ブライアン・ウィルソン (アルバム)
『ブライアン・ウィルソン』 | ||||
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ブライアン・ウィルソン の スタジオ・アルバム | ||||
リリース | ||||
ジャンル | ロック、ポップス | |||
時間 | ||||
レーベル | サイアー・レコード/リプリーズ・レコード | |||
プロデュース |
ブライアン・ウィルソン(all songs) ラス・タイトルマン(#1, #3, #4, #5, #7, #8) ジェフ・リン(#9) アンディ・ペイリー(#10, #11) レニー・ワロンカー(#11) | |||
専門評論家によるレビュー | ||||
チャート最高順位 | ||||
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ブライアン・ウィルソン アルバム 年表 | ||||
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『ブライアン・ウィルソン』(Brian Wilson)は、アメリカ合衆国のミュージシャン、ブライアン・ウィルソンが1988年に発表した、ソロ名義では初のスタジオ・アルバム。
背景
[編集]ウィルソンは1975年、当時の妻マリリンによって雇われた精神科医ユージン・ランディの治療を受け始める[4]。ランディは1976年に一度解任されるが、1983年より再びウィルソンの治療に当たる[4]。そして、ウィルソンが1987年の映画『ポリスアカデミー4 市民パトロール』のサウンドトラックに提供した曲「Let's Go to Heaven in My Car」では、ランディが共作者及びエグゼクティブ・プロデューサーとしてクレジットされた[5]。
ランディは本作の初回盤のクレジットでもエグゼクティブ・プロデューサーとして記載され、更に11曲中5曲で共作者としても名を連ねた[6]。なお、一部の曲で共作者としてクレジットされたアレクサンドラ・モーガンは、ランディの妻である[4]。ただし、ランディは治療と称して過度な介入をした(俗に言うマインド・コントロール)として1992年にウィルソンとの接触を禁じられ[4]、2000年にライノ・エンタテインメントから発売された本作の再発盤では、ランディ及びモーガンの名前が作曲クレジットから外された[7]。
ウィルソンはアンディ・ペイリーの助力によってサイアー・レコードとの契約を獲得し[8]、ペイリーは本作でも一部の曲で共同プロデューサーを務めた。
作詞・作曲
[編集]「ラヴ・アンド・マーシー」は、ウィルソンがピアノでバート・バカラック&ハル・デヴィッド作の曲「世界は愛を求めている」を弾いていた時に思いついた曲で、1999年のツアーではコンサートを締め括る曲となった[8]。なお、この曲は後年、ウィルソンの伝記映画『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』のエンド・クレジットで使用されている[9]。
ドリーム・アカデミーのメンバーとして知られるニック・レアード=クルーズと共作した「ウォーキン・ザ・ライン」は、ウィルソン自身によれば「いつ落っこちるかわからない薄氷の上を歩いてきた」自分自身を描写した歌詞とのことである[10]。「ワン・フォー・ザ・ボーイズ」は、ウィルソンが在籍していたザ・ビーチ・ボーイズに捧げられた曲で、当初のタイトルは「There We Were」だった[8]。「レット・イット・シャイン」はジェフ・リンとの共作で、リンが曲の大部分を完成させた後、ウィルソンが冒頭のコーラス・パートを追加した[8]。
フリートウッド・マックのリンジー・バッキンガムと共作した「ヒー・クドゥント・ゲット・ヒズ・プア・オールド・ボディ・トゥ・ムーヴ」は、ウィルソンによれば「脳で物事を考えたいなら、運動することが世界で一番大事だ」というメッセージの込められた曲で[8]、この曲はシングル「ラヴ・アンド・マーシー」のB面に収録され[11]、アルバム本編から外されていたが、2000年リマスターCDではボーナス・トラックとして追加された。
反響・評価
[編集]母国アメリカでは13週にわたりBillboard 200入りして、最高54位を記録した[3]。また、スウェーデンのアルバム・チャートでは4回(8週)トップ40入りし、最高23位となった[1]。
Richie Unterbergerはオールミュージックにおいて5点満点中3点を付け、本作の音作りを「1980年代後期のプロダクションにおける、魅力に欠ける面を象徴した、無味乾燥でシンセサイザーが幅を利かせたアレンジと、エコーの強調されたパーカッション」、楽曲を「ウィルソンの中でも特に優れた部類ではない」と批判する一方、「リオ・グランデ」に関しては「ウィルソンが『スマイル』期に書いたミニチュアのコンセプト組曲の雄大さに匹敵する、唯一ある程度の成功に至った試み」と評している[12]。一方、クリス・ウィルマンは2000年、『エンターテインメント・ウィークリー』誌のレビューで本作にAを付け「もしフル・バンドを従えた作品で、弟カールのボーカルもあれば、1960年代以来となるビーチ・ボーイズの傑作となっていただろう」と評している[13]。『NME』誌が選出した1988年の「アルバム・オブ・ザ・イヤー」では32位となった[14]。
収録曲
[編集]ライノ・エンタテインメントから2000年に発売されたリマスターCDに準拠。初回盤では1. 2. 3. 7. 8.にユージン・ランディ、2. 7. 8.にアレクサンドラ・モーガンも共作者としてクレジットされていた。
- ラヴ・アンド・マーシー - "Love and Mercy" (Brian Wilson) - 2:55
- ウォーキン・ザ・ライン - "Walkin' the Line" (B. Wilson, Nick Laird-Clowes) - 2:40
- メルト・アウェイ - "Melt Away" (B. Wilson) - 3:01
- ベイビー・レット・ユア・ヘア・グロウ・ロング - "Baby Let Your Hair Grow Long" (B. Wilson) - 3:17
- リトル・チルドレン - "Little Children" (B. Wilson) - 1:50
- ワン・フォー・ザ・ボーイズ - "One for the Boys" (B. Wilson) - 1:50
- ゼアズ・ソー・メニー - "There's So Many" (B. Wilson) - 2:47
- ナイト・タイム - "Night Time" (B. Wilson, Andy Paley) - 3:38
- レット・イット・シャイン - "Let It Shine" (B. Wilson, Jeff Lynne) - 3:58
- 夢で逢いましょう - "Meet Me in My Dreams Tonight" (B. Wilson, A. Paley, Andy Dean) - 3:06
- リオ・グランデ - "Rio Grande" (B. Wilson, A. Paley) - 8:15
2000年リマスターCDボーナス・トラック
[編集]- ブライアン「ラヴ・アンド・マーシー」を語る - "Brian on "Love and Mercy"" - 2:23
- ヒー・クドゥント・ゲット・ヒズ・プア・オールド・ボディ・トゥ・ムーヴ - "He Couldn't Get His Poor Old Body to Move" (B. Wilson, Lindsey Buckingham) - 2:36
- ビーイング・ウィズ・ザ・ワン・ユー・ラヴ - "Being With the One You Love" (B. Wilson) - 2:35
- 僕の車で天国へ - "Let's Go to Heaven in My Car " (B. Wilson, Gary Usher) - 3:40
- トゥー・マッチ・シュガー - "Too Much Sugar" (B. Wilson) - 2:38
- ゼアズ・ソー・メニー(デモ) - "There's So Many (Demo)" (B. Wilson) - 1:53
- ウォーキン・ザ・ライン(デモ) - "Walkin' the Line (Demo)" (B. Wilson, N. Laird-Clowes) - 2:51
- メルト・アウェイ(アーリー・ラフ・ミックス) - "Melt Away (Early Version - Alternate Vocal)" (B. Wilson) - 2:03
- ナイト・タイム(トラック・ミックス) - "Night Time (Instrumental)" (B. Wilson, A. Paley) - 4:05
- リトル・チルドレン(デモ) - "Little Children (Demo)" (B. Wilson) - 2:01
- ナイト・ブルーミン・ジャスミン(デモ) - "Night Bloomin' Jasmine (Demo)" (B. Wilson) - 2:20
- リオ・グランデ(コンパイルド・ラフ・ミックス) - "Rio Grande (Early Version - Compiled Rough Mixes)" (B. Wilson, A. Paley) - 6:07
- ブライアン「リオ・グランデ」を語る - "Brian on "Rio Grande"" - 1:20
- ブライアン、音楽とレコードについて語る - "Brian on "The Source"" - 1:04
- "Brian Fan Club X-Mas Message" - 0:54
参加ミュージシャン
[編集]- ブライアン・ウィルソン - ボーカル、ピアノ、オルガン、キーボード、エミュレータ、ヴィブラフォン、ベル、チャイム、グロッケンシュピール、パーカッション、サウンド・エフェクト、ボーカル・アレンジ
- アンディ・ペイリー - エレクトリック・ギター、アコースティック・ギター、ベース、ドラムス、パーカッション、キーボード、ハーモニカ、アディショナル・バックグラウンド・ボーカル
- マイケル・バーナード - コンピューター、シンセサイザー・プログラミング、ドラムス、キーボード、パーカッション
- テレンス・トレント・ダービー - バックグラウンド・ボーカル(on #2)
- ラス・タイトルマン - バックグラウンド・ボーカル(on #2)
- クリストファー・クロス - バックグラウンド・ボーカル(on #8)
- マイケル・アンドレアス - フルート、サクソフォーン
- ザ・ベイサイド・ブルーグラス・バンド - マンドリン、バンジョー、ベース、アコースティック・ギター
- スチュアート・ブランバーグ - トランペット
- ジェフ・ボヴァ - キーボード、プログラミング
- ジミー・ブラロウアー - ドラム・プログラミング、シェイカー
- ランス・ブラー - トランペット
- ロビー・コンドー - シンセサイザー・プログラミング、キーボード
- アンドリュー・ディーン - キーボード、ヴィブラフォン、パーカッション、シンセサイザー・プログラミング、ベル
- エリオット・イーストン - ギター
- トッド・ヘールマン - フェアライト
- トリス・インボーデン - ドラムス、シンバル、ハイハット
- ハイメン・カッツ - フルート、ピッコロ
- ロビー・キルゴア - キーボード・プログラミング
- ハリー・キム - トランペット
- ケヴィン・S・レスリー - フットステップ
- スティーヴ・リンゼイ - シンセサイザー・プログラミング、キーボード
- ジェフ・リン - キーボード、ベース、6弦ベース、ギター
- ジェイ・ミグリオリ - バリトン・サクソフォーン
- フランク・モロッコ - アコーディオン
- ロブ・マウンジー - エミュレータ・ティンパニ、ピアノ、シンセ・ギター、エミュレータ・チェロ
- ディーン・パークス - ギター
- ボブ・ライリー - ドラムマシン
- フィリップ・セス - キーボード、シンセサイザー・プログラミング
- トニー・サルヴェイジ - ヴァイオリン、ミュージックソー
- キャロル・スティール - パーカッション
- ラリー・ウィリアムズ - ホーン、サクソフォーン・ソロ、シンセサイザー・プログラミング、キーボード
脚注・出典
[編集]- ^ a b swedishcharts.com - Brian Wilson - Brian Wilson
- ^ australian-charts.com - Brian Wilson - Brian Wilson
- ^ a b “Brian Wilson Chart History - Billboard 200”. Billboard. 2023年1月29日閲覧。
- ^ a b c d Fox, Margalit (2006年3月30日). “Eugene Landy, Therapist to Beach Boys' Leader, Dies at 71”. New York Times. 2017年5月21日閲覧。
- ^ Brian Wilson - Let's Go To Heaven In My Car (Vinyl) at Discogs
- ^ Brian Wilson - Brian Wilson (Vinyl, LP, Album) at Discogs - 1988年初回盤の情報
- ^ Lindsay, Cam (2008年8月26日). “The Mad Genius of Brian Wilson”. Exclaim!. 2017年5月21日閲覧。
- ^ a b c d e 2000年リマスターCD (Warner Archives / Rhino, 8122-79960-2)ライナーノーツ(David Leaf、2000年)
- ^ “Top 10 Scenes From 'Love & Mercy'”. Ultimate Classic Rock. Diffuser Network. 2017年5月21日閲覧。
- ^ “Walkin' the Line by Brian Wilson”. Songfacts. 2017年5月21日閲覧。
- ^ Brian Wilson - Love And Mercy (Vinyl) at Discogs
- ^ Unterberger, Richie. “Brian Wilson - Brian Wilson”. AllMusic. 2017年5月21日閲覧。
- ^ Willman, Chris (2000年9月8日). “Music Review: 'Brian Wilson'”. Entertainment Weekly. Time Inc. 2017年5月21日閲覧。
- ^ “1988 Best Albums And Tracks Of The Year”. NME.com. Time Inc. (UK). 2017年5月21日閲覧。
- ^ “Now Available: Brian Wilson, Brian Wilson”. Rhino Entertainment. 2017年5月21日閲覧。
外部リンク
[編集]- ブライアン・ウィルソン - Discogs (発売一覧)