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メディア・コングロマリット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

メディア・コングロマリット英語: Media conglomerate)は、放送新聞映画出版インターネットなど多様なメディアコンテンツ企業を傘下に収める巨大な複合企業寡占企業のことである。

概要

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本来の「コングロマリット」は、M&Aを通じてコア事業と無関係な事業を多数抱える複合企業のことを指し、基本的に「コングロマリット・ディスカウント[注 1]」のように、ネガティブ・ワードとして用いられることが多い。

メディア・コングロマリットは、複数のメディアを横断して事業展開することでシナジー効果を生み出し、圧倒的な影響力と多様なコンテンツの制作と高次利用、広告収入の最大化、競争力の強化により、利潤の最大化を図る。

世界のメディアコングロマリット

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アメリカ合衆国を本拠地とする代表的なメディア・コングロマリットは4社ある。

これらに加えて、ソニーグループ[注 2]ヴィヴェンディベルテルスマンが世界的な巨大メディア・コングロマリットとして取り扱われることがある。コムキャストの745億ドル(ただしケーブルテレビ・通信事業の売上を含む; 2015年)を筆頭に、連結売上高が100億ドル単位の巨大企業である。

この他、ジョン・マローン率いる「リバティ帝国」(マローンが筆頭株主で会長を務めるリバティメディアリバティ・グローバルなど)、マイクロソフトビデオゲーム、インターネット事業など)なども巨大メディア・コングロマリットとして取り扱われることがある。

世界のメディアコングロマリット
名称 メディア・ムガル 売上高
(2022年度)
映画・映像制作 放送 新聞・出版 音楽 インターネット ビデオゲーム 電気通信 テーマパーク、スポーツ等
コムキャスト

NBCユニバーサル

ブライアン・L・ロバーツ 1,214億ドル(コムキャスト連結) ユニバーサル・ピクチャーズドリームワークス・アニメーションイルミネーション コムキャストSkyグループNBCTelemundoUSAネットワークCNBCMSNBCGolf ChannelE! Peacockファンダンゴ・メディア Xfinity フィラデルフィア・セブンティシクサーズフィラデルフィア・フライヤーズユニバーサル・デスティネーションズ&エクスペリエンシズハリウッドオーランドジャパンシンガポール北京
ソニーグループ 898.4億米ドル ソニー・ピクチャーズソニー・ピクチャーズ テレビジョンアニプレックス、PlayStation Productions Culver Max Entertainment(Sony Pictures Networks)、Get、Sony Movie Channel、Sony Cine Channel、Game Show NetworkAXN、Sony Channel、エムオン ソニー・ミュージックエンタテインメントSony Music Entertainment Crunchyroll ソニー・インタラクティブエンタテインメント ソニーネットワークコミュニケーションズ コロンビア・ピクチャーズ・アクアバース[注 3]
ウォルト・ディズニー・カンパニー 825億ドル ウォルト・ディズニー・モーション・ピクチャーズ・グループ ABCESPNディズニーチャンネルSTAR マーベル・コミック、ディズニー・パブリッシング・ワールドワイド ディズニー・ミュージック・グループ ESPN3huluDisney+マーベル・アンリミテッド ディズニー・インタラクティブ ディズニー・エクスペリエンスアナハイムフロリダ東京パリ香港上海)、ディズニー・クルーズ・ラインディズニー・バケーション・クラブ
ワーナー・ブラザース・ディスカバリー 338億ドル ワーナー・ブラザース TBSCNNTNTHBOCWディレクTVディスカバリーディスカバリーチャンネルアニマルプラネットTLCフード・ネットワーク等) DCコミックス MaxDiscovery+、DC Universe Infinite ワーナー・ブラザース・インタラクティブ・エンターテイメント英語版 ワーナーブラザース スタジオツアー(ハリウッドロンドン東京
パラマウント・グローバル シャーリ・レッドストーン 301億ドル パラマウント・ピクチャーズ MTVニコロデオンBETCBSCW(50%)、Showtime Paramount Music Paramount+、Pluto TV、Last.fm ニッケルオデオン・スイーツ・リゾート・オーランド
Amazon.com Amazon MGMスタジオメトロ・ゴールドウィン・メイヤー MGM+ アマゾン・パブリッシングKindle ダイレクト・パブリッシング Amazon Prime VideoAmazon FreeveeAmazon MusicComiXologyTwitchIMDb Amazon Games
アクセス・インダストリーズ Access Entertainment ワーナー・ミュージック・グループ DAZNDeezer
ヴィヴェンディ 95億ユーロ スタジオカナル Canal+M7 Group英語版 アシェット・リーブルアシェット・ブック・グループ、Prisma Media Dailymotion ゲームロフト Group Vivendi Africa L'Olympia
ベルテルスマン 202億ユーロ UFA RTLグループ ランダムハウス BMG Rights Management Videoland.

日本のメディアコングロマリット

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日本では、フジサンケイグループ[2]及びフジ・メディア・ホールディングスがメディア・コングロマリットと自己定義している[3]。フジ・メディア・ホールディングスはフジサンケイグループを統括する持株会社であり、2023年3月期の連結売上高は5,356億円(都市開発・観光事業の売上高約1,088億円を含む)。

その他の日本のマスメディアもクロスオーナーシップによって、メディアグループを形成している(日本テレビホールディングス、讀賣テレビ放送を関連会社化している読売新聞グループ本社など)。この他、ドワンゴと経営統合したKADOKAWAも放送メディアを所有していないものの、サブカルチャー・エンターテイメント分野に特化したメディア・コングロマリットと見なされる事もある[4][5]

なお、毎日新聞グループホールディングスは新聞事業が事業の大半を占めていること、日本放送協会(NHK)も放送事業が事業の大半を占めていること及び公共放送である同局の性格上から、メディア・コングロマリットには該当しない。

日本のメディアコングロマリット[注 4][注 5][6]
名称 メディア・ムガル 売上高
(2022年度)
映画・映像制作 放送 新聞・出版 音楽 インターネット ビデオゲーム テーマパーク、スポーツ等
フジサンケイグループ
フジ・メディア・ホールディングス
日枝久 5,356億円(FMH連結) フジテレビジョン[注 6]共同テレビジョンフジ・メディア・テクノロジーデイヴィッドプロダクションポニーキャニオン フジテレビジョンBSフジサテライト・サービスニッポン放送文化放送ラジオ大阪フジネットワーク[注 7]日本映画放送[注 8]WOWOW[注 9]スカパーJSAT[注 10]長崎国際テレビ[注 11]J-WAVE[注 11]FM802[注 11]エフエム仙台[注 11] 産業経済新聞社産経新聞サンケイスポーツ夕刊フジなど)、扶桑社ポニーキャニオン[注 12] ポニーキャニオンフジパシフィックミュージック、Fuji Music Group, Inc. FODFNNプライムオンラインめざましmedia産経電子版産経ニュース Fuji Culture X[注 13]産経デジタル[注 13]ポニーキャニオン[注 14] お台場東京ヤクルトスワローズ[注 15]グランビスタ ホテル&リゾート鴨川シーワールド神戸須磨シーワールドなど)、彫刻の森美術館美ヶ原高原美術館
読売新聞グループ本社
(旧・読売新聞社
渡邉恒雄 2,720億円(基幹7社合算)[注 16] 日テレアックスオンマッドハウスタツノコプロスタジオジブリ日活[注 17] 日本テレビホールディングス日本テレビ放送網BS日本CS日本ラジオ日本[注 18])、日本テレビネットワーク協議会[注 19] 讀賣新聞スポーツ報知中央公論新社福島民友 バップ日本テレビ音楽YTE hulu日テレNEWS NNN よみうりランド読売ジャイアンツ東京ドーム[注 20]アンパンマンこどもミュージアムジブリパークティップネスジェイエスエス[注 21]
中日新聞グループ 大島宇一郎 1,076億円[注 22] 東海テレビ放送[注 23]中日映画社 東海ラジオ放送東海テレビ放送中部日本放送CBCテレビCBCラジオ)、テレビ愛知フジネットワーク 中日新聞東京新聞中日スポーツ東京中日スポーツ日刊県民福井北陸中日新聞 東海パックCBCクリエイション 中日新聞電子版東京新聞電子版東京中日スポーツ電子版、中日BIZナビ 中日ドラゴンズナゴヤドームジブリパーク
日本経済新聞社 3,584億円 テレビ東京ホールディングステレビ東京BSテレ東インタラクティーヴィアニメシアターX)、日経CNBCラジオNIKKEITXNネットワーク[注 24] 日本経済新聞フィナンシャル・タイムズ日経BP日経サイエンス テレビ東京ミュージック テレビ東京オンデマンドQUICK
(参考)
朝日新聞社
2,670億円 テレビ朝日映像シンエイ動画ABCアニメーションSILVER LINK.CGCGスタジオ)、ディー・エル・イー東映[注 25]東映アニメーション[注 26]東映チャンネル東映ビデオ テレビ朝日ホールディングス(24.83%; テレビ朝日BS朝日シーエス・ワンテン)、朝日放送グループホールディングス(14.88%; 朝日放送テレビ朝日放送ラジオスカイA)、KBCグループホールディングス九州朝日放送)、ANNネットワーク[注 27] 朝日新聞日刊スポーツ朝日新聞出版ニュートンプレス、ABCアーク テレビ朝日ミュージックABCフロンティア 朝日新聞デジタルBuzzFeed JapanABEMA(40%)、TELASA
(参考)

TBSホールディングス

TBSスパークルTBSアクトTHE SEVENSeven Arcs TBSテレビTBSラジオBS-TBSCS-TBSJNNネットワーク[注 28] 日音 TBS NEWS DIG Powered by JNNマンガボックスU-NEXT(20%) TBS GAMES 赤坂サカス
(参考)KADOKAWA 2,554億円 KADOKAWAENGI KADOKAWA KADOKAWAU&R records ニコニコドワンゴジェイピームビチケBOOK☆WALKERdアニメストア[注 29] フロム・ソフトウェアスパイク・チュンソフト ところざわサクラタウン
(参考)
阪急阪神東宝グループ
角和夫松岡宏泰 1兆8,402億円(合算値)[注 30] 東宝TOHO animation STUDIO阪神コンテンツリンクTigers-aiBillboard JAPAN 関西テレビ放送日本映画放送宝塚スカイステージ 宝塚クリエイティブアーツ阪急阪神マーケティングソリューションズ メディアプルポ、東宝ミュージック 阪神コンテンツリンクTigers-ai 宝塚歌劇団東宝演劇部、TOHOシネマズ阪神タイガース阪神甲子園球場
(参考)

TOKYO FMグループインプレスホールディングス

唐島夏生[注 31] TOKYO FMTOKYO MXInterFM897全国FM放送協議会JFNCミュージックバード インプレスリットーミュージックイカロス出版山と渓谷社MdNコーポレーション、近代科学社 サウンズネクスト、MXエンターテインメント AuDee、ジグノシステムジャパン、インプレスImpress Watch、デジマート、ICE[注 32] 原の小屋[注 33]

歴史

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英米におけるメディア・コングロマリットの形成

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1980年代、衛星放送CATVが実用化され、ニューメディアとして注目された。アメリカのレーガン政権やイギリスのサッチャー政権規制緩和と市場開放を行って、メディアを再編した。

イギリスではロバート・マクスウェルルパート・マードックが新聞の買収闘争を展開。マードック率いるニューズ・コーポレーションザ・サンニューズ・オブ・ザ・ワールドタイムズなどを傘下に収め、80年代後半には衛星放送事業へ進出する(Sky Television、BSkyB。現在のスカイグループ)。

アメリカでは、多チャンネル化時代を迎えたことを踏まえ、1987年にレーガン政権が放送の公平原則(フェアネス・ドクトリン)を撤廃、党派性の強い放送が可能となった。1985年にニューズ・コーポレーションが多数の放送局を有するメトロ・メディアを、1987年に20世紀フォックスを立て続けに買収し、第4のテレビネットワークであるFOXネットワークを旗揚げする。多チャンネル時代に最適化したビジネスを積極展開する。1990年に出版大手のタイム社ワーナー・ブラザースを有するワーナー・コミュニケーションズの経営統合によりタイム・ワーナーが誕生。1995年にウォルト・ディズニー社キャピタルシティーズABCを買収。1996年にタイム・ワーナーがCNNなどを有するターナー・ブロードキャスティング・システムと経営統合。1999年にパラマウント映画を傘下に有するバイアコムCBSを買収する。これらの資本的再編により、多数のメディア・コングロマリットが形成された。

2000年にはネット大手AOLがタイム・ワーナーを買収、AOLタイム・ワーナーが誕生する。直後にITバブルが崩壊、タイム・ワーナーの社名が復活した。2009年には旧AOL部門のスピンオフを実施する。2004年にゼネラル・エレクトリック(GE)傘下のNBCヴィヴェンディ傘下のヴィヴェンディ・ユニバーサル・エンタテインメントが合併、NBCユニバーサルが誕生。2007年にはマードック率いるニューズ・コーポレーションウォールストリートジャーナルなどを有するダウ・ジョーンズを買収した。2009年にケーブル通信大手のコムキャストNBCユニバーサルの一部持分を取得、2013年には完全子会社化した。

日本における民放の誕生と新聞社

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日本では、1951年4月21日に国内初の民間放送としてラジオ16社へ予備免許が交付。同年9月1日に中部日本放送(現・CBCラジオ)と新日本放送(現・MBSラジオ)がラジオ放送を開始する。2年後の1953年、NHK「東京テレビジョン」(JOAK-TV)の放送開始に続き、日本テレビ放送網が本邦初の民間テレビ局として開局した。中部日本放送は中日新聞社を核に在名財界各社が、新日本放送は毎日新聞社京阪神急行電鉄日本電気の3社を軸に関西財界が、日本テレビは正力松太郎の主導の下で読売新聞社朝日新聞社毎日新聞社の3社が中心となりそれぞれ設立された。以降、1950年代、60年代にかけて、全国で全国紙・地方紙が旗振り役となり、民間ラジオ、民間テレビが相次いで開局していった。1970年代に当時郵政大臣だった田中角栄が主導して、放送局ー新聞社の資本及び放送系列を整理(腸ねん転)。日本テレビ系列読売新聞社TBS系列毎日新聞社フジテレビ系列サンケイ新聞社NETテレビ系列(現:テレビ朝日)は朝日新聞社東京12チャンネル系列(現:テレビ東京)は日本経済新聞社と、現在の放送ネットワークの大枠が確立した。元フジテレビジョン常務取締役境政郎は、フジサンケイグループを除く日本のメディア企業について「それぞれ経緯に違いがあるものの、新聞資本が親の立場になって、育成されてきた点では、軌を一にしている」と述べている[7]

フジテレビジョンの開局とフジサンケイグループの結成

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1957年11月18日、財界が設立と再建に深く関わったニッポン放送と文化放送の2社が中心となり、東宝松竹大映の映画3社が出資して「株式会社富士テレビジョン」(1958年12月1日に商号を「株式会社フジテレビジョン」に変更、現:フジ・メディア・ホールディングス)が設立された。1958年8月、財界の要請によりフジテレビ社長の水野成夫が経営危機に陥っていた産経新聞社の社長に就任する。以降、フジテレビ、ニッポン放送、文化放送、産経新聞社の4社による連携体制がスタートした。

1967年12月、フジテレビジョン(現:フジ・メディア・ホールディングス)、サンケイ新聞社ニッポン放送文化放送が中心となりフジサンケイグループを結成した。翌1968年、グループの実権を掌握した鹿内信隆がフジサンケイグループ会議を創設、議長(最高経営責任者に相当)に就任した。グループ各社の財務経理、総務、人事等コーポレート機能の積極的連携を推進するなど、当時からメディア・コングロマリット化を志向していた。フジサンケイグループを除く日本のメディア企業は、電波政策上の連携(いわゆる波取り)や人事面での交流、イベント等の共同企画、ゆるやかな資本的関係はあるが、あくまで個々が独立した企業体であるのが特徴である。

1992年7月21日、フジサンケイグループの三代議長である鹿内宏明が、当時フジテレビ社長だった日枝久の主導で産経新聞社の代表取締役会長職を解任される。翌22年にフジテレビ、ニッポン放送の代表取締役会長とフジサンケイグループの議長職を辞任した。以降しばらくの間、フジテレビを中心とする緩やかなグループ運営が行われた。

マードック・ソフトバンク孫正義陣営によるテレビ朝日買収騒動と衛星放送の開始

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1996年6月、ルパート・マードック率いるニューズ・コーポレーション、孫正義率いるソフトバンクは、デジタル衛星放送事業「JSkyB」プロジェクトを発表した。これに前後して開局以来全国朝日放送(テレビ朝日)の主要株主の地位(発行済株式総数の21.4%を保有)にあった旺文社が、経営陣及び他の主要株主に無断で全持分を売却、突如としてニューズ・コープソフトバンクが折半出資する「ソフトバンク・ニューズ・コープ・メディア株式会社」(旧:旺文社メディア)を通じて主要株主に躍り出た[8][9][注 34]。マードック・孫陣営は役員派遣等による経営参画を試みるも、テレビ朝日と主要株主の朝日新聞社や東映が猛反発。翌1997年3月、朝日新聞社によるJVの全株式取得で決着する[10]。同年5月、JSkyBのイコールパートナーにフジテレビとソニー加わった。1998年の放送開始に先立ち、ジェイ・スカイ・ビー株式会社(代表取締役会長:ルパート・マードック、代表取締役社長:孫正義)は、パーフェクTV!を運営する日本デジタル放送サービス株式会社と対等合併した。幾度の再編を経て、国内の衛星通信事業はスカパーJSATホールディングスに集約された。2000年にはBSデジタル放送が開始し、WOWOWスカパーJSATともに事業成長したものの、日本が多チャンネル時代を迎えることはなかった。

フジサンケイグループの再編とライブドア、そして認定放送持株会社の誕生

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2005年1月17日、日枝久会長兼CEO(当時)率いるフジテレビジョンフジサンケイグループの再編を目的として、ニッポン放送に対する株式公開買付(1株5,950円)を発表した。その最中に突如として堀江貴文率いるライブドア東京証券取引所のToSTNeT-1を利用した時間外取引によりニッポン放送株式の35%を取得。法廷闘争や北尾吉孝率いるソフトバンク・インベストメント(現・SBIホールディングス)のホワイトナイト参画を経て、フジテレビ、ライブドア、ニッポン放送の三者は和解。フジテレビはニッポン放送を完全子会社化、フジサンケイグループの事業持株会社となった。

2006年小泉政権において通信・放送の在り方に関する懇談会(通称「竹中懇」)が開かれた。メディア・コングロマリット化の推進やそのためのマスメディア集中排除原則の緩和が議論され、2007年に放送持株会社が認められた。2008年にフジテレビジョンが日本初の認定放送持株会社に移行、フジ・メディア・ホールディングスが誕生した。翌2009年には楽天からの買収防衛を目的としてTBSが持株会社体制へ移行した。2014年までにすべての在京キー局は認定放送持株会社へ移行した。

認定放送持株会社体制への移行を前にした日枝久会長兼CEOは「メディア・コングロマリットって、要するにワンソース、マルチユースを徹底する組織でしょう。編成局長の頃からやりたいと思っていました」と語り、発足後のコーポレートサイトでは「わが国を代表する『メディア・コングロマリット』の形成を目指してまいります」と宣言[11]。2008年10月1日のフジ・メディア・ホールディングス発足以降、同社はグループ経営を強力に推進している。加えて関西テレビ放送の持分法適用会社化や仙台放送の連結子会社化など、フジネットワーク系列局の再編と経営基盤の強化にも取り組んでいる。メディア・コンテンツ事業以外でもサンケイビルの完全子会社化やグランビスタホテル&リゾート(旧三井観光開発)の買収など、強固なポートフォリオの構築と事業領域の拡大を図っている。

FANGAMの台頭と米メディア・コングロマリットの大型再編

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2010年代、米国ではデジタル端末の普及やネットフリックスをはじめとする配信サービスの台頭により、ケーブルテレビ市場が急速に衰退(いわゆるコードカットの進行)。新聞社、出版社も経営危機に直面した。既存メディア各社は再編を迫られた。

2013年4月、タイム・ワーナーは傘下のタイム社を売却。2018年には通信大手AT&Tがタイム・ワーナーを買収、ワーナー・メディアに社名変更する。AT&Tは「通信とメディアの融合」を目指して買収を進めてきたが、財務が悪化。再びワーナー・メディアをスピンオフ、ディスカバリー社との経営統合によりワーナー・ブラザース・ディスカバリーが誕生した[12]

2013年6月に旧ニューズ・コーポレーションがスピンオフを実施、エンターテインメントを中心とする21世紀フォックス(21CF)、新聞出版事業と豪州ケーブルテレビ事業で構成される新生ニューズ・コーポレーションが発足した。21CFはマードックの次男ジェームズ・マードックCEOの下、積極的な事業展開を行っていたが、2019年に事業の大半をウォルト・ディズニー・カンパニーに売却。21CFの非売却資産はスピンオフされ、FOXエンターテインメント[13](地上波ネットワーク)、FOXニュースFOXスポーツFOXTVステーションズ(地上波テレビ局)から成るFOXコーポレーションが誕生した。なお、従前より21CFは39.1%を保有するスカイ(Sky PLC、当時ロンドン証券取引所に上場)の完全子会社化を目指していたが、同業他社コムキャストとの入札競争に敗れた。全持分をコムキャストに売却、スカイ(現スカイ・グループ)は同社の完全子会社となった。

2019年12月4日、サムナー家率いるナショナル・アミューズメンツ傘下のCBSコーポレーションバイアコムが経営統合、バイアコムCBSが発足した。2022年には商号をパラマウント・グローバルへ変更した。

2020年4月20日、FOXコーポレーションがOTTAVODプラットフォーム「Tubi」の買収を完了した[14]

2023年9月、ルパート・マードックが引退を表明。同年11月の株主総会をもってニューズ・コーポレーションの会長職、FOXコーポレーションの共同会長職を退任、両者の名誉会長に就任し、長男のラクラン・マードックが両社の単独会長に就任した[15]

2023年12月、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーとパラマウント・グローバルの合併交渉が水面下で行われていることがアメリカの複数のメディアから報じられた[16]。2024年7月、パラマウントは2025年前半までにスカイダンスとの合併を実施することを発表した[17]

2024年11月、コムキャストは定額制動画配信サービスなどとの競争激化に伴い、2025年後半を目処にNBCユニバーサルからケーブルテレビ部門を分社化(スピンオフ)することを発表した[18][19]

規制

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一部で同一地域でのクロスオーナーシップやコンテンツの製作と発信の垂直統合を禁止・制限すべきとの主張もあるが、日本も含め世界的には、伝送路の多様化を踏まえて規制緩和の傾向にある[20][21]

脚注

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注釈

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  1. ^ 事業を多角化している企業(コングロマリット)において、単体でそれぞれの事業を営む場合と比較したとき、株式市場での評価が低下し、株価が低迷している状況(ディスカウント)を指す。
  2. ^ 本社は日本
  3. ^ 2022年10月にタイで開業[1]
  4. ^ 「参考」表記の有無は、メディア・グループとしての経営を志向しているか否かを基準としている。
  5. ^ メディアコングロマリット傘下の系列局については(完全・連結)子会社、持分法適用会社または総務省電波利用ホームページにある、認定放送持株会社の関係会社と認められた放送局のみ記載。
  6. ^ フジテレビの映画部門は日本有数の映画製作企業
  7. ^ 仙台放送北海道文化放送岩手めんこいテレビ秋田テレビ福島テレビNST新潟総合テレビ・関西テレビ放送・岡山放送テレビ新広島沖縄テレビ放送長野放送テレビ静岡山陰中央テレビジョン放送テレビ愛媛高知さんさんテレビテレビ熊本さくらんぼテレビジョン
  8. ^ フジ・メディア・ホールディングスが30%超を保有する関連会社であり、加えてグループ会社のフジランド、系列局の関西テレビ及びフジサンケイグループと関係の深い東宝が株式を保有、代表取締役社長もフジテレビから派遣するなど事実上支配している。
  9. ^ フジ・メディア・ホールディングスの持分法適用会社(筆頭株主)。
  10. ^ 伊藤忠商事とフジ・メディア・ホールディングスのJVである伊藤忠・フジ・パートナーズ株式会社の持分法適用会社。
  11. ^ a b c d 系列外であるが、フジ・メディア・ホールディングスの関係会社となっている。
  12. ^ ライトノベル書籍を発行している
  13. ^ a b 一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会正会員
  14. ^ 過去にパーケッジゲームを製造・販売した実績があり、現在は自社IPを活用したゲーム事業を展開している
  15. ^ 「サンケイアトムズ」だった期間があり、主催試合はニッポン放送が中継する。
  16. ^ 読売新聞グループ本社独自の会計基準であり、グループ本社の連結売上高の数値とは異なる。グループ本社東京本社大阪本社西部本社中央公論新社読売巨人軍よみうりランドの単純合算。
  17. ^ 日本テレビホールディングスが35%出資。
  18. ^ 1994年に日本テレビ放送網(現:日本テレビホールディングス)が株式を取得し連結子会社化。現在は日本テレビホールディングスの非連結子会社となっている
  19. ^ 札幌テレビ放送テレビ岩手宮城テレビ放送福島中央テレビテレビ新潟放送網テレビ信州テレビ金沢静岡第一テレビ中京テレビ放送讀賣テレビ放送広島テレビ放送山口放送西日本放送福岡放送・長崎国際テレビ・熊本県民テレビ鹿児島讀賣テレビ
  20. ^ 読売新聞グループ本社が20%出資
  21. ^ 日本テレビホールディングスが24%出資
  22. ^ 株式会社中日新聞社の連結売上高
  23. ^ ドキュメンタリー映画を多数制作し、自社配給を行っている。
  24. ^ テレビ大阪・テレビ愛知・TVQ九州放送
  25. ^ 東映の筆頭株主がテレビ朝日ホールディングス、テレビ朝日ホールディングスの第2の大株主が東映という関係。また、テレビ朝日映像を合弁会社として朝日新聞社と東映によって設立され、朝日放送も含めて関係が深い。
  26. ^ テレビ朝日が第2の大株主
  27. ^ 北海道テレビ放送青森朝日放送岩手朝日テレビ東日本放送秋田朝日放送山形テレビ福島放送新潟テレビ二十一長野朝日放送北陸朝日放送静岡朝日テレビ名古屋テレビ放送山口朝日放送愛媛朝日テレビ長崎文化放送熊本朝日放送大分朝日放送鹿児島放送琉球朝日放送
  28. ^ テレビユー山形テレビユー福島チューリップテレビテレビ山口あいテレビテレビ高知
  29. ^ KADOKAWAが40%出資。
  30. ^ 阪急阪神ホールディングスエイチ・ツー・オー リテイリング東宝の合算値
  31. ^ 株式会社エフエム東京の代表取締役社長執行役員、東京メトロポリタンテレビジョン株式会社の取締役副会長、株式会社インプレスホールディングスの取締役会長を兼務している。
  32. ^ サイトの企画・開発・運用、コミックの電子書籍化などのデジタル領域全般。インプレスグループ各社の他、「少年ジャンプ+」をはじめとする集英社の各種デジタルコミック関連事業に携わっている。旧商号は「株式会社Impress Comic Engine」。
  33. ^ 山小屋事業
  34. ^ 当時の全国朝日放送(現:テレビ朝日ホールディングス)は非公開企業であり、株式には譲渡制限が付けられていたが、旺文社はテレビ朝日株式を保有する「株式会社旺文社メディア」の株式譲渡という「脱法的スキーム」により、持分をマードック・ソフトバンク陣営に売却した。旺文社メディアは「ソフトバンク・ニューズ・コープ・メディア株式会社」に商号変更された。

出典

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  1. ^ タイに映画テーマパーク ソニー系初、観光再生期待”. 時事通信 (2022年9月16日). 2022年9月23日閲覧。
  2. ^ フジサンケイグループとは|FUJISANKEI COMMUNICATIONS GROUP”. www.fujisankei-g.co.jp. 2023年7月8日閲覧。
  3. ^ 会社情報―コーポレート・ガバナンス フジ・メディア・ホールディングス
  4. ^ 角川&ワーナーの日米メディアコングロマリット提携で加速するコンテンツ市場のワールドワイド化――安田善巳 角川ゲームス社長に聞く、ダイヤモンド社、2011年8月8日
  5. ^ KADOKAWA、ドワンゴ経営統合へ。最強のサブカル・メディア・コングロマリットが誕生 Archived 2014年5月31日, at the Wayback Machine.、Yahoo!ニュース、2014年5月14日
  6. ^ 情報流通行政局地上放送課 (2023年8月2日). “認定放送持株会社”. 基幹放送事業者の議決権保有状況等. 総務省 電波利用ホームページ. 2024年10月12日閲覧。
  7. ^ 境政郎『テレビショッピング事始め』扶桑社、2008年2月25日、46頁。 
  8. ^ 中川一徳『二重らせん』株式会社講談社、2019年12月10日。 
  9. ^ 株式会社旺文社とのマルチメディア事業ならびにインターネット事業に関する提携について”. ソフトバンクグループ株式会社 (1996年6月20日). 2023年7月8日閲覧。
  10. ^ ソフトバンク・ニューズ・コープ・メディア株式会社の全株式売却に関する件”. ソフトバンクグループ株式会社 (1997年3月3日). 2023年7月8日閲覧。
  11. ^ 河合孝『次に来るメディアは何か』株式会社筑摩書房〈ちくま新書〉、2010年1月1日、178-187頁。 
  12. ^ AT&T「16兆円メディア」 ディスカバリーと新会社発表”. 日本経済新聞 (2021年5月17日). 2023年7月8日閲覧。
  13. ^ ディズニーは4大ネットワークのABCを所有しており、規制に抵触するため買収は不可能
  14. ^ 米メディア、新興動画に触手 フォックスはTubi買収”. 日本経済新聞. 2024年9月30日閲覧。
  15. ^ バーンド・デバスマン・ジュニア、ケイティー・ラザル (2023年9月22日). “「メディア王」マードック氏が米FOXの会長退任へ 後任は長男”. BBCNEWS JAPAN. 2023年11月22日閲覧。
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  17. ^ 米パラマウントが合併へ 映画大手スカイダンスと”. 共同通信 (2024年7月8日). 2024年7月18日閲覧。
  18. ^ Comcast Announces Intention to Create Leading Independent Media Business Through Spin-Off of Select Cable Television Networks”. Comcast Corporation (2024年11月20日). 2024年12月2日閲覧。
  19. ^ 米メディア企業コムキャスト、ケーブルTV部門を分社化 NBCユニバーサルは映画・配信事業に注力へ”. 映画.com (2024年11月22日). 2024年12月2日閲覧。
  20. ^ 米FCC,メディア所有の規制を大幅に緩和|NHK放送文化研究所”. NHK放送文化研究所. 2023年7月7日閲覧。
  21. ^ https://www.facebook.com/asahicom+(2022年3月14日).+“持ち株会社によるグループ経営の制限を撤廃 放送局経営の規制緩和案:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2023年7月7日閲覧。

参考文献

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関連項目

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