佐藤次高
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人物情報 | |
---|---|
生誕 |
1942年8月27日 日本 |
死没 | 2011年4月11日 (68歳没) |
出身校 | 東京大学 |
学問 | |
研究分野 | 中世アラブ社会史 |
研究機関 |
東京大学東洋文化研究所 お茶の水女子大学 東京大学 早稲田大学 東洋文庫 |
学位 | 文学博士(東京大学 1981年) |
主な受賞歴 |
流沙海西奨学会賞(1973年) 恩賜賞・日本学士院賞(2000年) |
佐藤 次高(さとう つぎたか、1942年8月27日 - 2011年4月11日[1])は、日本の歴史学者。専門はアラブ・イスラーム史。学位は、文学博士(東京大学・論文博士・1981年)(学位論文「アラブ中世社会史研究」[2])。東京大学名誉教授。東洋文庫研究部長、日本中東学会会長、史学会理事長、早稲田大学文学学術院教授などを歴任[3]。
1973年流沙海西奨学会賞受賞[4]。2000年恩賜賞・日本学士院賞受賞[5]。
経歴
[編集]- 学歴
1942年8月27日神奈川県横浜市に生まれる[1]。神奈川県立希望ケ丘高等学校から、1961年東京大学理科II類に入学するが、1963年文学部東洋史学科へ進学[1]。1965年東京大学文学部東洋史学科を卒業、卒業論文はアッバース朝時代の行政制度に関するものであった[6]。1968年同大学院人文科学研究科博士課程中退[3]。
- 歴史学者として(アラブ・イスラーム史)
- 1968年4月(25歳)より東京大学東洋文化研究所助手、1974年お茶の水女子大学文教育学部専任講師、1976年同助教授、1979年東洋文庫兼任研究員。1980年4月(37歳)東京大学文学部助教授、1990年3月(47歳)教授に昇進、同年4月より東洋文庫研究部長となる[7]。
- この間、護雅夫のすすめにより「アラブ中世社会史研究」を東京大学に提出し、1981年3月(38歳)文学博士の学位を取得[2]。この学位論文を加筆、訂正のうえ出版したものが『中世イスラム国家とアラブ社会:イクター制の研究』佐藤 (1986)[8]。
また1984年8月₋12月、日本学術振興会カイロ研究連絡センターの初代センター長を務める[9] 。
- 1997年4月から第一次「イスラーム地域研究」のプロジェクトリーダー(-2002年3月)[12]、5月より日本中東学会会長(-2001年5月)[13]、6月より史学会理事長(-1998年6月)をつとめる[3]。
- 2003年3月(60歳)東京大学を定年退官、4月早稲田大学文学学術院教授、6月東京大学名誉教授の称号を受ける[14]。2006年から人間文化研究機構(NIHU)との共同事業「NIHUプログラム・イスラーム地域研究」を主宰[15][16]。2008年早稲田大学イスラーム地域研究機構長をつとめる[17][18]。
- 2011年4月日本学術振興会 アジア・アフリカ学術基盤形成事業[19]「イスラームと多元文化主義:イスラームとの共生に向けた基礎的研究」実施組織代表者・コーディネーター[3][20]となるが、4月11日、前立腺がんのため死去[21]。68歳没。
2011年、旧蔵書であるアラビア文字資料をはじめ洋書・和書(中世アラブ社会史、砂糖関係図書も含む)約4,000冊が遺族より早稲田大学図書館に寄贈される[22]。
- 1998年2月中国当局に逮捕されたトフティの指導教官が佐藤次高であった。トフティは1995年から博士課程に在籍し[23]、論文作成の史料収集にウルムチを訪れた数週間後に拘束された[24]。佐藤をはじめとする支援者らは釈放と復学に奔走したが[25]、懲役11年の実刑判決となる。この間、佐藤は何度もウルムチの監獄を訪れ近況を聞き、日本在住の家族への支援にもつとめた[26]。2009年釈放の日、佐藤・小松ら日本人支援者はウルムチの監獄前で面会を待つがかなわず、2010年北京にて佐藤が再会を果たす[26][27]。中国からの出国はできず復学はかなわなかったトフティだが、2013年北京にて著作を出版:『
中世纪维吾尓社会 』人民出版社、2013年4月。 NCID BB13787911。 [28]
著書
[編集]単著
[編集]- 『中世イスラム国家とアラブ社会:イクター制の研究』山川出版社、1986年。 NCID BN00985815。
- 『マムルーク:異教の世界からきたイスラムの支配者たち』東京大学出版会、1991年。NCID BN06171012
- 新装版〈UPコレクション〉2013年。NCID BB13348219。
- 『イスラームの「英雄」サラディン:十字軍と戦った男』講談社〈講談社選書メチエ〉1996年。NCID BN14350436。
- 〈講談社学術文庫〉2011年。NCID BB07338516。
- State and Rural Society in Medieval Islam : Sultans, Muqta‘s and Fallahun. 〈Islamic History and Civilization. Studies and Texts, Volume:17〉. (E.J.Brill, Leiden, 1997). NCID BA29652685
- ※三浦徹「(書評)佐藤次高著「Sato Tsugitaka, State & Rural Society in Medieval Islam: Sultans, Muqta's & Fallahun」」『法制史研究』第1998巻第48号、法制史学会、1998年、269-274頁、doi:10.5955/jalha.1998.269。
- ※2000年恩賜賞・日本学士院賞受賞
- 『イスラーム世界の興隆』中央公論社 〈世界の歴史 8〉1997年。NCID BA32189148。
- 〈中公文庫〉2008年。NCID BA88092299。
- 『イスラームの生活と技術』山川出版社〈世界史リブレット 17〉1999年。NCID BA39638771。
- 『聖者イブラーヒーム伝説』角川書店〈角川叢書〉2001年。NCID BA51601023 [30]
- 『イスラームの国家と王権』岩波書店〈世界歴史選書〉2004年。NCID BA65441253。
- 〈岩波オンデマンドブックス〉2015年。NCID BB21674739
- 『砂糖のイスラーム生活史』岩波書店、2008年。NCID BA88486884。
- 〈岩波オンデマンドブックス〉2016年。NCID BB26637649
- ※五十嵐大介「(新刊紹介)佐藤次高著『砂糖のイスラーム生活史』 岩波書店, 二〇〇八, 三〇七頁」『史学雑誌』第118巻第12号、史学会、2009年、2180-2181頁、doi:10.24471/shigaku.118.12_2180。「前著『イスラームの生活と技術』(1999年)中の砂糖に関する論考部分をさらに発展させ、 その研究の集大成として満を持して刊行されたものである」
- 『イスラーム:知の営み』山川出版社〈イスラームを知る 1〉2009年。NCID BA91611361。
- Sugar in the Social Life of Medieval Islam.〈Islamic area studies / series editor,Toru Miura(三浦徹), v.1〉(Brill, Leiden, 2014). NCID BB17674950。[31][32]
- ※吉村武典「闘病中も最後の著作であるSugar in the Social Life of Medieval Islam(Leiden,Brill,2014)の校正を続け、最期までアラブ・イスラーム史研究を続けられた」[9]
共著
[編集]- 『岩波講座 世界歴史』岩波書店
- 第1期:『第8 中世 2 西アジア世界』1969年。NCID BN01797683。
- 執筆:「イスラム封建制度論」
- 第2期:『第10 イスラーム世界の発展:7-16世紀』1999年。NCID BA43491815。
- 執筆:「はしがき」「イスラーム国家論:成立としくみと展開」
- 『アジア文化史論叢 2』流沙海西奨学会 編、山川出版社、1978年。ISBN 978-4634656208。
- 『人々のイスラーム:その学際的研究』片倉もとこ編、日本放送出版協会、1987年。NCID BN0139150X
- 『西アジア 上巻』屋形禎亮[34]共著、朝日新聞社〈地域からの世界史 7〉、1993年。ISBN 978-4022585028。
- 『イスラム社会のヤクザ:歴史を生きる任侠と無頼』清水宏祐[35]・八尾師誠・三浦徹[36]共著、第三書館、1994年。NCID BN11056705。
- 『イスラーム世界』岩波書店、2004年。NCID BA66155555。
- 執筆:「日本のイスラーム研究(焦点と未来への展望)」
編著
[編集]- 『イスラム・社会のシステム』筑摩書房〈講座イスラム 3〉1986年。NCID BN00294563。
- Islamic Urbanism in Human History: Political Power and Social Networks. (Kegan Paul International, London, 1997). ISBN 978-0710305602、NCID BA3779403X
- 『人物世界史 東洋編』3-4、山川出版社、1995年。ISBN 978-4634643208, 978-4634643307
- 『西アジア史Ⅰ アラブ』山川出版社〈新版 世界各国史 8〉2002年。NCID BA56217099。
- 『キーワードで読むイスラーム:歴史と現在』山川出版社〈アジア理解講座 2〉2003年。NCID BA6434911X。
- 『イスラーム地域研究の可能性』東京大学出版会〈イスラーム地域研究叢書 1〉、2003年。NCID BA64340807。
- Muslim Societies: Historical and Comparative Aspects.(RoutledgeCurzon, London, 2004). NCID BA6718413X
- 『イスラームの歴史 (1) イスラームの創始と展開』山川出版社〈宗教の世界史 11〉2010年。NCID BB02314077。
- ※橋爪烈 著「<書評>佐藤次高編『イスラームの歴史1 イスラームの創始と展開」『イスラーム世界研究』京都大学イスラーム地域研究センター、2011年、596-599頁、doi:10.14989/154003。
共編著
[編集]- 『農民』冨岡倍雄共編、東洋経済新報社〈イスラム世界の人びと 2〉1984年。NCID BN04450252
- 『概説イスラーム史』板垣雄三共編、有斐閣 〈有斐閣選書〉1986年。NCID BN00232759
- 『都市の文明イスラーム』鈴木董共編、講談社〈講談社現代新書ー新書イスラームの世界史 1〉1993年。NCID BN09706546
- 『ときの地域史』福井憲彦共編、山川出版社〈地域の世界史 6〉1999年。NCID BA39467770
- 『市場の地域史』岸本美緒共編、山川出版社〈地域の世界史 9〉1999年。NCID BA41838478
- 『イスラーム世界のことばと文化』岡田恵美子共編、成文堂、2008年。NCID BA85924169
- 『暦の大事典』岡田芳朗ほか共編、朝倉書店、2014年。NCID BB16134131
- 新装版 2021年。NCID BC11189676
- 執筆:「第6章 イスラームの暦〈6.1 イスラーム暦の誕生〉」158-165頁
監修
[編集]- 日本イスラム協会(嶋田襄平[37]・板垣雄三・佐藤次高)『イスラム事典』平凡社、1982年。NCID BN00830273。
- 全面改訂新版『新イスラム事典』[38]平凡社[39]、2002年。NCID BA55998993。
訳書
[編集]- ベシーム・S・ハキーム『イスラーム都市:アラブのまちづくりの原理』監訳、第三書館、1990年。NCID BN05742071。
- ジャネット・L・アブー=ルゴド 『ヨーロッパ覇権以前:もうひとつの世界システム』(上・下)斯波義信・高山博・三浦徹共訳、岩波書店、2001年[40]。
- 〈岩波人文書セレクション〉2014年。〈岩波現代文庫〉2022年。NCID BC14125807, BC14125895。
脚注・出典
[編集]- ^ a b c 三浦徹 2011, p. 108.
- ^ a b NAID 500000261422
- ^ a b c d e 年譜・主要著作 2012.
- ^ 受賞論文「12〜14世紀のエジプト農村社会と農民:ファッラーフーンの農業生産と農業生活の様式」『東洋文化研究所紀要』第59冊, 1973年2月, pp.1-107:(経歴と業績) / 1978年『アジア文化史論叢 2』に論文収録
- ^ 受賞研究題目:State and Rural Society in Medieval Islam、第90回(平成12年6月12日)日本学士院
- ^ 「イスラーム史を専攻する学生はまだ珍しい時代であった」(佐藤次高 1997, p. 148)
- ^ 「平成元年度[1989年度]」『東洋文庫年報』、東洋文庫、1990-11-28。。「p.4:平成2年4月より…従来研究部長補佐を務めて来られた東京大学教授佐藤次高氏を…推し、全く新しい体制で東洋文庫の発展を期することとした。」
- ^ 佐藤次高「護雅夫先生を想う」『東方學 第九十四輯』、東方學會、1997年7月、149頁。
- ^ a b c 吉村武典※「佐藤先生と街々の母カイロ」(PDF:18.8MB)『カイロ研究連絡センター三十周年記念』、日本学術振興会、2016年1月16日、34-35頁,130頁:カイロ 歴代派遣者。※吉村武典 - researchmap
- ^ a b 佐藤次高 1997, p. 149.
- ^ 清水宏祐 2011, p. 186:「佐藤さんは、亡くなられるまでに50本以上の論考を残されました。イクター制の研究は、その中核をなすもので、高校世界史教科書にイクターの語が使われるようになったのも、この研究の成果であり、また学士院恩賜賞を受賞されたのも、これらを集大成した著作(State and Rural Society in Medieval Islam)によるものでした」.
- ^ 小松久男 2012, p. 8-9.
- ^ 日本中東学会20年のあゆみ 1985-2005では、1997-2000年と記載. 2024年10月13日閲覧。
- ^ 経歴と業績.
- ^ 湯川武 2012, p. 1-2.
- ^ NIHUプログラム イスラーム地域研究 - 文部科学省(PDF 1079KB):早稲田大学 総合研究機構
- ^ 佐藤次高「イスラーム地域研究─歴史と展望」『イスラーム地域研究ジャーナル』第1巻創刊号、早稲田大学イスラーム地域研究機構、2009年、1-8頁、NAID 40017136063。
- ^ 2008年設立、11年後の2019年3月31日閉鎖:早稲田大学イスラーム地域研究機構 2019.2023年12月1日閲覧。
- ^ “本事業は、平成25年度をもって終了しました。”. 日本学術振興会. 2023年12月5日閲覧。
- ^ 平成23年度 実施計画書:日本学術振興会。 桜井啓子が引き継ぐ。
- ^ 佐藤次高・早稲田大教授が死去 - 日本経済新聞(2011年4月12日 ).2022年7月閲覧
- ^ 佐藤次高文庫(文庫32)‐特殊コレクション(文庫)- 早稲田大学図書館
- ^ PEN AMERICA
- ^ Cai Jiquan (2003年2月17日). “Prisoner Profile(囚人プロフィール):Tohti Tunyaz”. HRIC:Human Rights in China 中国人权. 2013年12月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月10日閲覧。
- ^ “トフティさんの復学を求める会”. 2012年8月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月10日閲覧。
- ^ a b 小松久男 2012, p. 8.
- ^ “東大留学中に中国が投獄 トフティー氏 11年ぶり釈放”. 世界ウイグル会議(東京新聞 2009年2月10日 夕刊). 2020年9月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月10日閲覧。
- ^ 「诗银老黄 (2021年8月12日). “简评《中世纪维吾尔社会》”. 2022年8月10日閲覧。」の執筆者は、トフティが日本留学し、佐藤次高、小松久男、梅村坦ら著名なイスラーム史学者に出会い、彼らの「優れた学問的業績を吸収した」と記している
- ^ 三浦徹 1998, p. 269.
- ^ 東長靖「<原典翻訳> スーフィズム・アンソロジー・シリーズ3 クシャイリー『クシャイリーの論攷』より「スーフィー列伝」解題・翻訳ならびに訳注」『イスラーム世界研究』第3巻第2号、京都大学イスラーム地域研究センター、2010年3月、406-415頁、doi:10.14989/123285。「p.406:イブラーヒーム・イブン=アドハムの伝記がどのように変遷・発展していったかについては、佐藤次高『聖者イブラーヒーム伝説』(角川書店、2001 年)にくわしい。」
- ^ Hardback 2014, E-Book 2015 BRILL. 2024年10月14日閲覧。
- ^ Google books
- ^ 内容細目:国立国会図書館書誌ID:000001396536
- ^ 屋形禎亮 CiNii
- ^ 清水宏祐 - researchmap
- ^ 三浦徹 - researchmap
- ^ 20世紀日本人名事典『嶋田 襄平』 - コトバンク
- ^ 三浦 徹「新イスラム事典の誕生」『イスラム世界』第59巻、日本イスラム協会、2002年、120-131頁、doi:10.57470/theworldofislam.59.0_120。
- ^ 佐藤次高 編集代表 平凡社
- ^ 目次・訳者紹介 岩波書店
参考文献
[編集]- 三浦徹※「追悼 佐藤次高先生」『史學雜誌』第120巻第6号、史学会、2011年、108-110頁、doi:10.24471/shigaku.120.6_1154。
- ※三浦徹は、佐藤次高急逝後、リリーフ役として授業を行った:三浦 徹(文学学術院 客員教授)早稲田大学 - ウェイバックマシン(2019年7月18日アーカイブ分) /「略歴・研究業績:三浦徹先生ご退職記念特集」『お茶の水史学』第64号 hdl:10083/0002000234
- 「佐藤次高教授 年譜・主要著作目録」『史觀』第166号、早稲田大学史学会、2012年3月25日、123-137頁、hdl:2065/00053303。
- 「佐藤次高先生追悼特集 ※以下PDFあり」『イスラーム地域研究ジャーナル』第4号、2012年、1-10頁。
- “佐藤次高教授の経歴と業績 「故 佐藤次高教授のページ」”. 早稲田大学. 2023年10月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月1日閲覧。
- 清水宏祐※「追悼 佐藤次高氏のご逝去を悼む」『オリエント』第54巻第1号、日本オリエント学会、2011年、186-188頁、doi:10.5356/jorient.54.186。※清水宏祐 - researchmap
外部リンク
[編集]- 佐藤次高 - CiNii Research
- SATO Tsugitaka 東洋文庫リポジトリ
- 『佐藤次高(デジタル版 日本人名大辞典+Plus / 百科事典マイペディア )』 - コトバンク
- 佐藤次高 - researchmap
- 佐藤次高 - KAKEN 科学研究費助成事業データベース