池川志郎
池川 志郎(いけがわ しろう、1957年8月25日 - )は、日本の医学研究者。専門は医科遺伝学、ゲノム医科学。骨系統疾患コンソーシウムの創設者。ラグビー好きの科学者として知られている。東京大学ラグビー部のOB、不惑クラブのメンバー。
来歴
[編集]1983年東京大学医学部を卒業。臨床医としては、東京大学、心身障害児総合医療療育センターで小児整形外科医として勤務。日本整形外科学会認定専門医(1990年〜)、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医(2002年〜)。整形外科医として、日本で最初の遺伝カウンセリング資格保持者。基礎研究者としては、癌研究所生化学部の研究生を経て、2000年より理化学研究所・遺伝子多型研究センター・変形性関節症研究チーム(2018年より、生命医科学研究センター・骨関節疾患研究チームと改称)、チームリーダーに就任。
経歴
[編集]- 1957年 兵庫県西宮市甲子園生まれ
- 1970年 吹田市立山田第二小学校卒業
- 1973年 吹田市立山田中学校卒業
- 1976年 大阪府立茨木高校卒業
- 1976年 慶應義塾大学医学部入学
- 1977年 東京大学理科III類入学
- 1983年 東京大学医学部医学科卒業。東京大学整形外科入局。関連病院にて研修。
- 1990年 東京大学医学部附属病院整形外科・医員、東京女子医科大学・第2内科(成長科学協会)・研究生(~1991年2月)
- 1991年 心身障害児総合医療療育センター整形外科・医員
- 1992年 同上・医長 (~1995年1月)
- 1993年 癌研究会癌研究所生化学部・研究生(~1994年)
- 1995年 文部教官助手、東京大学医科学研究所・分子病態研究施設
- 1996年 文部教官助手、東京大学医科学研究所・ヒトゲノム解析センター・シーケンス技術開発分野 同年10月 東京大学医学博士 「Isolation,characterization and chromosomal assignment of the human colligin-2 gene (CBP2)(ヒトcolligin-2遺伝子 (CBP2) の単離、構造解析、及び染色体マッピングに関する研究)」
- 2000年 理化学研究所・遺伝子多型研究センター・変形性関節症関連遺伝子研究チーム(2018年4月より、生命医科学研究センター・骨関節疾患研究チームと改称)・チームリーダー
- 2023年 理化学研究所・生命医科学研究センター・客員主幹研究員
香港大学・名誉教授、北海道大学、千葉大学、台北医学大学、Kasturba医科大学の客員教授。東京大学医科学研究所・ゲノム診療部、および愛媛大学医学部の非常勤講師。日本人類遺伝学会、日本骨代謝学会の評議員。
研究業績
[編集]骨系統疾患(先天性の骨・軟骨疾患)の遺伝子解析、骨・関節の"ありふれた疾患" (common disease) のゲノム解析を行い、数多くの疾患遺伝子、疾患感受性遺伝子を発見している[1][2]。骨系統疾患については、これまでに(2023年8月15日現在)、Ikegawa型頭蓋・管状骨異形成症、Ikegawa型大理石骨病など35疾患で、33の新規疾患遺伝子を発見[3]。common diseaseについては、後縦靭帯骨化症、思春期特発性側湾症など5疾患の全ゲノム相関解析(GWAS)を世界で初めて成功させている[4]。
- Okawa A, et al. (1998). “Mutation in Npps in a mouse model of ossification of the posterior longitudinal ligament of the spine”. Nature Genetics 19 (3): 271-273. PMID 9662402.
- Kizawa H, et al. (2005). “An aspartic acid repeat polymorphism in asporin negatively affects chondrogenesis and increases susceptibility to osteoarthritis.”. Nature Genetics 37 (2): 138-144. PMID 15640800.
- Hiraoka S, et al. (2007). “Nucleotide-sugar transporter SLC35D1 is critical to chondroitin sulfate synthesis in cartilage and skeletal development in mouse and human.”. Nature Medicine 13 (11): 1363-1367. PMID 17952091.
- Miyamoto Y, et al. (2007). “A functional polymorphism in the 5' UTR of GDF5 is associated with susceptibility to osteoarthritis”. Nature Genetics 39 (4): 529-533. PMID 17384641.
- Miyamoto Y, et al. (2008). “Common variants in DVWA on chromosome 3p24.3 are associated with susceptibility to knee osteoarthritis”. Nature Genetics 40 (8): 994-998. PMID 18622395.
- Smits P, et al. (2010). “Lethal skeletal dysplasia in mice and humans lacking the golgin GMAP-210”. New England Journal of Medicine 362 (3): 206-216. PMID 20089971.
- Takahashi Y, et al. (2011). “A genome-wide association study identifies common variants near LBX1 associated with adolescent idiopathic scoliosis.”. Nature Genetics 43 (12): 1237-1240. PMID 22019779.
- Kou I, et al. (2013). “Genetic variants in GPR126 are associated with adolescent idiopathic scoliosis.”. Nature Genetics 45 (6): 676-679. PMID 23666238.
- Nakajima M, et al. (2014). “A genome-wide association study identifies susceptibility loci for ossification of the posterior longitudinal ligament of the spine.”. Nature Genetics 46 (9): 1012-1016. PMID 25064007.
- Guo L, et al. (2021). “Deficiency of TMEM53 causes a previously unknown sclerosing bone disorder by dysregulation of BMP-SMAD signaling.”. Nature Communications 12 (1): 2046. PMID 33824347.
- Boer CG, et al. (2021). “Deciphering osteoarthritis genetics across 826,690 individuals from 9 populations.”. Cell 184(18): 4784-4818. PMID 34822786.
受賞歴
[編集]- 2012年 OARSI(OsteoArthritis Research Society International: 国際変形性関節症学会)Basic Science Award
- 2012年 日本人類遺伝学会 学会賞
- 2020年 保健文化賞
脚注
[編集]- ^ 池川志郎. 整形外科領域のゲノム解析.整形外科71(6): 716-719, 2020
- ^ 池川志郎.骨系統疾患-個別診療分野における遺伝学的診断の進歩.日本医師会雑誌1521(1): 174-178, 2023
- ^ “骨系統疾患コンソーシウム Japanese Skeletal Dysplasia Consortium”. www2.riken.jp. 2023年8月25日閲覧。
- ^ “骨関節疾患研究チーム - 理化学研究所・生命医科学研究センター”. www2.riken.jp. 2023年3月26日閲覧。
外部リンク
[編集]- 研究チームのホームページ(理化学研究所・生命医科学研究センター・骨関節疾患研究チーム)
- 骨系統疾患コンソーシウム
- 特定非営利活動法人 骨形成不全症協会