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logo園部城・園部陣屋; （京都府）
	薗部城址
別名	薗部城、園部陣屋
城郭構造	平山城
天守構造	なし
築城主	小出吉親
築城年	元和5年（1619年）
主な改修者	小出英尚
主な城主	小出氏
廃城年	明治5年（1872年）
遺構	石垣、堀、巽櫓、櫓門、番所、; 太鼓櫓
指定文化財	なし
登録文化財	京都府暫定登録文化財; （巽櫓、櫓門、番所）; 2017年（平成29年）8月21日
再建造物	なし
位置	北緯35度6分18.35秒東経135度28分10.26秒 / 北緯35.1050972度東経135.4695167度
地図	園部城
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園部城（そのべじょう）・園部陣屋（そのべじんや）は、京都府南丹市園部町小桜町周辺にあった陣屋または日本の城。園部城が日本の城郭史で最後の建築物となる。建造物群の一部は府の「暫定登録文化財」に登録されている^[1]。

概要

小麦山（子向山）標高173.8mの東麓にある台地に築かれ、北側には園部川、西側に半田川を天然の堀として利用し、南側と東側に堀を巡らせ、もっとも外側の低地には2kmに渡り外堀を構えていた。主要部分は京都府立園部高等学校にあった。中世園部城と近世園部城と2つに時代に別けられる。しかし、中世園部城の存在については疑問も呈されている。天守閣はなかったので園部陣屋と呼ばれていたが、小麦山には慶応4年（1868年）建築の三層の小麦山櫓が建っていた。

沿革

中世園部城

従来、近世園部城以前に中世園部城があったといわれてきた^[2]。中世園部城は波多野氏の家臣・荒木山城守氏綱の居城とされ、明智光秀の丹波侵攻に伴い落城したといわれる^[2]。

実際、『信長公記』には「四月十日、滝川、惟任、惟住両三人丹波へ差遣され、御敵城荒木山城居城取巻き、水の手を止、攻められ、迷惑致し降参申し退散、去て惟任日向守人数入置き」とあり、天正6年（1577年）4月10日に明智光秀・滝川一益・丹羽長秀が荒木山城守の籠る城を落城させたことが記されている^[2]。しかしその城が園部であるとは書かれていない^[2]。

荒木氏は天文年間（1532 - 1555年）には波多野氏の傘下として、園部にある室町幕府御料所^[3]の桐野河内に税を課すなどしているが、荒木氏の城が園部城だという説は『籾井家日記』に基づいており、『籾井家日記』は史料的信憑性に問題のある近世の軍記物とされている^[2]。また、中世園部城の所在地を近世園部城跡などに推定する研究もあるが、近世園部城の築城以前に城があったとする史料も見つかっていない^[2]。一方、丹波篠山市の細工所城とその周辺のいくつかの城は荒木氏の城として伝わっており、籠城戦にまつわる伝承や歌が残っている^[2]。これらのことから、荒木山城守の居城としての中世園部城の存在は否定されている^[2]。

近世園部城

元和5年（1619年）、外様大名の小出吉親が但馬国出石城より移封され^[4]、船井郡、桑田郡、何鹿郡および上野国甘楽郡^[5]の約3万石^[6]を領する園部藩が誕生した^[7]。小出氏は当初、宍人に居館を構えることを計画する^[4]。宍人は北野社領船井荘の代官だった小畠氏が拠点としており、小畠氏は江戸期に入っても宍戸に居住していた^[4]。丹波に下向した吉親は、京都所司代の板倉勝重の仲介で会った小畠太郎兵衛の居館にしばらく滞在し、そこでの熟考の結果、宍人は拠点にせず園部の小麦山に築城することを決定する^[4]。宍人から園部に拠点を変更した理由について明確な史料はないが、水運と交通の利便を考慮した可能性があると推測される^[8]。小麦山麓での「御屋敷」築城に際して園部村周辺の住民は土地交換を行った^[4]。一般に近世城下町は大名が主導するとされるが、土豪、農民ら地域住民が協力した点が園部陣屋築造の特徴となる^[4]。小出吉親は元和5年（1619年）から7年（1621年）までを宍人で過ごし、園部陣屋と城下町の完成を待って園部に入った^[4]。徳川幕府より城と称する事は許されなかったが、小麦山南東の丘陵に方形居館、武家屋敷を構え、周囲には外郭線を築いた本格的な城だった^[4]。小出吉親を影で支えていた小畠太郎兵衛は宍人に在住し続けたが、寛永3年（1626年）に250石で召出され園部に移った^[4]。

小麦山には生身天満宮があったが、城から見下ろすのは畏れ多いとして、築城から三十数年後の承応2年（1653年）9月4日、東南へ約500m山麓に遷している。生身天満宮は菅原道真が在世中から祀られている全国にただ一つしかない神社として知られている。

藩主の小出氏は外様大名ながら、4代英貞、5代英持と2人の若年寄を輩出している^[9]。その後10代藩主・小出英尚の時に明治維新を迎えるまで、250余年にわたり一度も国替えはなかった^[9]。

10代にわたる歴代城主は、Template:園部藩主も参照。

無城主格の小出氏はその居所も陣屋と呼ばれ、園部陣屋には天守はおろか櫓や櫓門の建築も認められてこなかった^[10]。

幕末の動乱の中、京都に近いという園部の地理的状況もあって、元治元年（1864年）12月、園部藩は幕府に新規築城を願い出た^[10]。この時の申請の内容は、櫓門3ヵ所や櫓9ヵ所を建て、既にある本丸以外の塀に狭間を設置するというものだった^[10]。この時は京都所司代の松平定敬から老中へ回されたものの無城主格として却下^[10]。引き続き交渉を行った結果、慶応3年（1867年）10月に将軍・徳川慶喜より内諾を得られた^[10]。その直後の大政奉還により沙汰止みとなったが、改めて明治新政府に願い出て認められ、慶応4年（1868年）1月28日、「叡慮」をもって守衛のための築城が認められたと、園部藩から村方に廻状が出されている^[10]。この頃より普請が始まり、明治2年（1869年）8月28日、上棟式が挙行された^[10]。櫓門が3ヵ所、巽櫓や小麦山の三重櫓などの櫓が5ヵ所建てられ、堀も造成され、園部陣屋は園部城へと生まれ変わった^[10]。

明治4年（1871年）7月、廃藩置県が施行されると園部藩も廃止され園部県となり^[11]、園部城にはそのまま園部県庁が置かれた。しかし園部県はすぐに廃止され京都府園部支庁となり、1872年（明治5年）に、現在まで残る建物以外は官有地や民間に払い下げ、政治機能としては役割を終えた。城の中心地は小学校となったが現在は京都府立園部高等学校の敷地となり、隅櫓や櫓門など一部の建物が現存する。巽櫓、校門（櫓門）、茶所（番所）は2017年（平成29年）に府の暫定登録文化財に登録された^[12]。

城郭

園部陣屋時代

近世園部城の当初は、徳川幕府に絵図を提出しながら進められていたようで、櫓を築造するようだったが、二重の堀や狭間を設けた塀もあるという事で、櫓の建設は見送られた。徳川幕府の制度上では陣屋という扱いになるが、規模としては惣構えで、南北約650m、東西約450mもあり、城と呼べる規模であった。

園部陣屋にも城下町があり、1619年（元和5年）に陣屋と共に町場が整備されたことから始まる^[13]。町場の用地拡大と陣屋の防御的な効果も得るために、現在の国道9号沿いを東流していた園部川を北側に湾曲される工事を行ったとされ、その名残として小出吉親の号にちなんだ「意閑堤」という名称の堤がある^[13]。普請した城下町は6町で、陣屋の北側と南側に位置した^[13]。北側には「宮町」、「上本町」、「本町下之町（本町）」、「新町」、「裏町（若松町）」があり、南側には「大村町（城南町）」が広がり^[13]、当初の町家数は430軒あまりであった。町の両端になる園部大橋詰と新町詰には、それぞれ番小屋を設け城下への出入り口を監視していた。

現在の園部大橋上流部付近の川岸は「運上（うんじょう）」と呼ばれ、園部川舟運の積出地と伝えられている^[14]。この運上と大橋下の石堰との間は禁魚区になっており、藩主をはじめ御殿女中に至るまで遊興に供じたとされる場所である^[15]。

札之辻より東の道筋にある本町は、参勤交代の大名や幕府役人等の休泊施設となる本陣、脇本陣が置かれており、城下町の中心地であった^[13]。本町の北側には裏町があり、そのさらに北に馬場や倉庫などがあった^[13]。城下町にはいくつかの寺院があり、それら寺院は町場に向かう道沿いや枡形の隣にあることなどから、ある程度の防御機能を考えて配置されたものとみられる^[13]。

園部城時代

西部の小麦山の山頂には三層の小麦山櫓が建っていた^[16]。計画時には櫓門を3ヵ所と本丸の4ヵ所を含む9ヵ所の櫓が建設予定であったが、最終的には櫓門3ヵ所と本丸の巽櫓、太鼓櫓、巣鴨櫓、乾櫓の4ヵ所と小麦山櫓を含む計5ヵ所の櫓が建てられた^[16]。現存しているのは、巽櫓、城門の櫓門（高校の校門）、番所、太鼓櫓（八木町の安楽寺に移築）や、石垣の一部や堀も埋め戻され幅も狭くなった部分もあるのがその痕跡をとどめている。外堀は小麦山を囲んで2kmもあった。

園部城の本丸は南北に長く、長方形に多くの屈曲をつけた形状であった^[16]。1869年（明治2年）に新築完成した日本の城郭史の中で最後の建築物となる^[16]。二重櫓、番所、櫓門は一直線上に並び、付属の土壁とともに現存している^[16]。二重櫓は、本丸の南東にあり、南東を表す巽櫓と呼ばれている^[16]。本丸には4つの二重櫓が建っていたが巽櫓が最大の櫓で園部城の象徴でもあった^[16]。巽櫓以外の櫓や城門は1872年（明治5年）入札によって払下げたのちに、破却もしくは城外に移築されている^[16]。

巽櫓1階の内部は半間の幅の武者走りが四周にあり、その内側が1室の部屋となっている^[16]。巽櫓のような中規模の櫓で武者走りを持つような例は少なく、立派な造りになっている^[16]。巽櫓は、1階の東と南面に大きな出窓を設けている^[16]。巽櫓のような中規模の櫓の出窓の間口は一間ほどが普通で、巽櫓の出窓は大き過ぎると言える^[16]。櫓の出窓は軍事的に重要な設備で、出窓の側面に狭間を設けて城壁に近づく敵兵に横矢を加えたり、下方の石垣より外に張り出した出窓を石落としとして、櫓の直下に近づいた敵を撃退したりすることができる^[16]。しかし巽櫓の出窓は十分に張り出しておらず、単なる飾りにしかならない^[16]。また巽櫓は一般の櫓に比べ軒の出が非常に長く、城郭らしくなく社寺建築のように見える^[16]。このほか、櫓門も城郭としては変わった特徴を持つ^[16]。まず第一に、2階の梁が頭をぶつけるほど低く、鉄砲や弓を自由に扱えず、格子の下の壁も低すぎて敵からの銃弾も防げない^[16]。第二に、正方形の大型の狭間のような窓が正面の格子窓の両脇や側面、背面に設けられており、これらは窓としては小さくて格子もなく、鉄砲狭間としては大きすぎ、大砲を撃つ特別な狭間のようにも見える^[16]。第三に、2階の柱の立て方が櫓門らしくなく、一般的な櫓門に比べて整った外観になっている^[16]。このように園部城の巽櫓や櫓門は城郭としては変わった特徴が数多く見られ、社寺建築のような趣がある^[16]。この建築に携わった大工やそれを指導した園部藩が城郭に十分な心得がなかったものとも考えられる^[16]。

小麦山

古絵図

城跡へのアクセス

電車でのアクセス
- JR西日本　山陰本線　園部駅
- 徒歩約20分
車でのアクセス
- 京都縦貫自動車道　園部IC　→　京都府道19号　→　国道9号
- 園部総合公園の無料駐車場有り

脚注

[脚注の使い方]

^ “京都府暫定登録文化財一覧令和2年11月現在”. 京都府教育庁文化財保護課. 2021年12月11日閲覧。
^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g ^h 『図説・園部の歴史』108 - 109頁。
^ 『図説・園部の歴史』76 - 77頁。
^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g ^h ⁱ 『図説・園部の歴史』118 - 119頁。
^ 『図説・園部の歴史』146頁。
^ 『図説・園部の歴史』122頁。
^ 『図説・園部の歴史』126頁。
^ 『園部藩のあゆみ』。
^ ^a ^b 『図説・園部の歴史』118 - 119頁。
^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g ^h 『図説・園部の歴史』166 - 169頁。
^ 『図説・園部の歴史』174頁。
^ “南丹市文化財一覧表”. 南丹市. 2021年12月11日閲覧。
^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g 『図説・園部の歴史』130 - 131頁。
^ 『図説・園部の歴史』131、143頁。
^ 『園部町101年記念誌　みんなの歩みと未来への夢　翼』園部町、1991年3月、253頁。
^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g ^h ⁱ ^j ^k ^l ^m ⁿ ^o ^p ^q ^r ^s ^t ^u 『図説・園部の歴史』168 - 171頁。

参考文献

北野隆ほか編『復元大系日本の城 5 近畿』ぎょうせい、1992年、150頁。
竹岡林; 近藤滋; 河原純之編『日本城郭大系第11巻京都・滋賀・福井』新人物往来社、1980年、114 - 115頁。
南丹市文化博物館『園部藩のあゆみ』南丹市文化博物館、2008年、3 - 55頁。
西ヶ谷恭弘; 公武敏郎編『城郭みどころ事典西国編』東京堂出版、2003年、74 - 75頁。
吉田清監修『園部町史通史編図説・園部の歴史』園部町・園部町教育委員会、2005年、108 - 171頁。

外部リンク

南丹市立文化博物館公式ホームページ
園部城の観光ガイド - 攻城団

[1] “京都府暫定登録文化財一覧令和2年11月現在”. 京都府教育庁文化財保護課. 2021年12月11日閲覧。

[図説108-109-2] ^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g ^h 『図説・園部の歴史』108 - 109頁。

[3] 『図説・園部の歴史』76 - 77頁。

[図説118-119-4] ^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g ^h ⁱ 『図説・園部の歴史』118 - 119頁。

[5] 『図説・園部の歴史』146頁。

[6] 『図説・園部の歴史』122頁。

[7] 『図説・園部の歴史』126頁。

[8] 『園部藩のあゆみ』。

[図説126-129-9] 『図説・園部の歴史』118 - 119頁。

[図説166-169-10] ^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g ^h 『図説・園部の歴史』166 - 169頁。

[11] 『図説・園部の歴史』174頁。

[12] “南丹市文化財一覧表”. 南丹市. 2021年12月11日閲覧。

[図説130-131-13] ^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g 『図説・園部の歴史』130 - 131頁。

[14] 『図説・園部の歴史』131、143頁。

[運上-15] 『園部町101年記念誌　みんなの歩みと未来への夢　翼』園部町、1991年3月、253頁。

[図説168-171-16] ^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g ^h ⁱ ^j ^k ^l ^m ⁿ ^o ^p ^q ^r ^s ^t ^u 『図説・園部の歴史』168 - 171頁。

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-==概要==
+== 概要 ==
-小麦山の東麓にある台地に築かれ、川を天然の堀として利用し、加えて堀を巡らせ守りを固めた。当初は陣屋であり、現在のように隅櫓などが上げられた姿になったのは、1868年のことである。
+小麦山（子向山）[[標高]]173.8mの東麓にある台地に築かれ、北側には[[園部川]]、西側に[[半田川 (京都府)|半田川]]を天然の堀として利用し、南側と東側に堀を巡らせ、もっとも外側の低地には2kmに渡り外堀を構えていた。主要部分は[[京都府立園部高等学校]]にあった。[[中世]]園部城と[[近世]]園部城と2つに時代に別けられる。しかし、中世園部城の存在については疑問も呈されている。[[天守|天守閣]]はなかったので園部陣屋と呼ばれていたが、小麦山には[[慶応]]4年（[[1868年]]）建築の三層の小麦山[[櫓 (城郭)|櫓]]が建っていた。
-== 歴史 ==
+== 沿革 ==
+=== 中世園部城 ===
-[[但馬国]]出石より移封された[[外様大名]]の[[小出吉親]]により、[[元和 (日本)|元和]]5年（[[1619年]]）より2年の歳月をかけて築かれた。
+従来、近世園部城以前に中世園部城があったといわれてきた<ref name="図説108-109">[[#図説|『図説・園部の歴史』]]108 - 109頁。</ref>。中世園部城は[[波多野氏]]の家臣・[[荒木氏綱|荒木山城守氏綱]]の居城とされ、[[明智光秀]]の[[丹波国|丹波]]侵攻に伴い落城したといわれる<ref name="図説108-109" />。
-藩主の[[小出氏]]は外様大名ながら、藩主2人を幕閣に輩出している。10代藩主英尚の時に幕末を迎えている。
+実際、『[[信長公記]]』には「四月十日、滝川、惟任、惟住両三人丹波へ差遣され、御敵城荒木山城居城取巻き、水の手を止、攻められ、迷惑致し降参申し退散、去て惟任日向守人数入置き」とあり、[[天正]]6年（[[1577年]]）4月10日に[[明智光秀]]・[[滝川一益]]・[[丹羽長秀]]が荒木山城守の籠る城を落城させたことが記されている<ref name="図説108-109" />。しかしその城が園部であるとは書かれていない<ref name="図説108-109" />。
-[[戊辰戦争]]の時に[[京都御所]]の安全が脅かせられる怖れがでてきたため、御所から近くの園部陣屋に[[明治天皇]]を迎える「行在所（あんざいしょ）」の候補としてあがり、明治新政府から築城の許可を受け、[[明治]]元年（[[1868年]]）から2年の歳月をかけ、櫓門・巽櫓、小麦山の三層櫓などが築かれた。
+荒木氏は[[天文 (元号)|天文]]年間（[[1532年|1532]] - [[1555年]]）には波多野氏の傘下として、園部にある[[室町幕府]][[御料所]]<ref>[[#図説|『図説・園部の歴史』]]76 - 77頁。</ref>の桐野河内に税を課すなどしているが、荒木氏の城が園部城だという説は『籾井家日記』に基づいており、『籾井家日記』は史料的信憑性に問題のある近世の軍記物とされている<ref name="図説108-109" />。また、中世園部城の所在地を近世園部城跡などに推定する研究もあるが、近世園部城の築城以前に城があったとする史料も見つかっていない<ref name="図説108-109" />。一方、[[丹波篠山市]]の[[荒木城|細工所城]]とその周辺のいくつかの城は荒木氏の城として伝わっており、籠城戦にまつわる伝承や歌が残っている<ref name="図説108-109" />。これらのことから、荒木山城守の居城としての中世園部城の存在は否定されている<ref name="図説108-109" />。
-しかし、明治5年（[[1872年]]）、現在まで残る建物以外は取り壊され、現在は[[京都府立園部高等学校]]の敷地となり、隅櫓や櫓門など一部の建物が現存する。
+[[ファイル:Koide Yoshichika.jpg|thumb|小出吉親像/徳雲寺蔵]]
-== 現存する建物 ==
+=== 近世園部城 ===
+[[元和 (日本)|元和]]5年（[[1619年]]）、[[外様大名]]の[[小出吉親]]が[[但馬国]][[出石城]]より移封され<ref name="図説118-119" />、[[船井郡]]、[[桑田郡]]、[[何鹿郡]]および[[上野国]][[甘楽郡]]<ref>[[#図説|『図説・園部の歴史』]]146頁。</ref>の約3万[[石 (単位)|石]]<ref>[[#図説|『図説・園部の歴史』]]122頁。</ref>を領する[[園部藩]]が誕生した<ref>[[#図説|『図説・園部の歴史』]]126頁。</ref>。小出氏は当初、宍人に居館を構えることを計画する<ref name="図説118-119">[[#図説|『図説・園部の歴史』]]118 - 119頁。</ref>。宍人は[[北野天満宮|北野社]]領船井荘の代官だった小畠氏が拠点としており、小畠氏は[[江戸時代|江戸期]]に入っても宍戸に居住していた<ref name="図説118-119" />。丹波に下向した吉親は、[[京都所司代]]の[[板倉勝重]]の仲介で会った小畠太郎兵衛の居館にしばらく滞在し、そこでの熟考の結果、宍人は拠点にせず園部の小麦山に築城することを決定する<ref name="図説118-119" />。宍人から園部に拠点を変更した理由について明確な史料はないが、水運と交通の利便を考慮した可能性があると推測される<ref>[[#あゆみ|『園部藩のあゆみ』]]。</ref>。小麦山麓での「御屋敷」築城に際して[[園部村]]周辺の住民は土地交換を行った<ref name="図説118-119" />。一般に近世[[城下町]]は大名が主導するとされるが、[[土豪]]、[[農民]]ら地域住民が協力した点が園部陣屋築造の特徴となる<ref name="図説118-119" />。小出吉親は元和5年（[[1619年]]）から7年（[[1621年]]）までを宍人で過ごし、園部陣屋と城下町の完成を待って園部に入った<ref name="図説118-119" />。[[徳川幕府]]より城と称する事は許されなかったが、小麦山南東の丘陵に方形居館、[[武家屋敷]]を構え、周囲には外郭線を築いた本格的な城だった<ref name="図説118-119" />。小出吉親を影で支えていた小畠太郎兵衛は宍人に在住し続けたが、[[寛永3年]]（1626年）に250石で召出され園部に移った<ref name="図説118-119" />。
-* 巽櫓
-* 櫓門
+小麦山には[[生身天満宮]]があったが、城から見下ろすのは畏れ多いとして、築城から三十数年後の[[承応]]2年（[[1653年]]）9月4日、東南へ約500m山麓に遷している。生身天満宮は[[菅原道真]]が在世中から祀られている全国にただ一つしかない[[神社]]として知られている。
-* 番所
+[[ファイル:Koide Fusanao.jpg|thumb|left|小出英尚像/個人蔵]]
-* 太鼓櫓 八木町の安楽寺に移築
+藩主の[[小出氏]]は外様大名ながら、4代[[小出英貞|英貞]]、5代[[小出英持|英持]]と2人の[[若年寄]]を輩出している<ref name="図説126-129">[[#図説|『図説・園部の歴史』]]118 - 119頁。</ref>。その後10代藩主・[[小出英尚]]の時に[[明治維新]]を迎えるまで、250余年にわたり一度も国替えはなかった<ref name="図説126-129" />。
+:''10代にわたる歴代城主は、[[Template:園部藩主]]も参照。''
+無[[城主大名|城主格]]の小出氏はその居所も陣屋と呼ばれ、園部陣屋には天守はおろか櫓や[[櫓門]]の建築も認められてこなかった<ref name="図説166-169">[[#図説|『図説・園部の歴史』]]166 - 169頁。</ref>。
+[[ファイル:Sonobe Castle12.jpg|thumb|園部陣屋修築願絵図/個人蔵]]
+[[幕末]]の動乱の中、京都に近いという園部の地理的状況もあって、[[元治]]元年（[[1864年]]）12月、園部藩は幕府に新規築城を願い出た<ref name="図説166-169" />。この時の申請の内容は、櫓門3ヵ所や櫓9ヵ所を建て、既にある[[本丸]]以外の[[塀]]に[[狭間]]を設置するというものだった<ref name="図説166-169" />。この時は京都所司代の[[松平定敬]]から[[老中]]へ回されたものの無城主格として却下<ref name="図説166-169" />。引き続き交渉を行った結果、[[慶応]]3年（[[1867年]]）10月に[[征夷大将軍|将軍]]・[[徳川慶喜]]より内諾を得られた<ref name="図説166-169" />。その直後の[[大政奉還]]により沙汰止みとなったが、改めて[[明治維新#明治政府|明治新政府]]に願い出て認められ、慶応4年（[[1868年]]）1月28日、「叡慮」をもって守衛のための築城が認められたと、園部藩から村方に廻状が出されている<ref name="図説166-169" />。この頃より[[普請]]が始まり、[[明治]]2年（[[1869年]]）8月28日、[[上棟式]]が挙行された<ref name="図説166-169" />。櫓門が3ヵ所、巽櫓や小麦山の三重櫓などの櫓が5ヵ所建てられ、堀も造成され、園部陣屋は園部城へと生まれ変わった<ref name="図説166-169" />。
+明治4年（[[1871年]]）7月、[[廃藩置県]]が施行されると園部藩も廃止され[[園部県]]となり<ref>[[#図説|『図説・園部の歴史』]]174頁。</ref>、園部城にはそのまま園部県庁が置かれた。しかし園部県はすぐに廃止され京都府園部支庁となり、[[1872年]]（明治5年）に、現在まで残る建物以外は官有地や民間に払い下げ、政治機能としては役割を終えた。城の中心地は[[小学校]]となったが現在は京都府立園部高等学校の敷地となり、隅櫓や櫓門など一部の建物が現存する。巽櫓、校門（櫓門）、茶所（番所）は2017年（平成29年）に府の暫定登録文化財に登録された<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.city.nantan.kyoto.jp/www/life/112/013/000/71573/71755_1_501_2.pdf|title=南丹市文化財 一覧表|publisher=南丹市|accessdate=2021-12-11}}</ref>。
+== 城郭 ==
+[[ファイル:Sonobe Castle17.jpg|250px|thumb|園部城と周辺地域の空中写真/{{国土航空写真}}]]
+=== 園部陣屋時代 ===
+近世園部城の当初は、徳川幕府に絵図を提出しながら進められていたようで、櫓を築造するようだったが、二重の堀や狭間を設けた塀もあるという事で、櫓の建設は見送られた。徳川幕府の制度上では陣屋という扱いになるが、規模としては惣構えで、南北約650m、東西約450mもあり、城と呼べる規模であった。
+園部陣屋にも城下町があり、[[1619年]]（元和5年）に陣屋と共に町場が整備されたことから始まる<ref name="図説130-131">[[#図説|『図説・園部の歴史』]]130 - 131頁。</ref>。町場の用地拡大と陣屋の防御的な効果も得るために、現在の[[国道9号]]沿いを東流していた園部川を北側に湾曲される工事を行ったとされ、その名残として小出吉親の号にちなんだ「意閑堤」という名称の堤がある<ref name="図説130-131" />。普請した城下町は6[[町]]で、陣屋の北側と南側に位置した<ref name="図説130-131" />。北側には「宮町」、「上本町」、「本町下之町（本町）」、「新町」、「裏町（若松町）」があり、南側には「大村町（城南町）」が広がり<ref name="図説130-131" />、当初の町家数は430軒あまりであった。町の両端になる園部大橋詰と新町詰には、それぞれ番小屋を設け城下への出入り口を監視していた。
+現在の園部大橋上流部付近の川岸は「運上（うんじょう）」と呼ばれ、園部川舟運の積出地と伝えられている<ref>[[#図説|『図説・園部の歴史』]]131、143頁。</ref>。この運上と大橋下の石堰との間は禁魚区になっており、藩主をはじめ御殿女中に至るまで遊興に供じたとされる場所である<ref name="運上">{{Cite book|和書|title=園部町101年記念誌　みんなの歩みと未来への夢　翼|publisher=園部町|language=ja|year=1991-3|page=253}}</ref>。
+札之辻より東の道筋にある本町は、[[参勤交代]]の[[大名]]や幕府役人等の休泊施設となる[[本陣]]、[[脇本陣]]が置かれており、城下町の中心地であった<ref name="図説130-131" />。本町の北側には裏町があり、そのさらに北に[[馬場]]や[[倉庫]]などがあった<ref name="図説130-131" />。城下町にはいくつかの[[寺院]]があり、それら寺院は町場に向かう道沿いや[[枡形]]の隣にあることなどから、ある程度の防御機能を考えて配置されたものとみられる<ref name="図説130-131" />。{{-}}
+{| border=0 cellpadding=1 cellspacing=0 align=right
+|- align=center
+|[[ファイル:Sonobe Castle09.jpg|thumb|櫓門/大正期に撮影]]
+|[[ファイル:Sonobe Castle02.jpg|thumb|櫓門]]
+|}
+=== 園部城時代 ===
+西部の小麦山の山頂には三層の小麦山櫓が建っていた<ref name="図説168-171">[[#図説|『図説・園部の歴史』]]168 - 171頁。</ref>。計画時には櫓門を3ヵ所と本丸の4ヵ所を含む9ヵ所の櫓が建設予定であったが、最終的には櫓門3ヵ所と本丸の巽櫓、太鼓櫓、巣鴨櫓、乾櫓の4ヵ所と小麦山櫓を含む計5ヵ所の櫓が建てられた<ref name="図説168-171" />。現存しているのは、巽櫓、城門の櫓門（高校の校門）、番所、太鼓櫓（[[八木町 (京都府)|八木町]]の[[安楽寺 (南丹市)|安楽寺]]に移築）や、石垣の一部や堀も埋め戻され幅も狭くなった部分もあるのがその痕跡をとどめている。外堀は小麦山を囲んで2kmもあった。
+園部城の本丸は南北に長く、[[長方形]]に多くの屈曲をつけた形状であった<ref name="図説168-171" />。[[1869年]]（明治2年）に新築完成した日本の城郭史の中で最後の建築物となる<ref name="図説168-171" />。二重櫓、番所、櫓門は一直線上に並び、付属の土壁とともに現存している<ref name="図説168-171" />。二重櫓は、本丸の南東にあり、南東を表す[[巽]]櫓と呼ばれている<ref name="図説168-171" />。本丸には4つの二重櫓が建っていたが巽櫓が最大の櫓で園部城の象徴でもあった<ref name="図説168-171" />。巽櫓以外の櫓や城門は[[1872年]]（明治5年）[[入札]]によって払下げたのちに、破却もしくは城外に移築されている<ref name="図説168-171" />。
+巽櫓1階の内部は半[[間]]の幅の[[武者走り]]が四周にあり、その内側が1室の部屋となっている<ref name="図説168-171" />。巽櫓のような中規模の櫓で武者走りを持つような例は少なく、立派な造りになっている<ref name="図説168-171" />。巽櫓は、1階の東と南面に大きな[[出窓]]を設けている<ref name="図説168-171" />。巽櫓のような中規模の櫓の出窓の間口は一間ほどが普通で、巽櫓の出窓は大き過ぎると言える<ref name="図説168-171" />。櫓の出窓は軍事的に重要な設備で、出窓の側面に狭間を設けて城壁に近づく敵兵に横矢を加えたり、下方の石垣より外に張り出した出窓を[[石落とし]]として、櫓の直下に近づいた敵を撃退したりすることができる<ref name="図説168-171" />。しかし巽櫓の出窓は十分に張り出しておらず、単なる飾りにしかならない<ref name="図説168-171" />。また巽櫓は一般の櫓に比べ軒の出が非常に長く、城郭らしくなく社寺建築のように見える<ref name="図説168-171" />。このほか、櫓門も城郭としては変わった特徴を持つ<ref name="図説168-171" />。まず第一に、2階の[[梁 (建築)|梁]]が頭をぶつけるほど低く、[[鉄砲]]や[[弓 (武器)|弓]]を自由に扱えず、格子の下の壁も低すぎて敵からの銃弾も防げない<ref name="図説168-171" />。第二に、正方形の大型の狭間のような窓が正面の格子窓の両脇や側面、背面に設けられており、これらは窓としては小さくて格子もなく、鉄砲狭間としては大きすぎ、[[大砲]]を撃つ特別な狭間のようにも見える<ref name="図説168-171" />。第三に、2階の柱の立て方が櫓門らしくなく、一般的な櫓門に比べて整った外観になっている<ref name="図説168-171" />。このように園部城の巽櫓や櫓門は城郭としては変わった特徴が数多く見られ、社寺建築のような趣がある<ref name="図説168-171" />。この建築に携わった[[大工]]やそれを指導した園部藩が城郭に十分な心得がなかったものとも考えられる<ref name="図説168-171" />。
+{|
+|[[ファイル:Sonobe Castle03.jpg|thumb|巽櫓]]
+|[[ファイル:Sonobe Castle04.jpg|thumb|櫓門と番所]]
+|[[ファイル:Sonobe Castle01.jpg|thumb|110px|園部城の石標]]
+|}
+=== 小麦山 ===
+{|
+|[[ファイル:Sonobe Castle06.jpg|thumb|小麦山櫓跡地]]
+|[[ファイル:Sonobe Castle08.jpg|thumb|小麦山の竪堀跡]]
+|[[ファイル:Sonobe Castle07.jpg|thumb|130px|園部忠魂碑]]
+|}
+=== 古絵図 ===
+{|
+|[[ファイル:Sonobe Castle10.jpg|thumb|300px|丹波国園部絵図/個人蔵]]
+|[[ファイル:Sonobe Castle13.jpg|thumb|320px|園部旧城見取図（部分）/京都府立総合資料館蔵]]
+|}
+{|
+|[[ファイル:Sonobe Castle11.jpg|thumb|170px|園部城略図/南丹市文化博物館蔵]]
+|[[ファイル:Sonobe Castle15.jpg|thumb|380px|園部公園平面図/個人蔵]]
+|}
+== 城跡へのアクセス ==
+[[ファイル:Sonobe Castle05.jpg|thumb|190px|南丹市国際交流会館（城内）]]
+*電車でのアクセス
+**[[西日本旅客鉄道|JR西日本]]　[[山陰本線]]　[[園部駅]]
+**徒歩 約20分
+*車でのアクセス
+**[[京都縦貫自動車道]]　[[園部インターチェンジ (京都府)|園部IC]]　→　[[京都府道19号園部平屋線|京都府道19号]]　→　[[国道9号]]
+**園部総合公園の無料駐車場有り
+== 脚注 ==
+{{脚注ヘルプ}}
+{{Reflist|2}}
+== 参考文献 ==
+* {{Citation|和書|editor=北野隆ほか|year=1992|title=復元大系 日本の城 5 近畿|publisher=[[ぎょうせい]]|page=150}}
+* {{Citation|和書|editor-last=竹岡|editor-first=林|editor2-last=近藤|editor2-first=滋|editor3-last=河原|editor3-first=純之|year=1980|title=[[日本城郭大系]] 第11巻 京都・滋賀・福井|publisher=[[新人物往来社]]|pages=114 - 115}}
+* {{Citation|和書|author=南丹市文化博物館|year=2008|title=園部藩のあゆみ|publisher=南丹市文化博物館|pages=3 - 55|ref=あゆみ}}
+* {{Citation|和書|editor-last=西ヶ谷|editor-first=恭弘|editor-link=西ヶ谷恭弘|editor2-last=公武|editor2-first=敏郎|year=2003|title=城郭みどころ事典 西国編|publisher=[[東京堂出版]]|pages=74 - 75}}
+* {{Citation|和書|author=吉田清監修|year=2005|title=園部町史通史編 図説・園部の歴史|publisher=園部町・園部町教育委員会|pages=108 - 171|ref=図説}}
+== 外部リンク ==
 {{Commonscat|Sonobe Castle}}
+* [http://www.be.city.nantan.kyoto.jp/hakubutukan/ 南丹市立文化博物館公式ホームページ]
-== 関連項目 ==
+* [http://kojodan.jp/castle/321/ 園部城の観光ガイド] - 攻城団
-*[[日本の城一覧#京都府|日本の城一覧]]
-{{DEFAULTSORT:そのへしよう}}
+{{デフォルトソート:そのへしよう}}
 [[Category:現存建築のある日本の城跡]]
 [[Category:京都府の城]]
-[[Category:南丹市]]
+[[Category:南丹市の歴史]]
-[[Category:陣屋]]
+[[Category:現存しない陣屋]]
+[[Category:園部小出家|城]]
+[[Category:丹波国の城]]
-{{Japanese-history-stub}}
+[[Category:園部藩]]
+[[Category:江戸時代の建築]]
+[[Category:南丹市の建築物]]