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「病気」の版間の差分

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英語の単語は便利ですが、太い文字にしないで日本語の方を大切にしましょう。
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{{Otheruses|動物の病気|植物|植物病理学}}
{{Otheruses|'''[[ヒト]]の病気'''|[[植物]]の病気|植物病理学}}
[[ファイル:Michael Ancher 001.jpg|thumb|upright=1.3|「病気の少女」"The Sick Girl"、1882年作、[[コペンハーゲン国立美術館]]]]
'''病気'''(びょうき、illness)、'''病'''(やまい)は、[[人間]]や[[動物]]の[[心]]や[[体]]に不調または不都合が生じた[[状態]]のこと。(本記事で後述)。一般的に[[外傷]]などは含まれない。


'''病気'''(びょうき、または'''疾患'''、{{Lang-en-short|disease}})とは、生体の全部または一部の構造または{{仮リンク|機能 (生物)|en|function (biology)|redirect=1|label=機能}}に悪影響を及ぼす特定の異常な状態であり、[[外傷]]によるものではない<ref name=":1">{{DorlandsDict|three/000030493|Disease}}</ref><ref>{{Cite web |last=White |first=Tim |date=19 December 2014 |title=What is the Difference Between an "Injury" and "Disease" for Comcare Commonwealth Compensation Claims? |url=https://tgb.com.au/injured-people/what-is-the-difference-between-an-%E2%80%9Cinjury%E2%80%9D-and-%E2%80%9Cdisease%E2%80%9D-for-commonwealth-injury-claims/ |url-status=live |archive-url=https://web.archive.org/web/20171027024609/https://tgb.com.au/injured-people/what-is-the-difference-between-an-%e2%80%9cinjury%e2%80%9d-and-%e2%80%9cdisease%e2%80%9d-for-commonwealth-injury-claims/ |archive-date=27 October 2017 |access-date=6 November 2017 |publisher=Tindall Gask Bentley }}</ref>。病気はしばしば、特定の[[症状と徴候|徴候や症状]]を伴う健康状態(medical conditions)として知られている。病気は[[病原体]]などの外的要因によって引き起こされることもあれば、体内の機能不全によって引き起こされることもある。例えば、[[免疫系]]の内部機能不全は、様々な[[免疫不全]]、[[過敏症]]、[[アレルギー]]、[[自己免疫疾患]]など、様々な病気を引き起こす。
'''病気'''(やまいけ、sickness)は、病気が起こるような気配をいう。


ヒトにおいては、病気は、患者に[[痛み]]、機能障害、{{仮リンク|不快なストレス|en|distress (medicine)|redirect=1}}{{Efn|[[日本医学会医学用語辞典]]では英語のdistressに対して、「不快なストレス」以外に困難、心痛、窮迫、苦悩、苦痛の訳があてられている。}}、[[社会問題|社会的問題]]、または死、あるいは患者と接する人々に同様の問題を引き起こすあらゆる状態を指すため、より広義に用いられることが多い。この広い意味では、[[外傷]]、[[障害者|障害]]、身体の異常、[[症候群]]、[[感染症]]、個別の症状、[[行動]]の逸脱、構造や機能の{{仮リンク|ヒトの不均一性|en|human variability|redirect=1|label=変異}}を含むこともある。他の文脈や目的においては、これらは区別できるカテゴリーとみなされることもある。病気により、肉体的な影響だけでなく、精神的な影響も受ける。病気にかかり、病気とともに生きることで、罹患者の[[人生観]]が変わってしまうからである。
'''[[症候群]]'''(しょうこうぐん、syndrome)、'''疾病'''(しっぺい、disease)、'''疾患'''(しっかん、disease)は病気の類似[[概念]]として、本記事でまとめて解説する。


病気による死は{{仮リンク|自然死|en|death by natural causes|redirect=1}}という。病気には大きく分けて、[[感染症]]、欠乏症、遺伝性疾患([[遺伝子疾患]]と{{仮リンク|非メンデル遺伝|en|Non-Mendelian inheritance|redirect=1|label=遺伝子に拠らない遺伝性疾患}}を含む)、生理学的異常の4種類がある。病気はまた、[[伝染性疾病|伝染性疾患]]と{{仮リンク|非伝染性疾患|en|non-communicable disease|redirect=1}}のように、他の方法で分類することもできる。ヒトで最も致死率の高い病気は[[冠動脈疾患]]([[心臓]]の血流障害)であり、次いで[[脳血管疾患]]、{{仮リンク|下気道感染|en|lower respiratory infections|redirect=1}}である<ref>{{Cite web |title=What is the deadliest disease in the world? |url=https://www.who.int/features/qa/18/en/ |publisher=WHO |access-date=7 December 2014 |date=16 May 2012 |url-status=live |archive-url=https://web.archive.org/web/20141217112902/http://www.who.int/features/qa/18/en/ |archive-date=17 December 2014 }}</ref>。先進国では、[[うつ病]]や[[不安障害]]などの[[精神障害|精神疾患]]が疾病負荷の大きな部分を占めている<ref>{{Cite web |title=Global, regional, and national burden of 12 mental disorders in 204 countries and territories, 1990–2019: a systematic analysis from the Global Burden of Disease Study 2019 {{!}} Institute for Health Metrics and Evaluation |url=https://www.healthdata.org/research-analysis/library/global-regional-and-national-burden-12-mental-disorders-204-countries-and |website=www.healthdata.org |access-date=2024-09-29 |language=en}}</ref>。
== 概念 ==
[[File:Gabriel Metsu 002.jpg|250px|thumb|病気の少女([[1660年]])。[[ハブリエル・メツー]]の作品。]]
{{seealso|#病気と「疾患」・「疾病」}}
'''病気'''は曖昧な概念であり、何を病気とし、何を病気にしないかについては、様々な見解があり、政治的・倫理的な問題も絡めた議論が存在している。英語の ''illness''(病気)は「不健康な状態」を意味し、''disease''(疾患、疾病)は「病気の原因」を意味するが、両者はしばしば混同される。


病気を研究する学問は[[病理学]]と呼ばれ、[[病因学|病因]](病気の原因)の探求が含まれる。
=== 分布の数で判断しようとする試み ===
ひとつには、自然科学的な習慣をそのまま持ち込んで、「定量的な分析」を志向し、数的な側面に着目する考え方、別の言い方をすると「[[正常]] / [[異常]]」という概念で分けようとする見解がある。


== 用語 ==
ある性質の集団の中での数的な分布で線引きしてしまおうとする考え方であり、統計分析の[[正規分布]]の[[母集団]]の分析における習慣を持ち込むものである。本当はどこまでが「正常」どこまでを「異常」とするかは統計学でも定義は無く、正式の統計学では、線引きの値は任意であり様々に設定可能、とされている。だが、そうした任意の値の中から便宜的・習慣的にしばしば用いられている設定「2×D」を(あまり確かな理由もなく、半ば強引に)採用しておいて、「標準値からプラスマイナス2×[[標準偏差|SD]]までの差を正常、それ以上のずれは異常(なので疾患)」として、「疾患とは全体の5%未満に見られる形質・状態で、正常とは残りの約95%こと」と一律に定義してしまおうとする例がある。<!--{{要出典}}しかしながら、この例では、下記の糖尿病の事例はあてはまらないことになる。-->
しかしこのように「集団内での数的な分布」を「病気」の定義として流用してしまうと、日本で約1000万人が難儀している[[糖尿病]]や、数多くの合併症をもたらす[[肥満]]までも「正常」とすることになってしまい、また一方で、特に基礎疾患がなく偶然的に高身長となった人で元気に生活している人までが 「病気」に分類されてしまうという問題が生じる。すなわち、異常(統計的に数が少ない状態)であれば病気であるとも言えないし、病気であれば異常である、などとも言い切れず、統計的手法によって病気を定義しようとする試みには無理があるのである{{要出典|date=2013年9月}}<!--{{Synthesis-inline|date=2013年9月}}-->。


=== 概念 ===
=== 定性的に定義しようとする立場 ===
多くの場合、病気・疾患(''disease)''、障害(''disorder)''、罹患(''morbidity)''、病気(''sickness'')、不健康(''illness)''などの用語は互換的に使用されるが、特定の用語が望ましいと考えられる状況もある<ref>{{Cite web |url=http://science.education.nih.gov/supplements/nih5/mental/other/glossary.htm |title=Mental Illness – Glossary |publisher=US {{仮リンク|アメリカ国立精神衛生研究所|en|National Institute of Mental Health|redirect=1|label=アメリカ国立精神衛生研究所(National Institute of Mental Health: NIMH)}} |access-date=18 April 2010 |url-status=dead |archive-url=https://web.archive.org/web/20100528085547/http://science.education.nih.gov/supplements/nih5/Mental/other/glossary.htm |archive-date=28 May 2010}}</ref>。
逆に、<!--完全に価値判断的に-->質的な記述あるいは定性的な記述で病気を一般化して定義しようとする試み・立場がある。


==== 疾患 ====
ひとつには本人の認識している状態(あるいは本人の主観的経験内容)を重視し、病気の定義を「本人が心身に不都合を感じ、改善を望むような状態」、あるいは「本人あるいは周囲<ref>「本人あるいは周囲が」としたのは、[[精神疾患]]や軽症の疾患の中には、本人は生活上の不都合を感じないが、周囲の人が生活上支障をきたすために治療の必要性を感じる場合があるからである。これは病気と類似概念の混同である。
疾患(''disease)''とは、広義には身体の正常な機能を損なうあらゆる状態を指す。このため、疾患は身体の正常な[[恒常性]]維持過程の機能障害と関連している<ref>{{Cite web |url=http://regentsprep.org/regents/biology/units/homeostasis/index.cfm |title=Regents Prep: Living Environment: Homeostasis |publisher=Oswego City School District Regents Exam Prep Center |access-date=12 November 2012 |url-status=dead |archive-url=https://web.archive.org/web/20121025044155/http://regentsprep.org/Regents/biology/units/homeostasis/index.cfm |archive-date=25 October 2012}}</ref>。一般的に、この用語は特に[[感染症]](infectious disease)を指すのに用いられる。感染症とは、[[ウイルス]]、[[細菌]]、[[真菌症|真菌]]、[[原虫]]、多細胞生物、および[[プリオン]]として知られる異常タンパク質を含む病原性微生物因子の存在に起因する、臨床症状を有する疾患である。臨床的な正常機能を明らかに損なうことの無い[[感染]]やコロニー形成、例えば[[腸内細菌|腸内の正常な細菌]]や[[酵母]]、あるいは{{仮リンク|パッセンジャーウイルス|en|passenger virus|redirect=1}}の存在は、病気とはみなされない。対照的に、[[潜伏期間]]中は無症状であるが、後に症状が現れると予想される感染症は、通常、疾患とみなされる。{{仮リンク|非伝染性疾患|en|Non-communicable disease |redirect=1}}とは、ほとんどのがん、心臓病、遺伝病など、感染症以外のすべての疾患を指す。
[[精神疾患]]、[[病気#病気と「疾患」・「疾病」]]も参照のこと。</ref> が心身に不都合を感じ、改善を望むような状態」とすることがある。


==== 後天性疾患 ====
医師が疾患だと[[診断]]した人であっても、本人は生活上の問題を感じないことなどを理由に「自分は病気ではない。健康である」と述べていることがあり、あるいは「[[身体障害]]は[[障害]](広い意味で疾病の一種)ではなく個性である」と言われることがあり、これらはその意味でも一理あることともいえる。また、[[医療従事者]]の立場でも、本人または周囲が治療の必要性を感じなければ病院を受診に来ることも無いので、このような定義でも実際上の問題は生じにくい。
後天性疾患とは、出生時にすでに存在していた疾患([[先天性疾患]])とは対照的に、出生後のある時点で発症した疾患のことである。後天性とは、その英語の原義から、「伝染病か何かを獲得(Acquired)した」という意味と捉えられるが、単に出生後に発症したという意味である。また、[[#続発性疾患|続発性疾患]]を意味するようにも聞こえるが、後天性疾患は[[#原発性疾患|原発性疾患]]であることもある。
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==== 先天性疾患 ====
ただし、これも突き詰めて考えてみると、医師が[[依存症]]・[[嗜癖]]や[[骨粗鬆症]]などと診断するようなケースでも上記のような認識のズレが生じていることがあり、医学研究の立場では本人や周囲の判断・価値観に関わらずに病気を定義し診断できるようにすることへの要求は存在する。
;{{Main|先天性異常|垂直感染}}
[[先天性疾患]]は、[[分娩|出生]]時に存在する疾患である。多くの場合、[[遺伝子疾患]]または障害であり、[[遺伝]]することもある(遺伝子の異常は必ずしも遺伝しない)。また、[[梅毒]]や[[後天性免疫不全症候群|HIV/AIDS]]のように、母親からの[[垂直感染]]によって発症することもある。


==== 遺伝子疾患・遺伝性疾患 ====
=== 医療関係者の主観を織り込もうとする試み ===
;{{Main|遺伝子疾患}}
医師など[[医療産業]]に従事しそれで収入を得ている者の中には「病気とは心身に不調あるいは不都合がある状態のことであって、<!--ダブリ 「病気とは心身の不調あるいは不都合であって、-->いわゆる医療による改善が望まれるもの」などと、“医療”という言葉を手前味噌的に、半ば強引に定義に盛り込んでしまう例も無いわけではない。(だが、医療とは病気を治すものであるから、病気の定義に「医療」を用いるのは一種の[[循環論法]]となりうる。また、病気には医療を必要とせず治癒するものも多いので、その意味でもかなり問題のある定義である(後述))
遺伝'''性'''疾患(hereditary disease)とは、家族内で起こりうる、すなわち遺伝する疾患である。[[遺伝子疾患]](genetic disease)は、1つ以上の遺伝子の[[突然変異]]によって引き起こされる。[[遺伝]]することが多いが、ランダムで新規発生する突然変異もある。
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=== 医療人類学での見解 ===
==== 医原性疾患 ====
;{{Main|医原病}}
医療の領域で起きていることを、医療関係者の立場からも患者の立場からも離れて、[[客観]]的そして学問的に研究する[[医療人類学]]では、「病気(''sickness'')とは疾患(''disease'')と病い(''illness'')をあわせたもの」とする定義も提出されている[http://arjournals.annualreviews.org/doi/abs/10.1146/annurev.an.11.100182.001353]。疾患(''disease'')を"生物学的なもの"とし、病い(''illness'')は"主観的な経験のこと"、とする説明である。この説明方法を採用した場合、例えば、上記の糖尿病の例では、疾患の定義に当てはまる者は1000万人いるかもしれないが、[[慢性疾患]]で自覚症状が少ない初期では本人が「病い」と捉える人はごく少ない、という理屈になる。
[[医原性疾患]](別名 医原病)とは、治療の副作用や不慮の結果など、医療介入によって引き起こされる疾患のことである。


=== 社会的状況 ===
==== 特発性疾患 ====
:
冒頭に説明したように、何が病気であるのか病気でないのかを決めるのは、容易なことではなく、各立場なりの見解があり、一般の人々は多くは自分が感じている感覚内容で病気か病気でないか判断していて、ちょうど「本人が心身に不都合を感じ、改善を望むような状態」といった定義がそのまま当たるようなことが日常的には行われているが、医師の集団は医師の集団で医師なりの立場で生物学寄りの見方をしてみたり統計を見たりし、[[臨床]]医師では、一般論は脇に置いておいて、目前に現れた患者の個別的な症状と医学書に書かれている慣習的な判断基準を見比べて便宜的に判断する 等々等々、さまざまなことが行われている。それらの見解は様々に複雑に相互影響しあう<ref>注 - 一般の人々は、医師からの説明を聞いて、それを自分の考えとして採用することもある。また逆に医師の側も、患者から報告を聞いて、はじめて何かを「疾患」と認識し、そうした断片的情報が学会などで徐々に集約されて、あらためて大規模統計がとられる場合もある。マスコミで医師が語る内容も人々の病気観に影響を与える。</ref>。
{{仮リンク|特発性疾患|en|idiopathic disease|redirect=1}}とは原因がわからない病気である。医学の進歩に伴い、原因が全く不明であった多くの病気は、その原因の一端が解明され、特発性の地位を脱した。例えば、[[細菌]]が発見されたとき、細菌が[[感染症]]の原因であることが知られるようになったが、特定の細菌と病気との関連は明らかにされていなかった。別の例では、[[自己免疫]]が[[1型糖尿病]]の原因の一部であることは知られているが、それが働く特定の分子経路はまだ解明されていない。また、特定の[[要因]]が特定の疾患と[[関連性|関連]]していることはよく知られている。しかし、関連性が必ずしも[[因果関係]]を意味するわけではない。例えば、第3の要因が病気と関連する現象の両方を引き起こしているかもしれない。


==== 不治の病・難病 ====
現実の社会では病気に対する見解は立場ごと・文脈ごとに異なり、さまざまな見解が複雑にせめぎ合う。実際、臨床の現場では医師と患者の見解はしばしばずれたり対立することがある。上では周囲は病気と判定しているが本人は病気とは思っていない例をいくつか挙げたが、逆に本人が病気だと感じているのに医師の側がそう認識しない、しようとしない、というケースもある。たとえば本人が身体に[[疼痛|激痛]]や異常な感覚などを感じ明らかに何らかの病気だと直感しそれを訴えているにもかかわらず、医師の側ではCTやMRIなどの画像を見て、そのその検査とその医師の技量との組み合わせではたまたま何も見つけられなかったことを根拠に、「("客観的に見て" あるいは"生物学的に見て")疾患ではないでしょう。気のせいでしょう」などと告げて放置し、すっかり悪化したり死亡してから、事後的に他の医師によって[[誤診]]だったと判定されるようなケースもある。また[[ステロイド皮膚症]]や各種の[[公害病]]、[[乳幼児突然死症候群]]の例に見られるように、その病気が存在するかどうか自体が学問的のみならず政治的にも問題となることもある。
不治の病(incurable disease)とは[[治癒]]させることのできない病気である。必ずしも[[末期症状|末期的]]な病気ではなく、病気の症状を十分に治療することで、[[クオリティ・オブ・ライフ|生活の質]]にほとんど影響がでないこともある。[[難病]](intractable disease)<ref>{{Cite web |title=難病情報センター – Japan Intractable Diseases Information Center |url=https://www.nanbyou.or.jp/ |website=www.nanbyou.or.jp |access-date=2024-09-29}}</ref>とは、以下のように定義されている。
:{{Quote|発病の機構が明らかでなく、治療法が確立していない希少な疾病であって、当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすることとなる疾病|[[厚生労働省]]|事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン 参考資料 難病に関する留意事項|<ref>{{Cite web |title=事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン 参考資料 難病に関する留意事項 |url=https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000199957.pdf |website=厚生労働省 |access-date=2024-09-29}}</ref>}}{{Seealso|難病}}

==== 原発性疾患 ====
:
'''原発性疾患'''、'''原疾患'''(primary disease)<ref>{{Cite web |title=primary diseaseの意味・使い方 |url=https://eow.alc.co.jp/search?q=primary+disease#resultsList-section |website=eow.alc.co.jp |access-date=2024-09-29 |language=ja}}</ref>とは、病気の根本的な原因に起因する疾患であり、原発性疾患によって引き起こされる{{仮リンク|続発症|en|sequela}}や[[合併症]]である[[#二次疾患|二次疾患]]と対を成す概念である。例えば、[[風邪]]は原発性疾患であり、[[鼻炎]]は続発性疾患または続発症の可能性がある。医師は、[[抗生物質]]を処方するかどうかを決定する際に、患者の続発性鼻炎を引き起こしている原発性疾患が風邪か[[細菌感染]]であるかどうかを判断しなければならない。

==== 二次疾患{{Anchors|続発性|二次性|二次性疾患}} ====
'''二次疾患'''(secondary disease)<ref>{{Cite web |title=secondary diseaseの意味・使い方 |url=https://eow.alc.co.jp/search?q=secondary+disease |website=eow.alc.co.jp |access-date=2024-09-29 |language=ja}}</ref>とは、先行する原疾患の[[後遺症]]または[[合併症]]である疾患のことである。例えば、細菌感染症は、健康な人でも細菌にさらされて感染する原発性のものと、感染しやすい体質のもととなる原因による二次的なものがある。例えば、ウイルス感染は、免疫系を弱め、二次的な細菌感染を引き起こす可能性がある。同様に、開放創を形成するような[[熱傷]]は、細菌の侵入口となり、二次的な細菌感染を引き起こす可能性がある。

==== 終末期疾患 ====
終末期疾患(terminal disease)<ref>{{Cite web |title=terminal diseaseの意味・使い方 |url=https://eow.alc.co.jp/search?q=terminal+disease |website=eow.alc.co.jp |access-date=2024-09-29 |language=ja}}</ref>とは、避けられない結果としての死をもたらすと予想される病気のことである。以前はエイズが終末期疾患であったが、現在では不治の病であるものの、薬物療法により無期限に管理することができる。

==== Illness ====
英語の"illness"という単語は、一般的に病気(disease)の同義語として使われる。しかし、illnessという言葉は、患者の病気に対する個人的な経験を特に指すために使われることもある<ref>{{Cite web |url=https://medical-dictionary.thefreedictionary.com/illness |title=illness |work=[[ドーランド医学辞典|Dorland's Medical Dictionary]] for Health Consumers |year=2007 |publisher=Elsevier |via=medical-dictionary.thefreedictionary.com |access-date=6 November 2017 |archive-date=7 November 2017 |archive-url=https://web.archive.org/web/20171107060816/https://medical-dictionary.thefreedictionary.com/illness |url-status=live}}</ref><ref>{{DorlandsDict|seven/000096725|sickness}}</ref><ref name="pmid3567788">{{Cite journal |author=Emson HE |title=Health, disease and illness: matters for definition |journal=[[カナディアン・メディカル・アソシエーション・ジャーナル|CMAJ]] | volume=136 |issue=8 |pages=811–13 |date=April 1987 |pmid=3567788 |pmc=1492114}}</ref><ref name="pmid3567791">{{Cite journal |author=McWhinney IR |title=Health and disease: problems of definition |journal=CMAJ |volume=136 |issue=8 |page=815 |date=April 1987 |pmid=3567791 |pmc=1492121}}</ref>。この考え方に基づけば、illnessではなくてもdiseaseであることはあり得る。例えば、[[不顕性感染]]など、客観的には定義できるが{{仮リンク|無症候性|en|asymptomatic|redirect=1}}の健康状態を有すること、または臨床的に明らかな身体的障害を有するが、それによって不具合や{{仮リンク|不快なストレス|en|distress (medicine)|redirect=1}}を感じていない状況である。また、diseaseでないがillnessであることもあり得る。たとえば、正常な状態であっても、病的な状態と認識する場合、である。より具体的には、恥ずかしさのために気分が悪くなり、その感情を正常な感情ではなく病気であると解釈するような場合など。病気の症状は多くの場合、感染の直接的な結果ではなく、感染を除去し回復を促進するために[[進化]]した反応(身体の{{仮リンク|病時行動|en|sickness behavior|redirect=1}})の集合体である。このような病気の症状には、{{仮リンク|嗜眠|en|lethargy|redirect=1|label=嗜眠(lethargy)}}、[[抑うつ]]、{{仮リンク|食欲不振|en|anorexia (symptom)|redirect=1}}、[[睡眠欲|眠気]]、[[痛覚過敏]]、[[集中力]]の欠如などがある<ref name="Hart">{{Cite journal |author=Hart BL |year=1988 |title=Biological basis of the behavior of sick animals |journal={{仮リンク|Neurosci Biobehav Rev|en|Neurosci Biobehav Rev|redirect=1|label=Neurosci Biobehav Rev}} | volume=12 |issue=2 |pages=123–37 |pmid=3050629 |doi=10.1016/S0149-7634(88)80004-6 |s2cid=17797005 | issn = 0149-7634 }}</ref><ref>{{Cite journal |author=Johnson R |year=2002 |title=The concept of sickness behavior: a brief chronological account of four key discoveries |journal={{仮リンク|Veterinary Immunology and Immunopathology|en|Veterinary Immunology and Immunopathology|redirect=1|label=Veterinary Immunology and Immunopathology}} | volume=87 |issue=3–4 |pages=443–50 |pmid=12072271 |doi=10.1016/S0165-2427(02)00069-7}}</ref><ref>{{Cite journal |vauthors=Kelley KW, Bluthe RM, Dantzer R, Zhou JH, Shen WH, Johnson RW, Broussard SR |year=2003 |title=Cytokine-induced sickness behavior |journal={{仮リンク|Brain Behav Immun|en|Brain Behav Immun|redirect=1|label=Brain Behav Immun}} | volume=17 |issue=Suppl 1 |pages=S112–18 |pmid=12615196 |doi=10.1016/S0889-1591(02)00077-6 |s2cid=25400611}}</ref>。
:{{Seealso|医療化}}

==== {{Visible anchor|障害|disorder}} ====
:{{Main|障害#医学用語}}
障害(disorder)とは、機能的な異常や障害のことであり、特定の[[症状と徴候|徴候や症状]]を示す場合と示さない場合がある。 医学的障害は、精神障害、[[身体障害]]、遺伝的障害、[[感情障害|感情]]・[[行動障害]]、{{仮リンク|機能障害|en|functional disorder|redirect=1}}に分類される<ref>{{Cite web |title=Disorder |url=https://www.cancer.gov/publications/dictionaries/cancer-terms/def/disorder |access-date=2024-04-23 |website=www.cancer.gov |publisher=[[アメリカ国立がん研究所|National Cancer Institute]] |language=en}}</ref>。障害という用語は、病気や疾患という用語よりも価値中立的で、[[社会的スティグマ|スティグマ]]を負わせることが少ないと考えられることが多いため、状況によっては好まれる用語である<ref>{{Cite web |last1=Sefton |first1=Phil |title=Condition, Disease, Disorder |url=https://amastyleinsider.com/2011/11/21/condition-disease-disorder/ |website=AMA Style Insider |publisher=American Medical Association |access-date=20 August 2019 |date=21 November 2011 |archive-date=20 August 2019 |archive-url=https://web.archive.org/web/20190820125543/https://amastyleinsider.com/2011/11/21/condition-disease-disorder/ |url-status=live}}</ref>。[[メンタルヘルス]]において、精神障害(''mental disorder'')という言葉は、{{仮リンク|生物心理社会モデル|en|Biopsychosocial model|redirect=1|label=生物学的、社会学的、心理学的因子}}の複雑な相互作用を認識する方法として使われる。しかし、障害という用語は、医学の他の多くの分野でも使用され、主に[[代謝障害]]など、感染性生物に起因しない身体的障害を表すために使用される。しかし、状態が医学上のものであることを強調しているために、[[自閉者の権利運動|自閉症の権利運動]]の支持者のように、この用語が否定されることもある<ref>{{Cite web |title=Autism, PDD-NOS & Asperger's fact sheets {{!}} The Autism Rights Movement |url=https://www.autism-help.org/points-autism-rights-movement.htm |website=www.autism-help.org |access-date=2024-09-29}}</ref>。
:{{Seealso|{{仮リンク|生物心理社会モデル|en|Biopsychosocial model|redirect=1}}}}

==== 健康状態(medical condition) ====
{{Anchors|健康状態|病状}}'''健康状態'''(Medical condition or health condition)とは、[[妊娠]]や[[出産]]など、通常医学治療を受けるすべての疾患、{{仮リンク|病変|en|lesion|redirect=1}}、障害、非病理学的状態を含む広い概念である。medical conditionという用語は一般的に精神疾患を含むが、文脈によっては、精神疾患以外のあらゆる病気、傷害、疾患を示す用語として特別に使用されることもある。精神医学のすべての[[精神障害]]を定義するマニュアルとして広く使われている『'''[[精神疾患の診断・統計マニュアル]]'''』(DSM)では、精神障害を除くすべての病気、疾患、傷害を指すためにgeneral medical conditionという用語を使用している<ref>{{Cite book |publisher=American Psychiatric Association |year=2000 |title=Diagnostic and statistical manual of mental disorders |edition=4th |location=Washington, DC |author=American Psychiatric Association Task Force on DSM-IV |isbn=978-0-89042-025-6}}</ref>。この用法は精神医学の文献でもよく見られる。また、一部の[[医療保険]]では、medical conditionを精神疾患を除くあらゆる疾病、傷害、疾患と定義している<ref>{{Cite web |url=http://www.theinsurancepage.co.uk/expat-insurance-glossary.html |title=Expat Insurance Glossary by The Insurance Page |access-date=20 November 2008 |url-status=dead |archive-url=https://web.archive.org/web/20081027142342/http://www.theinsurancepage.co.uk/expat-insurance-glossary.html |archive-date=27 October 2008}}</ref>。疾患(disease)などの用語よりも{{仮リンク|価値中立的|en|value-neutral|redirect=1}}であるため、健康上の問題を抱えつつも病状が大したことでは無いとみなす人々にとって好まれることがある。medical conditionという言葉は、'''''{{仮リンク|病状|en|medical state|redirect=1|label=病状(medical state)}}'''''の同義語でもあり、この場合は医学的見地から個々の患者の現在の状態を表す。この用法は、例えば、ある患者が[[危篤]]状態であると表現する場合に使われる。
:{{Main|{{仮リンク|病状|en|medical state|redirect=1|label=病状(medical state、英語圏での病状の報道用語)}}}}

==== {{Visible anchor|病的状態|morbidity}}(Morbidity) ====
Morbidity({{Etymology|la|morbidus|病気、不健康}})とは、何らかの原因による病的状態または罹患率<ref>{{Cite web |url=https://medical-dictionary.thefreedictionary.com/morbidity |title=morbidity |work=Dorland's Medical Dictionary for Health Consumers |year=2007 |publisher=Elsevier |via=medical-dictionary.thefreedictionary.com |access-date=6 November 2017 |archive-date=7 November 2017 |archive-url=https://web.archive.org/web/20171107060403/https://medical-dictionary.thefreedictionary.com/morbidity |url-status=live}}</ref>{{Efn|[[日本医学会医学用語辞典]]での訳例}}を表す多義語である。この用語は、あらゆる形態の病気の存在、または健康状態が患者に影響を与える程度を指す場合がある。重症患者の場合、morbidityの度合いは{{仮リンク|ICUスコア|en|ICU scoring systems|redirect=1}}で測定されることが多い。[[併存疾患]](Comorbidityないしco-existing disease)とは、[[統合失調症]]と[[薬物乱用]]など、2つ以上の病状が同時に存在することである。

[[疫学]]および[[保険数理|保険数理学]]では、morbidityという用語は、発生率、[[有病割合]]、または一定の期間内に一定の状態を経験する人の割合(例えば、1年間に20%の人が[[インフルエンザ]]に罹患する)のいずれかを指すことがある<ref>{{Cite book |last=Kirch |first=Wilhelm |url=https://books.google.com/books?id=eSPK7-CHw7oC&q=morbidity |title=Encyclopedia of Public Health: Volume 1: A – H Volume 2: I – Z |date=13 June 2008 |publisher=Springer Science & Business Media |isbn=978-1-4020-5613-0 |pages=966 |language=en |access-date=3 January 2023 |archive-date=4 April 2023 |archive-url=https://web.archive.org/web/20230404025820/https://books.google.com/books?id=eSPK7-CHw7oC&q=morbidity |url-status=live }}</ref>。この病気の指標は、一定の期間内に死亡する人の割合、すなわち[[死亡率]]と対比される。罹患率は、[[健康保険]]、[[生命保険]]、[[介護保険]]などの保険数理において、顧客に請求する[[保険料]]を決定するために使用される。罹患率は、保険会社が被保険者が特定の病気にかかったり発症したりする可能性を予測するのに役立つ。

==== 病理 ====
{{Main|病理学}}病理学は、学問としては、病気になった原因を探り、病気になった患者の身体に生じている変化が、どのようなものであるかを研究するものである<ref>{{Cite web |title=病理学とは〈高知大学医学部 病理学講座〉 |url=http://www.kochi-u.ac.jp/kms/ff_pthl2/dop/what.htm |website=www.kochi-u.ac.jp |access-date=2024-10-04}}</ref>が、[[臨床医学]]における病理診断とは、主として、患者の身体より摘出された組織・細胞から標本を作製し、それを観察して診断することをいう<ref>{{Cite web |title=日本病理学会 市民の皆さまへ |url=https://pathology.or.jp/ippan/pathdiag.html |website=pathology.or.jp |access-date=2024-10-04}}</ref>。

==== 症候群 ====
{{Main|症候群}}[[症候群]]とは、原因がわかっているかどうかに関係なく、いくつかの[[症状と徴候|徴候や症状]]の関連、またはしばしば一緒に生じる疾患の特徴の関連のことである。[[ダウン症候群]]のように、原因が1つ([[発生 (生物学)|発生]]時の余分な[[染色体]])しかないことがわかっている症候群もある。[[パーキンソン症候群]]のように、複数の原因が考えられるものもある。例えば、[[急性冠症候群]]は単一の疾患そのものではなく、[[冠動脈疾患]]に続発する[[心筋梗塞]]を含むいくつかの疾患のいずれかの症状である。しかし、他の症候群では{{仮リンク|特発性疾患|en| Idiopathic disease|redirect=1|label=特発性(原因不明)}}である。原因が特定された後でも、あるいは考えられる原因がいくつもある場合でも、馴染みのある症候群名が使われ続けることが多い。[[ターナー症候群]]や[[ディジョージ症候群]]は、単なる徴候や症状としてではなく、疾患として捉えることができるにもかかわらず、いまだに「症候群」という名前で呼ばれることが多い。
{{Seealso|病気の別名の一覧}}
==== 未病・Predisease ====
{{Anchors|Predisease|未病}}'''Predisease'''とは{{仮リンク|無症候性|en|asymptomatic|redirect=1}}または{{仮リンク|前駆症状|en|prodrome|redirect=1}}を意味する。日本では'''未病'''と訳されることもある<ref>{{Cite web |title=未病改善医学 {{!}} NDLサーチ {{!}} 国立国会図書館 |url=https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I029743272 |website=国立国会図書館サーチ(NDLサーチ) |access-date=2024-10-04 |language=ja}}</ref>が、医学用語として確立されたものでは無い{{Efn|2024年10月時点で[[日本医学会医学用語辞典]]には未病もprediseaseも収載されていない。}}。[[境界型糖尿病]]や[[正常高値血圧]]がその代表例である。{{仮リンク|疾病分類学|en|nosology|redirect=1}}や認識論上はこの用語に関して論争がある。というのも、不顕性疾患や前駆症状に対する正当な関心と、[[利益相反]]による過剰な[[医療化]](例えば、製薬メーカーによる)や非医療化(例えば、医療保険会社や障害保険会社による)とを区別する{{仮リンク|明確な線引き|en|bright line|redirect=1}}はほとんどないからである。正当な疾患予備群を特定することで、健康的な[[フィジカルトレーニング|運動]]をするよう動機付けるなど、有益な予防策を講じることができる<ref name="Lenzer">{{Cite news |url=http://www.slate.com/articles/health_and_science/medical_examiner/2012/08/blood_pressure_drugs_for_mild_hypertension_not_proven_to_prevent_heart_attacks_strokes_or_early_death.single.html |title=Blood pressure drugs for mild hypertension: Not proven to prevent heart attacks, strokes, or early death |last=Lenzer |first=Jeanne |date=14 August 2012 |work={{仮リンク|Slate (magazine)|en|Slate (magazine)|redirect=1|label=Slate}} | access-date=16 August 2012 |url-status=live |archive-url=https://web.archive.org/web/20120815202802/http://www.slate.com/articles/health_and_science/medical_examiner/2012/08/blood_pressure_drugs_for_mild_hypertension_not_proven_to_prevent_heart_attacks_strokes_or_early_death.single.html |archive-date=15 August 2012 }}</ref>。一方、健康な人に根拠のない未病のレッテルを貼ることは、重症の人にしか効かない薬を飲んだり、{{仮リンク|コスト・ベネフィット比|en|benefit–cost ratio|redirect=1}}の悪い治療にお金を払ったりするような、[[過剰治療|過剰な治療]]をもたらす可能性がある。ある[[総説論文|レビュー]]ではprediseaseに関して以下のような3つの概念が提示されている<ref name="pmid_21624963">{{Cite journal |last=Viera |first=Anthony J. |year=2011 |title=Predisease: when does it make sense? |journal={{仮リンク|Epidemiologic Reviews|en|Epidemiologic Reviews|redirect=1|label=Epidemiologic Reviews}} |volume=33 |issue=1 |pages=122–34 |pmid=21624963 |doi=10.1093/epirev/mxr002 |s2cid=12090327 |quote=When the goal of preventing adverse health outcomes is kept in mind, this review poses the idea that "predisease" as a category on which to act makes sense only if the following 3 conditions are met. First, the people designated as having predisease must be far more likely to develop the disease than those not so designated. Second, there must be a feasible intervention that, when targeted to people with predisease, effectively reduces the likelihood of developing the disease. Third, the benefits of intervening on predisease must outweigh the harms in the population.|doi-access=free }}</ref>。
:* 病気が進行するリスクが高く、他の人よりも「発症する可能性がはるかに高い」。例えば、'''前癌病変'''は、時間が経てばほぼ確実にがんになる。
:* リスク低減の実行可能性がある。例えば、前がん組織を切除することで、死に至る可能性のあるがんになるのを防ぐことができる。
:* 医学的介入による利益が害を上回る。例えば、前がん組織を取り除くことでがんを予防し、がんによる死亡を防ぐことができる。

=== 精神疾患と器質的疾患 ===

==== 精神疾患 ====
[[精神疾患]]とは、[[感情]]や情緒の不安定さ、行動調節障害、認知機能障害などを含む、病気のカテゴリーに対してよく用いられる広範な概念である。精神疾患として知られる具体的な病気には、[[大うつ病]]、[[全般性不安障害]]、[[統合失調症]]、[[注意欠如多動症]]などがある。精神疾患は、生物学的原因(解剖学的、化学的、遺伝的など)または心理学的原因([[心的外傷|トラウマ]]や葛藤など)に起因することがある。罹患者は仕事や勉強に支障をきたし、対人関係にも支障をきたすことがある。[[心神喪失]](insanity)という用語は、専門的には法律用語として使われる{{要出典|date=April 2023}}。

==== 器質的疾患 ====
:
{{Visible anchor|器質的疾患}}(organic disease)とは、身体の組織や器官の物理的な変化によって引き起こされる疾患のことである<ref>{{Cite web |url=https://www.collinsdictionary.com/dictionary/english/organic-disease |title=organic disease |access-date=2024-10-04 |publisher=Collins}}</ref>。 一般的に精神疾患と対比して用いられる。

==== 機能性疾患 ====
機能性疾患とは、器官に外観上の変化を伴わないものをいう<ref name=":2">{{Cite web |url=https://www.collinsdictionary.com/dictionary/english/functional-disease |title=functional disease |access-date=2024-10-04 |publisher=collins}}</ref>。器質的疾患と対比される概念である<ref name=":2" />。

=== 病期 ===
{{Seealso|{{仮リンク|がんの病期|en|Cancer staging|redirect=1}}}}
感染症では、感染してから症状が現れるまでの期間を[[潜伏期間]]という。{{仮リンク|潜伏期 (疫学)|en|Latent period (epidemiology)|label=疫学上の潜伏期|redirect=1}}とは、感染してからその病気が他の人に広がるまでの期間のことで、症状の出現に先行する場合もあれば、後続する場合もあり、また同時に出現する場合もある。ウイルスの中には、[[ウイルス潜伏|ウイルス潜伏期]]と呼ばれる、ウイルスが不活性な状態で体内に潜伏する休止期を示すものもある。例えば、[[水痘帯状疱疹ウイルス]]は[[急性期]]に[[水痘]]を引き起こすが、水痘から回復した後、ウイルスは神経細胞内で何年も休眠し、後に[[帯状疱疹]](帯状疱疹)を引き起こすことがある。

==== 急性疾患・急性期{{Anchors|急性疾患|急性期}} ====
'''急性疾患'''とは、[[風邪]]のような短期間の疾患である。急性期とは、症状が急激に現れる時期のことをいう<ref>{{Cite web |title=急性期 {{!}} 看護師の用語辞典 {{!}} 看護roo![カンゴルー] |url=https://www.kango-roo.com/word/3685 |website=看護roo! |access-date=2024-10-04 |language=ja}}</ref>。急性とは、{{仮リンク|劇症|en|fulminant|redirect=1|label=劇症(fulminant)}}を意味することもある。

==== 慢性疾患・慢性期{{Anchors|慢性疾患|慢性期}} ====
[[慢性疾患]]とは、長期に渡って持続する病気であり、少なくとも6ヶ月は続くことが多いが、天寿を全うするまで続くと予想される病気も含まれる。その期間中、常に発症していることもあれば、[[寛解]]期に入り、定期的に{{仮リンク|再発|en|relapse|redirect=1}}することもある。慢性疾患は安定している({{Lang-en-short|stable}}、必ずしも悪化しない)こともあれば、{{仮リンク|進行性疾患|en|Progressive disease|redirect=1|label=進行性}}のこともある。慢性疾患の中には、[[完治]]するものもある。ほとんどの慢性疾患は、完治しないとしても、有益な治療はできる。

==== 臨床疾患・Clinical disease{{Anchors|臨床疾患|臨床病期|clinical disease}} ====
Clinical diseaseとは認識可能な[[症状と徴候|症状や徴候]]がある疾患である<ref>{{Cite web |url=https://www.collinsdictionary.com/dictionary/english/clinical-disease |title=clinical disease |access-date=2024-10-04 |publisher=Collins}}</ref>。言い換えれば、その病気に特徴的な徴候や症状が現れる[[病期]]である<ref>{{Cite web |url=http://medical-dictionary.thefreedictionary.com/clinical+disease |title=clinical disease |via=medical-dictionary.thefreedictionary.com |work=Mosby's Medical Dictionary |edition=9th |year=2009 |publisher=Elsevier |quote=a stage in the history of a pathological condition that begins with anatomical or physiological changes that are sufficient to produce recognizable signs and symptoms of a disease |access-date=6 November 2017 |archive-date=23 June 2017 |archive-url=https://web.archive.org/web/20170623204049/http://medical-dictionary.thefreedictionary.com/clinical+disease |url-status=live}}</ref>。例えば、[[AIDS]]は[[HIV]]感染の臨床病期である。

==== 治癒・寛解 ====
[[治癒]]とは、病状が終息すること、あるいは終息する可能性が非常に高い治療のことで、[[治癒|寛解]]とは、症状が一時的に消失することを指す。不治の病の場合、完全寛解が最善の結果である。

==== {{Anchors|再燃|増悪}}再燃・増悪 ====
'''再燃'''(flare-up、recurrence)とは、症状の再発またはより重篤な症状の発現を指す<ref name="Shiel 2019">{{Cite web |last=Shiel |first=William C. Jr. |title=Definition of Flare |website=MedicineNet |date=20 June 2019 |url=https://www.medicinenet.com/script/main/art.asp?articlekey=156154 |access-date=21 December 2019 |archive-date=23 January 2020 |archive-url=https://web.archive.org/web/20200123145648/https://www.medicinenet.com/script/main/art.asp?articlekey=156154 |url-status=live}}</ref>'''。増悪'''(Exacerbation)とは、病気が悪化したり、症状が増したりすることである<ref>{{cite book |title=Dorland's Illustrated Medical Dictionary |date=2000 |isbn=0721662544 |page=[https://archive.org/details/trent_0116404640520/page/630 630] |edition=29th |url=https://archive.org/details/trent_0116404640520/page/630}}</ref>。

==== 進行性疾患 ====
{{仮リンク|進行性疾患|en|Progressive disease|redirect=1}}とは、典型的な自然経過として、[[死亡]]、重篤な衰弱、または臓器不全が起こるまで悪化していく疾患である。進行が緩徐な疾患は[[慢性疾患]]でもあり、多くは[[変性疾患]]でもある。進行性疾患の反対は、'''stable disease'''であり、改善も悪化もしない状態である。

==== {{Visible anchor|難治性疾患|}} ====
:{{Seealso|特定疾患}}
難治性疾患(refractory disease)とは、治療に抵抗する疾患のことで、特に個々の症例が、問題となっている特定の疾患に対して通常以上に治療に抵抗することをいう。例えば、{{仮リンク|難治性高血圧|en|refractory hypertension|redirect=1}}。

==== Subclinical disease ====
{{仮リンク|無症候性|en|asymptomatic|redirect=1}}疾患、''silent disease''とも呼ばれる。これは、疾患において、最初に症状が現れる前の段階である<ref>{{Cite web |url=http://medical-dictionary.thefreedictionary.com/subclinical |title=definition of subclinical |via={{仮リンク|The Free Dictionary|en|The Free Dictionary|redirect=1|label=The Free Dictionary}} |access-date=6 November 2017 |archive-date=28 September 2017 |archive-url=https://web.archive.org/web/20170928050707/http://medical-dictionary.thefreedictionary.com/subclinical |url-status=live}}</ref>。

==== 終末期 ====
{{Main|ターミナルケア}}
終末期医療に関するガイドラインによれば、疾患の終末期とは、以下の3つの条件を満たす場合とされている<ref>{{Cite web |url=https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/12/dl/s1224-14f.pdf |title=終末期医療に関するガイドライン |access-date=2024-10-04 |publisher=[[厚生労働省]] |format=PDF}}</ref>。
{{Quote|1.医師が客観的な情報を基に、治療により病気の回復が期待できないと判断すること<br>
2.患者が意識や判断力を失った場合を除き、患者・家族・医師・看護師等の関係者が納得すること<br>
3.患者・家族・医師・看護師等の関係者が死を予測し対応を考えること}}
:

==== 回復期 ====
:{{See also|{{仮リンク|回復期|en|Convalescence|redirect=1}}|治癒}}
回復期とは、物理的(組織、臓器など)な修復や、損傷の原因となる過程が治癒した後の健康的な機能の再開する時期を指す。

=== 範囲 ===
[[ファイル:Poison ivy rash.JPG|175px|thumb|alt=skin rash on the leg|この発疹は体の一部にしか影響しないので、限局性疾患である。]]

==== 限局性疾患 ====
:{{仮リンク|限局性疾患|en|localized disease|redirect=1}}とは、[[水虫]]や目の[[感染症]]など、体の一部分だけに影響を及ぼす病気のことである。

==== 播種性疾患 ====
:{{仮リンク|播種性疾患|en|disseminated disease|redirect=1}}とは身体の他の部位に広がるものである。がんは通常、[[転移 (医学)|転移]]性疾患と呼ばれる。

==== 全身性疾患 ====
:{{仮リンク|全身性疾患|en|systemic disease|redirect=1}}とは、 [[インフルエンザ]]や[[高血圧]]など、全身に影響を及ぼす病気である。


== 分類 ==
== 分類 ==
{{Main|{{仮リンク|疾病分類学|en|Nosology|redirect=1}}|{{仮リンク|分類 (医学)|en|Medical classification|redirect=1}}|疾病及び関連保健問題の国際統計分類}}
病気を[[分類]]することは容易ではなく、またその分類は医学の変化に伴い頻繁に変更される。医学においては、一般に以下のような観点によって病気は分類される。
病気は、原因、{{仮リンク|病因|en|pathogenesis|redirect=1}}(病気の原因となる{{仮リンク|機序|en|mechanism (biology)|redirect=1}})、または[[症状]]によって分類される。あるいは、冒されている{{仮リンク|臓器系|en|organ system|redirect=1}}によって分類することもできる。しかし、多くの病気は複数の臓器に影響を及ぼすので、これはしばしば複雑である。


特に原因や病態が明らかでない場合、疾病を明確に定義・分類できないことが多い。そのため、診断用語はしばしば症状ないしは[[症候群]]を反映しているにすぎない。
* [[精神疾患]]か[[器質的疾患]]([[生体組織]]自体の異常による疾患)か機能的疾患(生体組織の働き方の異常による疾患)による分類
* [[病巣]]の局在による分類([[肝臓]]の疾患、[[心臓]]の疾患など)
* 原因による分類([[感染]]性、[[心因性疾患|心因性]]、[[自己免疫]]性、[[医原病]]など)
* [[病理]]的所見からの分類(良性、[[悪性]]、[[肉芽腫性]]など)
* 進行の様相による分類(急性、慢性、[[劇症]]、一過性、発作性など)


古典的なヒト疾患の分類は、病理学的分析と臨床症候との間の観察された相関から派生したものである。現在では、原因がわかっている場合は、その原因によって分類することが好ましい<ref>{{Cite journal |last1=Loscalzo |first1=Joseph |last2=Kohane |first2=Isaac |last3=Barabasi |first3=Albert-Laszlo |date=2007 |title=Human disease classification in the postgenomic era: A complex systems approach to human pathobiology |journal=Molecular Systems Biology |language=en |volume=3 |issue=124 |page=124 |doi=10.1038/msb4100163 |issn=1744-4292 |pmc=1948102 |pmid=17625512}}</ref>。
===医療の要・不要による分類===
また、次のような分類が提唱されることもある<ref name="9wari_1">{{Cite book|和書|author=岡本裕|year=2009|title=9割の病気は自分で治せる|chapter=はじめに~第1章|pages=pp.1-46|publisher=中経出版}}</ref>。
* カテゴリー1 : 医者がかかわってもかかわらなくても治癒する病気 ([[自然治癒力]]や本人の努力で治癒するもの)<ref name="9wari_1" />
* カテゴリー2 : 医者がかかわることによってはじめて治癒する病気<ref name="9wari_1" /> 
* カテゴリー3 : 医者がかかわってもかかわらなくても治癒しない病気<ref name="9wari_1" />


今日では、原因がわかっている場合は、その原因によって分類することが好ましいとされている。これは定期的に更新されている。2024年時点の最新版は[[疾病及び関連保健問題の国際統計分類]]の第11版、すなわち{{仮リンク|ICD-11|en|ICD-11|redirect=1}}である。
開業医や市中病院の医師が日常の診療で遭遇する「疾病」のほとんどは、上記で言えばカテゴリー1に属する<ref name="9wari_1" />(すなわち、医者・医療者がかかわらなくても治癒する病気である)。その比率は70〜90%ほどであるという。著者の岡本裕医師が実際に計数してみると95%がカテゴリー1だったという<ref name="9wari_1" />。


== 原因 ==
カテゴリー3に分類される病気、つまり「不治の病」もまだまだ多い<ref name="9wari_1" />。(例えば[[神経変性疾患]]、[[神経機能障害]]・・等々はそれに分類される)
病気は様々な要因によって引き起こされる可能性があり、[[後天性|後天的]]なものと[[先天的]]なものがある。 [[微生物]]、遺伝、環境、あるいはこれらの組み合わせが、病的状態を引き起こす可能性がある<ref>{{Cite web |title=Human disease – Pathogenesis, Etiology, Resistance, and Immunity {{!}} Britannica |url=https://www.britannica.com/science/human-disease/The-causes-of-disease |access-date=2023-05-25 |website=britannica.com |language=en |archive-date=26 May 2023 |archive-url=https://web.archive.org/web/20230526022441/https://www.britannica.com/science/human-disease/The-causes-of-disease |url-status=live }}</ref>。


[[インフルエンザ]]など一部の病気だけが伝染性で、一般に感染力があると考えられている。これらの疾患の原因となる微生物は病原体として知られ、[[細菌]]、[[ウイルス]]、[[原虫]]、[[菌類|真菌]]などの種類がある。感染症は、例えば、表面に付着した感染性物質との手から口への接触、[[媒介者|昆虫や他の保菌者]]に咬まれること、汚染された水や食物(しばしば[[糞便]]汚染を介して)などによって感染する<ref>{{Cite journal |last1=Knappett |first1=Peter S.K. |last2=Escamilla |first2=Veronica |last3=Layton |first3=Alice |last4=McKay |first4=Larry D. |last5=Emch |first5=Michael |last6=Williams |first6=Daniel E. |last7=Huq |first7=R. |last8=Alam |first8=J. |last9=Farhana |first9=Labony |last10=Mailloux |first10=Brian J. |last11=Ferguson |first11=Andy |last12=Sayler |first12=Gary S. |last13=Ahmed |first13=Kazi M. |last14=van Geen |first14=Alexander |date=2011-08-01 |title=Impact of population and latrines on fecal contamination of ponds in rural Bangladesh |journal=Science of the Total Environment |language=en |volume=409 |issue=17 |pages=3174–3182 |doi=10.1016/j.scitotenv.2011.04.043 |pmc=3150537 |pmid=21632095|bibcode=2011ScTEn.409.3174K }}</ref>。また、[[性感染症]]もある。人から人へ感染しにくい微生物が関与している場合もあれば、適切な栄養摂取やその他の[[生活習慣]]の改善によって予防・改善できる病気もある。
(カテゴリー1と2の病気については)病気にも ①当人が自分の力で治すことができるもの、と ②自然治癒力も及ばず、医療従事者と連携をとり治癒をはかるとよいもの、の2種類があるということである<ref name="9wari_1" />。①の当人が自分の力で治すことができる病気には、
[[高血圧]]<ref name="TodaysTherapy339">
ただし遺伝的背景と生活習慣が原因となる[[本態性高血圧症]]は高血圧の80〜90%であって、残りの10〜20%は高血圧の基礎疾患が明らかな二次性高血圧症である。二次性高血圧症では基礎疾患の早期発見・早期治療が重要である。{{Cite book|和書|year=2011|title=今日の治療指針2011年版|pages=pp.339|publisher=医学書院}}</ref>、[[糖尿病]]、[[高脂血症]]、[[肥満]]病、[[痛風]]、[[便秘]]症、[[不眠症]]<ref name="TodaysDiagnosis132">不眠のなかには、実は本当の原因として、周期性四肢運動障害、むずむず脚症候群、概日リズム睡眠障害、うつ病などが隠れている場合があるから、鑑別診断が重要である。{{Cite book|和書|year=2010|title=今日の診断指針第6版|pages=pp.339|publisher=医学書院}}</ref>、[[自律神経失調症]]・・・などが挙げられる。


ほとんどの[[悪性腫瘍|がん]]、[[心臓病]]、精神障害などは{{仮リンク|非感染性疾患|en|non-infectious disease|redirect=1}}である({{仮リンク|伝染性のがん|en|Infectious cancer|redirect=1}}もある)。多くの非感染性疾患は、部分的または完全な遺伝的基盤を持っており([[遺伝子疾患]]を参照)、そのため世代間で伝播する可能性がある。
== 病気と健康 ==
病気の対義語は、一般に'''[[健康]]'''であると考えられている。


[[健康の社会的決定要因]]とは、人々の健康を決定する、人々が生活する社会的条件のことである。疾病は一般的に、社会的、経済的、政治的、{{仮リンク|環境疾患|en|Environmental disease|redirect=1|label=環境}}に関連している<ref>{{Cite web |title=Social determinants of health |url=https://www.who.int/health-topics/social-determinants-of-health |access-date=2023-05-25 |website=www.who.int |language=en |archive-date=1 November 2022 |archive-url=https://web.archive.org/web/20221101201612/https://www.who.int/health-topics/social-determinants-of-health |url-status=live }}</ref>。健康の社会的決定要因は、{{仮リンク|カナダ公衆衛生庁|en|Public Health Agency of Canada|redirect=1}}や[[世界保健機関]]など、いくつかの保健機関によって、集団的および個人的な幸福([[ウェルビーイング|ウェルービイング]])に大きな影響を及ぼすと認識されている。世界保健機関(WHO)の社会的決定要因評議会も、{{仮リンク|貧困における健康の社会的決定要因|en|Social determinants of health in poverty|redirect=1}}を認識している。
[[WHO]](世界保健機関)は健康を次のように定義している。<blockquote>身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態であり、たんに病気あるいは虚弱でないことではない</blockquote>


病気の原因がよく理解されていない場合、社会はその病気を神話化したり、その文化が悪とみなすものの[[メタファー]]や象徴として使ったりする傾向がある。例えば、1882年に[[結核]]の原因が細菌であることが発見されるまで、専門家たちはこの病気を、遺伝、[[座りがちなライフスタイル]]、[[抑うつ]]気分、セックスや贅沢な食事、アルコールへの耽溺など、当時の[[社会悪]]であったものと様々に決めつけていた<ref>{{Cite book |author=Olson, James Stuart |title=Bathsheba's breast: women, cancer & history |publisher=The Johns Hopkins University Press |location=Baltimore |year=2002 |pages=[https://archive.org/details/bathshebasbreast00olso/page/168 168–70] |isbn=978-0-8018-6936-5 |url=https://archive.org/details/bathshebasbreast00olso/page/168}}</ref>。
[[西洋医学]]風の用語で言えば、健康というのは[[恒常性]]が健全に保たれている状態、と言い換えることも可能であろう<ref name="9wari_3">{{Cite book|和書|author=岡本裕|year=2009|title=9割の病気は自分で治せる|chapter=第3章|pages=pp.121-138|publisher=中経出版}}</ref>。そういう観点からは、病気(疾病)というのは、恒常性が崩れてしまって元に戻らなくなっているか戻りづらくなっている状態だと考えると理解しやすい<ref name="9wari_3" />。


病気が[[病原体]]によって引き起こされる場合(例えば、マラリアが[[マラリア原虫]]によって引き起こされる場合)、病原体(病気の原因)を病気そのものと混同してはならない<ref name=":4" />。例えば、[[ウエストナイルウイルス]]は、[[ウエストナイル熱]]も、ウエストナイル脳炎も、ウエストナイル髄膜炎も引き起こす<ref name=":4" />。[[疫学]]における基本的定義の誤用は、{{仮リンク|科学文献|en|Scientific literature|redirect=1}}で頻繁に見られる<ref name=":4">{{Cite journal |last1=Marcantonio |first1=Matteo |last2=Pascoe |first2=Emily |last3=Baldacchino |first3=Frederic |date=January 2017 |title=Sometimes Scientists Get the Flu. Wrong…! |url=http://www.cell.com/trends/parasitology/abstract/S1471-4922(16)30188-X |journal=Trends in Parasitology |volume=33 |issue=1 |pages=7–9 |doi=10.1016/j.pt.2016.10.005 |pmid=27856180}}</ref>
さらに恒常性という概念を中国伝統医学の「未病」という用語で把握しなおしてみると、病気や健康という概念がより分かりやすくなる<ref name="9wari_3" />。


=== 未病 ===
=== 原因の種類 ===
[[ファイル:Walking the dog 7th Brigade Park Chermside P1040698.jpg|alt=A child rides a bicycle. An adult and a child walk a dog along a path in a green park..|thumb|[[自転車]]や[[ウォーキング]]などの定期的な[[フィジカルトレーニング|運動]]は、[[生活習慣病]]のリスクを減らす。]]{{Seealso|感染経路}}
[[伝統中国医学]](中医)で「未病」と診断されるのは、検査で明らかな異常がなく、明らかな症状も無いが、少し調子の悪い状態で、病気になる前段階の、心身の微妙な変化を指している<ref name="9wari_3" />。漢文訓読調でいえば「いまだやまいにあらざる」となる。「未病気」をキーワードにして、体の状態を分類してみると次のようになる。


==== 空気感染 ====
*状態 1 :恒常性が健全に保たれている状態・・・健康<ref name="9wari_3" />
{{仮リンク|空気感染|en|Airborne transmission|redirect=1|label=空気感染症}}とは、病原体によって引き起こされ、空気を通して感染する病気のことである<ref>{{Cite web |title=Disease information |url=https://www.who.int/travel-advice/disease-information |access-date=2024-02-14 |website=World Health Organization |language=en}}</ref>。
*状態 2 :恒常性が崩れかけている状態・・・未病<ref name="9wari_3" />
*状態 3 :恒常性が崩れ、そのままでは元に戻らなくなっている状態・・・病気<ref name="9wari_3" />


==== 食物 ====
これらの間にははっきりした境界はなく、連続的に移行している<ref name="9wari_3" />。中国には昔から「上工治未病」(上工は未病を治す)という言葉がある。つまり良い医者というのは、発病してからではなく、未病の段階で異常を察知し対処するものだ、ということである<ref name="9wari_3" />。一方、[[西洋医学]]では、未病を見過ごしてしまい、発病してからはじめて治療に取り掛かる<ref name="9wari_3" />。病気を火事に喩えて言えば、中国医学が火事になりそうな危険な場所をあらかじめ点検したり、燃えそうな建材をあらかじめ不燃材にして無事に防ぐのに対し、西洋医学では火事が起きてしまってから対処しよう、という考え方である。確かに一旦発火してしまえば、とりあえず燃え盛る火の勢いを抑えなければならないのではあるが、それよりも火事の防止や再発を防ぐことも非常に大切であるように、西洋医学のように発病するまで放置しておいて発病してから対処するという考え方は得策とは言えず、中国伝統医学のように、未病気の段階でそれを的確に察知し、自己治癒力を高めることで早めに対処しておこうとする考え方のほうが適切であり重要である<ref name="9wari_3" />。
[[食中毒]]とは、病原性細菌、毒素、ウイルス、プリオン、寄生虫に汚染された食品を摂取した結果生じる病気のことである<ref>{{Cite journal |last1=Mead |first1=Paul S. |last2=Slutsker |first2=Laurence |last3=Dietz |first3=Vance |last4=McCaig |first4=Linda F. |last5=Bresee |first5=Joseph S. |last6=Shapiro |first6=Craig |last7=Griffin |first7=Patricia M. |last8=Tauxe |first8=Robert V. |date=October 1999 |title=Food-Related Illness and Death in the United States |publisher=CDC |doi-access=free |journal=Emerging Infectious Diseases |volume=5 |issue=5 |pages=607–625 |doi=10.3201/eid0505.990502 |issn=1080-6040 |pmc=2627714 |pmid=10511517 }}</ref>。


==== 感染 ====
戦争による[[負傷]]で大量の死者が出ることが続いた20世紀前半には西洋医学が目覚しい進展を見せ、[[抗生物質]]や[[ワクチン]]が開発され生命を脅かす感染症などを激減させることに成功はした。だがその後、疾患の状況はすっかり様変わりし、[[生活習慣]]や生活環境に起因した[[心疾患]]、[[脳血管疾患]]、[[アレルギー]]疾患、[[メタボリックシンドローム]]、[[膠原病]]などの慢性疾患が急増し重大な課題となっている<ref name="9wari_3" />。これらの慢性疾患は西洋医学的な治療法(その多くが[[対症療法]])だけでは限界があり、根本治癒にはどうしても、生活習慣を是正しつつ[[自己治癒力]]を高めることが不可欠となるので、心と体を一体としてとらえ全体のバランスとリズムをとりもどし病を癒す、と考え、心身一如の思想に立つ[[東洋医学]]の考え方が必須となる<ref name="9wari_3" />。
感染性疾患とは、個々の宿主生物に対する病原体の感染、存在、増殖に起因する、臨床的に明らかな症状(すなわち、疾患に特徴的な医学的[[症状と徴候|徴候または症状]])からなるものである<ref>{{Citation |last1=van Seventer |first1=Jean Maguire |title=Principles of Infectious Diseases: Transmission, Diagnosis, Prevention, and Control |date=2017 |encyclopedia=International Encyclopedia of Public Health |pages=22–39 |publisher=Elsevier |language=en |doi=10.1016/b978-0-12-803678-5.00516-6 |isbn=978-0-12-803708-9 |pmc=7150340 |last2=Hochberg |first2=Natasha S. |doi-access=free }}</ref>。このカテゴリーに含まれるのは、[[伝染病]]-インフルエンザや風邪のような、一般的に人から人へと広がる感染症-と、[[感染症]]-人から人へと広がる可能性はあるが、必ずしも日常的な接触によって広がるとは限らない疾患-である。


==== 生活習慣 ====
== 周辺の語の概念 ==
{{Main|生活習慣病}}
しばしば病気は、「[[症候群]]」「疾患」「疾病(しっぺい)」「[[障害#医学用語としての「障害(Lesion)」|障害]]」「[[怪我]]」「[[変異]]」等の語との概念上のオーバーラップがある。
[[生活習慣病]]とは、国がより工業化され、人々がより長生きするにつれて頻度が増加すると考えられるあらゆる病気のことで、特に、[[危険因子]]が、[[座りがちなライフスタイル]]や、精製[[炭水化物]]、[[トランス脂肪酸]]、アルコール飲料などの不健康な食品を多く含む食事のような行動の選択を含む場合である<ref>{{Cite web |last=Al-Maskari |first=Fatma |title=Lifestyle Diseases: An Economic Burden on the Health Services |url=https://www.un.org/en/chronicle/article/lifestyle-diseases-economic-burden-health-services |access-date=2024-02-14 |website=UN Chronicle |publisher=United Nations |language=en}}</ref>。


==== 非感染性疾患 ====
病気の存在を前提として、その患者に共通する特徴のことを'''病態'''(びょうたい)あるいは'''病像'''(びょうぞう)という。'''病状'''(びょうじょう)は、ある特定の患者についてその臨床経過を指すことが多い。これらの単語はしばしば混合されて使われる。
{{仮リンク|非感染性疾患|en|non-infectious disease|redirect=1}}とは、伝染性のない病状または疾患のことである<ref>{{Cite web |title=Non-communicable diseases |url=https://www.ifrc.org/our-work/health-and-care/community-health/non-communicable-diseases |website=IFRC |url-status=live |archive-url=https://web.archive.org/web/20240516050902/https://www.ifrc.org/our-work/health-and-care/community-health/non-communicable-diseases |archive-date=May 16, 2024 |access-date=2024-09-28}}</ref>。非感染性疾患は、人から人へ直接伝播することはない。 心臓病や癌は、ヒトにおける非感染性疾患の例である<ref>{{Cite web |title=Non communicable diseases |url=https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/noncommunicable-diseases |access-date=2024-02-14 |website=World Health Organization |date=16 September 2023 |language=en}}</ref>。


== 予防 ==
=== 病気と「疾患」・「疾病」 ===
{{Main|予防医学}}多くの病気や障害は、さまざまな手段で予防することができる。[[衛生]]管理、適切な[[栄養]]摂取、適切な[[フィジカルトレーニング|運動]]、[[予防接種]]、その他の[[セルフケア]]などの[[公衆衛生]]学的手段である。
医学では、「病気」という単語はあまり使用されず、代わりにより厳密な'''疾患'''(しっかん)、'''疾病'''(しっぺい)を使うことが多い。「病気」という語では内因性の疾患しか含まないような印象を受けることがあるためである(事故による[[骨折]]は、一般的には病気とは言わないことが多い)。なお、精神医学用語の「疾患」は「[[障害#精神医学用語としての「障害(Disorder)」|障害(disorder)]]」という概念であり、医学用語の「疾患(''disease)''」とは異なる概念である。


== 治療 ==
英語の ''disease''(疾患、疾病)は ''sickness''(軽い病気)、''illness''(病気)の原因を示す語で、病名と症状が明らかな具体的な病気に用いられる。''sickness''、''illness'' は"病気になっている状態"を指し、''disease'' は感染などによる体内機能の異常を意味する。一般には、熱や風邪など生活上の病気には用いられず、伝染病や癌など深刻な病気に用いられ、命に関わるようなニュアンスがある。
{{Main|治療}}
[[治療]](therapy)とは、病気やその他の健康問題を治したり改善したりするための努力である。 [[心理学]]においては、この用語は特に[[心理療法]]を指すこともある。治療の一般的な方法には、[[薬物療法]]、[[手術]]、[[医療機器]]、[[セルフケア]]などがある。 治療は、組織的な医療システムによって行われることもあれば、患者や家族によって独自に行われることもある。


[[予防医療]]とは、怪我や病気、疾患を未然に防ぐ方法である。 治療は、医学的な問題がすでに始まってから適用されるものである。治療は問題を改善または除去しようとするものであるが、特に[[慢性疾患]]の場合、治療が永久的な治癒をもたらすとは限らない。[[治癒]](cure)とは通常、健康の完全な回復を意味し、治療(treatment)とは健康の改善や怪我からの回復につながるプロセスや処置を指す<ref>{{Cite web |title='Treatment' vs. 'Cure' |url=https://www.merriam-webster.com/grammar/treatment-vs-cure-difference#:~:text='Cure'&text=Cure%20usually%20refers%20to%20a,or%20the%20recovery%20from%20injury. |website=www.merriam-webster.com |access-date=2024-10-04 |language=en}}</ref>。完全に治癒させることができない病気の多くは、まだ治療は可能である。[[疼痛管理]](疼痛医学とも呼ばれる)とは、痛みを和らげ、痛みとともに生きる人々の生活の質を向上させるために、[[学際的]]なアプローチを用いる医学の一分野である<ref>{{Cite book |title=Chronic Pain Management: The Essentials |author1=Hardy, Paul A. |author2=Hardy, Paul A. J. |page=10 |year=1997 |publisher=Cambridge University Press |isbn=978-1-900151-85-6 |url=https://books.google.com/books?id=EtZ-4eb_aDUC&pg=PA10 |oclc=36881282 |url-status=live |archive-url=https://web.archive.org/web/20151003091442/https://books.google.com/books?id=EtZ-4eb_aDUC&pg=PA10 |archive-date=3 October 2015 }}</ref>。
=== 疾患・疾病・病気と「症候群」 ===
{{Main|症候群}}
'''症候群'''(しょうこうぐん)とは、原因不明ながら共通の病態(自他覚症状・[[検査]]所見・[[画像]]所見など)を示す患者が多い場合に、そのような症状の集まりにとりあえず名をつけ、扱いやすくしたものである。


{{Main|疼痛管理}}
人名を冠した症候群の名前も数多く、原因が判明した場合にはその名前が変更されたり、時には他の病名と統合されたりすることがある。一方で原因判明後も長い間そのまま慣用的に使われている「症候群」は多く、逆に「〜病」の名を冠する原因不明の疾患も多くあり、実際には明確な区別がなされていないことが多い。


[[救急疾患]]の治療は、多くの場合、[[救急科]]や、[[救急隊]]を通じて、迅速に提供されなければならない。
精神科領域においては、扱う疾患のほぼ全てが症候群と呼ぶべき疾患であるため、利便性の問題から症候群とは呼ばず○◯病・○○症と言った語を用いる。


{{Main|救急医療|救急隊}}
=== 疾患・疾病・病気と「症状」 ===
'''症状'''(しょうじょう、symptom)は、病気によって患者の心身に現れる様々な個別の状態変化、あるいは正常からの変異のことである。病気にかかることを'''罹患'''(りかん)、症状が現れることを'''発症'''(はっしょう)または'''発病'''(はつびょう)という。患者本人によって主観的に感じられるものを'''[[自覚症状]]'''(じかくしょうじょう)、周囲によって客観的に感じ取られるものを'''他覚症状'''(たかくしょうじょう)と呼んで区別する。単に「症状」といった場合、自覚症状のことのみを指す場合があり、この際は他覚症状のことを'''[[所見]]'''(しょけん)、'''徴候'''(ちょうこう)と呼んで区別する。


== 疫学 ==
通常、「疾患」と「症状」は本来大きく違う概念だと考えられている。つまり、疾患が先にあって、それを受けて「症状」が生じる、というものである。しかし日常診療の場では、症状が確認されても、その症状を来たす原因がよく分からない場合が多く、この場合「症候群」での例と同様に、症状名と病名との境目が曖昧になることがある。
{{Main|疫学|公衆衛生}}
[[疫学]]とは、病気を引き起こしたり、助長したりする[[要因]]についての学問である。例えば、ある種の病気は、特定の地域、特定の遺伝的または社会経済的特徴を持つ人々の間、あるいは1年の特定の時期に多く見られる。


疫学は[[公衆衛生|公衆衛生学]]の基礎となる方法論であり、疾患の{{仮リンク|危険因子|en|Risk factor (epidemiology)|redirect=1}}を特定するためのエビデンスに基づく医療において高く評価されている。伝染性疾患および非伝染性疾患の研究において、[[疫学者]]の仕事は、[[アウトブレイク]]の調査から、仮説を検証するための統計モデルの開発や査読付き[[学術雑誌|学術誌]]に投稿するための結果の文書化を含む研究デザイン、データ収集、分析まで多岐にわたる。疫学者はまた、ある集団における疾病の相互作用({{仮リンク|シンデミック|en|syndemic|redirect=1|label=シンデミック(syndemic)}}として知られる状態)も研究する。疫学は、[[生物学]](病気のプロセスをよりよく理解するため)、[[生物統計学]](現在利用可能な生の情報)、[[地理情報科学]](データを保存し、病気のパターンをマッピングするため)、[[社会科学]]分野(近縁および遠縁の危険因子をよりよく理解するため)など、他の多くの科学分野に立脚している。疫学は、予防の指針となるだけでなく、原因を特定するのにも役立つ。
例えば、[[脱水]]という病名はないが、脱水が見られたら原疾患はさておき脱水の診断の元に治療を行うことがある。[[近視]]は症状の名前としても病名としても使われる。[[本態性高血圧]]という病名は、別の基礎疾患があって二次的に高血圧となっているものを除いて、原因不明で[[高血圧]]という「症状」を起こしているものをまとめて含めるための「病名」である。


疫学は疾病を研究するにあたり、その定義付けという課題に直面する。特にあまり理解されていない疾患については、グループによって定義が大きく異なることがある。合意された定義がなければ、研究者によって症例数や疾患の特徴が異なる可能性がある<ref>{{Cite news |url=https://www.nytimes.com/2011/03/08/health/research/08fatigue.html |title=Defining an illness is fodder for debate |author=Tuller, David |newspaper=The New York Times |date=4 March 2011 |url-status=live |archive-url=https://web.archive.org/web/20170103054656/http://www.nytimes.com/2011/03/08/health/research/08fatigue.html |archive-date=3 January 2017 }}</ref>。
ある臨床像が、原疾患に見られる症状のひとつであるのか、あるいは合併症として出現した別の独立した疾患なのかについては、医学の教科書を執筆する際の問題となるだけではなく、保険[[診療報酬]]や統計にも関わるため、軽視できない問題となる。


罹患率データベースの中には、国レベル<ref>{{Cite web |url=http://www.aihw.gov.au/national-hospital-morbidity-database/ |title=National Hospital Morbidity Database |website=aihw.gov.au |publisher={{仮リンク|Australian Institute of Health and Welfare|en|Australian Institute of Health and Welfare|redirect=1|label=Australian Institute of Health and Welfare}} | access-date=11 July 2013 |url-status=dead |archive-url=https://web.archive.org/web/20130813000437/http://aihw.gov.au/national-hospital-morbidity-database/ |archive-date=13 August 2013 }}</ref><ref>{{Cite web |url=http://www23.statcan.gc.ca/imdb/p2SV.pl?Function=getSurvey&SDDS=3203&Item_Id=1724 |title=Hospital Morbidity Database (HMDB) |date=24 October 2007 |work=statcan.gc.ca |publisher=Statistics Canada |access-date=21 September 2015 |url-status=live |archive-url=https://web.archive.org/web/20160630153315/http://www23.statcan.gc.ca/imdb/p2SV.pl?Function=getSurvey&SDDS=3203&Item_Id=1724 |archive-date=30 June 2016 }}</ref>や、より大規模なもの(European Hospital Morbidity Database (HMDB<ref>{{Cite web |url=http://data.euro.who.int/hmdb/ |title=European Hospital Morbidity Database |archive-url=https://web.archive.org/web/20130902224516/http://data.euro.who.int/hmdb/ |archive-date=2 September 2013 |website=who.int |publisher=World Health Organization |access-date=2013-09-02 |url-status=dead |url-status-date=2024-09-28}}</ref>)など)には、詳細な診断名、年齢、性別ごとの病院退院データが含まれていることがある。欧州HMDBデータは欧州各国から世界保健機関(WHO)欧州地域事務局に提出された。
症状を研究する医学の一分野に、[[症候学]]がある。


=== 疾病負荷 ===
<!--
{{Main|疾病負荷}}
[[Wikipedia:独自の研究]]
疾病負荷とは、経済的コスト、[[死亡率]]、[[罹患率]]、その他の指標によって測定される、ある地域における健康問題の影響である。


疾病が人々に与える負担を定量化するために用いられる指標はいくつかある。{{仮リンク|損失生存可能年数|en|years of potential life lost|redirect=1|label=損失生存可能年数(years of potential life lost: YPLL)}}は、病気によってその人の人生が何年短くなったかを単純に推定したものである。例えば、ある病気が原因で65歳で死亡した人が、その病気がなければ80歳まで生きられたとすれば、その病気によって15年の潜在的寿命が失われたことになる。2004年に[[世界保健機関]](WHO)は、早死によって失われているYPLLは9億3,200万年と計算した<ref name="WHODALY" />。YPLLの測定では、人が死ぬ前にどの程度の障害を負っているかは考慮されないため、突然死した人と、何十年も病気で苦しんだ末に同じ年齢で死んだ人を同等に扱う。
{{要出典範囲|
== 病気利得 ==
「病気でいることによって、本人が得られる利得。周囲の気遣いを受けられる、弱者・被害者でいたり、他者に依存できたりする。
-->
<!-- 


[[質調整生存年]](QALY)と[[障害調整生命年|障害調整生存年]](DALY)の指標は似ているが、対象が診断後に健康であったかどうかが考慮される。早死によって失われた年数に加え、これらの測定では病気で失われた年数の一部が加算される。YPLLとは異なり、これらの指標は、病気は重いが寿命は普通の人に課せられた負担を示す。 [[罹患率]]は高いが[[死亡率]]が低い病気は、DALYが高く、YPLLが低い。2004年、世界保健機関(WHO)は、病気や怪我によって失われた障害調整生存年数が15億年であると算出した<ref name="WHODALY">{{Cite web |publisher=World Health Organization |website=who.int |url=https://www.who.int/healthinfo/global_burden_disease/estimates_regional/en/index.html |title=Disease and injury regional estimates for 2004 |url-status=dead |archive-url=https://web.archive.org/web/20101224055121/http://www.who.int/healthinfo/global_burden_disease/estimates_regional/en/index.html |archive-date=24 December 2010 |access-date=2010-12-24}} Standard DALYs (3% discounting, age weights). Also [https://www.who.int/entity/healthinfo/global_burden_disease/DALY14_2004.xls DALY spreadsheet] and [https://www.who.int/entity/healthinfo/global_burden_disease/YLL14_2004.xls YLL spreadsheet].</ref>。先進国では、心臓病と脳卒中により、最も多くの生命が失われているが、[[大うつ病性障害]]のような精神障害は、病気によって失われる年数が最も多い。
独自の偏見による、あやしげな決めつけ。根拠があるなら客観的なデータ、大規模調査による統計の出典を示すべき。
{{要出典範囲|「たとえば、「あなたは病気でない」と言われて怒る者は、病気利得を得ようとする要素を持つ可能性が高い。|date=2014年5月}}{{要検証|date=2014年5月}}」???{{誰|date=2014年5月}}
-->
<!--
[[Wikipedia:独自の研究]]
百科辞典やリファレンスの【病気】という記事・項目でこういうことは書いてない。
特に「利得」という概念でひとつにまとめようとしているところが、独自の研究


{| class="wikitable sortable"
{{要出典範囲|
|-
=== 依存利得 ===
! 疾病分類
依存や嗜癖を続けることによって得られる利得。薬物依存症では麻薬・覚せい剤・大麻・タバコなどを繰り返し乱用し続けることによって、不快な禁断症状を刹那的に和らげることができる。さらに、依存している間は、依存による現実の害に直面して不安を感じなくて済み、刹那的であっても快楽をえられるなどの利得がある。[[依存症]]・[[嗜癖]]者の語る[[依存症#否認|否認]]は、依存利得を得る目的で行われる。
! scope="col" style="width:10%;" | 世界の全{{仮リンク|損失生存可能年数|en|years of potential life lost|redirect=1|label=YPLL}}<ref name="WHODALY" />
|date=2014年5月}}
! scope="col" style="width:10%;" | 世界の全[[DALY]]<ref name="WHODALY" />
-->
! scope="col" style="width:10%;" | ヨーロッパの全{{仮リンク|損失生存可能年数|en|years of potential life lost|redirect=1|label=YPLL}}<ref name="WHODALY" />
<!--
! scope="col" style="width:10%;" | ヨーロッパの[[DALY|全DALY]]<ref name="WHODALY" />
[[Wikipedia:独自の研究]]
! scope="col" style="width:10%;" | カナダの全{{仮リンク|損失生存可能年数|en|years of potential life lost|redirect=1|label=YPLL}}<ref name="WHODALY" />
病気の項目にこれを記述している出典は?
! scope="col" style="width:10%;" | 米国とカナダの全[[DALY]]<ref name="WHODALY" />
{{要出典|date=2014年5月}}
|-
=== 仮病・詐病 ===
| [[感染症]]および[[寄生虫病|寄生虫症]]、特に{{仮リンク|下気道感染|en|lower respiratory tract infection|redirect=1}}、[[下痢]]、[[エイズ]]、[[結核]]、[[マラリア]]
[[詐病|仮病・詐病]]によって、[[学校]]・[[仕事]]を休める、公的な[[補助金]]を得られる、などの[[利得]]を得られる。詐病による[[公務員]]の長期欠勤が批判を浴びたことがある。
| 37%
-->
| 26%
<!--
| 9%
[[Wikipedia:独自の研究]]
| 6%
【病気】の項目にこれを記述している出典は?
| 5%
| 3%
|-
| [[うつ病]]などの[[精神障害|精神疾患]]
| 2%
| 13%
| 3%
| 19%
| 5%
| 28%
|-
| [[外傷]]、特に[[交通事故]]
| 14%
| 12%
| 18%
| 13%
| 18%
| 10%
|-
| [[心血管疾患]]、主に[[心臓発作]]と[[脳卒中]]
| 14%
| 10%
| 35%
| 23%
| 26%
| 14%
|-
| [[早産]]、[[周産期死亡率|周産期死亡]]
| 11%
| 8%
| 4%
| 2%
| 3%
| 2%
|-
| [[悪性腫瘍]]
| 8%
| 5%
| 19%
| 11%
| 25%
| 13%
|}


=== 虚偽性障害 ===
== 社会と文化 ==
[[ファイル:Charles Mellin (attributed) - Portrait of a Gentleman - Google Art Project.jpg|thumb|upright|[[ルネサンス]]文化では、[[肥満]]は[[ステータスシンボル]]だった。「[[トスカーナ大公国|トスカーナ]]の将軍{{仮リンク|アレッサンドロ・デル・ボッロ|en|Alessandro del Borro|redirect=1}}」、{{仮リンク|シャルル・メラン|en|Charles Mellin|redirect=1}}作、1645年<ref>{{Cite web |url=http://www.cab.u-szeged.hu/cgfa/m/m-12.htm |first=Carol |last=Gerten-Jackson |title=The Tuscan General Alessandro del Borro |url-status=dead |archive-url=https://web.archive.org/web/20090502012818/http://www.cab.u-szeged.hu/cgfa/m/m-12.htm |archive-date=2 May 2009 |access-date=2009-05-02}}</ref>。]]
病人として大切にされるという病気利得を得るため、病状などについて虚偽を並べ立てる。[[精神疾患]]の一種。詳細は[[虚偽性障害]]を参照。
-->


== 病気と年中行事 ==
=== 社会 ===
{{Main|医療社会学|{{仮リンク|健康と病気の社会学|en|Sociology of health and illness|redirect=1}}}}
日本では古くは病気は[[鬼]]のせいだとか、[[キツネ]]の[[魂]]が人間に宿るためだとかと考えられていた。そのため病人が出ると、病気を治癒させるために祈祷師を呼んで[[お祓い]]をしてもらうということがあった。<br />
社会が病気にどのように反応するかは、[[医療社会学]]の主題である。
現代の日本でも[[年中行事]]として、病気をしないように(鬼が来ないように)[[節分]]に豆まきをする、端午の節句に菖蒲湯に入るなどといった習慣が残っている。


ある状態は、ある文化や時代では病気と見なされるかもしれないが、他の文化や時代ではそうとは限らない。例えば、[[肥満]]は富と豊かさを表すことがあり、飢饉がありやすい地域や[[エイズ|HIV/AIDS]]に深刻な打撃を受けた一部の地域では、[[ステータスシンボル]]である<ref name="HaslamJames">{{Cite journal |vauthors=Haslam DW, James WP |title=Obesity |journal=Lancet |volume=366 |issue=9492 |pages=1197–209 |year=2005 |pmid=16198769 |doi=10.1016/S0140-6736(05)67483-1 |s2cid=208791491}}</ref>。[[てんかん]]は、[[モン族 (Hmong)|モン族]]の間で霊的な賜物の兆候と考えられている<ref>{{Cite book |last=Fadiman |first=Anne |title=The spirit catches you and you fall down: a Hmong child, her American doctors, and the collision of two cultures |publisher=Farrar, Straus, and Giroux |location=New York |year=1997 |isbn=978-0-374-52564-4 |url=https://archive.org/details/spiritcatchesyou00fadi}}</ref>。
==出典、脚注==
<references/>


病気により、[[傷病手当金|傷病手当]]、[[休業]]、他人からの世話を受ける、など、特定の利益の社会的正当性が付与される。すなわち、病気の人は、{{仮リンク|病人役割|en|sick role|redirect=1|label=病人役割(sick role)}}と呼ばれる社会的役割を引き受ける。{{仮リンク|がんサバイバー|en|cancer survivor|redirect=1}}のような、[[悪性腫瘍|癌]]などの恐れられている病気に文化的に受け入れられる方法で反応する人は、公的および私的により高い[[社会的地位]]で尊敬されるかもしれない<ref>{{Cite book |author=Sulik, Gayle |title=Pink Ribbon Blues: How Breast Cancer Culture Undermines Women's Health |publisher=Oxford University Press |location=New York |year=2010 |isbn=978-0-19-974045-1}}</ref>。これらの利得と引き換えに、病人は治療を求め、再び回復するために働く義務があると考えられている。
== 参考文献 ==
*岡本裕『9割の病気は自分で治せる』 中経出版、2009年 ISBN 4806132772


{{Main|{{仮リンク|病人役割|en|sick role|redirect=1}}|がんサバイバー}}
== 関連項目 ==
{{sisterlinks
| wikt = 病気
| commons = Category:Diseases and disorders
| n = カテゴリ:健康
}}
* [[病気の別名の一覧]]
* [[症候学]]
* [[疾病及び関連保健問題の国際統計分類]]
* [[伝染病]]/[[感染症]]/[[感染症専門医]]
* [[食中毒]]
* [[病み上がり]]


ほとんどの宗教では、病気の人に宗教的義務の例外を認めている。例えば、[[ヨム・キプル]]や[[ラマダーン|ラマダン]]の[[断食]]によって生命が危険にさらされるような人は、その義務が免除されるか、あるいは参加することさえ禁止される<ref>{{Cite journal |last1=Gupta |first1=Nikita |last2=Gusdorf |first2=Jason |date=2023-07-13 |title=Guidance for Physicians on the Yom Kippur Fast |url=https://gmr.scholasticahq.com/article/83342-guidance-for-physicians-on-the-yom-kippur-fast |journal=Georgetown Medical Review |language=en |volume=7 |issue=1 |doi=10.52504/001c.83342 |issn=2689-095X}}</ref><ref>{{Cite journal |last=Rashed |first=A. H. |date=1992-02-29 |title=The fast of Ramadan. |journal=BMJ |language=en |volume=304 |issue=6826 |pages=521–522 |doi=10.1136/bmj.304.6826.521 |issn=0959-8138 |pmc=1881417 |pmid=1559053}}</ref>。 病気の人は社会的義務を免除される。例えば、体調不良は、アメリカ人が[[ホワイトハウス]]への招待を断る唯一の社会的に受け入れられる理由である<ref>{{Cite book |author=Martin, Judith |title=Miss Manners' Guide to Excruciatingly Correct Behavior |publisher=W.W. Norton & Co |location=New York |year=2005 |page=703 |isbn=978-0-393-05874-1 |oclc=57549405}}</ref>。
* [[医療]]、[[医療従事者]]

ある病態を、単に人間の構造や機能の変化としてではなく、疾患として特定することは、社会的または経済的に重大な意味を持つことがある。{{仮リンク|反復運動過多損傷|en|Repetitive strain injury|label=反復運動過多損傷(Repetitive strain injury: RSI)|redirect=1}}や[[心的外傷後ストレス障害]](PTSD)のような疾患の認定が論議を呼んだことで、政府、企業、機関が個人に対して負う財政的責任やその他の責任、そして個人自身に対して、肯定的な影響も否定的な影響も数多くもたらされた。[[老化]]を病気と見なすことの社会的な意味合いは、まだこの分類が広まっていないとはいえ、大きなものになる可能性がある。

[[ハンセン病|ハンセン病患者]]とは、歴史的に伝染病を患っていたために敬遠されていた人々であり、「癩者({{Lang-en-short|leper}})」という言葉は今でも社会的スティグマを連想させる<ref>{{Cite web |title=28号 大使メッセージ:差別用語を根絶しよう|公益財団法人笹川保健財団Webサイト |url=https://www.shf.or.jp/information/4697 |website=www.shf.or.jp |date=2007-10-10 |access-date=2024-10-05 |language=ja}}</ref>。すべての病気が極端な社会的スティグマを呼び起こすわけではないが、病気に対する恐怖は今でも広く社会現象となっている。[[新型コロナウイルス感染症 (2019年)|新型コロナウイルス感染症]]の感染拡大当初、感染者やその家族、医療従事者などに対する差別やいじめが社会問題化した<ref name=":3">{{Cite web |title=恐れるべきはウイルスで人ではない {{!}} コロナ差別をなくすためには |url=https://www.nippon-foundation.or.jp/journal/2020/45019 |website=日本財団 |date=2020-06-11 |access-date=2024-10-05 |language=ja}}</ref>。例えば、感染者の自宅に石が投げ入れられたり、医療従事者の家族が職場で嫌がらせを受けたりした<ref name=":3" />。

社会的地位と経済的地位は健康に影響する。[[貧困病]]とは、貧困や低い社会的地位に関連する病気であり、{{仮リンク|裕福病|en|diseases of affluence|redirect=1|label=}}とは、高い社会的・経済的地位に関連する病気である。どの病気がどの状態と関連しているかは、時代、場所、技術によって異なる。[[糖尿病]]のように、貧困(貧しい食生活)と豊かさ(長寿と[[座りがちなライフスタイル|座りがちな生活]])の両方に、異なるメカニズムで関連している病気もある。[[生活習慣病]]という用語は、長寿に関連し、高齢者に多くみられる病気を表している。 例えば、ほとんどの人が80歳まで生きる社会では、50歳になる前に亡くなる社会よりも、[[悪性腫瘍|がん]]がはるかに多い。

=== 文学・表現 ===
病気を題材とした書籍、すなわち[[闘病記]]とは、患者やその家族との病気との闘いが主題である<ref>{{Cite web |url=https://www.gentosha-book.com/method/my_history/know-write-against-illness/ |title=闘病記のことを知ろう|闘病記出版講座 |access-date=2024-10-05 |publisher=[[幻冬舎]]}}</ref>。もっとも出版されている闘病記は、がんの闘病記である<ref>{{Cite journal|last=門林|first=道子|date=2019|title=闘病記を書くことの意味|url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpla/64/3/64_124/_article/-char/ja/|journal=薬学図書館|volume=64|issue=3|pages=124–129|doi=10.11291/jpla.64.3_124}}</ref>。

人々は、病気に関する経験を意味づけるために[[メタファー]]を用いる。メタファーは病気を、存在する客観的なものから感情的な経験へと移行させる。最もポピュラーなメタファーは、「闘い」に基づくものである。病気は敵であり、恐れ、戦い、戦わなければならない。患者や医療従事者は、受動的な被害者や傍観者ではなく、[[戦士]]である。[[伝染病]]の病原体は侵略者であり、非伝染病は[[反乱]]や[[内戦]]である。その脅威は緊急のものであり、おそらく生死にかかわる問題であるため、想像を絶するほど過激で、抑圧的でさえある対策が、勇気を持って破壊と闘うために動員される社会と患者の道徳的義務なのである。{{仮リンク|がんとの戦い|en|War on Cancer|redirect=1|label=がんとの戦い(War on Cancer)}}は、この比喩的な言葉の使い方の一例である<ref name="Gwyn">{{Cite book |author=Gwyn, Richard |editor1=Cameron, Lynne |editor2=Low, Graham |title=Researching and applying metaphor |publisher=Cambridge University Press |location=Cambridge, England |year=1999 |chapter=10 |isbn=978-0-521-64964-3 |oclc=40881885}}</ref>。この言葉は、患者には勇気づけるとは限らず、自分が失敗者であるかのように感じさせることもある<ref name=":0">{{Cite news |title=Fighting Words Are Rarer Among British Doctors |url=http://newoldage.blogs.nytimes.com/2014/04/22/fighting-words-are-rare-among-british-doctors |author=Span, Paula |date=22 April 2014 |newspaper=The New York Times |url-status=live |archive-url=https://archive.today/20140702025715/http://newoldage.blogs.nytimes.com/2014/04/22/fighting-words-are-rare-among-british-doctors |archive-date=2 July 2014 }}</ref>。

メタファーには、病気の経験を旅として描写するものもある。人は病気の場所へと、あるいは病気の場所から旅し、その途中で自分を変えたり、新しい情報を発見したり、経験を増やしたりする。「回復への道」を旅することもあれば、「正しい道に進む」ために変化を起こしたり、「経路」を選択することもある<ref name="Gwyn" /><ref name=":0" />。明確に移住をテーマとしたものもある。患者は健康という故郷から病気の地へと追放され、その過程で[[自己同一性|アイデンティティ]]や人間関係を変化させる<ref name="Diedrich">{{Cite book |author=Diedrich, Lisa |title=Treatments: language, politics, and the culture of illness |url=https://archive.org/details/treatmentslangua00died |url-access=limited |publisher=University of Minnesota Press |location=Minneapolis |year=2007 |pages=[https://archive.org/details/treatmentslangua00died/page/n32 8], 29 |isbn=978-0-8166-4697-5 |oclc=601862594}}</ref>。病気を戦いでは無く、旅と表現するのは、英国の医療従事者に多い<ref name=":0" />。

病気特有の比喩もある。[[奴隷制|奴隷]]は、[[依存症]]の比喩としてよく使われる。[[アルコール依存症]]は酒の奴隷であり、[[喫煙者]]はニコチンの虜である。がん患者の中には、[[化学療法 (悪性腫瘍)|化学療法]]によって髪が抜けることを、病気によって引き起こされるすべての喪失の[[換喩]]として扱う者もいる<ref name="Gwyn" />。

社会悪のメタファーとして使われる病気もある。「癌」は、貧困、不正、人種差別など、社会に蔓延し破壊的なものに対する一般的な表現である。エイズは道徳的退廃に対する神の裁きとみなされ、「侵略者」の「汚染」から自らを浄化することによってのみ、社会は再び健全になることができると説かれた<ref name="Gwyn" />。後に、エイズがそれほど脅威でないように思われた頃になると、この種の感情的な言葉が[[鳥インフルエンザ]]や[[2型糖尿病]]に適用された<ref>{{Cite journal |vauthors=Hanne M, Hawken SJ |title=Metaphors for illness in contemporary media |journal=Med Humanit |volume=33 |issue=2 |pages=93–99 |date=December 2007 |pmid=23674429 |doi=10.1136/jmh.2006.000253 |s2cid=207000141}}</ref>。19世紀の作家は、{{仮リンク|超越 (宗教)|en|Transcendence (religion)|redirect=1|label=宗教上の超越}}の象徴、そしてメタファーとして{{仮リンク|文化における結核の描写|en|Cultural depictions of tuberculosis|redirect=1|label=結核をよく用いた}}。結核に罹患した人々は、日常生活から抜け出し、精神的あるいは芸術的達成の儚い対象となるように文学の中で描かれた。20世紀、結核の原因がより理解された後では、同じ病気が貧困、不潔、その他の社会問題の象徴となった<ref name="Diedrich" />。

== 脚注 ==

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=== 注釈 ===

{{Notelist}}

=== 出典 ===

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==関連項目==
{{Portal box|医学と医療|生物学}}
{{Sisterlinks
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* [[発達障害]]
* [[ミトコンドリア病]]
* {{仮リンク|医学の哲学|en|Philosophy of medicine|redirect=1}}
* [[希少疾患]]
* [[医療]]
* [[医療社会学]]
* [[医療社会学]]
* [[医学]]/[[歯学]]
* [[医学]]/[[歯学]]
* [[詐病]]
* [[詐病]]
* {{ill2|病変|en|Lesion}} - 病気やケガによって、体や精神に変化が起きること。例として、[[ホタルエビ]]はエビ類の伝染性光り病(ルミネセンス産生性の[[コレラ菌]] Vibrio cholerae non-O1の感染)による病変で発光している。


== 外部リンク ==
==外部リンク==
{{SEP|health-disease|Concepts of Disease and Health|[[スタンフォード哲学百科事典]]にある「病と健康の概念」についての項目}}


* [https://www.cdc.gov/health-topics.html#a Health Topics A–Z], - [[アメリカ疾病予防管理センター|アメリカ疾病予防管理センター(CDD)]]による多くの疾患についてのファクトシート(英語)
{{DEFAULTSORT:ひようき}}
* [https://medlineplus.gov/healthtopics.html Health Topics] - [[MedlinePlus]]による疾患情報データベース(英語)
* [https://www.nlm.nih.gov/ NLM] - [[アメリカ国立医学図書館]]。医学文献データベース[[PubMed|Pubmed]]もここからアクセス可能(英語)。
* [https://www.msdmanuals.com/ja-jp MSDマニュアル] - 旧称[[メルクマニュアル]]。100年以上の歴史を持つ医学マニュアル(日本語と英語)。
*[https://minds.jcqhc.or.jp/ Minds] - 公益社団法人 日本医療機能評価機構が提供する診療ガイドライン・ガイドライン解説
* [https://www.ebm.jp/ 病気の標準治療ガイド] - 特定非営利活動法人 標準医療情報センターが運営
*[https://guideline.jamas.or.jp/ 東邦大学・医中誌 診療ガイドライン情報データベース] - 東邦大学医学メディアセンター、医学中央雑誌刊行会が運営
{{SEP|health-disease|Concepts of Disease and Health|病と健康の概念}}
* {{Kotobank}}
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Wikipedia 翻訳支援ツール Ver1.32、[[:en:Special:Permalink/1246604938|英語版ウィキペディア disease(2024年9月19日 23:45:09(UTC))版]]より -->


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2024年12月28日 (土) 11:01時点における最新版

「病気の少女」"The Sick Girl"、1882年作、コペンハーゲン国立美術館

病気(びょうき、または疾患: disease)とは、生体の全部または一部の構造または機能英語版に悪影響を及ぼす特定の異常な状態であり、外傷によるものではない[1][2]。病気はしばしば、特定の徴候や症状を伴う健康状態(medical conditions)として知られている。病気は病原体などの外的要因によって引き起こされることもあれば、体内の機能不全によって引き起こされることもある。例えば、免疫系の内部機能不全は、様々な免疫不全過敏症アレルギー自己免疫疾患など、様々な病気を引き起こす。

ヒトにおいては、病気は、患者に痛み、機能障害、不快なストレス英語版[注釈 1]社会的問題、または死、あるいは患者と接する人々に同様の問題を引き起こすあらゆる状態を指すため、より広義に用いられることが多い。この広い意味では、外傷障害、身体の異常、症候群感染症、個別の症状、行動の逸脱、構造や機能の変異英語版を含むこともある。他の文脈や目的においては、これらは区別できるカテゴリーとみなされることもある。病気により、肉体的な影響だけでなく、精神的な影響も受ける。病気にかかり、病気とともに生きることで、罹患者の人生観が変わってしまうからである。

病気による死は自然死英語版という。病気には大きく分けて、感染症、欠乏症、遺伝性疾患(遺伝子疾患遺伝子に拠らない遺伝性疾患英語版を含む)、生理学的異常の4種類がある。病気はまた、伝染性疾患非伝染性疾患英語版のように、他の方法で分類することもできる。ヒトで最も致死率の高い病気は冠動脈疾患心臓の血流障害)であり、次いで脳血管疾患下気道感染英語版である[3]。先進国では、うつ病不安障害などの精神疾患が疾病負荷の大きな部分を占めている[4]

病気を研究する学問は病理学と呼ばれ、病因(病気の原因)の探求が含まれる。

用語

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概念

[編集]

多くの場合、病気・疾患(disease)、障害(disorder)、罹患(morbidity)、病気(sickness)、不健康(illness)などの用語は互換的に使用されるが、特定の用語が望ましいと考えられる状況もある[5]

疾患

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疾患(disease)とは、広義には身体の正常な機能を損なうあらゆる状態を指す。このため、疾患は身体の正常な恒常性維持過程の機能障害と関連している[6]。一般的に、この用語は特に感染症(infectious disease)を指すのに用いられる。感染症とは、ウイルス細菌真菌原虫、多細胞生物、およびプリオンとして知られる異常タンパク質を含む病原性微生物因子の存在に起因する、臨床症状を有する疾患である。臨床的な正常機能を明らかに損なうことの無い感染やコロニー形成、例えば腸内の正常な細菌酵母、あるいはパッセンジャーウイルス英語版の存在は、病気とはみなされない。対照的に、潜伏期間中は無症状であるが、後に症状が現れると予想される感染症は、通常、疾患とみなされる。非伝染性疾患英語版とは、ほとんどのがん、心臓病、遺伝病など、感染症以外のすべての疾患を指す。

後天性疾患

[編集]

後天性疾患とは、出生時にすでに存在していた疾患(先天性疾患)とは対照的に、出生後のある時点で発症した疾患のことである。後天性とは、その英語の原義から、「伝染病か何かを獲得(Acquired)した」という意味と捉えられるが、単に出生後に発症したという意味である。また、続発性疾患を意味するようにも聞こえるが、後天性疾患は原発性疾患であることもある。

先天性疾患

[編集]

先天性疾患は、出生時に存在する疾患である。多くの場合、遺伝子疾患または障害であり、遺伝することもある(遺伝子の異常は必ずしも遺伝しない)。また、梅毒HIV/AIDSのように、母親からの垂直感染によって発症することもある。

遺伝子疾患・遺伝性疾患

[編集]

遺伝疾患(hereditary disease)とは、家族内で起こりうる、すなわち遺伝する疾患である。遺伝子疾患(genetic disease)は、1つ以上の遺伝子の突然変異によって引き起こされる。遺伝することが多いが、ランダムで新規発生する突然変異もある。

医原性疾患

[編集]

医原性疾患(別名 医原病)とは、治療の副作用や不慮の結果など、医療介入によって引き起こされる疾患のことである。

特発性疾患

[編集]

特発性疾患英語版とは原因がわからない病気である。医学の進歩に伴い、原因が全く不明であった多くの病気は、その原因の一端が解明され、特発性の地位を脱した。例えば、細菌が発見されたとき、細菌が感染症の原因であることが知られるようになったが、特定の細菌と病気との関連は明らかにされていなかった。別の例では、自己免疫1型糖尿病の原因の一部であることは知られているが、それが働く特定の分子経路はまだ解明されていない。また、特定の要因が特定の疾患と関連していることはよく知られている。しかし、関連性が必ずしも因果関係を意味するわけではない。例えば、第3の要因が病気と関連する現象の両方を引き起こしているかもしれない。

不治の病・難病

[編集]

不治の病(incurable disease)とは治癒させることのできない病気である。必ずしも末期的な病気ではなく、病気の症状を十分に治療することで、生活の質にほとんど影響がでないこともある。難病(intractable disease)[7]とは、以下のように定義されている。

発病の機構が明らかでなく、治療法が確立していない希少な疾病であって、当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすることとなる疾病
厚生労働省、事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン 参考資料 難病に関する留意事項、[8]

原発性疾患

[編集]

原発性疾患原疾患(primary disease)[9]とは、病気の根本的な原因に起因する疾患であり、原発性疾患によって引き起こされる続発症英語版合併症である二次疾患と対を成す概念である。例えば、風邪は原発性疾患であり、鼻炎は続発性疾患または続発症の可能性がある。医師は、抗生物質を処方するかどうかを決定する際に、患者の続発性鼻炎を引き起こしている原発性疾患が風邪か細菌感染であるかどうかを判断しなければならない。

二次疾患

[編集]

二次疾患(secondary disease)[10]とは、先行する原疾患の後遺症または合併症である疾患のことである。例えば、細菌感染症は、健康な人でも細菌にさらされて感染する原発性のものと、感染しやすい体質のもととなる原因による二次的なものがある。例えば、ウイルス感染は、免疫系を弱め、二次的な細菌感染を引き起こす可能性がある。同様に、開放創を形成するような熱傷は、細菌の侵入口となり、二次的な細菌感染を引き起こす可能性がある。

終末期疾患

[編集]

終末期疾患(terminal disease)[11]とは、避けられない結果としての死をもたらすと予想される病気のことである。以前はエイズが終末期疾患であったが、現在では不治の病であるものの、薬物療法により無期限に管理することができる。

Illness

[編集]

英語の"illness"という単語は、一般的に病気(disease)の同義語として使われる。しかし、illnessという言葉は、患者の病気に対する個人的な経験を特に指すために使われることもある[12][13][14][15]。この考え方に基づけば、illnessではなくてもdiseaseであることはあり得る。例えば、不顕性感染など、客観的には定義できるが無症候性英語版の健康状態を有すること、または臨床的に明らかな身体的障害を有するが、それによって不具合や不快なストレス英語版を感じていない状況である。また、diseaseでないがillnessであることもあり得る。たとえば、正常な状態であっても、病的な状態と認識する場合、である。より具体的には、恥ずかしさのために気分が悪くなり、その感情を正常な感情ではなく病気であると解釈するような場合など。病気の症状は多くの場合、感染の直接的な結果ではなく、感染を除去し回復を促進するために進化した反応(身体の病時行動英語版)の集合体である。このような病気の症状には、嗜眠(lethargy)英語版抑うつ食欲不振英語版眠気痛覚過敏集中力の欠如などがある[16][17][18]

障害

[編集]

障害(disorder)とは、機能的な異常や障害のことであり、特定の徴候や症状を示す場合と示さない場合がある。 医学的障害は、精神障害、身体障害、遺伝的障害、感情行動障害機能障害英語版に分類される[19]。障害という用語は、病気や疾患という用語よりも価値中立的で、スティグマを負わせることが少ないと考えられることが多いため、状況によっては好まれる用語である[20]メンタルヘルスにおいて、精神障害(mental disorder)という言葉は、生物学的、社会学的、心理学的因子英語版の複雑な相互作用を認識する方法として使われる。しかし、障害という用語は、医学の他の多くの分野でも使用され、主に代謝障害など、感染性生物に起因しない身体的障害を表すために使用される。しかし、状態が医学上のものであることを強調しているために、自閉症の権利運動の支持者のように、この用語が否定されることもある[21]

健康状態(medical condition)

[編集]

健康状態(Medical condition or health condition)とは、妊娠出産など、通常医学治療を受けるすべての疾患、病変英語版、障害、非病理学的状態を含む広い概念である。medical conditionという用語は一般的に精神疾患を含むが、文脈によっては、精神疾患以外のあらゆる病気、傷害、疾患を示す用語として特別に使用されることもある。精神医学のすべての精神障害を定義するマニュアルとして広く使われている『精神疾患の診断・統計マニュアル』(DSM)では、精神障害を除くすべての病気、疾患、傷害を指すためにgeneral medical conditionという用語を使用している[22]。この用法は精神医学の文献でもよく見られる。また、一部の医療保険では、medical conditionを精神疾患を除くあらゆる疾病、傷害、疾患と定義している[23]。疾患(disease)などの用語よりも価値中立的英語版であるため、健康上の問題を抱えつつも病状が大したことでは無いとみなす人々にとって好まれることがある。medical conditionという言葉は、病状(medical state)英語版の同義語でもあり、この場合は医学的見地から個々の患者の現在の状態を表す。この用法は、例えば、ある患者が危篤状態であると表現する場合に使われる。

病的状態(Morbidity)

[編集]

Morbidity(言語は ラテン語 morbidusで意味は'病気、不健康')とは、何らかの原因による病的状態または罹患率[24][注釈 2]を表す多義語である。この用語は、あらゆる形態の病気の存在、または健康状態が患者に影響を与える程度を指す場合がある。重症患者の場合、morbidityの度合いはICUスコア英語版で測定されることが多い。併存疾患(Comorbidityないしco-existing disease)とは、統合失調症薬物乱用など、2つ以上の病状が同時に存在することである。

疫学および保険数理学では、morbidityという用語は、発生率、有病割合、または一定の期間内に一定の状態を経験する人の割合(例えば、1年間に20%の人がインフルエンザに罹患する)のいずれかを指すことがある[25]。この病気の指標は、一定の期間内に死亡する人の割合、すなわち死亡率と対比される。罹患率は、健康保険生命保険介護保険などの保険数理において、顧客に請求する保険料を決定するために使用される。罹患率は、保険会社が被保険者が特定の病気にかかったり発症したりする可能性を予測するのに役立つ。

病理

[編集]

病理学は、学問としては、病気になった原因を探り、病気になった患者の身体に生じている変化が、どのようなものであるかを研究するものである[26]が、臨床医学における病理診断とは、主として、患者の身体より摘出された組織・細胞から標本を作製し、それを観察して診断することをいう[27]

症候群

[編集]

症候群とは、原因がわかっているかどうかに関係なく、いくつかの徴候や症状の関連、またはしばしば一緒に生じる疾患の特徴の関連のことである。ダウン症候群のように、原因が1つ(発生時の余分な染色体)しかないことがわかっている症候群もある。パーキンソン症候群のように、複数の原因が考えられるものもある。例えば、急性冠症候群は単一の疾患そのものではなく、冠動脈疾患に続発する心筋梗塞を含むいくつかの疾患のいずれかの症状である。しかし、他の症候群では特発性(原因不明)英語版である。原因が特定された後でも、あるいは考えられる原因がいくつもある場合でも、馴染みのある症候群名が使われ続けることが多い。ターナー症候群ディジョージ症候群は、単なる徴候や症状としてではなく、疾患として捉えることができるにもかかわらず、いまだに「症候群」という名前で呼ばれることが多い。

未病・Predisease

[編集]

Prediseaseとは無症候性英語版または前駆症状英語版を意味する。日本では未病と訳されることもある[28]が、医学用語として確立されたものでは無い[注釈 3]境界型糖尿病正常高値血圧がその代表例である。疾病分類学英語版や認識論上はこの用語に関して論争がある。というのも、不顕性疾患や前駆症状に対する正当な関心と、利益相反による過剰な医療化(例えば、製薬メーカーによる)や非医療化(例えば、医療保険会社や障害保険会社による)とを区別する明確な線引き英語版はほとんどないからである。正当な疾患予備群を特定することで、健康的な運動をするよう動機付けるなど、有益な予防策を講じることができる[29]。一方、健康な人に根拠のない未病のレッテルを貼ることは、重症の人にしか効かない薬を飲んだり、コスト・ベネフィット比英語版の悪い治療にお金を払ったりするような、過剰な治療をもたらす可能性がある。あるレビューではprediseaseに関して以下のような3つの概念が提示されている[30]

  • 病気が進行するリスクが高く、他の人よりも「発症する可能性がはるかに高い」。例えば、前癌病変は、時間が経てばほぼ確実にがんになる。
  • リスク低減の実行可能性がある。例えば、前がん組織を切除することで、死に至る可能性のあるがんになるのを防ぐことができる。
  • 医学的介入による利益が害を上回る。例えば、前がん組織を取り除くことでがんを予防し、がんによる死亡を防ぐことができる。

精神疾患と器質的疾患

[編集]

精神疾患

[編集]

精神疾患とは、感情や情緒の不安定さ、行動調節障害、認知機能障害などを含む、病気のカテゴリーに対してよく用いられる広範な概念である。精神疾患として知られる具体的な病気には、大うつ病全般性不安障害統合失調症注意欠如多動症などがある。精神疾患は、生物学的原因(解剖学的、化学的、遺伝的など)または心理学的原因(トラウマや葛藤など)に起因することがある。罹患者は仕事や勉強に支障をきたし、対人関係にも支障をきたすことがある。心神喪失(insanity)という用語は、専門的には法律用語として使われる[要出典]

器質的疾患

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器質的疾患(organic disease)とは、身体の組織や器官の物理的な変化によって引き起こされる疾患のことである[31]。 一般的に精神疾患と対比して用いられる。

機能性疾患

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機能性疾患とは、器官に外観上の変化を伴わないものをいう[32]。器質的疾患と対比される概念である[32]

病期

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感染症では、感染してから症状が現れるまでの期間を潜伏期間という。疫学上の潜伏期英語版とは、感染してからその病気が他の人に広がるまでの期間のことで、症状の出現に先行する場合もあれば、後続する場合もあり、また同時に出現する場合もある。ウイルスの中には、ウイルス潜伏期と呼ばれる、ウイルスが不活性な状態で体内に潜伏する休止期を示すものもある。例えば、水痘帯状疱疹ウイルス急性期水痘を引き起こすが、水痘から回復した後、ウイルスは神経細胞内で何年も休眠し、後に帯状疱疹(帯状疱疹)を引き起こすことがある。

急性疾患・急性期

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急性疾患とは、風邪のような短期間の疾患である。急性期とは、症状が急激に現れる時期のことをいう[33]。急性とは、劇症(fulminant)英語版を意味することもある。

慢性疾患・慢性期

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慢性疾患とは、長期に渡って持続する病気であり、少なくとも6ヶ月は続くことが多いが、天寿を全うするまで続くと予想される病気も含まれる。その期間中、常に発症していることもあれば、寛解期に入り、定期的に再発英語版することもある。慢性疾患は安定している(: stable、必ずしも悪化しない)こともあれば、進行性英語版のこともある。慢性疾患の中には、完治するものもある。ほとんどの慢性疾患は、完治しないとしても、有益な治療はできる。

臨床疾患・Clinical disease

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Clinical diseaseとは認識可能な症状や徴候がある疾患である[34]。言い換えれば、その病気に特徴的な徴候や症状が現れる病期である[35]。例えば、AIDSHIV感染の臨床病期である。

治癒・寛解

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治癒とは、病状が終息すること、あるいは終息する可能性が非常に高い治療のことで、寛解とは、症状が一時的に消失することを指す。不治の病の場合、完全寛解が最善の結果である。

再燃・増悪

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再燃(flare-up、recurrence)とは、症状の再発またはより重篤な症状の発現を指す[36]。増悪(Exacerbation)とは、病気が悪化したり、症状が増したりすることである[37]

進行性疾患

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進行性疾患英語版とは、典型的な自然経過として、死亡、重篤な衰弱、または臓器不全が起こるまで悪化していく疾患である。進行が緩徐な疾患は慢性疾患でもあり、多くは変性疾患でもある。進行性疾患の反対は、stable diseaseであり、改善も悪化もしない状態である。

難治性疾患

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難治性疾患(refractory disease)とは、治療に抵抗する疾患のことで、特に個々の症例が、問題となっている特定の疾患に対して通常以上に治療に抵抗することをいう。例えば、難治性高血圧英語版

Subclinical disease

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無症候性英語版疾患、silent diseaseとも呼ばれる。これは、疾患において、最初に症状が現れる前の段階である[38]

終末期

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終末期医療に関するガイドラインによれば、疾患の終末期とは、以下の3つの条件を満たす場合とされている[39]

1.医師が客観的な情報を基に、治療により病気の回復が期待できないと判断すること

2.患者が意識や判断力を失った場合を除き、患者・家族・医師・看護師等の関係者が納得すること

3.患者・家族・医師・看護師等の関係者が死を予測し対応を考えること

回復期

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回復期とは、物理的(組織、臓器など)な修復や、損傷の原因となる過程が治癒した後の健康的な機能の再開する時期を指す。

範囲

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skin rash on the leg
この発疹は体の一部にしか影響しないので、限局性疾患である。

限局性疾患

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限局性疾患英語版とは、水虫や目の感染症など、体の一部分だけに影響を及ぼす病気のことである。

播種性疾患

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播種性疾患英語版とは身体の他の部位に広がるものである。がんは通常、転移性疾患と呼ばれる。

全身性疾患

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全身性疾患英語版とは、 インフルエンザ高血圧など、全身に影響を及ぼす病気である。

分類

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病気は、原因、病因英語版(病気の原因となる機序英語版)、または症状によって分類される。あるいは、冒されている臓器系英語版によって分類することもできる。しかし、多くの病気は複数の臓器に影響を及ぼすので、これはしばしば複雑である。

特に原因や病態が明らかでない場合、疾病を明確に定義・分類できないことが多い。そのため、診断用語はしばしば症状ないしは症候群を反映しているにすぎない。

古典的なヒト疾患の分類は、病理学的分析と臨床症候との間の観察された相関から派生したものである。現在では、原因がわかっている場合は、その原因によって分類することが好ましい[40]

今日では、原因がわかっている場合は、その原因によって分類することが好ましいとされている。これは定期的に更新されている。2024年時点の最新版は疾病及び関連保健問題の国際統計分類の第11版、すなわちICD-11英語版である。

原因

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病気は様々な要因によって引き起こされる可能性があり、後天的なものと先天的なものがある。 微生物、遺伝、環境、あるいはこれらの組み合わせが、病的状態を引き起こす可能性がある[41]

インフルエンザなど一部の病気だけが伝染性で、一般に感染力があると考えられている。これらの疾患の原因となる微生物は病原体として知られ、細菌ウイルス原虫真菌などの種類がある。感染症は、例えば、表面に付着した感染性物質との手から口への接触、昆虫や他の保菌者に咬まれること、汚染された水や食物(しばしば糞便汚染を介して)などによって感染する[42]。また、性感染症もある。人から人へ感染しにくい微生物が関与している場合もあれば、適切な栄養摂取やその他の生活習慣の改善によって予防・改善できる病気もある。

ほとんどのがん心臓病、精神障害などは非感染性疾患英語版である(伝染性のがん英語版もある)。多くの非感染性疾患は、部分的または完全な遺伝的基盤を持っており(遺伝子疾患を参照)、そのため世代間で伝播する可能性がある。

健康の社会的決定要因とは、人々の健康を決定する、人々が生活する社会的条件のことである。疾病は一般的に、社会的、経済的、政治的、環境英語版に関連している[43]。健康の社会的決定要因は、カナダ公衆衛生庁英語版世界保健機関など、いくつかの保健機関によって、集団的および個人的な幸福(ウェルービイング)に大きな影響を及ぼすと認識されている。世界保健機関(WHO)の社会的決定要因評議会も、貧困における健康の社会的決定要因英語版を認識している。

病気の原因がよく理解されていない場合、社会はその病気を神話化したり、その文化が悪とみなすもののメタファーや象徴として使ったりする傾向がある。例えば、1882年に結核の原因が細菌であることが発見されるまで、専門家たちはこの病気を、遺伝、座りがちなライフスタイル抑うつ気分、セックスや贅沢な食事、アルコールへの耽溺など、当時の社会悪であったものと様々に決めつけていた[44]

病気が病原体によって引き起こされる場合(例えば、マラリアがマラリア原虫によって引き起こされる場合)、病原体(病気の原因)を病気そのものと混同してはならない[45]。例えば、ウエストナイルウイルスは、ウエストナイル熱も、ウエストナイル脳炎も、ウエストナイル髄膜炎も引き起こす[45]疫学における基本的定義の誤用は、科学文献英語版で頻繁に見られる[45]

原因の種類

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A child rides a bicycle. An adult and a child walk a dog along a path in a green park..
自転車ウォーキングなどの定期的な運動は、生活習慣病のリスクを減らす。

空気感染

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空気感染症英語版とは、病原体によって引き起こされ、空気を通して感染する病気のことである[46]

食物

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食中毒とは、病原性細菌、毒素、ウイルス、プリオン、寄生虫に汚染された食品を摂取した結果生じる病気のことである[47]

感染

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感染性疾患とは、個々の宿主生物に対する病原体の感染、存在、増殖に起因する、臨床的に明らかな症状(すなわち、疾患に特徴的な医学的徴候または症状)からなるものである[48]。このカテゴリーに含まれるのは、伝染病-インフルエンザや風邪のような、一般的に人から人へと広がる感染症-と、感染症-人から人へと広がる可能性はあるが、必ずしも日常的な接触によって広がるとは限らない疾患-である。

生活習慣

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生活習慣病とは、国がより工業化され、人々がより長生きするにつれて頻度が増加すると考えられるあらゆる病気のことで、特に、危険因子が、座りがちなライフスタイルや、精製炭水化物トランス脂肪酸、アルコール飲料などの不健康な食品を多く含む食事のような行動の選択を含む場合である[49]

非感染性疾患

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非感染性疾患英語版とは、伝染性のない病状または疾患のことである[50]。非感染性疾患は、人から人へ直接伝播することはない。 心臓病や癌は、ヒトにおける非感染性疾患の例である[51]

予防

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多くの病気や障害は、さまざまな手段で予防することができる。衛生管理、適切な栄養摂取、適切な運動予防接種、その他のセルフケアなどの公衆衛生学的手段である。

治療

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治療(therapy)とは、病気やその他の健康問題を治したり改善したりするための努力である。 心理学においては、この用語は特に心理療法を指すこともある。治療の一般的な方法には、薬物療法手術医療機器セルフケアなどがある。 治療は、組織的な医療システムによって行われることもあれば、患者や家族によって独自に行われることもある。

予防医療とは、怪我や病気、疾患を未然に防ぐ方法である。 治療は、医学的な問題がすでに始まってから適用されるものである。治療は問題を改善または除去しようとするものであるが、特に慢性疾患の場合、治療が永久的な治癒をもたらすとは限らない。治癒(cure)とは通常、健康の完全な回復を意味し、治療(treatment)とは健康の改善や怪我からの回復につながるプロセスや処置を指す[52]。完全に治癒させることができない病気の多くは、まだ治療は可能である。疼痛管理(疼痛医学とも呼ばれる)とは、痛みを和らげ、痛みとともに生きる人々の生活の質を向上させるために、学際的なアプローチを用いる医学の一分野である[53]

救急疾患の治療は、多くの場合、救急科や、救急隊を通じて、迅速に提供されなければならない。

疫学

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疫学とは、病気を引き起こしたり、助長したりする要因についての学問である。例えば、ある種の病気は、特定の地域、特定の遺伝的または社会経済的特徴を持つ人々の間、あるいは1年の特定の時期に多く見られる。

疫学は公衆衛生学の基礎となる方法論であり、疾患の危険因子英語版を特定するためのエビデンスに基づく医療において高く評価されている。伝染性疾患および非伝染性疾患の研究において、疫学者の仕事は、アウトブレイクの調査から、仮説を検証するための統計モデルの開発や査読付き学術誌に投稿するための結果の文書化を含む研究デザイン、データ収集、分析まで多岐にわたる。疫学者はまた、ある集団における疾病の相互作用(シンデミック(syndemic)英語版として知られる状態)も研究する。疫学は、生物学(病気のプロセスをよりよく理解するため)、生物統計学(現在利用可能な生の情報)、地理情報科学(データを保存し、病気のパターンをマッピングするため)、社会科学分野(近縁および遠縁の危険因子をよりよく理解するため)など、他の多くの科学分野に立脚している。疫学は、予防の指針となるだけでなく、原因を特定するのにも役立つ。

疫学は疾病を研究するにあたり、その定義付けという課題に直面する。特にあまり理解されていない疾患については、グループによって定義が大きく異なることがある。合意された定義がなければ、研究者によって症例数や疾患の特徴が異なる可能性がある[54]

罹患率データベースの中には、国レベル[55][56]や、より大規模なもの(European Hospital Morbidity Database (HMDB[57])など)には、詳細な診断名、年齢、性別ごとの病院退院データが含まれていることがある。欧州HMDBデータは欧州各国から世界保健機関(WHO)欧州地域事務局に提出された。

疾病負荷

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疾病負荷とは、経済的コスト、死亡率罹患率、その他の指標によって測定される、ある地域における健康問題の影響である。

疾病が人々に与える負担を定量化するために用いられる指標はいくつかある。損失生存可能年数(years of potential life lost: YPLL)英語版は、病気によってその人の人生が何年短くなったかを単純に推定したものである。例えば、ある病気が原因で65歳で死亡した人が、その病気がなければ80歳まで生きられたとすれば、その病気によって15年の潜在的寿命が失われたことになる。2004年に世界保健機関(WHO)は、早死によって失われているYPLLは9億3,200万年と計算した[58]。YPLLの測定では、人が死ぬ前にどの程度の障害を負っているかは考慮されないため、突然死した人と、何十年も病気で苦しんだ末に同じ年齢で死んだ人を同等に扱う。

質調整生存年(QALY)と障害調整生存年(DALY)の指標は似ているが、対象が診断後に健康であったかどうかが考慮される。早死によって失われた年数に加え、これらの測定では病気で失われた年数の一部が加算される。YPLLとは異なり、これらの指標は、病気は重いが寿命は普通の人に課せられた負担を示す。 罹患率は高いが死亡率が低い病気は、DALYが高く、YPLLが低い。2004年、世界保健機関(WHO)は、病気や怪我によって失われた障害調整生存年数が15億年であると算出した[58]。先進国では、心臓病と脳卒中により、最も多くの生命が失われているが、大うつ病性障害のような精神障害は、病気によって失われる年数が最も多い。

疾病分類 世界の全YPLL英語版[58] 世界の全DALY[58] ヨーロッパの全YPLL英語版[58] ヨーロッパの全DALY[58] カナダの全YPLL英語版[58] 米国とカナダの全DALY[58]
感染症および寄生虫症、特に下気道感染英語版下痢エイズ結核マラリア 37% 26% 9% 6% 5% 3%
うつ病などの精神疾患 2% 13% 3% 19% 5% 28%
外傷、特に交通事故 14% 12% 18% 13% 18% 10%
心血管疾患、主に心臓発作脳卒中 14% 10% 35% 23% 26% 14%
早産周産期死亡 11% 8% 4% 2% 3% 2%
悪性腫瘍 8% 5% 19% 11% 25% 13%

社会と文化

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ルネサンス文化では、肥満ステータスシンボルだった。「トスカーナの将軍アレッサンドロ・デル・ボッロ英語版」、シャルル・メラン英語版作、1645年[59]

社会

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社会が病気にどのように反応するかは、医療社会学の主題である。

ある状態は、ある文化や時代では病気と見なされるかもしれないが、他の文化や時代ではそうとは限らない。例えば、肥満は富と豊かさを表すことがあり、飢饉がありやすい地域やHIV/AIDSに深刻な打撃を受けた一部の地域では、ステータスシンボルである[60]てんかんは、モン族の間で霊的な賜物の兆候と考えられている[61]

病気により、傷病手当休業、他人からの世話を受ける、など、特定の利益の社会的正当性が付与される。すなわち、病気の人は、病人役割(sick role)英語版と呼ばれる社会的役割を引き受ける。がんサバイバー英語版のような、などの恐れられている病気に文化的に受け入れられる方法で反応する人は、公的および私的により高い社会的地位で尊敬されるかもしれない[62]。これらの利得と引き換えに、病人は治療を求め、再び回復するために働く義務があると考えられている。

ほとんどの宗教では、病気の人に宗教的義務の例外を認めている。例えば、ヨム・キプルラマダン断食によって生命が危険にさらされるような人は、その義務が免除されるか、あるいは参加することさえ禁止される[63][64]。 病気の人は社会的義務を免除される。例えば、体調不良は、アメリカ人がホワイトハウスへの招待を断る唯一の社会的に受け入れられる理由である[65]

ある病態を、単に人間の構造や機能の変化としてではなく、疾患として特定することは、社会的または経済的に重大な意味を持つことがある。反復運動過多損傷(Repetitive strain injury: RSI)英語版心的外傷後ストレス障害(PTSD)のような疾患の認定が論議を呼んだことで、政府、企業、機関が個人に対して負う財政的責任やその他の責任、そして個人自身に対して、肯定的な影響も否定的な影響も数多くもたらされた。老化を病気と見なすことの社会的な意味合いは、まだこの分類が広まっていないとはいえ、大きなものになる可能性がある。

ハンセン病患者とは、歴史的に伝染病を患っていたために敬遠されていた人々であり、「癩者(: leper)」という言葉は今でも社会的スティグマを連想させる[66]。すべての病気が極端な社会的スティグマを呼び起こすわけではないが、病気に対する恐怖は今でも広く社会現象となっている。新型コロナウイルス感染症の感染拡大当初、感染者やその家族、医療従事者などに対する差別やいじめが社会問題化した[67]。例えば、感染者の自宅に石が投げ入れられたり、医療従事者の家族が職場で嫌がらせを受けたりした[67]

社会的地位と経済的地位は健康に影響する。貧困病とは、貧困や低い社会的地位に関連する病気であり、裕福病英語版とは、高い社会的・経済的地位に関連する病気である。どの病気がどの状態と関連しているかは、時代、場所、技術によって異なる。糖尿病のように、貧困(貧しい食生活)と豊かさ(長寿と座りがちな生活)の両方に、異なるメカニズムで関連している病気もある。生活習慣病という用語は、長寿に関連し、高齢者に多くみられる病気を表している。 例えば、ほとんどの人が80歳まで生きる社会では、50歳になる前に亡くなる社会よりも、がんがはるかに多い。

文学・表現

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病気を題材とした書籍、すなわち闘病記とは、患者やその家族との病気との闘いが主題である[68]。もっとも出版されている闘病記は、がんの闘病記である[69]

人々は、病気に関する経験を意味づけるためにメタファーを用いる。メタファーは病気を、存在する客観的なものから感情的な経験へと移行させる。最もポピュラーなメタファーは、「闘い」に基づくものである。病気は敵であり、恐れ、戦い、戦わなければならない。患者や医療従事者は、受動的な被害者や傍観者ではなく、戦士である。伝染病の病原体は侵略者であり、非伝染病は反乱内戦である。その脅威は緊急のものであり、おそらく生死にかかわる問題であるため、想像を絶するほど過激で、抑圧的でさえある対策が、勇気を持って破壊と闘うために動員される社会と患者の道徳的義務なのである。がんとの戦い(War on Cancer)英語版は、この比喩的な言葉の使い方の一例である[70]。この言葉は、患者には勇気づけるとは限らず、自分が失敗者であるかのように感じさせることもある[71]

メタファーには、病気の経験を旅として描写するものもある。人は病気の場所へと、あるいは病気の場所から旅し、その途中で自分を変えたり、新しい情報を発見したり、経験を増やしたりする。「回復への道」を旅することもあれば、「正しい道に進む」ために変化を起こしたり、「経路」を選択することもある[70][71]。明確に移住をテーマとしたものもある。患者は健康という故郷から病気の地へと追放され、その過程でアイデンティティや人間関係を変化させる[72]。病気を戦いでは無く、旅と表現するのは、英国の医療従事者に多い[71]

病気特有の比喩もある。奴隷は、依存症の比喩としてよく使われる。アルコール依存症は酒の奴隷であり、喫煙者はニコチンの虜である。がん患者の中には、化学療法によって髪が抜けることを、病気によって引き起こされるすべての喪失の換喩として扱う者もいる[70]

社会悪のメタファーとして使われる病気もある。「癌」は、貧困、不正、人種差別など、社会に蔓延し破壊的なものに対する一般的な表現である。エイズは道徳的退廃に対する神の裁きとみなされ、「侵略者」の「汚染」から自らを浄化することによってのみ、社会は再び健全になることができると説かれた[70]。後に、エイズがそれほど脅威でないように思われた頃になると、この種の感情的な言葉が鳥インフルエンザ2型糖尿病に適用された[73]。19世紀の作家は、宗教上の超越英語版の象徴、そしてメタファーとして結核をよく用いた英語版。結核に罹患した人々は、日常生活から抜け出し、精神的あるいは芸術的達成の儚い対象となるように文学の中で描かれた。20世紀、結核の原因がより理解された後では、同じ病気が貧困、不潔、その他の社会問題の象徴となった[72]

脚注

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注釈

[編集]
  1. ^ 日本医学会医学用語辞典では英語のdistressに対して、「不快なストレス」以外に困難、心痛、窮迫、苦悩、苦痛の訳があてられている。
  2. ^ 日本医学会医学用語辞典での訳例
  3. ^ 2024年10月時点で日本医学会医学用語辞典には未病もprediseaseも収載されていない。

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関連項目

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外部リンク

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