コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

昆虫の分類

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

昆虫の分類(こんちゅうのぶんるい)では、昆虫分類学上の位置づけやその下位分類について説明する。

「昆虫類」という用語は広義では六脚亜門 Hexapoda(=昆虫類 Incecta)を指すが、狭義では六脚亜門中の二綱、昆虫綱と内顎綱のうちの、昆虫綱 Incecta (=外顎綱 Ectognatha)を指す。 本項では広義の昆虫類の分類を扱い、内顎類(内顎昆虫)についても述べる。

上位分類

[編集]

昆虫類(六脚亜門)は動物界 Kingdom Animalia - 脱皮動物上門 Superphylum Ecdysozoa - 節足動物門 Phylum Arthropodaに属している[1]。節足動物門は、大きく鋏角亜門甲殻亜門多足亜門、六脚亜門の4つの分類群に分けられる[1]。これらの系統は以下のようないくつかの見解に分かれている(表は藤田(2010), p.160を基にして作成)。

形態に基づく系統関係

[編集]

形態からは口器大顎をもつ大顎類、陸上生活で気管を持つ有気管類がそれぞれクレード(単系統)をなすと考えられてきた[1]

節足動物門

鋏角亜門

大顎類

甲殻亜門

有気管類

多足亜門

六脚亜門

分子系統学による系統関係

[編集]

形態に基づく系統関係では六脚亜門と多足亜門が近縁であったのに対し、分子系統学では甲殻亜門と六脚亜門が単系統(汎甲殻類 Pancrustacea Zrzavý & Štys, 1997)をなすことが示唆されているが、解析方法により異なる部分も多い[1]

ミトコンドリアDNAの遺伝子配置に基づく系統関係
CO1とCO2という遺伝子が鋏角亜門と多足亜門では隣接しているのに対し、甲殻亜門と六脚亜門ではほかの遺伝子L(UUR)が間に挟まり離れている [1]
節足動物門

鋏角亜門

多足亜門

汎甲殻類

甲殻亜門

六脚亜門

ミトコンドリアDNA塩基配列に基づく系統関係
鋏角亜門と多足亜門が単系統をなし、甲殻亜門は側系統になっている[1]
節足動物門
矛盾足類

鋏角亜門

多足亜門

汎甲殻類

甲殻亜門1

甲殻亜門2

六脚亜門

核DNA塩基配列に基づく系統関係
鋏角亜門と多足亜門の系統は明らかになっておらず、甲殻亜門は側系統になっている[1]
節足動物門

鋏角亜門

多足亜門

汎甲殻類

甲殻亜門1

甲殻亜門2

六脚亜門

下位分類

[編集]

各階級名の右に()がある場合、別名または異名を表す。

目以上の系統樹(現生目のみ)

[編集]

階級までの系統樹を示す。 国立天文台理科年表 平成28年』[2]を基に作成。

六脚亜門 Hexapoda
内顎綱[‡ 1]
Entognatha
欠尾亜綱 Ellipura

カマアシムシ目(原尾目) Protura

トビムシ目(粘管目) Collembola

双尾亜綱 Diplura

コムシ目(双尾目) Diplura

昆虫綱
Insecta
古顎亜綱
Archeognatha

イシノミ目(古顎目) Archeognatha

双丘亜綱
Dicondylia
結虫下綱
Zygentoma

シミ目(総尾目) Thysanura

有翅下綱
Pterygota
旧翅節
Palaeoptera

カゲロウ目(蜉蝣目) Ephemeroptera

トンボ目(蜻蛉目) Odonata

新翅節
Neoptera
多新翅亜節
Polyneoptera

カワゲラ目(襀翅目) Plecoptera

ハサミムシ目(革翅目) Dermaptera

ジュズヒゲムシ目(絶翅目) Zoraptera

シロアリモドキ目(紡脚目) Embioptera

ナナフシ目(竹節虫目) Phasmatodea

バッタ目(直翅目) Orthoptera

異名上目
Xenonomia

ガロアムシ目(非翅目) Grylloblattodea

カカトアルキ目(踵行目) Mantophasmatodea

網翅上目
Dictyoptera

ゴキブリ目 Blattodeaシロアリ類を含む)

カマキリ目(蟷螂目) Mantodea

新生類
Eumetabola
準新翅亜節
Paraneoptera

カジリムシ目(咀顎目) Psocodea

節顎上目
Condylognatha

アザミウマ目(総翅目) Thysanoptera

カメムシ目(半翅目) Hemiptera

完全変態亜節
Holometabola
膜翅上目
Hymenopterida

ハチ目(膜翅目) Hymenoptera

脈翅上目
Neuropterida

ラクダムシ目 Raphidioptera

ヘビトンボ目(広翅目) Megaloptera

アミメカゲロウ目(脈翅目) Neuroptera

鞘翅上目
Coleopterida

コウチュウ目(鞘翅目) Coleoptera

ネジレバネ目(撚翅目) Strepsiptera

長節上目
Mecopterida
注管類 Antliophora

シリアゲムシ目(長翅目) Mecoptera

ノミ目(隠翅目) Siphonaptera

ハエ目(双翅目) Diptera

飾翅類
Amphiesmenoptera

チョウ目(鱗翅目) Lepidoptera

トビケラ目(毛翅目) Trichoptera

  1. ^ 側系統群の可能性あり。

亜目まで(絶滅目含む)

[編集]
絶滅したオオトンボ目(原蜻蛉目) Protodonataに属するメガネウラ Meganeura monyi化石
絶滅したムカシギス目(原直翅目) Protorthopteraプロトファスマ Protophasma dumasiiの化石。

亜目階級までの下位分類をここに示す。 『岩波生物学辞典 第5版』[3]を参考にした。は絶滅目。

2000年以降に大きな動きがあった目

[編集]
カカトアルキ目(踵歩目) MantophasmatodeaMantophasma zephyra
カカトアルキ目(踵歩目) Mantophasmatodea
カカトアルキは2001年にアフリカで発見され[15][16]、そして新目新科として記載された[17]。ガロアムシ目 Grylloblattodeaと姉妹群であるため[18]、 Arillo & Engel (2006) らなどのように、合わせて(広義の)非翅目(Notoptera)という1目におかれ、その下位分類(カカトアルキ科 Mantophasmatidae)とされることもある[19]
咀顎目(カジリムシ目) Psocodea
かつてのシラミ目(裸尾目) Phthiraptera多系統であり、チャタテムシ目(噛歯目) Psocoptera は側系統であった[20]。そのため、上位分類群であった咀顎類Psocodea Hennig1953とされた。「咀顎目」を参照。
ゴキブリ目(網翅目)Blattodea
かつてのゴキブリ目(網翅目)Blattodeaシロアリ目(等翅目)Isopteraが統合された。またカマキリ目と合わせ網翅目 Dictyopteraとされることもあった(網翅上目と等しい範囲)。「シロアリ#分類」、「ゴキブリ#分類」を参照。

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 『岩波生物学辞典 第5版』(2013) p.1598 にはKukalova-Packとあったが Parainsecta - CLADOENDESIS などよりKukalova-Peckが正しい
  2. ^ a b 『岩波生物学辞典 第5版』(2013) p.1600 には Rossler とあったが Trogiomorpha - insectoid などより Roesler が正しい
  3. ^ 『岩波生物学辞典 第5版』には1977年とあったが、Whiting, Michael F.; Carpenter, James C.; Wheeler, Quentin Duane; Wheeler, Ward C. (1997), “The Strepsiptera problem: phylogeny of the holometabolous insect orders inferred from 18S and 28S ribosomal DNA sequences and morphology”, Systematic Biology (Oxford University Press) 46 (1), https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11975347  より1997年が正しい

出典

[編集]
  1. ^ a b c d e f g 藤田(2010),p.160
  2. ^ 『理科年表 平成28年』(2015) p.860
  3. ^ 『岩波生物学辞典 第5版』(2013) pp.1598-1601
  4. ^ Kevan. (1982) In Parker [Ed.]. Synopsis and classification of living organisms 2:380
  5. ^ Timematodea - Phasmida species file
  6. ^ CLADO ENDESIS
  7. ^ The Taxonomicon
  8. ^ Nevrorthiformia - Paleobiology Database
  9. ^ Myrmeleontiformia - Paleobiology Database
  10. ^ Hemerobiiformia - Paleobiology Database
  11. ^ Peter Ax (2000-10-2). Multicellular Animals: Volume II: The Phylogenetic System of the Metazoa. Springer. p. 345 
  12. ^ a b Zhi-Qiang Zhang (2011) (English). Animal biodiversity: An outline of higher-level classification and survey of taxonomic richness. New Zealand: Magnolia Press. p. 209. https://books.google.co.jp/books?id=r3_DVd5DtGEC 
  13. ^ Trichoptera - Tree of Life
  14. ^ Checklist of Spicipalpia (Weaver) species in British Isles
  15. ^ K.-D. Klass, O. Zompro, N.P. Kristensen, J. Adis. Mantophasmatodea: a new insect order with extant members in the afrotropics Science, 296 (2002), pp. 1456–1459
  16. ^ Adis, J., O. Zompro, E. Moombolah-Goagoses, and E. Marais. 2002. Gladiators: A new order of insect. Scientific American 287:60-65.
  17. ^ Terry, M.D., and M.F. Whiting. 2005. Mantophasmatodea and phylogeny of the lower neopterous insects. Cladistics 21(3): 240–257.
  18. ^ S. L. Cameron, S. C. Barker & M. F. Whiting (2006). “Mitochondrial genomics and the new insect order Mantophasmatodea”. Molecular Phylogenetics and Evolution 38 (1): 274–279. doi:10.1016/j.ympev.2005.09.020. PMID 16321547. 
  19. ^ Arillo, A. & M. Engel (2006) Rock Crawlers in Baltic Amber (Notoptera: Mantophasmatodea). American Museum Novitates 3539:1-10
  20. ^ 吉澤和徳の研究室

参考文献

[編集]

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]