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大分弁

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
中津弁から転送)

大分弁(おおいたべん)又は大分方言(おおいたほうげん)は、九州地方大分県で話されている日本語の方言である。

分類

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大分弁(大分方言)は、以下の分類体系に位置づけられる。

概要・区画

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大分弁は全体として中国方言四国方言との共通性が目立ち、九州方言の中ではやや異質な方言であると言える。例えば、肥筑方言に特徴的な接続助詞「ばってん」、形容詞カ語尾終助詞「ばい」「たい」を使用しない(日田市などの西部を除く)。アクセントは外輪東京式アクセントである。

大分県の方言は、音韻や語法、文法の違いから、以下の5つの小区分を立てることができる[1]

  1. 東北海岸方言(国東半島東部)
  2. 南部海岸方言(津久見市南部~佐伯市豊後水道沿岸部)
  3. 西部方言日田市玖珠郡の大部分・中津市山国町)
  4. 北部方言(1の地域を除く別府市以北)
  5. 南部方言(2の地域を除く大分市以南)

このうち西部方言には肥筑方言との共通性が見られ、終助詞の「ばい・たい」、準体言助詞の「~つ(と)」が分布する。特に日田地方の方言(日田弁)は、逆接の接続詞「ばってん」の使用、「よい・ない」の2語の終止形のカ語尾アクセント体系でも肥筑方言と共通する上、多くの語彙を共有する。

東北海岸方言と南部海岸方言は、音韻的な特徴が共通している[2]

音韻

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子音の特徴

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「て」を「ちぇ」、「で」を「ぢぇ/じぇ」と言う傾向があり、大分弁の特徴である。特に、助詞の「て」を「ちぇ」、あるいは「ち」と言う[3](例)あん2人結婚したっちよ(あの2人結婚したってよ)、「ちょっと聞いちくり」(ちょっと聞いてくれ)、「待っちくり」(待ってくれ)。格助詞の「で」も「じぇ」または「じ」となる(例)店じ会うた(店で会った)[4]。また「え」を「いぇ[je]」、「せ」を「しぇ[ʃe]」、「ぜ」を「じぇ[ʒe]」と言うのは九州方言一般に共通するが、大分県ではこれ以外のエ段音も口蓋化の傾向がみられる[3]

撥音(ん)の後にア行・ヤ行・ワ行音が来たときに、ナ行音に変わるナ行連声が残存する地域がある。特に、助詞「を」「は」において多くの地域で聞かれる[5]。例:「みかんは」→「みかんな」、「本を」→「ほんの」「ほんぬ」

日田・玖珠地方を除くほぼ全域で、ザ行音とダ行音の混同があり、特に「ざ」→「だ」、「ぞ」→「ど」が著しい[5]。 例:「ぞうきん」→「どうきん」。ダ行音とラ行音を混同する地域もある[5](例)「からだ」(体)→「かだら」、「原田(はらだ、苗字)」→「はだら」。

「つ tsu」を「とぅ tu」と発音する(例)「つまらん」→「とぅまらん」。中年以上でこの発音をする人が時折おり、古音の残存と考えられる。また「じ」と「ぢ」、「ず」と「づ」の四つ仮名を区別する地域があり、西部の日田・玖珠地域と南部の佐伯市豊後大野市付近が中心である。また、玖珠地方から宇佐市中津市にかけて、「じ」と「ぢ」は区別しないが「ず」と「づ」を区別する地域がある[6]

共通語と異なり、大分方言にはガ行鼻濁音はない。

ワがアに変わる地域があり、ワが全くない地域もある(例)「まあた」(真綿)、「あら」(藁)。豊後水道沿岸の一部や豊前沿岸部が中心[7]

クヮkwa、グヮgwaの音が聞かれる(例)「くゎじ」(火事)、「しょーぐゎとぅ」(正月)。ただし豊前沿岸部と津久見市以南の沿岸部にはない。高齢層が中心[8]

「鉄道」→「てっどー」、「国語」→「こっご」のような、濁音前での促音化は、県北半で多い[9]

母音の特徴

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語中・語尾の母音i、uの無声化や脱落化があり、特に日田・玖珠地方と豊前海岸部で著しい[9]

連母音の融合

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大分方言では以下の連母音融合が発生する。山間部の主に高齢層では、連母音融合により生じたイ段・エ段長音では、元の子音が保たれ、口蓋化が起こらない。また連母音融合によるeː、iːには、直前にwが挿入されることがある[10]

  1. ai → eː 例:「辛い」→「カレー」、「浅い」→「アセー」「アシェー」、「挨拶」→「ウェーサツ」
  2. ui → iː 例:「明るい」→「アカリー」、「熱い」→「アティー」「アチー」
  3. ei → iː 例:「姪」→「ミー」※「警察」「英語」のような比較的新しい語では、eiのまま発音される。
  4. oi → iː。国東半島東部・県南部海岸部ではeː。 例:「黒い」→「クリー」「クレー」

九州他地域と同じく、古い「ou」「eu」に由来する音(合音)が、それぞれ「uː」「juː」となる。たとえば「うーかぜ」(大風、おほかぜ)、「きゅー」(今日、けふ)など。ただし国東半島東部および南部海岸部では共通語と同じく「oː」「joː」となっている[11]

アクセント

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大分方言のアクセント体系は、大部分の地域が外輪東京式アクセントに分類される。

日田市の大部分は型区分の少ない東京式の変種アクセント(筑前式アクセントに類似)に分類され、熊本県側にせり出す形で位置する同市旧上津江村・旧中津江村無アクセントとされており、他地域とは大きく対立する。

共通語と異なるアクセントの語

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左が共通語、右が大分市における伝統的なアクセントである。太字部分がピッチが高くなる部分で、それがない語は平板型とする。

  • :や「矢」
  • の:お「斧」
  • も:く「雲」
  • み「蚤」
  • く「服」
  • あいだ:あいだ「間」
  • わび:あび「鮑」
  • いたち/いたち:いち「鼬」
  • おばさん:おさん「小母さん」 ※叔母、伯母の意味では共通語と同じアクセント
  • かわら:わら「瓦」
  • きもの:きの「着物」
  • んじょ:きんじょ「近所」
  • たばこ:たこ「煙草」
  • よこ:ちこ「千代子」(固有名詞 美代子、春子など、三文字の名前はこのようなアクセントとなりやすい)
  • つつじ/つじ:つじ「躑躅」
  • たち:はち「二十歳」
  • うべ:うべ「夕べ」
  • らび:わらび「蕨」
  • さく:く「咲く」
  • ぬく:く「抜く」
  • いる:はる「入る」
  • おい:おい「多い」
  • 2拍名詞第2類で共通語は尾高型、大分方言では平板型になる。このことから外輪型東京式に分類される。
    • :いし「石」、い:いわ「岩」、その他「歌」「紙」「川」「旅」「寺」「梨」「夏」「橋」「旗」「肘」「冬」「町」「胸」「村」「雪」
  • 3拍名詞第5類は共通語が頭高型、大分方言では中高型が多くなる。
    • みじ:もじ「紅葉」、のち:いち「命」、その他「姿」「朝日」「涙」
    • (例外)あぶら:ぶら「油」、はしら/はしらしら「柱」、たすきすき「襷」
  • 3拍名詞第6類は共通語が平板型、大分方言では頭高型が多くなる。
    • ねずみ:ずみ「鼠」、うさぎ:さぎ「兎」、その他「鰻」「狐」「雲雀」「雀」「蚯蚓」
    • (例外)せなか:せか「背中」、みさお:みお「操」
  • 3拍名詞第7類も共通語が平板型、大分方言では頭高型が多くなる。
    • いちご:ちご「苺」、うしろ:しろ「後ろ」、その他「鯨」「薬」「盥」

文法

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用言の活用

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動詞

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ナ行変格活用が残存している(ただし、「往(い)ぬ」は標準語では用いない)。

基本形 方言 活用形
未然形 連用形 終止形 連体形 仮定形 命令形
死(し)ぬ・往(い)ぬ 標準語 -な -に -ぬ -ぬ -ね -ね
大分弁 -な -に -ぬる -ぬる -ぬら -ね・によ
古語 -な -に -ぬ -ぬる -ぬれ -ね

古語における上二段活用下二段活用動詞(・助動詞)の残存がみられる。ただし終止形連体形と同じ形を用いる。県南部では、上二段の下二段化があり、例えば「起きる」は「おけん」(起きない)、「おけた」(起きた)、「落ちる」は「おてん」(落ちない)、「おてた」(落ちた)となっている[12]

基本形 方言 活用形
未然形 連用形 終止形 連体形 仮定形 命令形
見(み)える 標準語 -え -え -える -える -えれ -えろ・えよ
大分弁 -え -え -ゆる -ゆる -ゆれ -えろ・えよ
見(み)ゆ 古語 -え -え -ゆ -ゆる -ゆれ -えよ
れる 標準語 れる れる れれ れろ・れよ
大分弁 るる るる るれ れろ・れよ
古語 るる るれ れよ

標準語の上一段活用・下一段活用動詞が、一段活用と五段活用との混合した活用をする。

基本形 方言 活用形
未然形 連用形 終止形 連体形 仮定形 命令形
見(み)る 標準語 みる みる みれ みろ・みよ
大分弁 みら みる みる みら みれ・みよ

肥筑方言同様、一段活用動詞がラ行五段活用化する傾向があり、特に未然形においてその現象が頻出する。

例:寝らん、出らん、着らん、似らん、見らん、起きらん、通じらん

また、否定形のみでなく、使役の場合の未然形にもその現象が起きやすい。

例:寝らせる、出らせる、着らせる、似らせる、見らせる、食べらせる
音便
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動詞連用形の音便には、以下のような共通語との違いがある。

ウ音便
  1. ワ行五段活用動詞の連用形:ウ音便 例:「オモタ」(思った)、「ソロタ」(揃った)
    1. 語幹の末尾がア段の場合には、オ段への変化を伴う。例:「コータ」(買った)、「モロータ」(貰った)
  2. バ・マ行五段活用動詞の連用形:ウ音便※ 例:「アソダ」(遊んだ)、「ヨダ」(読んだ)
  3. 形容詞の連用形:ウ音便 例:「赤くて」→「アコテ」、「高くて」→「タコテ」
イ音便
  1. サ行五段活用動詞の連用形:イ音便※ 例:「差した」→「サタ」、「貸した」→「カタ」
語幹の末尾がオ段の場合には、イ段への変化を伴う。例:「残した」→「ノキータ」、「戻した」→「モヂータ」

注:※を付した音便は、高齢者しか使わなくなってきている。

形容詞

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大分方言では共通語と同じく、形容詞の終止形・連体形を「-い」で結ぶ(イ語尾)。ただし、日田市では「よい」「ない」の2語のみ終止形に「よか」「なか」が用いられる場合がある[13]。形容詞の活用には標準語といくつかの相違点がある。

基本形 方言 活用形
未然形 連用形 終止形 連体形 仮定形
寒(さむ)い 大分弁 さむかろ-う さむかっ-た、
さむう-なる
さむい さむい-とき さむけり-ゃー
/さむかり-ゃー
  • 連用形は、共通語「さむくなる」に対して大分方言では「さむうなる」とウ音便になる。
  • 仮定形は、共通語「さむければ」に対して大分方言では「さむけりゃー」となる。また、より古形とされる「さむかりゃー」も用いられる。

形容動詞

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大分方言での形容動詞活用形は以下の通りである。

基本形 方言 活用形
未然形 連用形 終止形 連体形 仮定形
静(しず)か 大分弁 しずかじゃろ-う、 しずかじゃっ-た、
しずかに-なる、
しずかで-あります
しずか-じゃ、
しずか-な
しずかな-とき しずかなり-ゃ
(しずかなら)

大分方言は標準語の形容動詞「きれいだ」「おっくうだ」などの語を欠き、代わりに形容詞の「うつくしい」「よだきい」を用いる他、形容動詞の多くの語が形容詞としても活用する点が特徴である。

  • 大分方言では形容詞として活用する形容動詞の代表的な語彙
「四角だ→しかきい」「真っ青だ→まっさいい」「横着だ→おうちゃきい」「賑やかだ→にぎやけえ」「気の毒だ→きのどきい」「真っ直ぐだ→まっすぎい」など。

助動詞

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動詞に付く否定の助動詞は「ん」。「…ないで」にあたる否定中止には、「行かんで」「行かんじ」のように「んで」「んじ」を用いる。過去否定(…なかった)には、県北山間部および南部に「ざった」があるが、古い形であり、現在は「んじゃった」、若い世代を中心に「んかった」を使う[14]

全県で用いられる断定表現は「~じゃ」であるが、若年層を中心に「~や」の使用が急速に普及している。

  1. じゃけん/じゃき⇒けん/

可能表現の使い分け

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西日本各地の方言と同様に、状態可能と能力可能の表現を使い分けるが、大分弁においては、状態可能表現が主観と客観によってさらに二分化され、あわせて3種類の使い分けがなされている[要検証]

  1. 「食べらるる」→(腐っていないから)食べることができる。(=状態可能/客観)
  2. 「食べれる」→(まだ満腹ではないので)食べることができる。(=状態可能/主観)[要検証]
  3. 「食べきる」→(苦手だったりお腹をこわす人もいるけれども、自分は)食べることができる。(=能力可能)

不可能を表す場合には、上記を否定形で用いる。

「食べられん」(=状態不可能/客観)、「食べれん」(=状態不可能/主観)、「食べきらん」(=能力不可能)

「食べれる」の形は「ら抜き言葉」といわれる若者言葉ではなく、かなり古くからみられた(例)見る→見れる。ただし、大分弁のら抜き言葉は「状態可能(主観)」のみしか表さず、単に「可能」全般の意味を表すわけではない。

例 - まだ満腹やないけん食べれる(まだ満腹ではないから食べられる)
誤例 - (*)そんケーキはまだ賞味期限が切れちょらんき食べれるで →この場合は状態可能(客観)を表す「食べらるる」が正しい。

南部の海岸部では、「きる」を使わずに、「よー」+動詞または「えー」+動詞の形で能力可能を表す[15]

「-よる」と「-ちょる」の使い分け

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西日本各地の方言に共通して見受けられる、動作の進行・継続を表す「-よる」と、状態の完了・継続・結果を表す「-ちょる」の2種類のアスペクト表現が大分弁にも存在する。「-よる」は「-よん」、「-ちょる」は「-ちょん」に変化することもある。

  1. さっきから雨が降りよるなぁ。→さっきから雨が降っているね(今も降っている)(=進行・継続)
  2. いつん間にか雨が降っちょるなぁ。→いつの間にか雨が降っているね(今はもう上がっている)(=完了・存続・結果)

助詞

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主格格助詞「が」は、北部で「ぐ」、南部で「い」に変化する場合がある[4](例)雨い降りよる(=雨が降っている)。対格(を)は普通、「酒を」→「さきゅー」、「花を」→「はのー」、「年を」→「としゅー」のように、名詞と融合して発音される。国東東部では「花を」→「はなー」、国東東部・県南沿岸部では「酒を」→「さきょー」となる[14]。ただし名詞語尾が長音の場合や名詞が1拍の場合は融合せず「お」と発音する[14]。方向・方位を表すには、「へ」は用いず「に」を使うが、これが「い」に変化し、さらに「を」と同じく名詞と融合する(例)「大分に」→「おいてー」[14]。これも名詞語尾が撥音・長音の場合や名詞が1拍の場合は「に」のまま[14]。帰着点を含まない方向・方位を表すには、「さめ」「さね」「どり」「どぅり」「んごつ」などを用いる[14]。動作・行為の目標を表すのに、動詞連用形+「げ(ー)」を県北半分で使う[4]

「の」「のもの」にあたる準体助詞は、九州で広く「と」を使うが、大分県では西部の日田玖珠地方中津市山間部で「と」「つ」を使う以外は、北部の中津市宇佐市豊後高田市付近で「のん」、それ以外の地域で「の」を用いる[4]

原因・理由を表す接続助詞は、「き」「きー」「けー」「けん」が使われる(例)眠かったき何もしちょらん(眠かったから何もしていない)。県北には「なきー」、国東東部には「ほどに」に由来する「ほで」、南部山間部の一部に「によって」に由来する「のっちぇ」がある[16]。逆接の接続助詞には、「けんど」「けんどん」「けどが」「けんどが」などを使う。日田市では肥筑方言系の「ばっちぇん」も使われる[14]

  • 「~っちゃ」- 文の内容を強調したい時に語尾につける。(例)違うっちゃ!俺はやっちょらんっちゃ!(違うって!俺はやってないって!)
  • 「~に」- 標準語でいう「~だよ」に近い。(例)まだ宿題してないに(まだ宿題してないんだよ)
  • 「~にから」-「~のに」 (例)せっかくしちょったにから(せっかくしておいたのに)
  • 「~やに」-「~に」と使い方はほぼ同じ。(例)あんたの事が好きやに(あなたの事が好きなんだよ)
  • 「~かえ」-標準語の「~かい?」や「~しなさい」に近い。ただ若い人は使わない人が多い。(例)元気かえ?(元気かい?) 使ったらちゃんと直さんかえ(使ったらちゃんと片付けなさい)
  • 「~かや」-標準語でいう「~のか」にあたる。 (例)宿題したんかや(宿題をしたのか)
  • 「が」-強調の意味をもつ。怒りの気持ちを込めて使われる場合も多く、「~ちゃ」に近い。 (例)もう作りよるが(もう作っているぞ)
  • 「~かり」-助詞「~から」にあたる。
  • 「~まじ」-助詞「~まで」にあたる。
  • 「そげえ」「どげえ」「こげえ」「あげえ」-「そんな」「どんな」「こんな」「あんな」

代表的な語彙

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太字部分にアクセント。

あ行

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  • い/あえ:青い。
  • たる:さわる。
  • :踵。
  • ぼ:餅。
  • ゆる:強風などで、枝についている実が落ちてしまうこと。
  • あらきい/あらけねえ:荒っぽい。
  • んし:「あの人」の意味。「し」は衆で、関西方面の一部で男衆(おとこし)と発音することとの近似が認められる。
  • いいちこ:県北部で使われる(中津弁)。「ちこ」は強意の接尾辞。同名の麦焼酎「いいちこ」も三和酒類より発売されている。
  • かずとうきょうべん:気取って、普段の会話も共通語で話そうとする人を馬鹿にする言葉。
  • かちい:「(性格が)悪い」のほうの「おろいい」とほぼ同じで、県北で使う。なお、「おろいい」「いかちい」はそんなに深い意味はなくても、会話の中で冗談交じりに「あんたおろいいわあ」などと使うものであり、その場合は別に人格を否定しているわけではない。ただし第三者をさして「~はおろいい」などと言う場合は別である。
  • いっすんずり:渋滞がひどいさま。少し動いては止まりを繰り返す様子。
  • いっかっち:マテバシイイチイガシなど、アク抜きをせずに食べられるどんぐりの類。
  • :お尻(女性がつかう言葉)
  • びしい/いびしげねえ:汚い、気味悪い
  • り/いり:蟻。「家蟻」が訛ったもので、食物等を狙って家の中に侵入してくる蟻を指して言う。
  • たちい:汚い、不潔だ
  • えらしい:「かわいい」の意味。しばしば「えしい」と発音される。
  • のは:ヤマメ(魚の名)。
  • さん、おさん、:親しみをこめた呼びかけ。
  • ど:釜戸。
  • い/おえ/おい/おい:怖い
  • じゃみ:お手玉
  • っさん:和尚さん。
  • っとろしい:「恐ろしい」の意味。
  • っとしゅなこつ:「すごいなあ」の意味の感嘆の言葉。
  • っとっしゃう:上に同じ。
  • らぶ:「叫ぶ」の意味。
  • ろいい:北部や日田では「古い」、杵築市などでは「(性格が)悪い」の意。北部では「ずるい」の意でも用いられる。
  • ぼ/おっぽ:おんぶ。

か行

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  • く:(大きなものを)持つ、担ぐ
  • たぐる:荷物などを担う。
  • ~するかたで:~しながら。
  • る:参加する・仲間に入る。幼児が「かーてーて(仲間に入れて)」と言うなど、広く使われている。
  • ちこわす:「かち」は強意で、「(ばらばらになるほど)ひどく壊す」の意味。
  • って:借りて(例:タオルをかってくる→タオルを借りてくる) ※「買ってくる」の場合は「こうてくる」と言う。
  • る:参加させる・仲間に入れる
  • す:コップなどを間違えて倒したり、液体などをこぼすこと。また、物を裏返したりすること。大分県人が方言だと気づいていない単語の代表格。
  • う:「(荷を)担う」の意味。背負う。全ての世代で使われる。大分県人が方言だと気づいていない単語の代表格。
  • ちい:きつい、激しい、辛い、疲れた、具合が悪い ※しばしば「きてぃ」と発音される。
  • きな:黄色
  • のどきい:気の毒だ。形容動詞「気の毒」が形容詞化されたもの。転じて、「恐縮です」「かたじけない」の意味で用いられる。 ※大分弁では形容動詞を形容詞化する現象が盛んである(例:横着だ⇒横着ぃ)。
  • ばる:用意周到に支度をする、頑張る、力を入れる。
  • いねえ:黄色い
  • がいい:いい気味だ。
  • ぎゅうらし:「仰らしい」。仰々しい。
  • で:傷が入って売り物にならない果物など。
  • びる:「結ぶ」の意味。
  • る:崩れる。
  • い:黒い
  • げ:軒の意味。
  • しょうもしれん:「話題にする価値もない」という意味。
  • けっちゃらきい:とにかく嫌で嫌で仕方がないときに使う。「誰々さんはけっちゃらきい」などとは言わずに、半ば独り言のように使う言葉である。これもほとんど聞かなくなった。
  • ってん:性根が曲がっている。
  • き:ここ。
  • しきい/こい:「ずる賢い」の意味。老人以外にはあまり使わない。
  • ごと:「~のように」の意味。しばしば、ごと→ごつ。「ごとく」の変化と思われる。
  • す:いじめる。竹田などで使われる。
  • びる/こびり:農作業時の間食、おやつ。
  • る:かじる、くいつく。

さ行

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  • さありゃまあ:「そうだね」の意味。これはほとんど死語と化している。
  • さっちゃ:「強いて」「無理に」「わざと」「しょっちゅう」。日田地方を除く大分県全域で使われる。
  • おふき:アオヤギ(貝の名)。
  • かたもしれん:「(馬鹿らしいほど)つまらない」の意味。
  • かぶる、まりかぶる:子供が排泄を失敗すること。「しかぶる」は特に小用の場合を示す。
  • ちくじい:「しつこい」の意味。
  • っとい:七島藺(畳表の材料)。
  • なし:意味のない会話。
  • っと:人の性格の表裏が激しいさま。ころっと変わるさま。例1:~さんなしねっとしちょん。(~さんは表裏が激しい) 例2:~さんな先生ん前じゃおとなしゅしちょってん、先生のおらんとこじゃとしねっとわりいことんじょうする。(~さんは先生の前では静かにしているが、先生のいないところではころっと変わっていたずらばかりする)
  • しゃあしい:「(音が)うるさい」「(作業が煩雑で)嫌だ」の意味。
  • しゃき:榊
  • しゃっち・しゃって:「強いて」「無理に」「わざと」「しょっちゅう」の意味。主に日田地方で使う。福岡方言。
  • しょうもねえ:「どうしょうもない」「つまらない」の意味。
  • しょわしい(せわしい):「忙しい」の意味。
  • い:雨の降ったあとで、地面がややぬかるんでいる様子。
  • らしんけん:一所懸命
  • んけん:非常に、とても
  • かんたらしい:「好かん」の強意。「ばされえ好ん」よりもさらにひどい。
  • っちゃんがっちゃん:バラバラに散らばった状態、めちゃくちゃに壊れた状態、どうしようもないほどひどい状況
  • つねえ:せんない、どうしようもない、身の詰まりだ。
  • る:物事が先に進むこと。
  • もつくれん:「くだらない」「馬鹿馬鹿しい」の意味。多く年配者が使う。
  • ろしい・せらしい:「(音が)うるさい」。竹田など熊本県に近い地域で使われる。熊本弁「せからしか」が転じた方言。
  • く:「急ぐ」「混む」「逸る」「(水路などを)堰き止める」の意味。
  • う(せう):「いじめる」の意。
  • せろしい:「うるさい」「やかましい」の意。
  • い:切ない、やるせない、きつい、面倒だ、情けない。
  • :路地(通常、非常に狭い路地を指す)
  • こらそんばし:適当に、ぞんざいに。

た行

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  • たまがった:びっくりした。
  • ゆうさん:唄、踊りなどが上手な人への冗談交じりの呼びかけ。
  • ちゃあまぁ:驚いた時に思わず出る言葉(「あらまぁ」等)。主に女性が用いる。
  • ちゃいねえ:茶色い
  • ちまわす:「何回もぶん殴る」の意味。
  • つば:唇
  • ぶし:膝。
  • :庭、空き地。
  • てれんぱらん:やる気なくだらだらしている様子を表す。竹田方面などでよく使われる。他地域でも「てれんぱれん」などの言い方がある。
  • :「(手や梯子などが)届く」の意味。
  • う:「~達」の意味。
  • うきび:とうもろこし。
  • うてん:とても。
  • :友人。
  • っぱくろ:嘘、ホラ
  • べ:「びり」「最下位」の意味。びびたんとも言う。
  • どろよこい:農繁期が落ち着くこと。
  • わずべん:独り言。

な行

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  • す:「(ものを)しまう」の意味。
  • しか:なんでだ? という意味だが、実際は「しかえ」と語調を和らげる場合が多い。「夕方なしか」というラジオ番組があり、全県的に知名度が高い。
  • ば:きのこ。主に椎茸の肉厚をさす
  • んかかる:大分市より北の地方や竹田・豊後大野で使われる。寄りかかるという意味。鹿児島弁でも使われる。熊本弁では「ねんかかる」と言うようだ。
  • んくりかやす:「裏返す」の強意。
  • :「ねき」と同様に用いる。
  • :「~んね」の形で使われ、意味は「~の辺り」「~の近所」。
  • じきね:気難しい、天邪鬼な。またはそのような人。

は行

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  • わら:墓地。地名や「新」などの後につける場合、しばしば「ばから」と転訛する。例:新墓原(しんばから)
  • されえ:「もの凄く」の意味だが老人以外あまり使わない。
  • じけえ:ワラくずが袖に入ったりしてちくちくして痒いときや、めざしなどを食べて喉がガサガサするときに使う。「はじかいい」とも言う。
  • とこ:駐車料金や小作料など、一定の土地を借りて支払う対価。家賃などには使わない。
  • く:「(ほうきで)はく」の意味。
  • びきたん:蛙
  • こ:娘(自分の子とはかぎらない)。
  • こじる:引きずる。
  • じい:辛い、きつい、疲れた。
  • :かさぶた。
  • だりい:「おなかがすいた」の意味。
  • びったれ:だらしない・不潔な・汚い人
  • どる:前を向いたまま下がる動作。加えて、目上の人に対して一歩引いた立場を取る様。
  • びんこ:めだか
  • びんびんこ/びびんこ:肩車
  • りかぶる:おもらしをする事。特に大用を示す。
  • る:さえずる。この単語は下1段活用ではなく、5段活用である。したがって打消しはふけらん。
  • ぶっさめえ:宇佐市で使われている、面倒くさいという意味、「よだきい」に近いだろうか。
  • かる、ほす:「捨てる」の意味。
  • :崖。または崖道の難所。
  • たる:「放っておく」「(相手を)そっとしておく」「そのままにしておく」「捨てる」の意味。
  • る:「(屋根から雨水が)漏れる」の意味。同じ「漏れる」でも、「話がぼる」などとはいわない。
  • ん:「とても」の意味。早く喋っているときや感情がこもったときに、「ほんに」が詰まったもの。 例:んちいせえ(とても小さい)
  • ん:男の子。
  • んなこあ:「ほんとだね」の意味。「さありゃまあ」は、本心から「そうだね」と言っているのに対して、「ほんなこてなあ」の場合は相槌のようなものであり、強く同意して「ほんとだね」と言っているわけではない。(否定しているわけでもないが)

ま行

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  • :回る。
  • :運。 例:まんがいい
  • げねえ:「かわいそう」の意味。若者にもよく使われる。むげしねぇとも言う。
  • んどしい:恥ずかしい。誤って「面倒くさい」の意味で使う若者も少なくない。
  • うが:馬鍬。
  • 豊後高田市周辺の市町村で使われる、凄く~という意味(もなおもしれえ/もうなおもしりい→すごく面白い)。

や行

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  • ぜねえ:「忙しい」「せわしない」の意。
  • ぜんのはなに:途端に。
  • んべ/んべ:昨夜。
  • う:休憩する。憩うの転訛。
  • だきい:めんどう、つかれたなどの気持ちを表す、県全体、多くの世代が使う[17]語源平安時代の「よだけし」。宮崎弁でも使われる。

わ行

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  • やく:「いたずら」の意味。
  • くど:蛙。
  • れ:あんた、お前さんといったニュアンスの呼びかけ。男性が用いる。中部では「貴様」のニュアンスの場合もある。地域によって意味するものが「お前さん」と「貴様」の場合があるので、注意が必要。

大分弁に関連した人物・作品など

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脚注

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注釈

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  1. ^ 豊日方言のうち、宮崎県の大半(旧日向国)で話される方言を日向方言という。
  2. ^ 両豊方言のうち、福岡県東部で話される方言を福岡県豊前方言という。

出典

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  1. ^ 日本方言の記述的研究・国立国語研究所編(1959) 241-242頁
  2. ^ 講座方言学 9 1983, p. 243.
  3. ^ a b 講座方言学 9 1983, p. 245-246.
  4. ^ a b c d 講座方言学 9 1983, p. 265.
  5. ^ a b c 講座方言学 9 1983, p. 247.
  6. ^ 講座方言学 9 1983, p. 246.
  7. ^ 講座方言学 9 1983, p. 244-245.
  8. ^ 講座方言学 9 1983, p. 245.
  9. ^ a b 講座方言学 9 1983, p. 251.
  10. ^ 講座方言学 9 1983, p. 248-249.
  11. ^ 講座方言学 9 1983, p. 249-250.
  12. ^ 講座方言学 9 1983, p. 256-258.
  13. ^ 講座方言学 9 1983, p. 260.
  14. ^ a b c d e f g 講座方言学 9 1983, p. 264.
  15. ^ 講座方言学 9 1983, p. 263.
  16. ^ 講座方言学 9 1983, p. 263-264.
  17. ^ 武光誠『県民性の日本地図』文藝春秋〈文春新書〉、2001年、212頁。ISBN 4-16-660166-0 

参考文献

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  • 『NHK日本語発音アクセント辞典 新版』NHK放送文化研究所 編(NHK出版、1998年発行) - 標準語のアクセントはこの書籍に依った。
  • 『全国アクセント辞典』 平山輝男著(東京堂出版、1977年発行) - 大分市における伝統的なアクセントを調査して掲載。
  • 『日本方言の記述的研究』・国立国語研究所編(1959年) 239-264頁(大分県大野郡川登村
  • 『日本言語地図』第1集~第6集・国立国語研究所編(1966年-1974年)
  • 『方言文法全国地図』第1集~第6集・国立国語研究所編(1989年-2006年)
  • 「大分県の方言」『講座方言学 9 九州地方の方言』国書刊行会、1983年。 

関連項目

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