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ベン・ラーナー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ベン・ラーナー
誕生 (1979-02-04) 1979年2月4日(45歳)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 カンザス州トピーカ
教育 ブラウン大学(美術学修士)
ジャンル 詩、小説、エッセイ
ウィキポータル 文学
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ベンジャミン・S・ラーナー英語: Benjamin S. Lerner1979年2月4日 - )[1]は、アメリカの詩人、小説家、エッセイスト、批評家、教師。フルブライト財団、グッゲンハイム財団、マッカーサー財団のフェローシップを得た。全米図書賞(詩部門)、ピューリッツァー賞(フィクション部門)の最終候補者[2]ブルックリン・カレッジで教鞭をとり、2016年には英語学の特別教授に任命された。

人物

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ラーナーはカンザス州トピーカで生まれ育つ。(カンザス州トピーカは自身の作品にも登場する)母親は臨床心理学者のハリエット・ラーナー。トピーカ高校でディベートと法医学に取り組み、1997年の全米法医学リーグ国際即興スピーキング大会で優勝した。ブラウン大学では詩人のC・D・ライトに師事し、政治理論の学士号と詩の修士号を取得した。

2008年、ラーナーはイギリスの学術出版物『クリティカル・クォータリー』で詩の編集を始めた。2016年にはハーパーズ初の詩の編集者となった[3]。カリフォルニア芸術大学とピッツバーグ大学で教鞭をとり、2010年にはブルックリン・カレッジの修士課程の教員となった[4]

2016年、ラーナーはニューヨーク人文科学研究所のフェローとなった[5]。 2015年にはマッカーサー・フェローシップを受けた[6]

作品

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52編からなるソネット集『The Lichtenberg Figures』でヘイデン・カルース賞を受賞。Library Journal誌はこの詩集を2004年のベスト12に選んだ。

2003年、ラーナーはフルブライト奨学金を得てスペインのマドリードを訪れ、そこで2作目の詩集『Angle of Yaw』を執筆、2006年に出版された。この詩集は全米図書賞の最終候補に選ばれた。その後、2010年に3作目の詩集『Mean Free Path』が出版された。

2011年に出版されたラーナーの処女小説『Leaving the Atocha Station』はビリーバー・ブック・アワードを受賞し[7]、ロサンゼルス・タイムズ・ブック賞(アート・サイデンバウム賞処女小説部門)とニューヨーク公共図書館のヤング・ライオンズ・フィクション賞の最終候補作となった。ガーディアン紙に寄稿したジェフ・ダイヤーは、この作品を「未来からの彗星のような予感がするほど、文体も形式も光り輝く独創的な作品」と評した[8]

ラーナーの2作目の小説『10:04』は、パリ・レビュー誌のテリー・サザン賞を受賞した[9]。ロサンゼルス・レビュー・オブ・ブックスに寄稿したマギー・ネルソンは、『10:04』を 「完璧に近い文学作品」と評した[10]

ラーナーの3作目の小説『The Topeka School』は2019年に出版され、二ューヨーク・タイムズ・ブックレビューにおいて「最近のアメリカ小説における高水準の作品」と評された[11]。ジャイルズ・ハーヴェイはニューヨーク・タイムズ・マガジンで、「同世代で最も才能ある作家による最高傑作」と評した。ハーパーズ誌に寄稿したクリスティン・スモールウッドは、ラーナーを「理論的でありながら会話的でもある、最高の才能を持った散文家」 と評した[12]

『The Topeka School』は、ロサンゼルス・タイムズ・ブック賞を受賞し、2020年ピューリッツァー賞フィクション部門の最終候補作となった[13]

ラーナーは『The Topeka School』について、とりわけ2016年のドナルド・トランプ当選を予感させる1990年代の「白人男性の暴力的なアイデンティティの危機」をテーマにしていると述べている[14]。この小説の主要な対立のひとつは、主人公アダムと彼の両親によってほとんど無意識に受け入れられている、当時の一般的な政治的中道主義や「歴史の終わり」のレトリックと、トピーカを拠点とするウェストボロ・バプティスト教会の抗議活動によって極端な形で声高に叫ばれる右翼の怒りの底流との間にある[15]。批評家はまた、有害な男らしさや、「Spread」というディベートのテクニックに象徴される、コミュニケーション手段としての言語の崩壊というテーマも指摘している。


2023年、ラーナーは韻文と散文詩からなる4作目の長編詩集『The Lights』を出版した。ニューヨーク・タイムズ紙で、スリカンス・レディは次のように書いている。「"声は存在するために歌われなければならない"と主張する登場人物を創り出すのは詩人でなければならない。『The Lights』の詩人や小説家は、ボードレールの散文詩の実験を、現代アメリカの読者のための多層階の夢の家へと拡大した」 ザ・ニューヨーカー誌で、カムラン・ジャヴァディザデは『The Lights』を「世界をつなぐ詩」「気の遠くなるような美しさ」「極めて愛らしい」と評している。

ウィキペディアに関する作品

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ハーパーズ誌2023年12月号で、ラーナーは『The Hofmann Wobble: Wikipedia and the Problem of Historical Memory』[16]と題するフィクションを発表した。この物語の中でラーナーは、ウィキペディアの編集・管理プロセスや、循環報告、ソックファーミング(ウィキペディアのページ作成者による不正行為の一種)、ウィキペディア上のスポンサー付きコンテンツなどの問題点に精通していることを示している。彼はこう説明する 「この短編ーあるいは架空のエッセイ(ラーナーの実際のプロジェクトにもとづくが、事実は架空の出来事に置き換えられている)は、複数のオンライン・アイデンティティを構築することで、ウィキペディアを善のために扱おうとする若者の努力について記したものである」

作品一覧

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  • The Lichtenberg figures (2004)
  • Angle of Yaw (2006)
  • Mean Free Path (2010)
  • No Art (2016)
  • The Lights (2023)

小説

ノンフィクション

  • The Hatred of Poetry (2016)

受賞歴

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脚注

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  1. ^ Ben Lerner” (英語). Poetry Foundation (2024年4月29日). 2024年4月29日閲覧。
  2. ^ "2020 Pulitzer Prizes" Retrieved 2023-11-30” (英語). www.pulitzer.org. 2024年4月29日閲覧。
  3. ^ The Drums of Marrakesh, by Mark McMorris” (英語). Harper's Magazine. 2024年4月29日閲覧。
  4. ^ Brooklyn College English Department - MFA Faculty”. web.archive.org (2011年9月3日). 2024年4月29日閲覧。
  5. ^ Meet the New Fellows of 2016” (英語). NEW YORK INSTITUTE FOR THE HUMANITIES (2016年5月9日). 2024年4月29日閲覧。
  6. ^ Ben Lerner” (英語). www.macfound.org. 2024年4月29日閲覧。
  7. ^ Ben Lerner Wins The Believer Book Award”. web.archive.org (2015年1月3日). 2024年4月29日閲覧。
  8. ^ Dyer, Geoff「Leaving the Atocha Station by Ben Lerner – review」『The Observer』2012年7月5日。ISSN 0029-77122024年4月29日閲覧。
  9. ^ Emma Cline Wins Plimpton Prize; Ben Lerner Wins Terry Southern Prize” (英語). The Paris Review (2014年3月12日). 2024年4月29日閲覧。
  10. ^ Slipping the Surly Bonds of Earth: On Ben Lerner's Latest”. Los Angeles Review of Books (2014年8月24日). 2024年4月29日閲覧。
  11. ^ Hallberg, Garth Risk (2019年10月3日). “Ben Lerner’s ‘The Topeka School’ Revisits the Debates of the ’90s” (英語). The New York Times. ISSN 0362-4331. https://www.nytimes.com/2019/10/03/books/review/topeka-school-ben-lerner.html 2024年4月29日閲覧。 
  12. ^ Smallwood, Christine. “Novel, Essay, Poem: Helen Frankenthaler’s earthbound genius” (英語). Harper's Magazine October 2019. ISSN 0017-789X. https://harpers.org/archive/2019/10/the-topeka-school-ben-lerner-review/ 2024年4月29日閲覧。 
  13. ^ Maher, John. “Moser, Whitehead, McDaniel, Grandin, Boyer, Brown Win 2020 Pulitzers” (英語). PublishersWeekly.com. 2024年4月29日閲覧。
  14. ^ Ben Lerner on Adolescence and His Forthcoming Novel” (英語). 2024年5月6日閲覧。
  15. ^ The Topeka of The Topeka School” (英語). 2024年5月6日閲覧。
  16. ^ Lerner, Ben. “The Hofmann Wobble: Wikipedia and the problem of historical memory” (英語). Harper's Magazine December 2023. ISSN 0017-789X. https://harpers.org/archive/2023/12/the-hofmann-wobble-wikipedia-and-the-problem-of-historical-memory/ 2024年4月29日閲覧。 
  17. ^ The National Book Foundation”. web.archive.org (2011年7月16日). 2024年4月29日閲覧。
  18. ^ Folio Prize shortlist includes Ben Lerner, Colm Toibin, Ali Smith”. web.archive.org (2008年5月13日). 2024年4月29日閲覧。
  19. ^ Temple, Emily (2012年3月14日). “The New York Public Library’s 2012 Young Lions Fiction Award Finalists Announced” (英語). Flavorwire. 2024年4月29日閲覧。
  20. ^ Ben Lerner Wins The Believer Book Award”. web.archive.org (2015年1月3日). 2024年4月29日閲覧。
  21. ^ 2012 Saroyan Prize Shortlist”. web.archive.org (2012年5月29日). 2024年4月29日閲覧。
  22. ^ PEN literary awards announced”. Star Tribune. 2024年4月29日閲覧。
  23. ^ Last year's shortlist | James Tait Black Prizes”. web.archive.org (2013年4月29日). 2024年4月29日閲覧。
  24. ^ Emma Cline Wins Plimpton Prize; Ben Lerner Wins Terry Southern Prize” (英語). The Paris Review (2014年3月12日). 2024年4月29日閲覧。
  25. ^ Folio Prize shortlist includes Ben Lerner, Colm Toibin, Ali Smith” (英語). Los Angeles Times (2015年2月9日). 2024年4月29日閲覧。
  26. ^ "2020 Pulitzer Prizes" Retrieved 2023-11-30” (英語). www.pulitzer.org. 2024年4月29日閲覧。