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ライオネル・マッケンジー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ライオネル・ウィルフレッド・マッケンジー
人物情報
生誕 1919年1月19日
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 ジョージア州モンテズマ英語版
死没 (2010-10-12) 2010年10月12日(91歳没)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
出身校 デューク大学 B.A. (1939)
オックスフォード大学 M.A.
プリンストン大学 Ph.D. (1956)
学問
研究機関 デューク大学
ロチェスター大学
博士課程指導教員 オスカー・モルゲンシュテルン
ウィリアム・ボーモル
博士課程指導学生 三辺信夫
酒井泰弘
高山晟
天野明弘
大山道広
上河泰男
西村和雄
武隈慎一
矢野誠
竹森俊平
ミッシェル・ボールドリン英語版
ジェリー・グリーン英語版
ホセ・シェインクマン英語版
ニコラス・ヤネリス英語版
称号 ウィルソン経済学名誉教授
慶應義塾大学名誉教授
京都大学名誉教授
主な受賞歴 旭日章(1995年)
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ライオネル・ウィルフレッド・マッケンジー (: Lionel Wilfred McKenzie、1919年1月19日 - 2010年10月12日)[1]は、アメリカ合衆国経済学者ロチェスター大学ウィルソン経済学名誉教授[2]

経歴

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1919年ジョージア州モンテズマ英語版で生まれる。1939年デューク大学を卒業し、同年にローズ奨学生としてオックスフォード大学に入学する。1948年から1957年までデューク大学助教授を務める。1956年プリンストン大学からPh.D.を取得し、ロチェスター大学に移籍し経済学の大学院プログラムの設立を担当した。

1973年にグッゲンハイムフェローシップを獲得し、1978年米国科学アカデミーの構成員に選出される。1989年に退職するまで32年間ロチェスター大学で教鞭をとった[3]

1995年旭日章を受章し、1998年には慶應義塾大学から、2004年には京都大学から名誉博士号を授与される[4]。これらは、多くの日本人研究者を育成した功績を評してのものである。マッケンジーは「日本の数理経済学者の父」と呼ばれている。京都大学経済研究所図書室には2003年10月に寄贈されたマッケンジーの蔵書を「マッケンジー文庫」として所蔵している[3]

研究

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一般均衡と資本理論に焦点を当てた研究を行った。アロードブリューモデルに関する業績で広く知られている。1954年の論文は、角谷の不動点定理を利用して一般均衡の存在を初めて証明した。ケネス・アロージェラール・ドブルーによる別の証明が、同じ雑誌の次号に掲載された。

1957年の論文では、消費者理論の文脈におけるシェパードの補題英語版の導出を議論しており、これをマッケンジーの補題と呼ぶこともある[注 1]

ターンパイク定理の精緻化にも貢献した[6]

多数国・多数財のリカード・モデルにおいて、各国の国際生産特化パターンを確定させることについて、アクティビティ分析の手法を用いて一般的な解を示した[7]

2014年、ティル・デュッペとE. ロイ・ウェイントラウブ英語版は、ケネス・アロージェラール・ドブルーが受賞したノーベル賞からマッケンジーが不当に除外されたと主張している[8][9]

以下の研究論文、書籍を執筆した。

  • "On Equilibrium in Graham's Model of World Trade and Other Competitive Systems." Econometrica, 1954.
  • "Demand Theory Without a Utility Index." The Review of Economic Studies, 1957.
  • "On the Existence of General Equilibrium for a Competitive Economy", Econometrica, 1959.
  • McKenzie, Lionel (1960), “Matrices with dominant diagonals and economic theory”, Mathematical models in the social sciences, 1959: Proceedings of the first Stanford symposium, Stanford mathematical studies in the social sciences, IV, Stanford, California: Stanford University Press, pp. 47–62, ISBN 9780804700214 
  • McKenzie, Lionel W. (1976). “Turnpike Theory”. Econometrica 44 (5): 841–865. doi:10.2307/1911532. ISSN 00129682. JSTOR 1911532. , 1976
  • "The Classical Theorem on Existence of Competitive Equilibrium." Econometrica, 1981.
  • "Turnpike Theory, Discounted Utility, and the von Neumann Facet." Journal of Economic Theory, 1983.doi:10.1016/0022-0531(83)90111-4
  • "General Equilibrium." The New Palgrave: A Dictionary of Economics, 1987, v. 2, pp. 498–512.
  • "Turnpike Theory." The New Palgrave: A Dictionary of Economics, 1987, v. 4, pp. 712–20.
  • Classical General Equilibrium Theory. The MIT Press, 2002.
  • McKenzie, Lionel W. (2009). Equilibrium, Trade, and Growth: Selected Papers of Lionel W. McKenzie. MIT Press. ISBN 978-0-262-13501-6. https://books.google.com/books?id=0_6Xwk6X-HQC 

教育

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前述の通り多くの日本人研究者を輩出した。マッケンジーの一般均衡理論の講義を受講した酒井泰弘は、マッケンジーが黒板にその証明をし終えたとき、「Oh, it's so beautiful !」と発言した[10]矢野誠は、マッケンジーからの夕食への誘いをきっかけに5歳年上の西村和雄と気兼ねなく話せるような間柄になったと語っている[11]

脚注

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注釈

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  1. ^ シェパードの補題英語版は、支出関数を価格で偏微分すると補償需要関数英語版になるというものであり、ロナルド・シェパード英語版が企業の費用最小化の文脈で最初に定義した[5]。これに対して、マッケンジーは消費者の効用最大化の文脈でも同じ結果が得られることを示した[5]

出典

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  1. ^ “Pioneering Economist Lionel McKenzie, 91”. University of Rochester. (13 October 2010). http://www.rochester.edu/news/show.php?id=3700 15 October 2010閲覧。 
  2. ^ Economics Department Faculty”. rochester.edu. University of Rochester. 3 October 2010時点のオリジナルよりアーカイブ。15 October 2010閲覧。
  3. ^ a b マッケンジー文庫”. 京都大学経済研究所図書室. 2023年6月30日閲覧。
  4. ^ 慶應義塾の名誉博士称号”. 慶應義塾大学. 2023年6月30日閲覧。
  5. ^ a b マッケンジー(シェパード)の補題の意味と偏微分して補償需要関数になる証明”. 道産子北国の経済教室 (2020年11月15日). 2023年6月30日閲覧。
  6. ^ タイラー・コーエン 「ジェラール・ドブリュー」(2005年1月6日、2006年7月4日)/「ライオネル・マッケンジー」(2010年10月12日)/「『Finding Equilibrium』 ~「競争均衡の存在」を一番最初に証明したのは誰?~」(2014年8月11日)”. HICKSIAN. 2023年6月30日閲覧。
  7. ^ 池間, 誠 (1993). “国際生産特化パターンの確定:多数国多数財ケース”. 一橋論叢 110 (6): 873–894. https://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/hermes/ir/re/10868/ronso1100600010.pdf. 
  8. ^ Düppe, Till; Weintraub, E. Roy (2014). Finding Equilibrium: Arrow, Debreu, McKenzie and the Problem of Scientific Credit. Princeton University Press. ISBN 978-0-691-15664-4 
  9. ^ Weintraub, E. R. (2011). “Retrospectives: Lionel W. Mc Kenzie and the Proof of the Existence of a Competitive Equilibrium”. Journal of Economic Perspectives 25 (2): 199–215. doi:10.1257/jep.25.2.199. http://www.aeaweb.org/articles.php?doi=10.1257/jep.25.2.199. 
  10. ^ 私たちはなぜ「先延ばし」してしまうのか? 人間の不合理を解き明かす『行動経済学の逆襲』解説・根井雅弘”. 早川書房 (2019年10月29日). 2023年6月30日閲覧。
  11. ^ 交遊抄 人生の先導役 矢野誠”. 日本経済新聞 (2017年11月3日). 2023年6月30日閲覧。