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「ナガレヒキガエル」の版間の差分

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== 分布 ==
== 分布 ==
[[日本]]<ref name="fn1">海老沼剛 『爬虫・両生類ビジュアルガイド カエル1 ユーラシア大陸、アフリカ大陸とマダガスカル、オーストラリアと周辺の島々のカエル』、[[誠文堂新光社]]、[[2006年]]、25頁。</ref>([[北陸地方]]から[[紀伊半島]]にかけて<!-- [[石川県]]、[[京都府]]、[[滋賀県]]、[[富山県]]、[[和歌山県]] -->)<ref name="fn2">[[千石正一]]監修 長坂拓也編著 『爬虫類・両生類800図鑑』、ピーシーズ、[[2002年]]、298頁。</ref><ref name="fn3">深田祝監修 T.R.ハリディ、K.アドラー編 『動物大百科12 両生・爬虫類』、[[平凡社]]、[[1986年]]、69頁。</ref>[[固有種]]
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== 形態 ==
== 形態 ==
最大[[体長]]17cmとヒキガエ属でも比較的大型。体色は緑色で、赤やオレンジの斑紋が入る個体もいる。鼓膜は小さく不鮮明。四肢や指は長い
[[体長]]オス7-12.1センチメート、メス8.8-16.8センチメートル<ref name="fn2"/>。皮膚には疣状の突起がある<ref name="fn1"/>。体色は緑褐色や黒褐色で、赤やの斑紋が入る個体もいる<ref name="fn1"/>


[[File:ABG2051s.jpg|thumb|赤い斑紋が確認できる個体。(2014年7月滋賀県)]]
幼体は[[渓流]]で流されないために、岩に吸い付く事のできる大型の口器を持つ。

鼓膜は小型で、不明瞭<ref name="fn3"/>。四肢は長い<ref name="fn1"/><ref name="fn2"/><ref name="fn3"/>。趾の間にはやや水かきが発達する<ref name="fn3"/>。

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== 分類 ==
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== 生態 ==
== 生態 ==
山地にある渓流沿いに生息する。ヒキガエル属内でも本種のように渓流に生息する種珍しい。種小名''torrenticola''は「急流住む」意。和名のナガレも渓流生息することに由来する。樹上で見つかることもある。
標高50~1700mにある渓流の周辺に生息する<ref name="fn1"/><ref name="fn2"/>繁殖期4~5月、繁殖1ケ月程春眠る。の後樹上に登ることもある<ref name="fn1"/><ref name="fn2"/>

食性は動物食で[[昆虫]][[節足動物]]、[[ミミズ]]などを食べる<ref name="fn1"/>


繁殖形態は卵生。4-5月に渓流の水ひも状の卵塊に包まれた約2,500個の卵を産む<ref name="fn2"/>
食性はで[[昆虫]][[節足動物]]、[[甲殻類]]、[[ミミズ]]を食べる。素早く舌をのばして獲物を捕らえ飲みこむ


== 備考 ==
繁殖形態は卵生で、3-5月に渓流沿いの水にひも状の卵塊に包まれた卵を産む。卵が流されないように、木の枝や岩に巻きつけるようにして産む
俳人の[[原石鼎]]は随筆『暖気』<ref>『前田普羅/原石鼎 (新学社近代浪漫派文庫)』所収。新学社2007年。</ref>で深吉野には渓流の岩の間で冬眠し、寒いうちから鳴き始める蟇がおり、[[多邇具久|たにぐく]]と呼ばれると記している。


== 人間との関係 ==
== 脚注 ==
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ニホンヒキガエルと違い民家の周りに住むことはなく、また分割されたのも近年なのでおそらく知名度は低いと思われる。渓流という限られた環境に生息するため、これらの環境が破壊されてしまった場合には生息数も減少してしまうと思われる。
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== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
{{Wikispecies|Bufo_torrenticola}}
{{Wikispecies|Bufo_torrenticola}}
* [[ヒキガエル科]]
* [[ヒキガエル属]]
* [[ヒキガエル属]]


== 外部リンク ==
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[[en:Japanese Stream Toad]]
[[Category:ヒキガエル科]]

2023年12月12日 (火) 01:35時点における最新版

ナガレヒキガエル
ナガレヒキガエル Bufo torrenticola
保全状況評価[a 1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 両生綱 Amphibia
: 無尾目 Anura
亜目 : ナミガエル亜目 Neobatrachia
: ヒキガエル科 Bufonidae
: ヒキガエル属 Bufo
: ナガレヒキガエル
B. torrenticola
学名
Bufo torrenticola Matsui, 1976
和名
ナガレヒキガエル
英名
Japanese stream toad

ナガレヒキガエルBufo torrenticola)は、両生綱無尾目ヒキガエル科ヒキガエル属に分類されるカエル。

分布

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日本[1]北陸地方から紀伊半島にかけて)[2][3]固有種

形態

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体長オス7-12.1センチメートル、メス8.8-16.8センチメートル[2]。皮膚には疣状の突起がある[1]。体色は緑褐色や黒褐色で、赤や橙の斑紋が入る個体もいる[1]

赤い斑紋が確認できる個体。(2014年7月滋賀県)

鼓膜は小型で、不明瞭[3]。四肢は長い[1][2][3]。趾の間にはやや水かきが発達する[3]

幼生口器が大型で吸盤状になり、流水でも流されないよう適応している[1][2][3]。オスは繁殖期になると疣状の突起が消失する[1]

分類

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ヘモグロビン電気泳動法による解析では、解析結果がニホンヒキガエルとは類似するもののヨーロッパヒキガエルとは系統が異なる(近縁ではない)と推定されている[4]タイプ標本奈良県大台ケ原産で大阪市立自然史博物館に保存。人工的に近縁のニホンヒキガエルアズマヒキガエルとの間に、妊性(雑種二代目が可能)のある雑種が出来る。自然下ではごく一部地域でアズマヒキガエルとの雑種が知られている。これは生息環境の破壊等により、アズマヒキガエルの繁殖地が本種と重なった結果だと言われている。しかし、通常この二種は同所には生息しておらず、生殖隔離はほぼ完全なため、亜種では無く、別種として扱うのが適当とされている[5]

生態

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標高50~1700mにある渓流の周辺に生息する[1][2]。繁殖期は4~5月、繁殖の後に1ケ月程の春眠に入る。の後樹上に登ることもある[1][2]

食性は動物食で、昆虫節足動物ミミズなどを食べる[1]

繁殖形態は卵生。4-5月に渓流の水底に、ひも状の卵塊に包まれた約2,500個の卵を産む[2]

備考

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俳人の原石鼎は随筆『暖気』[6]で深吉野には渓流の岩の間で冬眠し、寒いうちから鳴き始める蟇がおり、たにぐくと呼ばれると記している。

脚注

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  1. ^ a b c d e f g h i 海老沼剛 『爬虫・両生類ビジュアルガイド カエル1 ユーラシア大陸、アフリカ大陸とマダガスカル、オーストラリアと周辺の島々のカエル』、誠文堂新光社2006年、25頁。
  2. ^ a b c d e f g 千石正一監修 長坂拓也編著 『爬虫類・両生類800図鑑』、ピーシーズ、2002年、298頁。
  3. ^ a b c d e 深田祝監修 T.R.ハリディ、K.アドラー編 『動物大百科12 両生・爬虫類』、平凡社1986年、69頁。
  4. ^ 松井正文、佐藤隆 「電気泳動法による日本産ヒキガエルのヘモグロビン分析」『爬虫両棲類学雑誌』Vol.7 No.1、日本爬虫両棲類学会1977年、15-19頁。
  5. ^ 松井正文、前田憲男 『日本産カエル大鑑』
  6. ^ 『前田普羅/原石鼎 (新学社近代浪漫派文庫)』所収。新学社2007年。

関連項目

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外部リンク

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  1. ^ The IUCN Red List of Threatened Species
    • Yoshio Kaneko, Masafumi Matsui 2004. Bufo torrenticola. In: IUCN 2011. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2011.2.