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モノクロトホス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
モノクロトホス
識別情報
CAS登録番号 6923-22-4
PubChem 5371562
ChemSpider 4522053
特性
化学式 C7H14NO5P
モル質量 223.16 g mol−1
外観 無色から赤褐色固体
密度 1.33 g/cm3
融点

55°C

への溶解度 可溶[1]
危険性
引火点 200°C[1]
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

モノクロトホス(Monocrotophos)は有機リン系殺虫剤である。鳥やヒトに対して急性毒性があるため、米国、EU、インド、その他多くの国で禁止されている。

使用

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モノクロトホスは、比較的安価な農薬として、主に農業で使用されている。しかし、自殺を実行するためのツールとしてもしばしば使用される[2]。 キュウリの農薬として使用されている。

モノクロトホスは、23名の生徒が死亡したビハール州の学校給食中毒事件英語版の原因であると考えられている。彼らは2013年7月にインドのサラン地区英語版で州が提供する学校給食を食べた。これはこの農薬の容器に入れられた油で調理された[3][4]

毒性

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野生動物に対して

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アルゼンチンでのアレチノスリ (Swainson's Hawk) の大規模な死を含む、広範囲にわたる鳥の死は、モノクロトホスの使用に起因している[5]

糖尿病

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Genome Biologyに発表された研究では[6]、研究者は腸内細菌叢が有機リン系殺虫剤の糖尿病誘発効果を媒介することを実証した。彼らは研究で典型的な有機リン酸エステルとしてモノクロトホスを使用し、慢性的な摂取中に、モノクロトホスが腸内細菌叢によって分解され、最終産物が耐糖能障害の原因となる糖新生を介してグルコースに変換されることを示した。 すべての研究は、マドゥライの村からのヒトのサンプルで検証された。

心毒性

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最近の研究では[7]、WistarラットにLD50投与量の1/50のモノクロトホス (0.36 mg/kg体重) を強制経口投与で3週間毎日経口投与した。モノクロトホスを投与された動物は、血中に軽度の高血糖および脂質異常症を示した。心臓の酸化ストレスは、タンパク質のカルボニルの蓄積、脂質過酸化およびグルタチオンの生成によってもたらされた。心臓マーカー (cTn-I、CK-MB、LDH) は血漿中のレベルの上昇を示し、これは心臓組織の損傷を示している。心臓組織の組織病理学は、非特異的な炎症性変化の兆候と筋線維間の浮腫を示すことにより、モノクロトホスによって誘発された組織損傷を証明した。したがって、この予備研究の結果は、ラットにおける長期のモノクロトホス摂取の心毒性効果を示しており、モノクロトホスが独立した強力な環境心血管リスク因子である可能性があることを示唆している。

急性効果

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神経成長因子(50 ng/ml) がPC12細胞英語版で機能的な細胞分化を誘発することが報告されている。モノクロトホスに暴露されたPC12細胞でミトコンドリアを介したアポトーシスを示す研究が実施された。活性酸素種過酸化脂質、およびグルタチオンジスルフィド /還元グルタチオンの比率の有意な誘導が、選択された用量のモノクロトホスに暴露された細胞で観察された。PC12細胞をモノクロトホスに暴露した後、タンパク質およびmRNAカスパーゼ-3カスパーゼ-9BAXp53p21p53アポトーシスのアップレギュレートされたモジュレーター英語版( PUMA)、およびシトクロムcは有意にアップレギュレートであったが、Bcl-2Bcl-w、およびMcl-1はダウンレギュレートされた。TUNELアッセイ英語版DNAラダーリング英語版、および小核試験は、PC12細胞を長期間高濃度(10-5 M)のモノクロトホスへ暴露することが、壊死細胞の数の増加により、アポトーシスイベントの数を減らす事を示している。細胞質とミトコンドリアの間のBAXおよびシトクロムcタンパク質のモノクロトホス誘導性移行により、ミトコンドリア膜の透過性におけるモノクロトホスの役割が確認された。ミトコンドリアを介したアポトーシス誘導は、カスパーゼカスケードの活性の増加によって確認された。これらのアポトーシスの変化は、PC12細胞をモノクロトホス (10-5 M) に暴露した場合、選択されたシトクロムP450CYP1A1/1A2、2B1/2B2、2E1)の発現レベルの上昇と相関している可能性がある[8]

日本

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毒物劇物取扱法によって、劇物と指定された。 [9]

脚注

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  1. ^ a b NIOSH Pocket Guide to Chemical Hazards 0435
  2. ^ Use of monochrotophos for suicide attempts”. 2013年11月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年10月31日閲覧。
  3. ^ The poison pill in India's search for cheap food
  4. ^ Children Die from Tainted Lunches at Indian School Accessed 21/08/2016
  5. ^ Goldstein, Michael I.; Lacher, T.E.; Woodbridge, B.; Bechard, M.J.; Canavelli, S.B.; Zaccagnini, M.E.; Cobb, G.P.; Scollon, E.J. et al. (June 1999). “Monocrotophos-Induced Mass Mortality of Swainson's Hawks in Argentina, 1995–96”. Ecotoxicology (Kluwer Academic Publishers) 8 (3): 201–214. doi:10.1023/A:1026496331396. 
  6. ^ Velmurugan, Ganesan; et, al. (2017). “Gut microbial degradation of organophosphate insecticides-induces glucose intolerance via gluconeogenesis”. Genome Biology 18 (1): 8. doi:10.1186/s13059-016-1134-6. PMC 5260025. PMID 28115022. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5260025/. 
  7. ^ Velmurugan, G.; Venkatesh Babu, D.D.; Ramasamy, Subbiah (2013). “Prolonged monocrotophos intake induces cardiac oxidative stress and myocardial damage in rats”. Toxicology 307: 103–8. doi:10.1016/j.tox.2012.11.022. PMID 23228476. 
  8. ^ Monocrotophos Induced Apoptosis in PC12 Cells: Role of Xenobiotic Metabolizing Cytochrome P450s
  9. ^ りん酸ジメチル=(E)‐1‐(N‐メチルカルバモイル)‐1‐プロペン‐2‐イル(別名モノクロトホス)安全シート