コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

SL人吉

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
快速人吉から転送)
SL人吉
快速「SL人吉」(2024年1月)
快速「SL人吉」(2024年1月)
概要
日本の旗 日本
種類 快速列車
現況 廃止
地域 熊本県
運行開始 2009年4月25日
運行終了 2024年3月24日[注 1]
運営者 九州旅客鉄道(JR九州)
路線
起点 熊本駅
終点 鳥栖駅
営業距離 89.8 km (55.8 mi)
運行間隔 1往復
使用路線 鹿児島本線
車内サービス
クラス 普通車
座席 全車指定席
食事 ビュッフェ - 2号車
展望 1号車・3号車
技術
車両 50系客車
8620形蒸気機関車
熊本車両センター
軌間 1,067 mm
電化 交流20,000 V・60 Hz(熊本 - 鳥栖間)[注 2]
備考
2021年5月1日より
テンプレートを表示
熊本駅 - 人吉駅間運行時のデータ
快速「SL人吉」(2009年6月)
快速「SL人吉」(2009年6月)
路線
起点 熊本駅
終点 人吉駅
営業距離 87.5 km (54.4 mi)
運行間隔 1往復
使用路線 鹿児島本線・肥薩線
技術
車両 50系客車
8620形蒸気機関車
(熊本車両センター)
軌間 1,067 mm
電化 交流20,000 V・60 Hz(熊本駅 - 八代駅間)[注 2]
備考
2020年まで。2021年以降との主な違いのみを記述。
テンプレートを表示

SL人吉(SLひとよし)は、九州旅客鉄道(JR九州)が2009年平成21年)から2024年令和6年)まで運行していた、蒸気機関車 (SL) 牽引による観光列車[1]である。臨時快速列車として、熊本駅 - 人吉駅間を鹿児島本線肥薩線経由(2009年 - 2020年)、2020年(令和2年)7月豪雨による鉄道被災後は熊本駅 - 鳥栖駅[1][注 3]を鹿児島本線経由(2021年 - 2024年)で走っていた。

牽引していたSLは、矢岳駅熊本県人吉市)前の「人吉市SL展示館」で静態保存されていた8620形蒸気機関車(SL)58654号機を動態復元した。この8620形58564号機のみを指して「SL人吉」と表記・呼称することもあり[3]、2024年(令和6年)11月17日から人吉駅前で展示される予定である[1]

沿革

[編集]

8620形58564号機は1922年大正11年)に完成して九州各地で運用され、1975年昭和50年)に廃車扱いになった後、上記のように静態展示を経て営業車両として1988年(昭和63年)に復活[1]。同年8月28日豊肥線熊本駅 - 宮地駅間運行の快速「SLあそBOY」として営業運転を開始した。人吉市に保存されていた縁から、同10月9日からは年間数日程度、熊本駅 - 人吉駅間の「SL人吉号」としても運行された。SL・客車は「SLあそBOY」と共用する形で同じ編成が使用された。

2005年(平成17年)3月の試運転中に、58654号機が車両故障を起こし修復不能と判断されたことから、この年の当初の運行予定日のうち、SLでの運行日は大幅に絞られたうえで、本来の運行日でSLの運用が不可能な日は、DE10形ディーゼル機関車が「SLあそBOY」用客車を牽引する「ディーゼル人吉号」として運行された[注 4]。8月21日をもって58654号機による「SL人吉号」は運行終了となった[注 5]

その後、58654号機は小倉工場で修復され、肥薩線が開業100周年を迎える2009年(平成21年)4月25日からは、熊本駅 - 人吉駅間で58654号機とリニューアルした客車による列車が運行開始された。愛称名は旧来の愛称から「号」を省いた「SL人吉」とされた[注 6]

2020年(令和)2年7月に発生した豪雨の影響で八代駅 - 人吉駅間の運行が当面の間不可能となった[4]。これにより翌2021年(令和3年)からは列車名は「SL人吉」のまま、運行区間を鹿児島本線熊本駅 - 鳥栖駅間に改められて運行された[5]

機関車の老朽化、部品調達や技術者の確保が難しくなっていることを理由に、2024年(令和6年)3月24日[注 1]で運行を終了し、58654号機の登場から101年の歴史に幕を閉じた[6][7]

運行終了にあたり、人吉市はJR九州に「SL人吉」の人吉市での保存および展示を要望し、営業列車としての運行を終えた翌日の2024年3月24日に、58654号機が人吉市に無償譲渡される方針が伝えられた[8][9]

年表

[編集]

運行概況

[編集]

熊本駅 - 人吉駅間を運行していた2009年から2020年までは、概ね3月から11月までの金・土・日曜日・祝日および夏休み期間中に、1日1往復運行されていた。午前中に熊本駅を出発して昼間に人吉駅に到着し、午後に人吉駅を出発して夕方に熊本駅に到着するダイヤとなっていた。全車座席指定席で、乗車には乗車券のほか座席指定券が必要であった。指定席料金は840円(小児半額)[注 9]であった。

2021年(令和3年)5月1日より、「肥薩線沿線応援企画第2弾」と題し、鹿児島本線熊本駅 - 鳥栖駅間にて、58654号機とDE10形ディーゼル機関車による「SL人吉」が、土・日曜日・祝日および夏休み期間を基本として1日1往復運行されていた。全車座席指定席で、指定席料金は1,680円(小児半額)であった[5]

SL+客車3両+DLの合計5両編成。鳥栖駅に転車台がないため、上り熊本駅発鳥栖駅行き列車はSLが牽引し、下り鳥栖駅発熊本駅行き列車はDLが牽引していた[5]。なお、同編成が鹿児島本線の熊本以北を運行するのは、2020年(令和2年)11月1日から12月27日にかけて、熊本駅発博多駅行きで運行された臨時列車「SL鬼滅の刃」以来、約5か月ぶりのことであった[13][14][15]

2024年3月23日のラストランでは博多駅まで運行され上り熊本駅発博多駅行き列車はDLが牽引し、下り博多駅発熊本駅行き列車はSLが牽引した[18]。翌24日に招待客向けとして熊本駅発八代駅行き列車を運転し、SLが牽引した[18]

停車駅

[編集]

※ 2005年まで運行されていた「SL人吉号」「ディーゼル人吉号」は上記の駅のほか川尻駅宇土駅松橋駅有佐駅瀬戸石駅にも停車していた。

使用車両

[編集]
58654号機牽引の「SL人吉」(2009年6月)
「SL人吉」に使用される50系客車(2009年4月29日、熊本駅)

SL・客車とも熊本鉄道事業部熊本車両センターに所属する。

牽引機関車

[編集]

58654号機を使用した。

客車

[編集]

50系客車700番台3両を使用する。編成内容は以下のとおり。熊本方が1号車[注 11]

  • 1号車:オハフ50 701
  • 2号車:オハ50 701
  • 3号車:オハフ50 702

1号車の熊本方と3号車の鳥栖方[注 11]展望ラウンジを、2号車にはビュッフェを備える。

「SL人吉」での運用にあたり、水戸岡鋭治のデザインによるリニューアル工事が実施されている。車体は地色が黒色一色となり、各種のロゴが入れられているほか、両端の先頭車の前面下部に窓が新設され、展望ラウンジの視界が拡大されている。車内は客室中央部にショーケースが設置され、床がフローリングとなり、座席の表地が張り替えられ、一部の座席は表地が本革となった。

客車は「SL人吉」での運用のほか、DE10形の牽引により臨時列車団体列車で運用され、「SL人吉」の運行区間以外の区間を走行した例も多い。また客車は「SL人吉」の運行が終了した2024年3月以降も臨時列車や団体列車などで使用されている。

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ a b 営業運転では同年3月23日が最終運行日。
  2. ^ a b ただし、蒸気機関車牽引のため電気動力不使用。
  3. ^ 起終点の向きは公式サイトの表記に従っている[2]
  4. ^ 「SLあそBOY」の代替列車「ディーゼルあそBOY」も同様の形で運行された。
  5. ^ 「SLあそBOY」の運行終了は8月28日であった。
  6. ^ 雑誌等で旧来通りの「SL人吉号」と表記しているものもあるが、これは誤記である。
  7. ^ 八代駅 - 人吉駅間の復旧見通しが立たないまま、2023年に運行終了が発表された[7]ため、これをもって熊本 - 人吉間での運行は終了。
  8. ^ 運転日は概ね土・日曜日・祝日および夏休み期間を基本とする。
  9. ^ 2014年3月31日までは800円、2014年4月1日から2019年9月30日までは820円(いずれも小児半額)。
  10. ^ 最終運行日である2024年3月23日のみ熊本駅 - 博多駅間で運行された(停車駅は同じ。鳥栖駅 - 博多駅間は無停車)[18]
  11. ^ a b 2020年までの熊本 - 人吉間運行時代は、1号車が人吉方、3号車が熊本方であった。

出典

[編集]
  1. ^ a b c d 「SL人吉」引退■駅前展示 地域振興の目玉に『読売新聞』朝刊10月3日(解説面)
  2. ^ SL人吉 | JR KYUSHU D&S TRAINS D&S列車の旅”. 九州旅客鉄道. 2023年4月24日閲覧。
  3. ^ まもなく勇退!SL人吉お見送りイベント in 久留米駅 JR九州ニュースリリース(2024年2月1日)2024年10月14日閲覧
  4. ^ a b "「令和2年7月豪雨」に伴う九州内の運転見合わせ等に関するお知らせ" (PDF) (Press release). 九州旅客鉄道. 17 July 2020. 2020年7月18日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ。2023年4月25日閲覧
  5. ^ a b c d "SL人吉が熊本〜鳥栖を走ります!" (PDF) (Press release). 九州旅客鉄道. 22 March 2021. 2021年3月30日閲覧
  6. ^ a b c "「SL人吉」58654号機 百歳記念イベント開催!" (PDF) (Press release). 九州旅客鉄道. 24 October 2022. 2022年10月24日閲覧
  7. ^ a b c "「ありがとう!SL人吉」ラストシーズン始動" (PDF) (Press release). 九州旅客鉄道. 24 February 2023. 2023年2月26日閲覧
  8. ^ “営業運転終了の「SL人吉」、地元でセカンドライフ…JR九州が人吉市に無償譲渡へ”. 読売新聞オンライン. (2024年3月24日). https://www.yomiuri.co.jp/national/20240325-OYT1T50036/ 2024年5月31日閲覧。 
  9. ^ “「SL人吉」蒸気機関車 JR九州が人吉市に無償譲渡へ”. NHK NEWS WEB (NHK). (2024年3月25日). https://www3.nhk.or.jp/lnews/kumamoto/20240325/5000021606.html 2024年5月31日閲覧。 
  10. ^ "今年の冬は、「快速人吉」を運転します!" (PDF) (Press release). 九州旅客鉄道. 20 November 2012. 2012年12月7日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ。2017年2月17日閲覧
  11. ^ a b “復活の黒煙、力強く 「SL人吉」が運行再開”. 熊本日日新聞. (2016年4月29日). オリジナルの2016年4月30日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160430113717/https://kumanichi.com/news/local/main/20160429017.xhtml 2016年5月13日閲覧。 
  12. ^ 新型コロナウイルス感染拡大に伴う運転計画について” (PDF). 九州旅客鉄道 (2020年4月23日). 2023年4月24日閲覧。
  13. ^ a b “JR九州、「SL鬼滅の刃」出発 アニメとコラボ、熊本-博多間”. 神戸新聞NEXT. (2020年11月1日). オリジナルの2020年11月1日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20201101015411/https://www.kobe-np.co.jp/news/zenkoku/compact/202011/0013830501.shtml 2020年11月1日閲覧。 
  14. ^ a b 臨時列車「SL鬼滅の刃」運行|鬼滅の刃 × JR九州”. 九州旅客鉄道. 2020年11月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月23日閲覧。
  15. ^ a b "「SL鬼滅の刃」追加運行決定!" (PDF) (Press release). 九州旅客鉄道. 11 December 2020. 2020年12月20日閲覧
  16. ^ SL桃鉄号運行情報 | 駅をめぐってスタンプを集めよう!桃鉄の旅inJR九州”. 九州旅客鉄道. 2022年3月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年5月8日閲覧。
  17. ^ SL人吉、蒸気機関車「100歳」祝う JR八代駅で記念式典 24年3月で運行終了 熊本」『熊本日日新聞』2022年11月18日。2022年11月19日閲覧。
  18. ^ a b c d e "「SL人吉」3月の運行計画・ラストランのお知らせ" (PDF) (Press release). 九州旅客鉄道. 25 January 2024. 2024年3月23日閲覧
  19. ^ 観光列車「SL人吉」北九州市の車両センターで最後の見学会 車体老朽化で今年3月に引退 今後は熊本県人吉市に無償譲渡 RKB毎日放送TBS NEWS DIG(2024年9月2日)2024年10月14日閲覧

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]