 中世ヒンドゥー教の文献にはこれとは異なるアヴァターラの一覧が見られる。例えば『バーガヴァタ・プラーナ (BP)』1.3には以下の22のアヴァターラを列挙する[94]。四クマーラ(チャトゥルサナ)[BP 1.3.6] – ブラフマーの4人の息子でバクティの手本 / ヴァラーハ [BP 1.3.7] / ナーラダ英語版 [BP 1.3.8] ヴィシュヌのバクタとして世界を旅行する聖人 / ナラ・ナーラーヤナ英語版 [BP 1.3.9] – 双子のリシ / カピラ [BP 1.3.10] – マハーバーラタで言及されている有名なリシで、カルダマとデーヴァフーティの子。サーンキヤ学派哲学の開祖とされることがある / ダッタートレーヤ英語版 [BP 1.3.11] – ヒンドゥー教のブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァの三神一体。リシのアトリの子で自身も優れたリシ / ヤジナ英語版 [BP 1.3.12] – 火の供犠の主で、天国の主であるインドラ / リシャバ [BP 1.3.13] – バラタバーフバリの父 / プリトゥ英語版 [BP 1.3.14] – 大地を牝牛として乳をしぼって穀物と樹木を得、また農業を発明した / マツヤ [BP 1.3.15] / クールマ [BP 1.3.16] / ダンヴァンタリ英語版 [BP 1.3.17] – アーユルヴェーダ医学の父でデーヴァの医師 / モーヒニー英語版 [BP 1.3.17] – 魅惑的女性 / ナラシンハ [BP 1.3.18] / ヴァーマナ [BP 1.3.19] / パラシュラーマ [BP 1.3.20], ヴィヤーサ [BP 1.3.21] – ヴェーダの編纂者、プラーナ文献と叙事詩マハーバーラタの著者 / ラーマ [BP 1.3.22] / クリシュナ [BP 1.3.23] / バララーマ [BP 1.3.23] / ブッダ [BP 1.3.24] / カルキ [BP 1.3.25]。39の重要なアヴァターラがパンチャラートラ英語版に語られている[95]
  10. ^ クールマのエピソードにはヴィシュヌの女性のアヴァターラであるモーヒニー英語版も登場する[98]
  11. ^ いくつかのバリエーションではクリシュナの兄であるバララーマを8番目のアヴァターラとし、クリシュナを9番目に置く。また、単純にブッダとバララーマを入れ替えるものもある。ジャヤデーヴァ(Jayadeva)は『ギータ・ゴーヴィンダ』の中でバララーマとブッダをリストに含め、クリシュナをヴィシュヌと同格として扱い、すなわちすべてのアヴァターラの源であるとしてクリシュナをダシャーヴァターラから省いている[108]
  12. ^ 中世の文献には「カルキン」と綴るパターンも見られる。
  13. ^ インド人真理はあらゆる言語表現を超えると考え,真理を指す最小限の表現として,たとえば〈それtat〉という言葉を用いる。〈そのように〉もこの種の表現であり,中国人は〈〉と訳した。したがって〈如来〉とは,〈真理そのものとして来たれる者〉の意となる[110]。」
  14. ^ ヒンドゥー教のサナターナ・ダルマを取り込んだシク教諸宗派の総称。

出典

[編集]
  1. ^ a b c David White (2006), Kiss of the Yogini, University of Chicago Press, ISBN 978-0226894843, pages 4, 29
  2. ^ a b c Jan Gonda (1969), The Hindu Trinity, Anthropos, Bd 63/64, H 1/2, pages 212-226
  3. ^ Jan Gonda (1969), The Hindu Trinity, Anthropos, Bd 63/64, H 1/2, pages 218-219
  4. ^ Orlando O. Espín; James B. Nickoloff (2007). An Introductory Dictionary of Theology and Religious Studies. Liturgical Press. p. 539. ISBN 978-0-8146-5856-7. https://books.google.com/books?id=k85JKr1OXcQC&pg=PA539 
  5. ^ a b Gavin Flood英語版, An Introduction to Hinduism (1996), p. 17.
  6. ^ Zimmer, Heinrich Robert. Myths and Symbols in Indian Art and Civilization. Princeton University Press. p. 124. ISBN 978-0-691-01778-5. https://books.google.com/books/about/Myths_and_Symbols_in_Indian_Art_and_Civi.html?id=PTfNMQP81nAC 
  7. ^ Fred S. Kleiner (2007). Gardner's Art through the Ages: Non-Western Perspectives. Cengage Learning. p. 22. ISBN 0495573671. https://books.google.co.in/books?id=TlVeuxIgjwQC&pg=PA22&dq=vishnu+ananta&hl=en&sa=X&redir_esc=y#v=onepage&q=vishnu%20ananta&f=false 
  8. ^ Swami Chinmayananda's translation of Vishnu sahasranama pgs. 16–17, Central Chinmaya Mission Trust.
  9. ^ a b c Harold Coward; Daniel C. Maguire (2000). Visions of a New Earth: Religious Perspectives on Population, Consumption, and Ecology. State University of New York Press. p. 113. ISBN 978-0-7914-4458-0. https://books.google.com/books?id=gkIwI84XajEC&pg=PA113 
  10. ^ Adluri, Vishwa; Joydeep Bagchee (February 2012). “From Poetic Immortality to Salvation: Ruru and Orpheus in Indic and Greek Myth”. History of Religions 51 (3): 245–246. doi:10.1086/662191. JSTOR 10.1086/662191. 
  11. ^ a b c d Klaus K. Klostermaier (2000). Hinduism: A Short History. Oneworld. pp. 83–84. ISBN 978-1-85168-213-3. https://books.google.com/books?id=l3LXAAAAMAAJ 
  12. ^ a b c d キャンベル 2004, p. 49.
  13. ^ キャンベル 2004, pp. 51–52.
  14. ^ a b キャンベル 2004, p. 50.
  15. ^ a b キャンベル 2004, p. 52.
  16. ^ a b c d Jan Gonda (1969). Aspects of Early Viṣṇuism. Motilal Banarsidass. pp. 1–2. ISBN 978-81-208-1087-7. https://books.google.com/books?id=b8urRsuUJ9oC 
  17. ^ Arthur Anthony Macdonell (1898). Vedic Mythology. Motilal Banarsidass (1996 Reprint). pp. 167–169. ISBN 978-81-208-1113-3. https://books.google.com/books?id=b7Meabtj8mcC 
  18. ^ Arthur Anthony Macdonell (1898). Vedic Mythology. Motilal Banarsidass (1996 Reprint). pp. 9–11, 167–169. ISBN 978-81-208-1113-3. https://books.google.com/books?id=b7Meabtj8mcC 
  19. ^ Arthur Anthony Macdonell (1898). Vedic Mythology. Motilal Banarsidass (1996 Reprint). pp. 18–19. ISBN 978-81-208-1113-3. https://books.google.com/books?id=b7Meabtj8mcC 
  20. ^ a b c d Klaus K. Klostermaier (2000). Hinduism: A Short History. Oneworld. pp. 84–85. ISBN 978-1-85168-213-3. https://books.google.com/books?id=l3LXAAAAMAAJ 
  21. ^ Alice Boner (1990). Principles of Composition in Hindu Sculpture: Cave Temple Period. Motilal Banarsidass. pp. 96–99. ISBN 978-81-208-0705-1. https://books.google.com/books?id=doQLZ21CGScC&pg=PA96 
  22. ^ Bettina Bäumer; Kapila Vatsyayan (1988). Kalātattvakośa: A Lexicon of Fundamental Concepts of the Indian Arts. Motilal Banarsidas. p. 251. ISBN 978-81-208-1044-0. https://books.google.com/books?id=8f38pN2lvhIC&pg=PA251 
  23. ^ J. Hackin (1994). Asiatic Mythology: A Detailed Description and Explanation of the Mythologies of All the Great Nations of Asia. Asian Educational Services. pp. 130–132. ISBN 978-81-206-0920-4. https://books.google.com/books?id=HAZrFhvqnTkC&pg=PA130 
  24. ^ Jan Gonda (1970). Viṣṇuism and Śivaism: a comparison. Bloomsbury Academic. pp. 71–72. ISBN 978-1474280808. https://books.google.com/books?id=d1YIAQAAIAAJ 
  25. ^ a b c d Klaus K. Klostermaier (2000). Hinduism: A Short History. Oneworld. pp. 85–87. ISBN 978-1-85168-213-3. https://books.google.com/books?id=l3LXAAAAMAAJ 
  26. ^ S. Giora Shoham (2010). To Test the Limits of Our Endurance. Cambridge Scholars. p. 116. ISBN 978-1-4438-2068-4. https://books.google.com/books?id=8_hOAQAAIAAJ 
  27. ^ History of Ancient Sanskrit Literature by Prof Max Muller. Printed by Spottiswoode and Co. New-Street Square London. page 533
  28. ^ Deussen 1997, p. 556.
  29. ^ Mahony 1998, p. 290.
  30. ^ Lamb 2002, p. 191.
  31. ^ William K. Mahony (1998). The Artful Universe: An Introduction to the Vedic Religious Imagination. State University of New York Press. p. 271. ISBN 978-0-7914-3579-3. https://books.google.com/books?id=B1KR_kE5ZYoC 
  32. ^ Moriz Winternitz; V. Srinivasa Sarma (1996). A History of Indian Literature. Motilal Banarsidass. pp. 217–224 with footnotes. ISBN 978-81-208-0264-3. https://books.google.com/books?id=JRfuJFRV_O8C 
  33. ^ Sen 1937, p. 26.
  34. ^ Rocher 1986, pp. 59–61.
  35. ^ Ariel Glucklich 2008, p. 146, Quote: The earliest promotional works aimed at tourists from that era were called mahatmyas..
  36. ^ White, David Gordon (2010-07-15). Sinister Yogis. p. 273 with footnote 47. ISBN 978-0-226-89515-4. https://books.google.com/books?id=IsSpbyjw5DMC&pg=PA273&lpg=PA273. 
  37. ^ J.M Masson (2012). The Oceanic Feeling: The Origins of Religious Sentiment in Ancient India. Springer Science. pp. 63 with footnote 4. ISBN 978-94-009-8969-6. https://books.google.com/books?id=swsrBgAAQBAJ&pg=PA63 
  38. ^ Rocher 1986, pp. 246–247.
  39. ^ Sucharita Adluri (2015), Textual authority in Classical Indian Thought: Ramanuja and the Visnu Purana, Routledge, ISBN 978-0415695756, pages 1-11, 18-26
  40. ^ Bhagavata Purana 1.2.11, vadanti tattattvavidas tattvaṃ yaj jñānam advayam / brahmeti paramātmeti bhagavāniti śabdyate
  41. ^ Bryant 2007, pp. 112.
  42. ^ a b Kumar Das 2006, pp. 172–173.
  43. ^ Rocher 1986, pp. 138–151.
  44. ^ Ravi Gupta and Kenneth Valpey (2013), The Bhagavata Purana, Columbia University Press, ISBN 978-0231149990, pages 3-19
  45. ^ Constance Jones and James Ryan (2007), Encyclopedia of Hinduism, Infobase, ISBN 978-0816054589, page 474
  46. ^ Bryant 2007, pp. 118.
  47. ^ Varadpande 1987, pp. 92–97.
  48. ^ Graham Schweig ( 2007), Encyclopedia of Love in World Religions (Editor: Yudit Kornberg Greenberg), Volume 1, ISBN 978-1851099801, pages 247-249
  49. ^ Bryant, ed. by Edwin F. (2007). Krishna : a sourcebook. New York: Oxford University Press. p. 18. ISBN 978-0-19-514891-6 
  50. ^ Stella Kramrisch (1994), The Presence of Siva, Princeton University Press, ISBN 978-0691019307, pages 205-206
  51. ^ a b Wendy Doniger (1988). Textual Sources for the Study of Hinduism. University of Chicago Press. pp. 71–73. ISBN 978-0-226-61847-0. https://books.google.com/books?id=YxoaUKmMG9gC&pg=PA71 
  52. ^ Stella Kramrisch (1993). The Presence of Siva. Princeton University Press. pp. 274–276. ISBN 0-691-01930-4. https://books.google.com/books?id=O5BanndcIgUC 
  53. ^ Bratindra Nath Mukherjee (2007). Numismatic Art of India: Historical and aesthetic perspectives. Indira Gandhi National Centre for the Arts. pp. 144, 161–162. ISBN 978-81-215-1187-2. https://books.google.com/books?id=NZXpAAAAMAAJ 
  54. ^ a b Bryant 2007, p. 7.
  55. ^ a b T. Padmaja (2002). Temples of Kr̥ṣṇa in South India: History, Art, and Traditions in Tamilnāḍu. Abhinav Publications. p. 27. ISBN 978-81-7017-398-4. https://books.google.com/books?id=pzgaS1wRnl8C&pg=PA27 
  56. ^ T. Padmaja (2002). Temples of Kr̥ṣṇa in South India: History, Art, and Traditions in Tamilnāḍu. Abhinav Publications. p. 28. ISBN 978-81-7017-398-4. https://books.google.com/books?id=pzgaS1wRnl8C&pg=PA28 
  57. ^ a b T. Padmaja (2002). Temples of Kr̥ṣṇa in South India: History, Art, and Traditions in Tamilnāḍu. Abhinav Publications. pp. 30–31. ISBN 978-81-7017-398-4. https://books.google.com/books?id=pzgaS1wRnl8C&pg=PA28 
  58. ^ John Stratton Hawley; Donna Marie Wulff (1982). The Divine Consort: Rādhā and the Goddesses of India. Motilal Banarsidass. pp. 238–244. ISBN 978-0-89581-102-8. https://books.google.com/books?id=j3R1z0sE340C&pg=PA238 
  59. ^ Guy L. Beck (2012). Alternative Krishnas: Regional and Vernacular Variations on a Hindu Deity. State University of New York Press. pp. 68–69. ISBN 978-0-7914-8341-1. https://books.google.com/books?id=K0XqbG0LKBUC 
  60. ^ 日本大百科全書(ニッポニカ). “コトバンク / アールワール”. The Asahi Shimbun Company / VOYAGE GROUP, Inc.. 2016年12月22日閲覧。
  61. ^ Olson, Carl (2007). The many colors of Hinduism: a thematic-historical introduction. Rutgers University Press英語版. pp. 231. ISBN 978-0-8135-4068-9 
  62. ^ Sheridan, Daniel (1986). The Advaitic Theism of the Bhagavata Purana. Columbia, Mo: South Asia Books. ISBN 81-208-0179-2 
  63. ^ J. A. B. van Buitenen英語版 (1996). “The Archaism of the Bhāgavata Purāṇa”. In S.S Shashi. Encyclopedia Indica. pp. 28–45. ISBN 978-81-7041-859-7 
  64. ^ Mystery of Angkor Wat Temple's Huge Stones Solved
  65. ^ a b Brown 1983, pp. 553–557
  66. ^ a b c Sheridan 1986, pp. 1–2, 17–25.
  67. ^ a b c Rukmani 1993, pp. 217–218
  68. ^ Murray Milner Jr. (1994). Status and Sacredness: A General Theory of Status Relations and an Analysis of Indian Culture. Oxford University Press. pp. 191–203. ISBN 978-0-19-535912-1. https://books.google.com/books?id=EdqMMcYQ7r8C 
  69. ^ Sheridan 1986, p. 23 with footnote 17;
    サンスクリット文: kāmasya nendriyaprītirlābho jīveta yāvatā / jīvasya tattvajijñāsā nārtho yaśceha karmabhiḥ //
    vadanti tattattvavidastattvaṃ yajjñānamadvayam / brahmeti paramātmeti bhagavāniti śabdyate // Source: Bhagavata Purana Archive
  70. ^ Brown 1998, p. 17.
  71. ^ a b Edwin Bryant (2004), Krishna: The Beautiful Legend of God: Srimad Bhagavata Purana Book X, Penguin, ISBN 978-0140447996, pages 43-48
  72. ^ Tapasyananda (1991). Bhakti Schools of Vedānta. Madras: Sri Ramakrishna Math. ISBN 81-7120-226-8. https://books.google.com/books?id=Q_VtAAAACAAJ 
  73. ^ Deepak Sarma (2007). Edwin F. Bryant. ed. Krishna: A Sourcebook. Oxford University Press. pp. 358–360. ISBN 978-0-19-972431-4. https://books.google.com/books?id=HVDqCkW1WpUC&pg=PA358 
  74. ^ Sharma, Chandradhar (1994). A Critical Survey of Indian Philosophy. Motilal Banarsidass. p. 373. ISBN 81-208-0365-5 
  75. ^ Stoker, Valerie (2011年). “Madhva (1238-1317)”. Internet Encyclopedia of Philosophy. 17 April 2016閲覧。
  76. ^ Stafford Betty (2010), Dvaita, Advaita, and Viśiṣṭādvaita: Contrasting Views of Mokṣa, Asian Philosophy: An International Journal of the Philosophical Traditions of the East, Volume 20, Issue 2, pages 215-224
  77. ^ Anand Rao (2004). Soteriologies of India. LIT Verlag Münster. p. 167. ISBN 978-3-8258-7205-2. https://books.google.com/books?id=UxGEy6m4N9kC&pg=PA167 
  78. ^ A Parasarthy (1983), Symbolism in Hinduism, Chinmaya Mission Publication, ISBN 978-8175971493, pages 91-92, 160-162
  79. ^ en:Template:Cite MWSD
  80. ^ John Muir, Original Sanskrit Texts on the Origin and History of the People of India - Their Religions and Institutions - Google ブックス, Volume 5, pp. 348-362 with footnotes
  81. ^ Rosen, Steven J. (1 January 2006). Essential Hinduism. Greenwood Publishing Group. p. 136. ISBN 978-0-275-99006-0. https://books.google.com/books?id=WuVG8PxKq_0C&pg=PA136 
  82. ^ For quotation defining the trimurti see Matchett, Freda. "The Purāṇas", in: Flood (2003), p. 139.
  83. ^ For the Trimurti system having Brahma as the creator, Vishnu as the maintainer or preserver, and Shiva as the transformer or destroyer see: Zimmer (1972) p. 124.
  84. ^ Alice Boner (1990), Principles of Composition in Hindu Sculpture: Cave Temple Period, Motilal Banarsidass, ISBN 978-8120807051, pages 89-95, 115-124, 174-184
  85. ^ TA Gopinatha Rao (1993), Elements of Hindu iconography, Vol 2, Motilal Banarsidass, ISBN 978-8120808775, pages 334-335
  86. ^ For Harirudra citation to Mahabharata 3:39:76f see: Hopkins (1969), p. 221.
  87. ^ Kinsley, David (2005). Lindsay Jones. ed. Gale's Encyclopedia of Religion. 2 (Second ed.). Thomson Gale. pp. 707–708. ISBN 0-02-865735-7 
  88. ^ a b c Matchett, Freda (2001). Krishna, Lord or Avatara?: the relationship between Krishna and Vishnu. 9780700712816. p. 4. ISBN 978-0-7007-1281-6. https://books.google.com/?id=1oqTYiPeAxMC&pg=PA4 
  89. ^ a b James Lochtefeld 2002, p. 228.
  90. ^ King, Anna S. (2005). The intimate other: love divine in Indic religions. Orient Blackswan. pp. 32–33. ISBN 978-81-250-2801-7. https://books.google.com/?id=0FvH1aCXETwC&pg=PA32 
  91. ^ Bryant, Edwin Francis (2007). Krishna: A Sourcebook. Oxford University Press US. p. 18. ISBN 978-0-19-514891-6. https://books.google.com/?id=0z02cZe8PU8C&pg=PT32 
  92. ^ a b Mishra, Vibhuti Bhushan (1973). Religious beliefs and practices of North India during the early mediaeval period, Volume 1. BRILL. pp. 4–5. ISBN 978-90-04-03610-9. https://books.google.com/?id=nAQ4AAAAIAAJ 
  93. ^ Rukmani, T. S. (1970). A critical study of the Bhagavata Purana, with special reference to bhakti. Chowkhamba Sanskrit studies. 77. Varanasi: Chowkhamba Sanskrit Series. p. 4 
  94. ^ Bhag-P 1.3 Archived 2013年5月21日, at the Wayback Machine. Canto 1, Chapter 3
  95. ^ Schrader, Friedrich Otto (1916). Introduction to the Pāñcarātra and the Ahirbudhnya saṃhitā. Adyar Library. p. 42. https://books.google.com/?id=OlgLAQAAIAAJ 
  96. ^ Matchett 2001, p. 160.
  97. ^ James Lochtefeld 2002, pp. 228–229.
  98. ^ a b James Lochtefeld 2002, pp. 705–705.
  99. ^ James Lochtefeld 2002, p. 119.
  100. ^ James Lochtefeld 2002, pp. 421–422.
  101. ^ a b James Lochtefeld 2002, p. 737.
  102. ^ James Lochtefeld 2002, pp. 500–501.
  103. ^ James Lochtefeld 2002, pp. 550–552.
  104. ^ James Lochtefeld 2002, pp. 370–372.
  105. ^ Daniel E Bassuk (1987). Incarnation in Hinduism and Christianity: The Myth of the God-Man. Palgrave Macmillan. pp. 40. ISBN 978-1-349-08642-9. https://books.google.com/books?id=k3iwCwAAQBAJ 
  106. ^ Sheth 2002, p. 117 with notes 12 and 13.
  107. ^ James Lochtefeld 2002, p. 128.
  108. ^ Gopal, Madan (1990). K.S. Gautam. ed. India through the ages. Publication Division, Ministry of Information and Broadcasting, Government of India. p. 74 
  109. ^ group"注"
  110. ^ Kotobank 2015, p. にょらい【如来】.
  111. ^ キャンベル 2004, p. 51.
  112. ^ キャンベル 2004, p. 53.
  113. ^ キャンベル 2004, p. 54.
  114. ^ Nikky-Guninder Kaur Singh (2011). Sikhism: An Introduction. I.B. Tauris. p. 65. ISBN 978-1-84885-321-8. https://books.google.com/books?id=e0ZmAXw7ok8C&pg=PA65 
  115. ^ Christopher Shackle; Arvind Mandair (2013). Teachings of the Sikh Gurus: Selections from the Sikh Scriptures. Routledge. pp. 5–6. ISBN 978-1-136-45101-0. https://books.google.com/books?id=VvoJV8mw0LwC 
  116. ^ a b Harjot Oberoi (1994). The Construction of Religious Boundaries: Culture, Identity, and Diversity in the Sikh Tradition. University of Chicago Press. pp. 97–98. ISBN 978-0-226-61593-6. https://books.google.com/books?id=dKl84EYFkTsC 
  117. ^ Sanatan Singh Sabha, Overview of World Religions, Division of Religion and Philosophy, University of Cumbria
  118. ^ a b Micheal Jacq-Hergoualc'h; Victoria Hobson (Translator) (2002). The Malay Peninsula: Crossroads of the Maritime Silk-Road (100 BC-1300 AD). BRILL Academic. p. xxiii, 116–128. ISBN 90-04-11973-6. https://books.google.com/books?id=a5rG6reWhloC&pg=PR23 
  119. ^ Swarna Wickremeratne (2012). Buddha in Sri Lanka: Remembered Yesterdays. State University of New York Press. p. 111. ISBN 978-0791468814. https://books.google.com/books?id=cYrQnZT9JREC 
  120. ^ Swarna Wickremeratne (2012). Buddha in Sri Lanka: Remembered Yesterdays. State University of New York Press. p. 226. ISBN 978-0791468814. https://books.google.com/books?id=cYrQnZT9JREC 
  121. ^ John Guy (2014). Lost Kingdoms: Hindu-Buddhist Sculpture of Early Southeast Asia. Metropolitan Museum of Art. pp. 131–135, 145. ISBN 978-1-58839-524-5. https://books.google.com/books?id=vO_-AgAAQBAJ&pg=PA131 
  122. ^ John Guy (2014). Lost Kingdoms: Hindu-Buddhist Sculpture of Early Southeast Asia. Metropolitan Museum of Art. pp. 146–148, 154–155. ISBN 978-1-58839-524-5. https://books.google.com/books?id=vO_-AgAAQBAJ&pg=PA146 
  123. ^ John Guy (2014). Lost Kingdoms: Hindu-Buddhist Sculpture of Early Southeast Asia. Metropolitan Museum of Art. pp. 7–9. ISBN 978-1-58839-524-5. https://books.google.com/books?id=vO_-AgAAQBAJ&pg=PA146 
  124. ^ John Guy (2014). Lost Kingdoms: Hindu-Buddhist Sculpture of Early Southeast Asia. Metropolitan Museum of Art. pp. 11–12, 118–129. ISBN 978-1-58839-524-5. https://books.google.com/books?id=vO_-AgAAQBAJ&pg=PA146 
  125. ^ John Guy (2014). Lost Kingdoms: Hindu-Buddhist Sculpture of Early Southeast Asia. Metropolitan Museum of Art. pp. 221–225. ISBN 978-1-58839-524-5. https://books.google.com/books?id=vO_-AgAAQBAJ&pg=PA146 
  126. ^ Nichiren (1987). The Major Writings of Nichiren Daishonin. Nichiren Shoshu International Center. p. 1107. ISBN 978-4-88872-012-0. https://books.google.com/books?id=YxoHJwAACAAJ , Alternate site: Archive
  127. ^ Alexander Lubotsky (1996), The Iconography of the Viṣṇu Temple at Deogarh and the Viṣṇudharmottarapurāṇa, Ars Orientalis, Vol. 26 (1996), page 65
  128. ^ Alexander Lubotsky (1996), The Iconography of the Viṣṇu Temple at Deogarh and the Viṣṇudharmottarapurāṇa, Ars Orientalis, Vol. 26 (1996), pages 66-80
  129. ^ a b Bryant 2007, p. 18 with footnote 19.
  130. ^ Doris Srinivasan (1997). Many Heads, Arms, and Eyes: Origin, Meaning, and Form of Multiplicity in Indian Art. BRILL Academic. pp. 211–220, 240–259. ISBN 90-04-10758-4. https://books.google.com/books?id=vZheP9dIX9wC 
  131. ^ [a] Doris Srinivasan (1989). Mathurā: The Cultural Heritage. Manohar. pp. 389–392. ISBN 978-81-85054-37-7. https://books.google.com/books?id=82vtCre6vTcC ;
    [b] Doris Srinivasan (1981). “Early Krishan Icons: the case at Mathura”. In Joanna Gottfried Williams. Kalādarśana: American Studies in the Art of India. BRILL Academic. pp. 127–136. ISBN 90-04-06498-2. https://books.google.com/books?id=-qoeAAAAIAAJ 
  132. ^ Keralas Sree Padmanabha Swamy temple may reveal more riches”. India Today (2011年7月7日). 2016年10月8日閲覧。
  133. ^ Pomfret, James (2011年8月19日). “Kerala temple treasure brings riches, challenges”. Reuters India. 2016年10月8日閲覧。
  134. ^ Blitzer, Jonathan (2012年4月23日). “The Secret of the Temple”. The New Yorker. 2016年10月8日閲覧。
  135. ^ http://www.forbes.com/forbes/welcome/?toURL=http://www.forbes.com/sites/jimdobson/2015/11/13/a-one-trillion-dollar-hidden-treasure-chamber-is-discovered-at-indias-sree-padmanabhaswam-temple/&refURL=https://www.google.co.in/&referrer=https://www.google.co.in/
  136. ^ Mittal & Thursby 2005, p. 456.
  137. ^ リチャード・レヴィトン英語版 (1871). Ten Great Religions: an Essay in Comparative Theology. Trübner & Company. p. 247 
  138. ^ リチャード・レヴィトン英語版 (2002). What's Beyond That Star: A Chronicle of Geomythic Adventure. Clairview Books. p. 160 
  139. ^ James Cowles Prichard英語版 (1819). An Analysis of the Egyptian Mythology: To which is Subjoined a Critical Examination of the Remains of Egyptian Chronology. J. and A. Arch. p. 285 
  140. ^ Vishnu & 4034 Vishnu Asteroid – Pasadena, CA – Extraterrestrial Locations on Waymarking.com
  141. ^ Vishnu Temple at the Grand Canyon – The Panda's Thumb
  142. ^ Ancient Vishnu idol found in Russian town" Times of India 4 Jan 2007

参考文献

[編集]

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]