コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

ブラッドリー・M・クーン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Bradley M. Kuhn
生誕 1973年????
アメリカ合衆国の旗 アメリカメリーランド州ボルチモア
職業 代表取締役(Executive director) - Software Freedom Conservancy
公式サイト http://www.ebb.org/bkuhn/
テンプレートを表示

ブラッドリー・M・クーン(Bradley M. Kuhn1973年 - )はアメリカ合衆国フリーソフトウェア運動における活動家である。

クーンは現在、Software Freedom Conservancy代表取締役を務めている[1]2010年まで彼は、Software Freedom Law Center (SFLC)のFLOSSコミュニティ折衝担当ならびに技術理事(FLOSS Community Liaison and Technology Director)を務めていた。それ以前、2001年から2005年3月まで彼はフリーソフトウェア財団(Free Software Foundation; FSF)の執行役員(Executive director)を務めていた。彼は2010年3月までFSFの理事(Member of board directors)にも選出されていた[2]

彼はFSF、SFLC双方にて、GPLライセンス施行に関する改善に尽力したことでもっとも有名であり、また、FSFのライセンスリストの作成、AGPLのAffero条項(Affero節)の元となった条文の作成などにも貢献している。彼はFLOSS開発における非営利的構造の側面を長らく支持し続けており、Software Freedom Conservancyでの活動を通じて、この方面への努力を傾けている。

学業ならびに初期の職歴

[編集]

クーンは、大学準備学校英語版(College-preparatory school; カレッジ=プレパラトリー・スクール)のロヨラ・ブレイクフィールド英語版校を卒業ののち、ロヨラ大学英語版に進学し、1995年5月計算機科学学位首席(summa cum laude)で得て卒業した[3]。クーンは、シンシナティ大学大学院の計算機科学科に入学した。大学院の指導教官は、ジョン・フランコ(John Franco)[4]だった[5]。クーンは論文作成のため学生奨学金USENIXより授与されていた[6]。彼の論文は、Java仮想マシンPerl移植することを一例として、フリーソフトウェアによる言語との動的な相互運用性をどのように確保するかということを取りあげたものだった[5][7]ラリー・ウォールはクーンの査読委員(Thesis committee)を務めている。クーンの論文は、スタックベースの仮想機械をPerlで利用する場合に際し様々な問題があることを明らかにしたが、のちにこの発見がParrot仮想機械プロジェクト立ち上げの根拠の一部になっている。

クーンは、Raku RFC(Request for Comments)プロセスにおける活発な参加者であり、同プロセスにおけるRakuのライセンシングに関する筆頭委員(head of perl6-licensing committee)だった[8]。彼は、ライセンスに関するプロセスに提案された全てのRFCの著作者である[9][10][11]

クーンは、在学中の1998年から1999年にかけて、ウォルナット・ヒルズ・ハイ・スクール英語版の計算機科学に関する大学単位認可プログラム(Advanced Placement, AP)[注釈 1]において教鞭をふるっている[12]。彼はこのプログラムにて、生徒に独力でGNU/Linuxベースのラボを構築するよう指導している[13]

クーンは大学院在学中にフリーソフトウェア財団ボランティアとして多く関わっており、2000年1月には、リチャード・ストールマンの補佐として非常勤で雇用されている。この間、クーンが職務を遂行する様子がメーリングリストにて見られる[14]。FSFにおけるクーンの業務において、初期には、彼はFSFのライセンスリストページの作成と管理を提案し、ライセンスの氾濫に関する問題を提起していた[15]

クーンはまたこの間、Cincinnati Linux User Groupの初期からの活発なメンバーであり、1998年には理事(Board of Directors)を務めており[16]、 多数のプレゼンテーションを残している[17]

非営利活動

[編集]

クーンは高等学校卒業ののち、計算機科学に関する職歴を歩み始めたが、短い期間プロプライエタリソフトウェアの開発に携わっていたことがあった。彼はこの職業分野においてつらい経験し、このことは彼が非営利団体での職務にこだわる動機の一つとなった。大学卒業後から大学院在学中またそれ以降、クーンはさらなる職歴を刻むことになったが、全て非営利団体であった[18]。彼は2000年後期にはFSFにてフルタイムで雇用されており、2001年3月には、執行役員(Executive director)に就任している。彼はFSFの賛助会員キャンペーン(FSF's Associate Membership campaign)を立ち上げ、FSFのGNU General Public License (GPL)違反是正のための運動をGPLコンプライアンス・ラボ(GPL Compliance Labs)という形で公式な組織として発足させ[19]SCOに関する訴訟に対するFSFの対抗措置を先導し[20]AGPLのAffero条項(Affero clause)の元となる条文を作成、生涯法曹教育英語版(Continuing legal education, CLE)プログラムの講義にて、弁護士などの法曹関係者に向けて、GPLについての法的な解説を頻繁に行っていた[21][22]

クーンは2005年3月エベン・モグレンダニエル・ラヴィチャー英語版らと共にSoftware Freedom Law Center(SFLC)立ち上げ準備に取りかかるため、FSFを離れ[23]、のち2006年4月には、Software Freedom Conservancyも設立している[24]

FSFとSFLC双方において、クーンは米国におけるGPL違反是正に関し、重要な役割を果たしてきた[25][26][27]。SFLCにおいて、彼は、GPLv3の草稿作成において、エベン・モグレンリチャード・ストールマンそしてリチャード・フォンタナを技術面・法的面双方でサポートし、stetと呼ばれる、GPLv3のコメント受付のためのソフトウェア校正システムの作成を管理していた[28][29]。彼は、GPLv3にAffero条項を導入するよう強く薦めていた。そして、固有のライセンスへのAffero条項の移行の決定がなされたのち、Affero条項を明確に導入したAGPL v3の作成を支援していた。

2010年までクーンは、Software Freedom Law CenterFLOSSコミュニティ折衝担当ならびに技術理事(FLOSS Community Liaison and Technology Director)を務め、関連組織であるSoftware Freedom Conservancy代表(President)を務めていた。2010年彼は、Software Freedom Conservancyの首席取締役(First Executive Director)に就任した[1]

2010年10月まで[30]、クーンはSFLCの首席顧問(General Counsel)である、カレン・M・サンドラー(Karen M. Sandler)と共に、FLOSS界における、法律・政治・その他の問題について語るポッドキャストFree as in Freedom (FaiF)[31]の主催を務めていた。以前2年間ほど、クーンとサンドラーは似たようなポッドキャストである、Software Freedom Law Showも主催していた[32]

ポーカー

[編集]

クーンは、熱心なポーカープレイヤーであり、2002年から2007年まで不定期にプロとしての活動を行っていた[33]2008年1月からは、彼はロイク・ダシャリー英語版が作成・管理を行い、GPLで配布されているオンライン・ポーカー・システムのPokersource[34]プロジェクトへの貢献を行っている[35]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 大学教員・大学院生が高等学校において開講する一種の飛び級授業。

出典

[編集]
  1. ^ a b Software Freedom Conservancy Appoints Full-Time Executive Director”. Software Freedom Conservancy (2010年10月4日). 2011年2月26日閲覧。
  2. ^ Peter Brown英語版 (2010年3月25日). “Bradley Kuhn Joins the FSF Board”. Free Software Foundation. 2011年2月27日閲覧。
  3. ^ Loyola College in Maryland, Department of Computer Science英語版 (1995年). “Alumni: Class of 1995”. 2008年7月5日閲覧。
  4. ^ John Franco, UC Professor of Computer Science”. gauss.ececs.uc.edu. 2011年2月27日閲覧。
  5. ^ a b University of Cincinnati (2001年1月). “Considerations on Porting Perl to the Java Virtual Machine”. OhioLINK ETD. 2011年2月27日閲覧。
  6. ^ USENIX (1998年9月). “Student Research Grants”. 2008年7月5日閲覧。
  7. ^ Kuhn, Bradley (2001-01). Considerations on Porting Perl to the Java Virtual Machine. University of Cincinnati. http://www.ebb.org/bkuhn/articles/thesis/ 2008年6月28日閲覧。. 
  8. ^ Kuhn, Bradley (2000-08-02). The Copyright and Licensing Working Group. The Perl Foundation. http://dev.perl.org/perl6/rfc/13.html 2008年6月28日閲覧。. 
  9. ^ Kuhn, Bradley (2000-10-01). Perl6's License Should be (GPL or Artistic-2.0). The Perl Foundation. http://dev.perl.org/perl6/rfc/346.html 2008年6月28日閲覧。. 
  10. ^ Kuhn, Bradley (2000-09-12). The Artistic License Must Be Changed. The Perl Foundation. http://dev.perl.org/perl6/rfc/211.html 2008年6月28日閲覧。. 
  11. ^ Kuhn, Bradley (2000-09-13). Perl6's License Should Be a Minor Bugfix of Perl5's License. The Perl Foundation. http://dev.perl.org/perl6/rfc/219.html 2008年6月28日閲覧。. 
  12. ^ Rura, Shimon (2008年1月27日). “Proudest Non-software Hack”. 2011年2月27日閲覧。
  13. ^ Camilla Warrick (1998年12月8日). “Walnut Hills students convert computers at fraction of cost”. The Cincinnati Post. オリジナルの2000年4月25日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20000425233820/http://www.cincypost.com/living/1998/shimon081298.html 2008年7月5日閲覧。 
  14. ^ Kuhn, Bradley (1 April 2000). "RMSに直接送信されたメッセージをメーリングリストにフォワードするクーン。". gcc@gcc.gnu.org (Mailing list). 2008年7月5日閲覧
  15. ^ 最初期のライセンスリスト(現在はアーカイブされている)には作成者がbkuhnであると記載されている。( Bradley M. Kuhn (2000年8月15日). “Various Licenses and Comments about Them”. Free Software Foundation. 2000年8月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年7月5日閲覧。)
  16. ^ Cincinnati GNU/Linux Users Group (1998年11月30日). “Minutes from November CLUG Meeting”. 2000年8月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年7月5日閲覧。
  17. ^ Cincinnati GNU/Linux Users Group (2000年12月4日). “CLUG Presentations”. 2000年12月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年7月5日閲覧。
  18. ^ Varghese, Sam (2011年6月6日). “Bradley Kuhn: a life devoted to Free Software” (英語). iTWire. http://www.itwire.com/opinion-and-analysis/open-sauce/47630-brad-kuhn-a-life-devoted-to-free-software 2011年6月9日閲覧。 
  19. ^ Corbet, Jonathan (2002年11月13日). “The FSF GPL Compliance Lab” (英語). Linux Weekly News英語版. http://lwn.net/Articles/15342/ 2008年7月5日閲覧。 
  20. ^ Kuhn, Bradley (2004年5月18日). “The SCO Subpoena of FSF (SCOによるFSFの召喚状)”. Free Software Foundation. 2011年2月28日閲覧。
  21. ^ Free Software Foundation (2003年6月). “FSF Bulletin - Issue No.2 - June 2003”. Free Software Foundation. 2008年7月4日閲覧。
  22. ^ 2004年1月、クーンがセミナーで教鞭をふるう旨の記載が再度書かれているFSFのプレスリリース。( "FSF To Host Free Software Licensing Seminars and Discussions on SCO v. IBM in New York" (Press release). Free Software Foundation. 2 January 2004. 2008年7月4日閲覧)
  23. ^ Gasperson, Tina (2008年4月19日). “Bradley Kuhn makes a better world through software freedom” (英語). Linux.com. p. 1. http://www.linux.com/archive/feature/132573 2008年7月5日閲覧。 
  24. ^ ScuttleMonkey (2006年4月3日). “New Conservancy Offers Gratis Services to FOSS” (英語). Slashdot. http://tech.slashdot.org/story/06/04/03/1847227/New-Conservancy-Offers-Gratis-Services-to-FOSS 2011年2月27日閲覧。 
  25. ^ Meeker, Heather (2005年6月28日). “The Legend of Linksys”. Linux Insider. http://www.linuxinsider.com/story/43996.html 2010年10月1日閲覧。 
  26. ^ Turner, David; Bradley M. Kuhn (2003年9月29日). “Linksys/Cisco GPL Violations”. LWN.net英語版. 2007年8月11日閲覧。
  27. ^ Landley, Rob (21 September 2006). "svn commit: trunk/busybox: applets include". busybox@busybox.net (Mailing list). 2008年7月5日閲覧
  28. ^ Gasperson, Tina (2008年4月19日). “Bradley Kuhn makes a better world through software freedom” (英語). Linux.com. p. 3. http://www.linux.com/archive/feature/132573 2011年2月28日閲覧。 
  29. ^ Kuhn, Bradley (2007年11月21日). “stet and AGPLv3”. Software Freedom Law Center. 2008年3月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年6月14日閲覧。
  30. ^ Episode 0x00: Goodbye and Ahoy Hoy”. faif.us (2010年10月6日). 2011年3月1日閲覧。
  31. ^ Free as in Freedom”. faif.us. 2011年3月1日閲覧。
  32. ^ Software Freedom Law Show: Episode 0x00: Introducing the Software Freedom Law Show”. Software Freedom Law Center. 2011年3月1日閲覧。
  33. ^ "Software Freedom, Lawsuits, And Poker". Linux Outlaws英語版. Episode 40. 31 May 2008. 2011年3月1日閲覧
  34. ^ Pokersource”. Software Freedom Law Center. 2011年3月1日閲覧。
  35. ^ ChangeLog of PokerSource project”. Gna! (2008年7月4日). 2011年3月1日閲覧。

外部リンク

[編集]