尹錫悦韓国大統領弾劾訴追
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尹錫悦韓国大統領弾劾訴追 | |
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被告 | 尹錫悦大統領 |
日付 | 2024年12月14日 |
罪状 | 反逆罪[1] |
原因 | 2024年大韓民国非常戒厳令 |
第一回国会弾劾動議 2024年12月7日 | |
中立票 |
195 / 300 |
棄権 |
105 / 300 |
結果 | 与党国民の力が行った投票棄権により定足数に達しなかったため、開票せず。よって、弾劾は失敗。 |
第二回国会弾劾動議 2024年12月14日 | |
賛成票 |
204 / 300 |
反対票 |
85 / 300 |
結果 |
弾劾国会可決 |
韓国憲法裁判所による決定 | |
結果 | 審議中 |
尹錫悦韓国大統領弾劾訴追(ユン・ソンニョルかんこくだいとうりょうだんがいそつい、ハングル: 윤석열 대통령 탄핵 소추; ハンチャ: 尹錫悅大統領彈劾訴追)は、2024年12月14日に大韓民国(韓国)の国会が大統領である尹錫悦を弾劾訴追した政治事件である。弾劾訴追の結果、憲法裁判所は尹錫悦の罷免を認めるかの判断はまだ決定していない。また大統領弾劾訴追は2004年の盧武鉉元大統領、2016年の朴槿恵元大統領が弾劾訴追された事案に続く3例目であった。
弾劾訴追の経緯
[編集]発端
[編集]韓国標準時2024年12月3日22時22分、韓国大統領の尹錫悦は緊急のテレビ演説を行い、非常戒厳(ハングル: 비상계엄、戒厳令)を宣言した[5]。
<前略>
親愛なる国民の皆様、私は北朝鮮の共産主義勢力の脅威から自由大韓民国を守り、我が国民の自由と幸福を奪い取る恥知らずな親北朝鮮の反国家勢力を一挙に排除し、自由憲政秩序を守り抜くため、非常戒厳を宣布します。
この非常戒厳を通じ、国家崩壊の淵にある自由大韓民国を再建し、守り抜きます。そして、これまで破壊行為を繰り返してきた亡国の元凶である反国家勢力を必ず排除します。これは体制転覆を企てる反国家勢力から国民の自由と安全、国家の持続可能性を守り、未来世代にふさわしい国を引き継ぐためにやむを得ない措置です。
私はできる限り迅速に反国家勢力を排除し、国家を正常化します。この戒厳の宣布によって、自由大韓民国の憲法価値を信じ従ってくださる善良な国民に多少の不便が生じるかもしれませんが、これを最小限に抑えるよう努めます。
このような措置は自由大韓民国の永続性を確保するためのやむを得ないものであり、大韓民国が国際社会で責任を果たし、貢献し続けるという外交方針には何ら変わりはありません。
私は大統領として国民の皆様に切に訴えます。私はただ国民の皆様を信じ、命を捧げて自由大韓民国を守り抜きます。どうか私を信じてください。
<後略>
全国放送された演説で、尹は閣僚を弾劾し、予算案を阻止することで「自由民主主義体制の転覆を企てている」と野党を非難した。彼は国民に自分を信じ「多少の不便」を我慢するようにも求めた。韓国で戒厳令が宣言されたのは全斗煥軍事独裁政権下の1979年以来初めてであった[8][9]。尹は朴安洙陸軍参謀総長を戒厳司令官に任命した[10][11]。
戒厳軍の逮捕リストには野党「共に民主党」の李在明代表だけでなく、与党「国民の力」の韓東勲代表や禹元植国会議長、野党「祖国革新党」代表の曺国元法務部長官、金命洙元大法院長、市民運動の活動家など与野党官民問わず含まれていたという[12][5]。また、逮捕した政治家関係者を京畿道果川の収監施設に連行する計画もあったとされる[13]。
野党による弾劾訴追案の提出
[編集]同月4日14時40分、最大野党である共に民主党と他の野党である祖国革新党・改革新党・進歩党・基本所得党・社会民主党および無所属議員1名の計191名により、尹の弾劾訴追案を国会に提出した[14][15][16][17]。弾劾訴追案は翌日5日の本会議で報告、同月6~7日に採決される見通しである[15][16][17][17]。
韓国の憲法では、弾劾には国会議員の過半数による発議と、3分の2以上の賛成が必要とされており、これを受けて憲法裁判所が判断を下し、判事9人のうち6人以上の賛成によって弾劾が成立する仕組みになっている[15][14]。弾劾の成否が決まるまでの間、尹の大統領権限は停止され、尹が辞任するか罷免された場合、新たな選挙が行われるまで国務総理(首相)である韓悳洙が職務を代行することとなる[15][14]。また、共に民主党は、尹を「反逆罪」で告発する方針であるとしている[16][17]。
同月4日、尹に非常戒厳を進言した国防部長官の金龍顕が引責辞任を表明し、翌5日に尹が金の辞任を認めた[18][19]。また、戒厳司令官を務めた陸軍参謀総長の朴安洙も5日に辞意を明らかにした。金に関しては内乱罪の疑いで告発されたため、韓国検察当局が出国禁止措置とした。尹は国防部長官の後任には駐サウジアラビア大使の崔秉赫の起用を決定した。国会での聴聞会を経て正式に就任することとなる[20]。
同月5日、与党・国民の力代表の韓東勲は「4日、大統領と面談したが、今回の事態に対する大統領の認識は、私や国民の認識と大きな違いがあり、共感するのが難しかった。党代表として、尹大統領の離党を求める」とコメントしたうえで、弾劾決議案については「混乱によって生じる被害を防ぐために、成立しないように努める」と述べ、党として反対する方針を改めて示した[19]。国会での弾劾訴追案可決には、訴追案を提出した野党のほかに国民の力から8名以上の造反者が出た場合、可決される見通しとなっている[21]。
しかし翌6日、国民の力の韓代表は、尹が「戒厳宣布の当日に尹大統領が主要政治家などを反国家勢力であることを理由に、高校の後輩の防諜司令官に逮捕するよう指示したことや、大統領が政治家らを逮捕するため情報機関を動員したことなどを信頼できる根拠を通じ確認した」と明らかにし、そのうえで尹を続投させた場合、今回の非常戒厳のような極端な行動を再び起こす可能性があると指摘し「韓国と国民を大きな危険に陥れる恐れがある」として「大統領の早急な職務執行停止が必要」と発言した。同党は当初、国政の混乱を理由に弾劾案に反対の立場を示していたが、一転して弾劾案に賛成する方向に転じたとみられる[22]。
同月7日、この日の夕方に弾劾訴追案が採決されることとなった。これを前にした午前中に尹大統領が生中継による国民への向けての談話を発表した。尹は非常戒厳宣布について「国民に不安と不便をおかけし、心からおわびする」と述べ、進退には言及を行わなかったが、「法的、政治的責任問題を回避しない」として弾劾決議が可決された場合は受け入れる姿勢を示した。また「私の任期問題を含む政局安定に向けた方策については党に一任する」として、与党・国民の力が任期の短縮などを求めれば、従う意向を示唆した[23]。この談話を受けて、与党・国民の力内は一時傾いた弾劾案賛成から以前の弾劾案反対の方針を維持することとなった[24]。夕方から始まった採決では採決前に国民の力の議員の大半が退出する形で行われた[25]。禹元植国会議長は投票前に退出した与党議員が戻って投票を促すため、投票期限を翌8日0時48分まで延長したほか、野党議員が退出した与党議員の名前を1人ずつ読み上げたうえで投票に戻るよう促した[26]。
今回の弾劾決議案には戒厳宣布の件に加え、尹自身と夫人の金建希に対する様々な疑惑、2022年10月のソウル梨泰院雑踏事故での対応、さらには「いわゆる価値外交という名目で地政学的バランスを無視したまま、北朝鮮や中国、ロシアを敵視し、日本中心の奇妙な外交政策を主張し、日本に傾倒した人物を政府の要職に任命するなどの政策を展開することで、北東アジアで孤立を招き、戦争の危機を引き起こし、国家安全保障と国民保護義務を放棄してきた」という理由も含まれていた[27][28]。
結局、与党側から安哲秀、金睿智、金相旭などの議員が投票に加わり、投票人数は300人中195人に達したが、同日21時半過ぎに定足数不足で採決が成立せず、弾劾案は自動的に廃案となった[29]。野党側は弾劾案を再度提出し、尹の弾劾議決を目指すこととなり、政治空白が長期化する懸念がある[30]。
採決が行われている国会前には尹の弾劾を求める市民デモが行われ、警察推計で約15万人が集結し、各地で抗議集会も開かれた。一方で尹を支持する保守派団体の集会も行われている[31]。
同月8日、内乱罪で告発されていた前国防部長官の金龍顕が、検察の特別捜査本部により拘束された[32]。また同日、尹の側近で、警察を所管する行政安全部長官の李祥敏が引責辞任した[33]。
同日、与党・国民の力代表の韓東勲と国務総理の韓悳洙は共同で声明を出し「秩序ある大統領の早期退陣で、大韓民国と国民に与える混乱を最小化しながら安定的に政局を収拾し、自由民主主義を正す」と大統領の早期退陣へ向けて事態を収拾することを明言した。大統領の職務については「外交を含め国政に関与しない」としている[34]。
同月12日、共に民主党は尹に対する大統領弾劾決議案を再度提出し、同月14日に採決が行われる事が決定[35]。可決には引き続き与党から8名以上の賛成が必要となっていたが、前回から与党内からの造反者が増加しており、さらに国民の力代表の韓東勲が、尹が大統領の早期退陣に応じる様子を見せていない事を理由に弾劾案への賛成へ転ずる意思を表明したことで、弾劾案が可決される見通しとの報道が事前にあった[36]。その一方で、前回の弾劾決議案に賛成した祖国革新党代表の曺国が、同月12日に自身の娘の不正入学疑惑に関し、公文書偽造・同行使罪や業務妨害罪などにより大法院で懲役2年の実刑判決が確定し、議員失職となったことで野党陣営の勢いが弱まる可能性も指摘されていた[37]。
弾劾訴追案の国会通過
[編集]しかし、結果的に同月14日に開催された2回目の大統領弾劾決議案において、300名のうち204票、反対85票、棄権3票、無効8票で議席数の3分の2を超えた為弾劾決議案が成立した事から尹の大統領職の職務停止が決定した[2][3]。弾劾案の可決により大統領の職務が停止されたのは2004年の盧武鉉、2016年の朴槿恵に続く史上3例目となった。これにより憲法の規定に基づき、国務総理である韓悳洙が大統領代行を務める事となった[4]。二度目の弾劾訴追案では、最初の弾劾訴追案に含まれていた価値外交に関する内容が削除されたほか、戒厳をめぐる新たな証言を元にした内容が追加された[38]。
弾劾訴追案の国会可決を受け、尹大統領は談話を発表し、以下の様に述べた[39][40][41][42][43]。談話の中で、今後の政権運営の意欲を示した[42][43]。
尊敬する国民の皆様、本日(14日)、国会で弾劾訴追案が可決される様子を見ながら、私が初めて参政を宣言した2021年6月29日のことを思い出しました。
当時、この国の自由民主主義と法治は崩れ、国中に自営業者の絶望と若者たちの挫折が満ちていました。その熱い国民の切実な願いを胸に、政治の世界に飛び込みました。それ以来、一瞬たりとも休むことなく、全力で取り組んでまいりました。
<中略>
韓米日協力を復元し、グローバル外交の地平を広げるため、昼夜を問わず奔走しました。「大韓民国1号営業マン」として世界を駆け回り成果を上げるたびに、言葉では表せない大きな誇りを感じました。大韓民国の国際的な地位が高まり、安全保障と経済が強固になっていく姿に、疲れを忘れるほどでした。そして今、その辛くも幸福で、苦しくもやりがいのあった旅路を、一旦止めざるを得なくなりました。これまでの努力が無駄になってしまうのではないかという不安を感じています。
私は一旦立ち止まりますが、国民の皆様と共に歩んできた未来への旅路が、決して止まってはならないと信じています。そして、私は決して諦めません。私への叱責、励まし、応援のすべてを胸に刻み、最後の瞬間まで国家のために最善を尽くします。
公職者の皆様にお願い申し上げます。困難な時期ですが、揺るぎなく各自の役割を守り、責任を全うしてください。大統領権限代行を中心に力を合わせ、国民の安全と幸福を守るために全力を尽くしてくださるようお願いします。
そして、政界にお願い申し上げます。これ以上の暴走と対立の政治から脱却し、熟議と配慮の政治へと変わるよう、政治文化と制度の改善に力を注いでください。
愛する国民の皆様、私は国民の皆様の底力を信じています。私たち全員が力を合わせ、大韓民国の自由民主主義と繁栄のために努力しましょう。
<後略>
憲法裁判所による審議
[編集]韓国憲法裁判所は12月16日に裁判官会議が開かれ、主審裁判官を尹錫悦により任命される鄭亨植(チョン・ヒョンシク)憲法裁判事に決め、最初の弁論準備期日を12月27日午後2時に定められた[44][45]。
出典
[編集]- ^ “President Yoon's Impeachment? The View From Seoul” (英語). Council on Foreign Relations (9 December 2024). 14 December 2024時点のオリジナルよりアーカイブ。14 December 2024閲覧。
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