嘆きのピエタ
嘆きのピエタ | |
---|---|
피에타 | |
監督 | キム・ギドク |
脚本 | キム・ギドク |
製作 |
Kim Soon-mo キム・ギドク |
出演者 |
イ・ジョンジン チョ・ミンス |
音楽 | In-young Park |
撮影 | Jo Young-Jik |
編集 | キム・ギドク |
配給 |
ネクスト・エンターテインメント・ワールド クレストインターナショナル |
公開 |
2012年9月4日(VIFF) 2012年9月6日 2013年6月15日 |
上映時間 | 104分 |
製作国 | 韓国[1] |
言語 | 韓国語 |
興行収入 | $3,601,250[2] |
『嘆きのピエタ』(なげきのピエタ、原題:피에타、英題:Pietà)は、キム・ギドク監督・脚本による2012年公開の韓国映画。消費者金融の取り立て屋の男とその母親を名乗る女の不思議な関係が描かれる[3][4][5][6][7]。
出資スポンサーが無い、監督の自費製作作品だが、ただ早撮りしただけではなく「スタッフやキャストは原則ノーギャラ・興行成績に応じた出来高払い」という方式で低予算製作を成立させている[8]。
第69回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門で初上映され[9][10]、金獅子賞を受賞した[11][12]。韓国映画が三大国際映画祭(ヴェネツィア・カンヌ・ベルリン)の最高賞を受賞するのは本作が初めてであった[13][14][15][16][17][18]。
タイトルの『ピエタ』(piety/pity)とは、聖母マリアがイエスの亡骸を抱く彫刻や絵を指す。
あらすじ
[編集]闇金融の取り立て屋をするガンドは、幼い頃に家族に捨てられ愛を知らずに育った孤独な男で、借金を返せない債務者には暴行を加えて障害者にし、その保険金で返済させるという残忍さを持っている。 この日も町工場を営む夫婦を暴行しての帰り、ガンドの前に謎めいた女が現れ、家までついて来たその女はガンドの母ミソンだと言い、捨てたことを謝り涙を流す。しかしガンドはそんなミソンを冷たくあしらう。 その後もミソンはガンドの仕事について回り、執拗に付きまとってガンドのために子守唄を歌う。それまでミソンを邪険に扱っていたガンドだったが、奇妙な同居生活が始まり、次第に心を開き始め、遂に母親と認めるようになる。二人は一緒に買い物に出かけ、母子としての暮らしを楽しむようになる。 やがてガンドの心境に変化が現れ、母が消えてしまう不安を抱き、母との暮らしに依存していくようになる。ガンドが過酷な取り立て屋の仕事を辞めようとしたその時、突然ミソンが姿を消す。ミソンの正体は、かつて借金の取り立てで自殺した青年サングの母で、復讐のためガンドに近づいたものだった。 一旦家に戻ったものの、ミソンの態度は少しずつガンドに対して冷淡になり、ある時再び姿を消したミソンは、何者かに襲われたかのように装ってガンドに助けを求める電話をかけ、ガンドの不安を一層煽る。 そして闇金融の社長宅を訪れ、その騒ぎをガンドに電話で聞かせた上で社長を殺害する。そして、廃墟ビル屋上で殺される恐怖を自演しながらガンドを呼び寄せ、母を助けてと懇願するガンドを前にして、ミソンは飛び降りて自ら命を絶った。母と信じるガンドは泣き崩れ号泣する。 以前ミソンが埋葬して欲しいと言っていた場所をガンドが掘り起こすと、そこには実子サングの遺体があり、彼は全ての真実を理解する。埋葬を終えたガンドは、かつて自分が傷つけた夫婦の元を訪ね、トラックにチェーンで自らの体を括り付け、走り出したトラックに引きずられてどこへともなく去っていった。
キャスト
[編集]- イ・ガンド - イ・ジョンジン 天涯孤独の借金取り立て屋
- ミソン - チョ・ミンス 母を名乗る女性
- フンチョル - ウ・ギホン 障害者にされる負債者
- ミョンジャ - カン・ウンジン フンチョルの妻
- ギターの男 - クォン・セイン
公開
[編集]2012年9月4日にヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門でプレミア上映された[19][20][21][22][23][24][25]。韓国では2012年9月6日に劇場公開された[26][27][28][29][30]。
配給権はイタリア、ドイツ、ロシア、ノルウェー、トルコ、香港、ギリシャなど20カ国に売却された[31]。北アメリカでは独立系のドラフトハウス・フィルムズにより配給される[32]。
評価
[編集]第69回ヴェネツィア国際映画祭では金獅子賞を受賞した。ヴェネツィアのプレススクリーニングでは、「非常にさまざまな反応を引き起こした」と報じられた[33][34]。審査員長を務めたアメリカの映画監督のマイケル・マンは、「(この映画は)直感的にあなたを誘惑する」ため際立っていたと述べた[17][35][36]。
第85回アカデミー賞外国語映画賞には韓国代表として出品されたが、最終選考9本には残らなかった[37][38][39][40]。
受賞とノミネート
[編集]賞 | 部門 | 候補 | 結果 |
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ヴェネツィア国際映画祭 | 金獅子賞 | キム・ギドク | 受賞 |
大鐘賞 | 作品賞 | 『嘆きのピエタ』 | ノミネート |
監督賞 | キム・ギドク | ノミネート | |
主演女優賞 | チョ・ミンス | 受賞 | |
助演女優賞 | Eunjin Kang | ノミネート | |
審査員特別賞 | キム・ギドク | 受賞 | |
サテライト賞[41] | 監督賞 | キム・ギドク | ノミネート |
オリジナル脚本賞 | キム・ギドク | ノミネート | |
外国語映画賞 | 『嘆きのピエタ』 | 受賞 | |
韓国映画批評家協会賞[42] | 作品賞 | 『嘆きのピエタ』 | 受賞 |
監督賞 | キム・ギドク | 受賞 | |
主演女優賞 | チョ・ミンス | 受賞 | |
FIPRESCI韓国支部賞 | 『嘆きのピエタ』 | 受賞 |
参考文献
[編集]- ^ Park, Eun-jee (2012年8月12日). “Movies at the palace: Sensible or sacrilege?”. 2013年1月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年2月14日閲覧。
- ^ “Pieta”. Box Office Mojo. Amazon.com. 2013年2月14日閲覧。
- ^ “"It's a story about victims and attackers."”. Korean Film Biz Zone (27 August 2012). 2013年2月14日閲覧。
- ^ “KIM Ki-duk goes to Venice with PIETA”. Korea Cinema Today (7 August 2012). 2013年2月14日閲覧。
- ^ Cho, Jae-eun (27 July 2012). “Renowned director juxtaposes sexuality and religion in ‘Pieta’”. Korea JoongAng Daily. 2013年2月14日閲覧。
- ^ “Kim Ki-duk back with new film ‘Pieta’”. The Korea Herald (20 July 2012). 2013年2月14日閲覧。
- ^ Lee, Rachel (9 September 2012). “From eccentric to darling of Venice”. The Korea Times. 2013年2月14日閲覧。
- ^ 韓国エンタメサイト「Kstyle」2012年09月13日分記事より
- ^ Rachel Lee, Kwaak Je-yup (29 August 2012). “Kim Ki-duk’s ‘Pieta’ in competition at Venice”. The Korea Times. 2013年2月14日閲覧。
- ^ “Korean morality tale premieres at Venice film fest”. The Korea Herald (5 September 2012). 2013年2月14日閲覧。
- ^ Ji, Yong-jin (10 September 2012). “Venice choses KIM Ki-duk”. Korean Film Biz Zone. 2013年2月14日閲覧。
- ^ “Outsider Kim Ki-duk's 'Pieta' Wins Top Prize in Venice”. The Chosun Ilbo (10 September 2012). 2013年2月14日閲覧。
- ^ “Venice festival winner a hard-hitting morality tale”. The Korea Herald (9 September 2012). 2013年2月14日閲覧。
- ^ Lee, Claire (9 September 2012). “Kim Ki-duk becomes 1st Korean director to win top film prize at Venice”. The Korea Herald. 2013年2月14日閲覧。
- ^ Lee, Claire (9 September 2012). “Former laborer becomes acclaimed filmmaker”. The Korea Herald. 2013年2月14日閲覧。
- ^ “Kim Ki-duk: from monster with 'inferiority complex' to master director”. The Korea Herald (9 September 2012). 2013年2月14日閲覧。
- ^ a b Kim, Ji-soo (9 September 2012). “Director Kim Ki-duk takes Venice”. The Korea Times. 2013年2月14日閲覧。
- ^ Park, Eun-jee (10 September 2012). “In dramatic style, Kim makes movie history”. Korea JoongAng Daily. 2013年2月14日閲覧。
- ^ Lee, Claire (27 July 2012). “Kim Ki-duk’s ‘Pieta’ goes to Venice”. The Korea Herald. 2013年2月14日閲覧。
- ^ “Kim Ki-duk Invited to Venice for 4th Time with 'Pieta'”. The Chosun Ilbo (27 July 2012). 2013年2月14日閲覧。
- ^ “Kim Ki-duk's new film up for competition in Venice fest”. The Korea Times (27 July 2012). 2013年2月14日閲覧。
- ^ “‘Pieta’ tipped for Venice win”. The Korea Herald (7 September 2012). 2013年2月14日閲覧。
- ^ “Directors Kim Ki-duk, Takeshi Kitano see Asian art house in crisis”. Korea JoongAng Daily (7 September 2012). 2013年2月14日閲覧。
- ^ Lee, Eun-sun (7 September 2012). “With 5-star reviews, PIETA is becoming a critical darling”. Korean Film Biz Zone. 2013年2月14日閲覧。
- ^ “Director Kim unchanged by Venice triumph”. The Korea Herald (12 September 2012). 2013年2月14日閲覧。
- ^ Kwaak, Je-yup (6 September 2012). “‘Pieta’ filled with bloody revenge”. The Korea Times. 2013年2月14日閲覧。
- ^ Lee, Claire (6 September 2012). “Kim Ki-duk returns with brutal revenge tale”. The Korea Herald. 2013年2月14日閲覧。
- ^ Cho, Chung-un (10 September 2012). “Can ‘Pieta’ enjoy success at home?”. The Korea Herald. 2013年2月14日閲覧。
- ^ “'Memory of teen years hit him at most honorable moment in Venice'”. The Korea Times (11 September 2012). 2013年2月14日閲覧。
- ^ “Golden Lion Winner Explains 'Shabby' Venice Outfit”. The Chosun Ilbo (13 September 2012). 2013年2月14日閲覧。
- ^ Kim, Hyun-min (10 September 2012). “Director KIM Ki-duk’s reputation goes world-wide”. Korean Film Biz Zone. 2013年2月14日閲覧。
- ^ Cangialosi, Jason (2012年10月19日). “Drafthouse Films Acquires Korean Oscar Contender, Kim Ki-duk's 'Pietà'”. Yahoo!. 2014年7月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年2月14日閲覧。
- ^ Young, Deborah (3 September 2012). “Pieta: Venice Review”. The Hollywood Reporter. 2013年2月14日閲覧。
- ^ Ji, Yong-jin (6 September 2012). “Venice gives PIETA a ten-minute standing ovation”. Korean Film Biz Zone. 2013年2月14日閲覧。
- ^ Belloni, Matthew (8 September 2012). “Venice Film Festival Jury Yanks Top Prize from 'The Master' (Exclusive)”. The Hollywood Reporter. 2013年2月14日閲覧。
- ^ Thuburn, Dario (10 September 2012). “'Pieta' win in Venice clouded by controversy”. Rappler.com. 2013年2月14日閲覧。
- ^ “'Pieta' to compete for Oscar's best foreign film award”. The Korea Times (13 September 2012). 2013年2月14日閲覧。
- ^ Lee, Hye-ji (13 September 2012). “Kim Ki-duk’s “Pieta” to Vie for Oscar Nomination”. 10Asia. 2013年2月14日閲覧。
- ^ Noh, Jean (13 September 2012). “South Korea selects Pieta as Oscar submission”. Screen International 2013年2月14日閲覧。
- ^ Kim, Nemo (24 December 2012). ““Pieta” out of the Oscar Race”. 10Asia. 2013年2月14日閲覧。
- ^ Kilday, Gregg (16 December 2012). "'Silver Linings Playbook' Wins Five Satellite Awards, Including Best Picture". The Hollywood Reporter.
- ^ Ji, Yong-jin (9 November 2012). “PIETA, Critics’ No.1 Choice”. Korean Film Biz Zone. 2013年2月14日閲覧。