ブレクスピプラゾール
IUPAC命名法による物質名 | |
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臨床データ | |
発音 | [brɛkˈspɪprəzoʊl] brek-SPIP-rə-zohl |
販売名 | レキサルティ |
Drugs.com | monograph |
MedlinePlus | a615046 |
ライセンス | US Daily Med:リンク |
胎児危険度分類 | |
法的規制 | |
薬物動態データ | |
生物学的利用能 | 95% (Tmax = 4 hours)[10] |
血漿タンパク結合 | >99% |
代謝 | 肝臓 - CYP3A4 、 CYP2D6) |
半減期 | 91 時間 (brexpiprazole), 86 時間 (major metabolite) |
排泄 | 便 (46%), 尿 (25%) |
データベースID | |
CAS番号 | 913611-97-9 |
ATCコード | N05AX16 (WHO) |
PubChem | CID: 11978813 |
DrugBank | DB09128 |
ChemSpider | 10152155 |
UNII | 2J3YBM1K8C |
KEGG | D10309 |
ChEBI | CHEBI:134716 |
ChEMBL | CHEMBL2105760 |
別名 | OPC-34712 |
化学的データ | |
化学式 | C25H27N3O2S |
分子量 | 433.57 g·mol−1 |
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ブレクスピプラゾール(英語: Brexpiprazole)は、非定型抗精神病薬の一つ。大塚製薬により開発され、日本国内では、2018年4月18日に「統合失調症」の適応で薬価収載され[12][13]、2023年12月22日、「うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)」の適応が追加された[14][15]。2024年9月24日、「アルツハイマー型認知症に伴う行動障害(アジテーション)」の適応が追加された[16]。商品名:レキサルティ(Rexulti)で1mgOD錠、2mgOD錠が発売されている[13][17]。
概要
[編集]ブレクスピプラゾールは、ドパミンD2受容体およびセロトニン5HT1A受容体に対するパーシャルアゴニスト作用、セロトニン5HT2A受容体、アドレナリンα1B受容体およびアドレナリンα2C受容体に対するアンタゴニスト作用を示す薬剤である[13][15]。大塚製薬が先立って開発したアリピプラゾールと比較して、セロトニン系およびアドレナリン系に作用し、ドパミンD2受容体への刺激作用を弱めた薬理学的特性を持つ[13][15]。薬剤として、薬剤使用に伴う有害事象(代謝性障害[体重増加、高脂血症、糖尿病]と錐体外路症状(アカシジア、遅発性ジスキネジアなど)のリスクの軽減が評価されている[15]。
投与形態は1日1回の経口投与であるが、2024年11月現在、週1回製剤(経口)が第3相臨床試験中である(2022年7月21日 ~ 2025年5月(予定))[18]。
効能・効果
[編集]日本
[編集]- 統合失調症[12] :2018年4月18日薬価収載[12]。
- うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)[14] : 2023年12月22日効能効果を承認[14]。
- アルツハイマー型認知症に伴う行動障害(アジテーション):2024年9月24日効能効果を承認[19]。
アメリカ
[編集]- 成人の統合失調症:2015年7月10日承認[20]。
- 大うつ病補助療法:2015年7月10日承認[20]。
- アルツハイマー型認知症に伴う行動障害(アジテーション)[16]:2024年5月10日効能効果を承認[16]。
適応申請中
[編集]- アメリカ - 心的外傷後ストレス障害:2024年4月8日追加効能申請[21]。PDUFA dateは2025年2月8日に設定[22]。
歴史
[編集]- 2015年
- 7月10日 - 「成人の統合失調症」、「大うつ病補助療法」の適応でアメリカで承認[20]。
- 2017年
- 1月6日 - 厚生労働省に承認申請[23]。
- 2018年
- 4月18日 - 日本で「統合失調症」の適応で薬価収載[12]。
- 2021年
- 8月17日 - 剤形追加品目として、「レキサルティOD錠0.5mg・OD錠1mg・OD錠2mg」が製造販売承認を取得[24]。
- 2023年
- 1月30日 - 日本で「うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)」の追加効能申請[25]。
- 7月3日 - 大塚製薬がレキサルティ錠の1mg、2mgの販売を中止すると発表[17]。出荷停止予定時期は2024年6月としており、代替品として同薬の口腔内崩壊錠(OD)0.5mg、同1mg、同2mgとしている[17]。
- 10月31日 - 日本でアルツハイマー型認知症に伴う行動障害(アジテーション)の追加効能申請[26]。
- 12月8日 - 厚生労働省の薬食審・医薬品第一部会が「うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)」の効能追加を了承[27]。
- 12月22日 - 日本で「うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)」の適応が追加承認[14]。
- 2024年
- 4月8日 - アメリカ で 心的外傷後ストレス障害:追加効能申請[21]。PDUFA dateは2025年2月8日に設定された[22]。
- 5月10日 - アメリカ で アルツハイマー型認知症に伴う行動障害(アジテーション)の適応が追加承認[16]。
- 8月26日 - 厚生労働省の薬事審議会・医薬品第一部会がアルツハイマー型認知症に伴う行動障害(アジテーション)の効能追加を了承[28][29]。
- 9月24日 - 厚生労働省がアルツハイマー型認知症に伴う行動障害(アジテーション)の効能追加を承認[19]。
受容体
[編集]臨床試験
[編集]アルツハイマー型認知症に伴うアジテーション
[編集]主要評価項目は、12週間後のCMAI(Cohen-Mansfield Agitation Inventory:アジテーション症状29項目の出現頻度を評価する指標)で評価[30][31]。各項目重症度に応じて1~7点の7段階で評価、点数は29-203点[32]。
- 第3相試験
2つのランダム化比較試験で合計610人(ブレクスピプラゾール2mg/日 or 3mg/日投与群:363人、プラセボ群:247人)で12週目にブレクスピプラゾールの使用群によるCMAIスコアの平均変化はプラセボよりも統計的有意に高かく 、アジテーションの改善が確認された(-25.1 vs -19.1、P値 =0.043)[30][31]。
PTSD
[編集]主要評価項目は、投与10週目までのプラセボとセルトラリン併用療法に対するブレクスピプラゾールとセルトラリン併用療法のCAPS-5(Clinician-Administered PTSD Scale for DSM-5)総スコアの変化量で行った[33]。
- 第2相試験
- 第3相試験
脚注
[編集]- ^ a b “Rexulti brexpiprazole 4 mg film coated tablets blisters (273224)”. Therapeutic Goods Administration (TGA). 26 February 2023閲覧。
- ^ AusPAR: Brexpiprazole
- ^ “Prescription medicines: registration of new chemical entities in Australia, 2017”. Therapeutic Goods Administration (TGA) (21 June 2022). 9 April 2023閲覧。
- ^ “Prescription medicines and biologicals: TGA annual summary 2017”. Therapeutic Goods Administration (TGA) (21 June 2022). 31 March 2024閲覧。
- ^ “Rexulti Product information”. Health Canada. 26 February 2023閲覧。
- ^ Rexulti monograph
- ^ “Mental health”. Health Canada (9 May 2018). 13 April 2024閲覧。
- ^ “Rxulti EPAR”. European Medicines Agency (EMA) (17 September 2018). 26 February 2023閲覧。 Text was copied from this source which is copyright European Medicines Agency. Reproduction is authorized provided the source is acknowledged.
- ^ Anvisa (2023年3月31日). “RDC Nº 784 - Listas de Substâncias Entorpecentes, Psicotrópicas, Precursoras e Outras sob Controle Especial” [Collegiate Board Resolution No. 784 - Lists of Narcotic, Psychotropic, Precursor, and Other Substances under Special Control] (ポルトガル語). Diário Oficial da União. 2023年8月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年8月16日閲覧。
- ^ a b “Rexulti- brexpiprazole tablet Rexulti- brexpiprazole kit”. DailyMed (21 February 2023). 26 February 2023閲覧。
- ^ “Brexpiprazole (Rexulti) Use During Pregnancy”. Drugs.com (10 February 2020). 18 August 2020閲覧。
- ^ a b c d “新規抗精神病薬「レキサルティ®錠」 統合失調症の適応で国内で新発売”. 大塚製薬株式会社 Otsuka Pharmaceutical. 大塚製薬株式会社 (2024年2月9日). 2024年6月15日閲覧。
- ^ a b c d “新規抗精神病薬「レキサルティ®錠」 統合失調症の適応で国内で新発売]”. 大塚製薬株式会社 (2018年4月18日). 2022年3月11日閲覧。
- ^ a b c d “抗精神病薬「レキサルティ」 うつ病・うつ状態の効能追加の承認取得”. 大塚製薬株式会社 Otsuka Pharmaceutical. 大塚製薬株式会社 (2024年2月9日). 2024年6月15日閲覧。
- ^ a b c d 「うつ病の増強療法に用いる非定型抗精神病薬」『日本経済新聞社』2024年2月2日。2024年6月16日閲覧。
- ^ a b c d “抗精神病薬「ブレクスピプラゾール」アルツハイマー型認知症に伴う行動障害について米国FDAより効能追加承認を取得|ニュースリリース|大塚製薬”. 大塚製薬株式会社 Otsuka Pharmaceutical. 大塚製薬株式会社 (2024年2月9日). 2024年6月15日閲覧。
- ^ a b c “抗精神病薬レキサルティの錠剤が発売中止に”. Medical Tribune. 株式会社メディカルトリビューン (2020年7月4日). 2024年7月20日閲覧。
- ^ “臨床試験結果のまとめ(Plain Language Summary)|大塚製薬”. 大塚製薬株式会社 Otsuka Pharmaceutical. 大塚製薬株式会社. 2024年11月21日閲覧。
- ^ a b “大塚HDの抗精神病薬「レキサルティ」、認知症関連でも承認 国内で初”. 日本経済新聞. 日本経済新聞社 (2024年9月24日). 2024年9月24日閲覧。
- ^ a b c “新規抗精神病薬「REXULTI®(レキサルティ)」 成人の統合失調症と大うつ病補助療法の2つの適応で米国FDAが承認|ニュースリリース|大塚製薬”. 大塚製薬株式会社 Otsuka Pharmaceutical. 大塚製薬株式会社 (2015年7月13日). 2024年7月21日閲覧。
- ^ a b “大塚製薬、抗精神病薬「ブレクスピプラゾール」 米国で新規効能を追加申請- 成人の心的外傷後ストレス障害(PTSD)について -”. 日経バイオテクONLINE. 日本経済新聞社 (2024年4月9日). 2024年6月21日閲覧。
- ^ a b “抗精神病薬「ブレクスピプラゾール」 成人の心的外傷後ストレス障害(PTSD)について米国FDAが申請を受理|ニュースリリース|大塚製薬”. 大塚製薬株式会社 Otsuka Pharmaceutical. 大塚製薬株式会社 (2024年6月18日). 2024年7月26日閲覧。
- ^ “大塚製薬 新規抗精神病薬ブレクスピプラゾール 統合失調症の適応で国内申請 | ニュース | ミクスOnline”. www.mixonline.jp. 株式会社ミクス (2017年1月10日). 2024年7月22日閲覧。
- ^ “新規抗精神病薬の剤形追加「レキサルティ®OD錠」国内製造販売承認を取得|ニュースリリース|大塚製薬”. 大塚製薬株式会社 Otsuka Pharmaceutical. 大塚製薬株式会社 (2024年2月9日). 2024年7月20日閲覧。
- ^ “抗精神病薬「レキサルティ」 うつ病・うつ状態の効能追加を国内で申請|ニュースリリース|大塚製薬”. 大塚製薬株式会社 Otsuka Pharmaceutical. 大塚製薬株式会社 (2024年2月9日). 2024年8月28日閲覧。
- ^ “大塚HD、アルツハイマー関連薬を厚労省に申請”. 日本経済新聞. 日本経済新聞社 (2023年10月31日). 2024年6月21日閲覧。
- ^ “アイリーアの高濃度製剤など9製品を審議へ 12月8日の薬食審・第一部会で | ニュース | ミクスOnline”. www.mixonline.jp. 株式会社ミクス (2023年11月27日). 2024年8月28日閲覧。
- ^ “認知症関連症状改善承認へ 大塚製薬の「レキサルティ」”. サンスポ. 産業経済新聞社 (2024年8月26日). 2024年8月26日閲覧。
- ^ “レキサルティのADに伴うアジテーションの効能追加など新薬11製品を審議へ 8月26日の第一部会で | ニュース | ミクスOnline”. www.mixonline.jp. 株式会社ミクス(MIX, Inc.) (2024年8月26日). 2024年8月26日閲覧。
- ^ a b “Brexpiprazole is Efficacious in Reducing Alzheimer Dementia-Related Agitation” (英語). Psychiatry Advisor. Psychiatry Advisor (2024年3月20日). 2024年7月26日閲覧。
- ^ a b “アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションに対するブレクスピプラゾールの有効性について米国老年精神医学会(AAGP)2024にて新たなデータ分析結果を発表|ニュースリリース|大塚製薬”. 大塚製薬株式会社 Otsuka Pharmaceutical. 大塚製薬株式会社 (2024年3月22日). 2024年7月26日閲覧。
- ^ 「ドネペジルはアルツハイマー病患者の興奮を改善せず」『日本経済新聞社』2007年10月21日。2024年8月9日閲覧。
- ^ a b c d e f g “成人のPTSDに対するブレクスピプラゾールの臨床試験結果を発表”. www.m3.com. m3 (2024年5月31日). 2024年7月24日閲覧。