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唐物語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

唐物語』(からものがたり、からもののかたり)は、中国の故事を翻案し歌物語の形式にした説話集。作者は藤原成範である蓋然性が高く、成立は12世紀後半と推定される[1]

それぞれに異なる人物を主人公とする27の短い物語を集成したものである。『蒙求』『白氏文集』などを主要な出典とし、多くは有名な故事を題材としている。「唐」(から)は中国を意味し、唐代以前の故事が多い。文章は『源氏物語』や和歌の影響の強い優雅な和文体で、また内容的にも原拠と目される作品とはかなりの違いが見られる。

各作品の原拠についての研究は、江戸時代文化6年(1809年)の清水浜臣の『唐物語提要[2]』を初めとして現代までいくつもの研究が報告されている。しかし、張文成(「遊仙窟」の作者、張鷟(中国語版))が則天皇后の愛人であったという第9話と、結婚を拒否して山中に逃れた娘が犬と交わるという第27話は、中国の原拠が不明のため、古来大きな研究課題となっている。

目録と典拠

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( )は清水浜臣『唐物語提要』[3]に挙げられた標題、『 』は有吉恵美子[4]考証による原拠文献題名[5]

  1. (王子猷(中国語版)) 『蒙求子猷尋戴』[6]
  2. 白楽天) 『白氏文集巻十二琵琶引』
  3. (賈氏) 『左伝昭公二十八年』
  4. (梁鴻) 『蒙求孟光荊釵』[7]
  5. 司馬相如卓文君) 『史記巻百十七本伝』/(題柱故事) 『蒙求相如題柱』[8]
  6. 石季倫緑珠) 『蒙求緑珠墜楼』[9]
  7. (宋玉) 『文選登徒子奸色賦』
  8. (関盼盼) 『白氏文集巻十五燕子楼(中国語版)
  9. (張文成則天武后) 出所不詳
  10. 徳言陳氏) 『本事詩(中国語版)[10]
  11. (簫史弄玉) 『列仙伝[11]
  12. (望夫石) 『幽明録』[12]
  13. 娥皇女英) 『博物志(中国語版)[13]
  14. (陵園妾) 『白氏文集楽府陵園妾』
  15. 武帝李夫人) 『前漢書巻九十七外戚伝』『白氏文集新楽府李夫人』
  16. 武帝西王母) 『西王母漢武内伝』『博物志』[14]
  17. (商山四皓(中国語版)呂后) 『史記巻五十五留侯世家』『史記呂后本紀』『前漢書外戚伝』『西京雑記』/(許由巣父) 『高士伝』『蒙求許由一瓢』
  18. 玄宗楊貴妃) 『白氏文集巻十二長恨歌并伝』
  19. 朱買臣) 『前漢書巻六十四朱買臣伝』[15]
  20. (程嬰杵臼[16]) 『史記巻四十三趙世家』
  21. 平原君) 『史記巻七十六平原君列伝』[17]
  22. 楚荘王) 『説苑[18]
  23. 荀爽女) 『後漢書巻八十四列女伝』
  24. (上陽人) 『白氏文集巻三新楽府』
  25. 王昭君) 『西京雑記』。また『文選』にも同様の話が見える。
  26. 潘安仁) 『晋書巻五十五潘安仁伝』[19]
  27. (雪々) 出所不詳

現代語訳書等

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  • 浅井峯治『唐物語新釈』大同館書店、1940年。doi:10.11501/1884618全国書誌番号:60010838https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1884618  覆刻版は1989年1月 有精堂。底本は清水浜臣校版本。
  • 小林保治 編著『唐物語』2003年 講談社学術文庫 ISBN 978-4-06-159601-6 。元版は『唐物語全釈』1998年 笠間書院 ISBN 978-4305300263 。底本は名古屋大学文学部国語国文学研究室所蔵本。

参考文献

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注・出典

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  1. ^ 上限は仁平元年(1151年)と推定されている。
  2. ^ 国文学研究資料館公開資料に清水浜臣《唐物語提要・唐物語》 提要末尾に署名「文化六年二月 清水濱臣識」 江門書肆刊の影印 がある。5コマ目が原拠文献の一覧、9コマ目に署名。
  3. ^ 清水浜臣 1931.
  4. ^ 1959年度福岡女子大学卒業生、詳細不詳。
  5. ^ (有吉恵美子(1960))は、清水浜臣校訂本(『平安朝物語集』(有朋堂書店)に収録)、(浅井峯治(1940))、山田孝雄『蒙求と国文学』(1913年 國學院雜誌19巻11号 doi:10.11501/3364874)に挙げられた出典を検討し、『唐物語』成立以前に日本に伝来していたか否かを確認したもの。論文の冒頭に一覧が挙げられている。卒業論文と思われるが、2010年に曾麗端は厦門大学の碩士(修士)論文《『唐物語』の翻訳技法に関する一考察 --『蒙求』と『白氏文集』の翻訳を中心として》で成果を評価している。
  6. ^ 山田孝雄による。清水浜臣は『晋書巻八十本伝』を挙げる。
  7. ^ 山田孝雄による。清水浜臣は『後漢書巻八十三梁鴻伝』を挙げる。
  8. ^ 清水浜臣は『華陽国志』を挙げる。
  9. ^ 清水浜臣は『晋書巻三十三石崇伝』を並記する。
  10. ^ 清水浜臣は『本事詩』と『両京新記』を並記しているが、古田島洋介は『両京新記(中国語版)巻三』を挙げる:(古田島洋介(1985))。なお『両京新記巻三』は唐末に伝来したとされる佚存書。
  11. ^ 山田孝雄は『蒙求簫史鳳台』を挙げる。
  12. ^ (浅井峯治(1940))で『神異記』を挙げる。
  13. ^ (浅井峯治(1940))で『古列女伝』を挙げる。
  14. ^ 『博物志』は(浅井峯治(1940))の挙げるところ。清水浜臣は『漢武内伝』と『列仙伝』を並記する。
  15. ^ 山田孝雄は『蒙求買妻耻醮』を挙げる。
  16. ^ 程嬰も公孫杵臼も趙氏孤児の登場人物。
  17. ^ 『蒙求趙勝謝躄』という説もある。
  18. ^ 清水浜臣は『韓非子』『楚策』『蒙求引説苑』『無所見』を並記、山田孝雄は『蒙求楚荘絶纓』を挙げる。
  19. ^ 『蒙求岳湛連璧』という説もある。