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林原自然科学博物館

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林原自然科学博物館
地図
施設情報
管理運営 林原
開館 1992年[1]
所在地 700-0907
岡山市北区下石井1-2-3[2]
位置 北緯34度39分42秒 東経133度55分07秒 / 北緯34.66167度 東経133.91861度 / 34.66167; 133.91861座標: 北緯34度39分42秒 東経133度55分07秒 / 北緯34.66167度 東経133.91861度 / 34.66167; 133.91861
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林原自然科学博物館(はやしばらしぜんかがくはくぶつかん)は、岡山県岡山市北区に存在した、林原(現・ナガセヴィータ)が運営していた博物館

「生物の歴史から人間を考える」というスローガンの下、モンゴルゴビ砂漠の恐竜化石をはじめとする古生物学を主軸に事業を展開し、日本の古生物学研究の中核を担った。2015年に解散、事業は岡山理科大学に移管し、跡地にはイオンモール岡山が建設された。

事業内容

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「生物の歴史から人間を考える」という目標の下[3]古生物学分野の研究を行っており、モンゴル古生物研究所の設備と人材育成に協力し、モンゴル科学アカデミーと共同でのゴビ砂漠における恐竜化石発掘調査[1] や、モンゴル産古脊椎動物標本の日本国内での研究を行っていた。具体的な研究成果としては植物食性恐竜の営巣行動、大型獣脚類の個体発生、オルニトミムス科をはじめとした非鳥類型獣脚類の姿勢の解明[2]、ハドロサウルス上科の恐竜ゴビハドロスの発見[4][注 1] などが挙げられる[5]。また、2006年に始められた丹波竜(タンバティタニス)の発掘では同館が発掘の技術指導や技術移転を担当した[5]

約20年間の運営の間に博物館に収蔵された標本数は約1万点におよんだ[6]。2011年に日本古生物学会の当時会長であった加瀬友喜は2001年に記載されたヘスペロサウルスのタイプ標本が特に保存すべきものの筆頭であると主張し、同館が脊椎動物化石研究の重要拠点であると述べた[5]

また、古生物学以外の学問分野においては京都大学霊長類研究所と連携した行動生物学脳科学の分野の研究も行われていた[7]

ダイノソアファクトリー

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2002年9月[8]東京都江東区有明に松下電器産業(現パナソニック)と共同で、ゴビ砂漠で発掘した恐竜化石を展示するダイノソアファクトリーを設立した[5]。東京臨海副都心での恐竜の展示としては、当時日本最大規模であった[8]

ダイナソアファクトリーはユビキタス社会の到来を踏まえ、当時は新技術であったBluetooth携帯情報端末FACTスコープおよびインターネットを活用した博物館としては日本で第1号の実証施設であり[9]、出入り口で渡される端末により音声と画像で展示内容の情報を得られた[10]。その代わり展示物の解説パネルは館内に存在せず、来館者が自発的にFACTスコープをアクセスポイントに当てるまたはスタッフに尋ねるといったアクションを通して学習することが意図されていた[11]。また、公式webサイト中の個人ページで自宅や学校での反復学習の機会が用意されていた[10]

また、展示内容は単なる標本の展示に留まらず、来館者が発掘・研究・収蔵の様子を見られるようになっていた[12]。展示に至るまでの過程を来館者に対し可視化するスタイルは、ダイノソアファクトリーの後の巡回展にも受け継がれた[8]

略歴

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発足と事業展開

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石井健一石垣忍が「アイデアから始まる新しい博物館」を作ることを志して進めていた博物館の建設プロジェクトに林原グループが文化支援活動の一環として出資し、1992年に準備室が設立[1][8]。同年にモンゴル古生物研究所とのゴビ砂漠での共同調査が始動した[13]。2002年9月に松下電器産業(現パナソニック)と共同で東京都江東区にダイノソアファクトリーを開催し、情報システムを活用した新しい恐竜展示として運営した後、2006年5月14日に終了した[14]。また、同時期に自然科学博物館準備室は株式会社として独立し[8]、JR岡山駅の南に面する林原の所有地に2010年前後の開館が予定されていた[3]

ダイノソアファクトリーでのノウハウを活かし、2007年からは全国で巡回展を開催し、約200万人の来館者を動員した[8]。さらに2008年から2011年にかけては鳥取県[15]岡山県[5]栃木県 [16] など国内外各地で開催された企画展『ようこそ恐竜ラボへ!』の特別協力、2011年から2012年にかけては鳥取県立博物館大阪市立自然史博物館岡山シティミュージアム名古屋市科学館で開催された企画展『OCEAN! 海はモンスターでいっぱい』の主催を担当した[17][18]。2013年10月から2014年2月まで国立科学博物館で開催された企画展『大恐竜展 ゴビ砂漠の驚異』や、2014年3月から6月の名古屋市科学館『発掘! モンゴル大恐竜展』でも特別協力を担当し、モンゴル科学アカデミーとの共同研究の成果が下敷きとなった[19][20][21]

林原の経営破綻と解散

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しかし親会社である林原が2011年に経営破綻に陥いると会社更生の手続きが始まり、同館は古生物研究事業の見直しを余儀なくされることとなった[6]。2012年1月には岡山県瀬戸内市の錦海塩田跡地付近の廃工場に標本の保管場所を移転した[22]

同館の事業継続が困難になったことは日本古生物学会日本地質学会・国際古脊椎動物学会・全国科学博物館協議会などに重く受け止められ、標本散逸の防止が訴えられるようになった[5][7][23]。2013年10月22日に林原は岡山理科大学への研究事業移管の協議が合意に至ったことを発表し、資料・画像・発掘資材などを無償で同大へ移管するとした[1]。同年中に恐竜の全身骨格を含む標本500点が岡山理科大学へ移管され、研究者も継承された[23]。同大は2012年に生物地球学部を、2014年に恐竜・古生物学コースを発足させ、さらにモンゴル科学アカデミー古生物学地質学研究所との研究教育協力協定を締結した[23]。事業を引き継いだ後、2014年に林原自然科学博物館は事実上活動を停止し、2015年に解散した[24]

資料と跡地のその後

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なお、標本は全てを岡山理科大学が受け継いだわけではなく、モンゴル産の標本はモンゴルへ返還された[8]。モンゴルに返還されず岡山理科大学にも移管されなかった標本、その他資料は、以下のような国内の他の博物館に渡ることとなった。

林原自然科学博物館を含む林原の施設の土地の売却についてはオークションが行われ、提示額と計画内容からイオンモールが最有力となり[32]、2014年12月5日にイオンモール岡山が開店した[33]

主な元職員

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書籍

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脚注

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注釈

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  1. ^ ただし、ゴビハドロスの記載は博物館が運営を終了した後の2019年であった。
  2. ^ いずれもアンモナイトの属。

出典

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  1. ^ a b c d 林原、恐竜研究を岡山理科大に移管 本業に経営資源を集中」『日本経済新聞』2013年10月23日。2020年11月30日閲覧。
  2. ^ a b 松本幸英; 石垣忍肉食恐竜, もっと低い姿勢 足跡化石と骨格化石の比較研究から判明 ─肉食恐竜のこれまでの復元姿勢に変更をせまる発見─』(レポート)日本地質学会、2010年9月22日http://www.geosociety.jp/uploads/fckeditor//press/2010/toyama/02.pdf2020年11月30日閲覧 
  3. ^ a b c 「生物の歴史から人間を考える」博物館をめざして”. 林原自然科学博物館. 2006年8月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年12月3日閲覧。
  4. ^ Khishigjav Tsogtbaatar; David B. Weishampel; David C. Evans; Mahito Watabe (2019). “A new hadrosauroid (Dinosauria: Ornithopoda) from the Late Cretaceous Baynshire Formation of the Gobi Desert (Mongolia)”. PLoS ONE 14 (4): e0208480. Bibcode2019PLoSO..1408480T. doi:10.1371/journal.pone.0208480. PMC 6469754. PMID 30995236. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6469754/. 
  5. ^ a b c d e f 加瀬友喜 (2011年2月9日). “林原グループにおける古生物学研究事業の今後について”. 日本古生物学会. 2020年11月30日閲覧。
  6. ^ a b c 林原自然科学博物館、岡山・倉敷市に標本335点寄贈」『産経ニュース』2015年2月4日。2020年11月30日閲覧。
  7. ^ a b 近藤信司 (2011年2月24日). “林原自然科学博物館の今後について(お願い)”. 全国科学博物館協議会. 2022年5月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月30日閲覧。
  8. ^ a b c d e f g h 世界最大級の足跡化石を発見 ~恐竜を追ってモロッコそしてモンゴルへ~”. JICA. 2019年2月22日閲覧。
  9. ^ 近未来のユビキタス・ネットワークの世界を実証実験”. 松下電器産業. 2002年12月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月30日閲覧。
  10. ^ a b 近未来のユビキタスネットワークの世界を体験!”. 松下電器産業. 2002年12月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月30日閲覧。
  11. ^ 自分の手でFACT(情報)を探そう!”. 松下電器産業. 2002年12月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月30日閲覧。
  12. ^ 4つのエリアで恐竜化石研究を肌で感じる!”. 松下電器産業. 2002年12月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月20日閲覧。
  13. ^ 4つのエリアで恐竜化石研究を肌で感じる!”. 松下電器産業. 2002年12月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月30日閲覧。
  14. ^ Dinosaur FACtory 林原自然科学博物館”. 林原自然科学博物館. 2006年9月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年12月3日閲覧。
  15. ^ 中永廣樹『企画展「ようこそ恐竜ラボへ! 〜化石の謎を解き明かす〜」』(レポート)鳥取県教育委員会、2008年6月19日https://www.pref.tottori.lg.jp/secure/271046/houkoku%20ka.pdf2020年11月30日閲覧 
  16. ^ 特別企画展恐竜ワールド”. 栃木県立博物館 (2011年7月13日). 2020年11月30日閲覧。
  17. ^ a b 特別展「OCEAN! 海はモンスターでいっぱい」”. OCEAN! 海はモンスターでいっぱい. 読売新聞. 2011年12月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月30日閲覧。
  18. ^ 特別展「OCEAN! 海はモンスターでいっぱい」”. 岡山シティミュージアム. 2012年7月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月30日閲覧。
  19. ^ 開催概要”. 国立科学博物館. 2020年12月1日閲覧。
  20. ^ 発掘! モンゴル大恐竜展”. 名古屋市科学館. 2020年12月1日閲覧。
  21. ^ 実物化石の連続に驚愕、『大恐竜展』に行ってみた!”. ナショナルジオグラフィック協会. p. 5 (2013年10月25日). 2020年12月1日閲覧。
  22. ^ 林原自然科学博物館、恐竜化石の保管場所を公開 [岡山]”. インターネットミュージアム. 丹青社グループ (2012年5月21日). 2020年11月30日閲覧。
  23. ^ a b c 恐竜プロジェクト”. 岡山理科大学. 2020年11月30日閲覧。
  24. ^ a b 大島光春; 田口公則『企画展「恐竜の玉手箱」と移動展示「恐竜の玉手箱」 〜寄贈された教育標本の利活用〜』(レポート)神奈川県立生命の星・地球博物館http://kanagawa-kenpakukyo.server-shared.com/pdf/kanagawakenmuseumgazette88_07.pdf2020年11月30日閲覧 
  25. ^ 恐竜に関する児童図書が寄贈されました(平成26年5月27日)”. 瀬戸内市 (2014年5月27日). 2020年11月30日閲覧。
  26. ^ 林原、高梁市成羽美術館にアンモナイトの化石を寄贈 岡山」『産経ニュース』2015年1月31日。2020年11月30日閲覧。
  27. ^ 岡山 倉敷市立自然史博物館 岡山県倉敷市 ゾウやサイがいた証し /中国」『毎日新聞』2018年5月3日。2020年12月1日閲覧。
  28. ^ 開催概要”. 倉敷市. 2015年7月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年12月1日閲覧。
  29. ^ 恐竜博物館ニュース 第53号福井県立恐竜博物館、2018年3月15日https://www.dinosaur.pref.fukui.jp/archive/Dinosaurs053.pdf2020年12月1日閲覧 
  30. ^ 新たな恐竜全身骨格が仲間入り 福井県立恐竜博物館14日から公開」『福井新聞』2015年11月14日。2020年12月1日閲覧。
  31. ^ 大迫力アロサウルス「出現」 勝山・県立恐竜博物館」『福井新聞』2018年3月1日。2020年12月1日閲覧。
  32. ^ 林原の岡山駅前土地売却先、イオンモールが最有力」『日本経済新聞』2011年9月10日。2020年11月30日閲覧。
  33. ^ モール概要”. イオンモール岡山. 2020年12月1日閲覧。
  34. ^ a b 科学と文化の講演会 〜一般の方対象〜”. 岡山理科大学 (2011年10月11日). 2020年12月3日閲覧。
  35. ^ 高校生対象 理系高校生のためのサイエンスレクチャー”. 岡山理科大学入試広報課. 2020年12月3日閲覧。
  36. ^ 鍔本 武久”. researchmap. 科学技術振興機構. 2020年11月30日閲覧。

外部リンク

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