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春日移し

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

春日移し(かすがうつし)は、春日大社の20年に一度の式年造替において、建て替えられた旧社殿を近隣や関係の深い神社に下賜し、移築していた習わしのこと[1][2][3]

夜支布山口神社境内摂社立磐神社
嶋田神社本殿

概要

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主に本殿四社および若宮の社殿の移築を指すが、摂末社社殿の移築もありそれらも含めると近畿一円で約150例が確認されている[4][5]。本殿移築は江戸時代までは行われていたが、明治に入り本殿が国宝指定されると建替えができなくなったため廃れた[5][6]。しかし摂末社の建替えは可能なため、現在も移築が行われることもあり、近年では第60次造替中の2016年5月23日御蓋山山頂の摂社本宮神社(ほんぐうじんじゃ)の社殿が、京都府笠置町笠置寺に移築されている[注釈 1][4][6][5]

摂末社の移築のうちでも、三十八所神社の社殿の移築を「三十八所移し」と呼ぶ[7]。本殿移築の「春日移し」が全国で30棟程度が確認されている一方、「三十八所移し」は8棟しか確認されていない[注釈 2][7]

春日移しの神社一覧

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本社本殿・若宮本殿の春日移し

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移築先神社 春日大社所在時 備考等
都道府県 社名 所在地 現社殿 旧社殿 建立時期 造替時期 備考 典拠
奈良県 比売久波神社 磯城郡川西町 本殿 本社本殿第二殿 応仁元年(1467年 廿五貫文で譲渡したとの記録
奉再興享保4年(1719年)の棟札あり
[2][8][9]
長尾神社 奈良市阪原町 本殿 本社本殿第一殿 桃山時代 [10][11]
崇道天皇社 奈良市西紀寺町 本殿 若宮社本殿 桃山時代 元和9年(1623年)移築の棟札あり [12]
龍池神社 五條市三在町 本殿 本社本殿第四殿 17世紀前期 慶安4年(1652年)の墨書あり [2][11]
龍穴神社 宇陀市室生 本殿 若宮社本殿 17世紀末 [2][12]
嶋田神社 奈良市八島町 本殿 本社本殿第二殿 宝永6年(1709年 享保13年(1728年 崇道天皇社本殿の後、明治期より当社本殿 [10][11]
夜支布山口神社 奈良市大柳生町 摂社 立磐神社本殿 本社本殿第四殿 宝永6年(1709年) 享保13年(1728年) 延享4年(1747年)の墨書あり [2][13]
鏡神社 奈良市高畑町 本殿 本社本殿第三殿 享保13年(1728年) 延享3年(1746年 [2][13]
御霊神社 奈良市薬師堂町 本殿 本社本殿 18世紀中期 前庇が疎垂木でないのは、改築か、あるいは春日移しではないのか不明。 [13]
狭岡神社 奈良市法蓮町 本殿 本社本殿第三殿 15世紀初期 永享7年(1435年 永享7年の佐保田庄引付に、応永34年(1427年)の式年造替時に本殿第三殿を購入した記録がある。 [14]
廣瀬大社 北葛城郡河合町 本殿 若宮社本殿 正徳元年(1711年 春日大社若宮の用材による造営とされる。 [15]
春日神社 御所市戸毛 本殿 本社本殿第三殿か 18世紀中期 [13]
糸井神社 磯城郡川西町結崎 本殿 若宮社本殿 18世紀中期 木階七級、側面高欄となる [10][16]
杵築神社 生駒郡安堵町窪田 本殿 本社本殿 天明6年(1786年 文化年間 [2][13]
葛木御歳神社 御所市東持田 本殿 本社本殿 18世紀後期 [2][13]
春日神社 生駒郡斑鳩町目安 本殿 本社本殿 天保15年(1844年 高欄金具の収納木箱蓋裏に「文久三癸亥八月廿日云々...」とある [2][13]
楢神社 天理市楢町 本殿 若宮社本殿 天保15年(1844年 文久2年(1862年 擬宝珠に銘あり [16]
墨坂神社 宇陀市 本殿 本社本殿 天保15年(1844年) 文久3年(1863年 移建は元治元年(1864年)との墨書あり [2][13]
賣太神社 大和郡山市稗田町 本殿 本社本殿 [17][12]
円成寺 奈良市忍辱山町 春日堂 本社本殿か 1228年の造替時、宮司の藤原時定が拝領し円成寺に寄進したと伝わる
春日移しではないとの説もあり、奈良市史では可能性としてのみ言及
[10][18][19]
白山堂 本社本殿か
夜都岐神社 天理市乙木町 本殿 [10]
久延彦神社 桜井市三輪 本殿 [10]
京都府 春日若宮神社 木津川市加茂町里 本殿 本社本殿第二又は三殿か 元禄年間か [2][11]
国栖神社 木津川市加茂町辻下垣外 本殿 本社本殿第一殿か 宝永年間か [2][13]
松尾神社 木津川市山城町椿井松尾 本殿 若宮社本殿 文化5年(1808年)譲渡の再建棟札あり [16]
摂社 御霊神社本殿 本社本殿第三殿か 文政9年(1826年)か 身舎正面柱筋東の添木に第三殿之西と記す [2][20][13]
春日神社 木津川市加茂町銭司 本殿 本社本殿 擬宝珠銘に天保6年(1835年 [2][13]
恭仁神社 木津川市加茂町西宮ノ東 本殿 本社本殿第一殿か 天保年間か [2][13]
岡田鴨神社 木津川市加茂町北 本殿 本社本殿 [2][12]
摂社 天満宮本殿 本社本殿 [12]
金井戸神社 京都市伏見区 本殿 本社本殿 流造に改造
文政年間に譲渡か
[12]
三十八神社 木津川市加茂町観音寺 本殿 本社本殿 改造大 [12]
有市国津神社 相楽郡笠置町有市 本殿 本社本殿第二殿と伝わる 木津川市加茂町例幣の御霊神社本殿を移築 [12]
珠城神社 久世郡久御山町市田 本殿 本社本殿 [12]
春日神社 精華町大字菱田 本殿 [10]
大阪府 杭全神社 大阪市平野区平野宮町 本殿第一殿 本社本殿第三殿 貞享5年(1688年 宝永6年(1709年 [2][11]
今西家屋敷 豊中市 屋敷内 南郷春日神社本殿 若宮社本殿 延享3年(1746年)移築 [10][16]
山田神社 枚方市田口 本殿 本社本殿 天明6年(1786年 大中臣時春より寄進と伝わる [2][13]
菅原神社 枚方市藤阪天神町 本殿 本社本殿第一殿と伝わる 文久3年(1863年 [10][12]
百済王神社 枚方市中宮西之町 本殿 本社本殿 文化年間 文政年間譲渡と伝わる [2][12]
春日神社 枚方市津田元町1丁目 本殿 本社本殿第二殿 明和年間 譲渡移築は天明6年(1786年 [2][13][7][12][21]
厳島神社 枚方市尊延寺 末社 春日神社本殿 本社本殿 明治期の移築と伝わる [10][12]
春日神社 枚方市春日元町 本殿 本社本殿 [12]
住吉神社 交野市私部 本殿 本社本殿 [12]
兵庫県 六甲八幡神社 神戸市灘区八幡町3丁目 本殿 若宮社本殿 天明6年(1786年)移築、嘉永6年(1853年)修復 [22][16]

摂社・末社の春日移し

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摂社榎本神社旧本殿

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大将軍神社本殿

一間社春日造、見世棚形式[23]

奈良県

摂社水谷神社旧本殿

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皇大神社本殿

三間社流造[23]

奈良県

摂社紀伊神社旧本殿

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皆天満宮本殿

正面二間、奥行一間、切妻造[24]

奈良県

摂社本宮神社旧本殿

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京都府

末社三十八所神社旧本殿

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倭文神社本殿

三間社流造、向拝の柱間一間[26]

奈良県
大阪府

末社祓戸神社旧本殿

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采女神社本殿

一間社流造、見世棚造形式[26]

奈良県

移し元摂末社不明

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奈良県

ギャラリー

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本社本殿移し

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若宮社移し

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榎本神社移し

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水谷神社移し

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紀伊神社移し

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三十八所移し

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祓戸神社移し

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移し元摂末社不明

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脚注

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注釈

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  1. ^ 685年ぶりに再興される春日明神社となる。
  2. ^ 奈良県内7棟、大阪府内1棟。

出典

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参考文献

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関連項目

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外部リンク

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