コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

中村政則

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

中村 政則(なかむら まさのり、1935年12月17日 - 2015年8月4日)は、日本歴史学者。専門は、日本近現代史。学位は、経済学博士一橋大学・1981年)(学位論文「近代日本地主制史研究 資本主義と地主制」)。一橋大学名誉教授。「最後の講座派」と呼ばれていた[1]オックスフォード大学客員教授等を歴任。

人物

[編集]

東京府新宿生まれ。祖父は埼玉県出身。1961年一橋大学商学部卒業、1963年一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了、1966年同博士課程単位修得退学。大学時代はホッケー部に所属。一橋大の日本経済史講座断絶後着任した古島敏雄を指導教官とし、永原慶二にも師事した[2][3][4]

1966年一橋大学経済学部専任講師、1970年同助教授、1977年同教授、1979年ハーヴァード大学東アジア研究センター客員研究員、1981年「近代日本地主制史研究 資本主義と地主制」で一橋大学より経済学博士の学位を取得。1989年オックスフォード大学ニッサン日本研究所及びセント・アントニーズ・カレッジ客員教授。1994年一橋大学附属図書館長。1999年一橋大定年退官、名誉教授、オックスフォード大学客員研究員、2000年ハーヴァード大学客員研究員、2001年から2006年まで神奈川大学経済学部・大学院歴史民俗資料学研究科歴史民俗資料学専攻特任教授[5]

国立歴史民俗博物館展示プロジェクト委員(新常設展示室「現代」担当)。沖縄戦における集団自決問題で、「最高裁でまだ判決が出ていないので、慎重にするべきだ」と発言(→大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判家永教科書裁判)、展示から軍命や強制があったとする説明が削除される一因を作り、高嶋伸欣から「大いに反省すべき」、林博史から「レベルが問われる」など、批判を受けた[6]

『『坂の上の雲』と司馬史観』などで司馬遼太郎の日清・日露戦争に対する歴史認識を批判している。

太平洋戦争では、淀橋第三国民学校(現新宿区立西新宿小学校)在学中に草津町の旅館日新館に学童疎開。日本の降伏後に戻った新宿は5月27日の東京大空襲により焼け野原になっており、消失した自宅敷地から2キロ先の伊勢丹が見えるほどであったという。そのような経験等から、「九条科学者の会」では呼びかけ人を務めた[7]

2011年頃から体調を崩していたが、[8]2015年、肺がんのため東京都内の病院死去し、府中の森市民聖苑で葬儀が行われた[9]。79歳没。

ゼミ生

[編集]

指導学生には大門正克横浜国立大学教授)、森武麿(一橋大学名誉教授)、疋田康行立教大学名誉教授)、佐藤正広(一橋大学教授)、庄司俊作同志社大学教授)[10][11]浅井良夫成城大学教授)[12]千田稔イオンド大学教授)[13]柴田善雅大東文化大学教授)、西成田豊(一橋大学名誉教授)[14]松本俊郎岡山大学教授)[15]鈴木恒夫学習院大学教授)[16]などがいる。大枝宏之日清製粉グループ本社社長)、田中全(元四万十市市長)[17][18][19]大竹愼一(ファンドマネージャー)[20]なども中村ゼミ出身。

ゼミ生らが(浅井良夫・大門正克・吉川容・永江雅和・森武麿)が編者となり、『中村政則の歴史学』(日本経済評論社、2018年)が出版。

著書

[編集]

単著

[編集]
  • 『日本の歴史 29 労働者と農民』(小学館 1976年) 
    • 改題 『日本史の社会集団 第7巻 労働者と農民』(小学館・文庫判 1990年)
    • 改題 『労働者と農民 日本近代をささえた人々』 (小学館ライブラリー 1998年)
  • 『近代日本地主制史研究――資本主義と地主制』(東京大学出版会 1979年)
  • 『昭和の歴史(2) 昭和の恐慌』(小学館 1982年/小学館・文庫判 1988年/小学館ライブラリー 1994年)
  • 『日本近代と民衆――個別史と全体史』(校倉書房 1984年)
  • 『象徴天皇制への道――米国大使グルーとその周辺』(岩波新書 1989年)
The Japanese Monarchy: Ambassador Joseph Grew and the Making of the "Symbol Emperor System," 1931-1991
 trans. by Herbert P. Bix, Jonathan Baker-Bates and Derek Bowen, (M. E. Sharpe, 1992).
  • 『シリーズ昭和史(1) 昭和恐慌』(岩波ブックレット 1989年)
  • 『戦後史と象徴天皇』(岩波書店 1992年)
  • 『歴史のこわさと面白さ』(筑摩書房〈ちくまプリマーブックス〉 1992年)
  • 『岩波市民大学 人間の歴史を考える(11) 経済発展と民主主義』(岩波書店 1993年)
  • 『現代史を学ぶ――戦後改革と現代日本』(吉川弘文館 1997年)
  • 『近現代史をどう見るか――司馬史観を問う』(岩波ブックレット 1997年)
  • 『明治維新と戦後改革――近現代史論』(校倉書房 1999年)
  • 『戦後史』(岩波新書 2005年)
  • 『昭和の記憶を掘り起こす――沖縄、満州、ヒロシマ、ナガサキの極限状況』(小学館 2008年)
  • 『『坂の上の雲』と司馬史観』(岩波書店 2009年)
  • 『オーラル・ヒストリーの可能性 東京ゴミ戦争と美濃部都政』(神奈川大学評論ブックレット:御茶の水書房 2011年)

共著

[編集]

編著

[編集]
  • 『体系日本現代史(4)戦争と国家独占資本主義』(日本評論社 1979年)
  • 『技術革新と女子労働』(国際連合大学 1985年)
  • 『シリーズ昭和史(15)年表昭和史』(岩波ブックレット 1989年/増補版, 2004年)
  • 『日本の近代と資本主義――国際化と地域』(東京大学出版会 1992年)
  • Technology Change and Female Labour in Japan, (United Nations University Press, 1994).
  • 『近代日本の軌跡(6)占領と戦後改革』(吉川弘文館 1994年)
  • 『近現代日本の新視点――経済史からのアプローチ』(吉川弘文館 2000年)

共編著

[編集]

訳書

[編集]

脚注

[編集]
  1. ^ 「講座派理論と我々の時代」中村正則『日本近代と民衆』校倉書房、1984年。大門正克「講座派」や「戦後歴史学」の枠におさまらない魅力──『中村政則の歴史学』の編集に携わって」日本経済評論社『評論』212号。
  2. ^ 安丸良夫佐々木潤之介「日本史」
  3. ^ 「昭和46年度 学位授与・単位修得論文」一橋研究
  4. ^ [1]
  5. ^ [2]
  6. ^ 「またか」体験者怒り 博物館「集団自決」軍関与削除 識者 経緯無視と批判 係争中理由 委員が助言沖縄タイムス2010年3月9日
  7. ^ 「講師 中村政則 氏 - 京都府生活協同組合連合会」
  8. ^ 「九条科学者の会」呼びかけ人メッセージ (2005.3.13)
  9. ^ 一橋大名誉教授の中村政則さん死去 朝日新聞 2015年8月6日
  10. ^ 「昭和56年 学位授与・単位修得論文一」一橋研究
  11. ^ 「昭和55年度 学位授与・単位修得論文一覧」一橋研究
  12. ^ 「昭和47年度 学位授与・単位修得論文」
  13. ^ 「昭和48年度 学位授与・単位修得論文」一橋研究
  14. ^ 「昭和52年度 学位授与・単位修得論文」一橋研究
  15. ^ 昭和51年度 学位授与・単位修得論文
  16. ^ 昭和48年度 学位授与・単位修得論文
  17. ^ 須永徳武「疋田康行先生の人と学問」『立教經濟學研究』第69巻第1号、2015年7月、249-260頁、doi:10.14992/00011552NAID 120005673340 
  18. ^ 「追悼 中村政則先生」
  19. ^ 横関至「書評と紹介 永江雅和著『食糧供出制度の研究 : 食糧危機下の農地改革』」『大原社会問題研究所雑誌』第669号、法政大学大原社会問題研究所、2014年7月、50-53頁、doi:10.15002/00010415ISSN 0912-9421NAID 120005531244 
  20. ^ 昭和49年度学位授与単位修得論文