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[[薬物誘発性精神病]]の症状は、統合失調症の症状と違いがなく、熟練した精神科医でも区別は困難とさる。薬物誘発性精神病と統合失調症の区別が曖昧なため、薬物誘発性精神病モデルは、統合失調症モデルとして研究で頻用されている。症状は同じだが、薬物誘発性精神病は後天性で、統合失調症は遺伝性という点で異なる<ref>[https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28243163 Drug Abuse and Psychosis: New Insights into Drug-induced Psychosis. (2017)]</ref>。しかし、[[DSM-5]]においては、薬物誘発性精神病は統合失調症と区別されている。 |
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'''発病メカニズムは不明'''であり、明確な病因は未だに確定されておらず、いずれの報告も[[仮説]]の域を出ない。仮説は何百という多岐な数に及ぶため、特定的な原因の究明が非常に煩わしく困難であるとされるが今日の精神医学の発達上の限界・壁であるとされる。 |
'''発病メカニズムは不明'''であり、明確な病因は未だに確定されておらず、いずれの報告も[[仮説]]の域を出ない。仮説は何百という多岐な数に及ぶため、特定的な原因の究明が非常に煩わしく困難であるとされるが今日の精神医学の発達上の限界・壁であるとされる。 |
2017年7月16日 (日) 01:33時点における版
統合失調症 | |
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統合失調症患者によって施された刺繍 | |
概要 | |
診療科 | 精神医学, 臨床心理学 |
分類および外部参照情報 | |
ICD-10 | F20 |
ICD-9-CM | 295 |
OMIM | 181500 |
DiseasesDB | 11890 |
MedlinePlus | 000928 |
eMedicine | med/2072 emerg/520 |
Patient UK | 統合失調症 |
統合失調症(とうごうしっちょうしょう、独: Schizophrenie、仏: Schizophrénie、英: Schizophrenia、SZ)とは、思考、知覚、感情、言語、自己の感覚、および行動における他者との歪みによって特徴付けられる症状を持つ精神障害の一つ[1]。一般的には幻聴、幻覚、異常行動などを伴うが[1][2]、罹患者によって症状のスペクトラムも多様である。エミール・クレペリン、オイゲン・ブロイラー、クルト・シュナイダーが共通して挙げている当該疾患の特徴的で頻発の症状は「思考途絶(連合障害)」と「思考化声(自生思考)」である。日本では2002年(平成14年)まで、精神分裂病(せいしんぶんれつびょう)と呼ばれていた[3]。
統合失調症は、精神病理学あるいは臨床単位上の精神障害の診断・統計カテゴリーの一つである。この疾患群は、自閉症状と連合障害(認知障害)を基礎疾患とする複数の脳代謝疾患群と考えられている。各症状が同根の神経生物学的基礎を有するか否かは、現在のところ全く不明である。発症のメカニズムや根本的な原因は解明されておらず、また、単一の疾患ではない可能性が指摘されており、症候群である可能性がある[4]。様々な仮説が提唱されているものの、未だに決定的な定説の確立を見ない[4]。
有病者数は世界で2,100万人(男性1,200万人、女性900万人)ほどで、患者は一般人口より死亡率が2.0 - 2.5倍ほど高い[1][5]。成人の年間有病率は0.1 - 7.5%、生涯有病率は0.1 - 1.8%と世界保健機関は報告している[6]。世界の障害調整生命年(DALY)のうち約1%を占める[7]。
精神疾患としては深刻なもの(英語: Severe mental disorder)に位置づけられるが、治療可能な病気でありながら、患者の大部分(2人に1人)は受診につながっていない[1]。この疾患の担当診療科は精神科であり[8]、精神科医が診療に当たる。世界保健機関は、低中所得国を対象とした改善計画 Mental Health Gap Action Programme (mhGAP) を開始し、クリニカルパスおよび診療ガイドラインを作成し公開している[1][9]。
症状
統合失調症に共通する症状は、精神分裂症(精神機能の分裂症)と呼ばれる状態で、思考や感情がまとまりにくくなる。自閉や連合障害からくる脳の疲弊によって、一部の患者では特徴的な幻覚や妄想を発症する頻度が少なくない。そのため、罹患者が本来有している知的水準や身体能力から期待される役割遂行能力が顕著に障害されることがあり、回復には治療や社会的援助が必要とされる。
認知、情動、意欲、行動、自我意識など、多彩な精神機能の障害が見られる。大きく陽性症状と陰性症状の二つがあげられ、他にその他の症状に分けられる[10]。全ての患者が全ての症状を呈するのでないことに注意が必要である。
WHOによる国際的予備研究によれば、最も多く見られる症状は幻聴や関係念慮であり、患者の約70%に認められた[10]。
陽性症状(Positive symptoms)
おおよそ急性期に生じるもの。妄想や幻覚などが特徴的である[2]。
思考の障害
思考過程の障害と思考内容の障害に分けられる。総合的に診て自閉症と重複し、誤診されることもたびたび起こる。統合失調症の最大の特徴はこの自我意識面での思考の障害であるとされる。
思考過程の障害
- 話せない状況:思考に割り込まれると神経過敏や鬱状態になり、考えが押し潰されて、まとまらない話になってしまう。思考が潰れることで今までやってきたことは何だったのかという自己喪失に陥る。
- 的外れな応答:他人の質問に対し、的外れな答えを返すことがある。周囲の人間から、話をよく聞いていない人物と見なされることがある。
- 集中能力の喪失:テレビを視聴したり、新聞記事を読むことが困難となる[11]。
- 異常なほどの思考・神経機能の使い過ぎ:思考や神経の安定性・リラクゼーションが保たれず、絶えず考え・思考が浮かんでくると訴える自生思考や相手に自分の考えが知れ渡っていると解釈し思い込ませられる思考伝播、自他の境界が曖昧になる境界障害などの通常ならばあってはならない思考によって障害・邪魔されるため、時間に関係なく睡眠が安心して落ち着いて普通にできなかったり、食物を食べても、思考や神経に栄養が奪われて、結果的に食べても体重が太れないといった体重の劇的な痩せや減量、顔の頬がすぐにこける、頭髪の細毛化、薄毛状態が引き起こされるケースもある。抗精神病薬の服用によって、そうした敏感な熱思考状態や神経の過度の使い過ぎ状態がいくぶん緩和し落ち着くこともある。統合失調症は、単なる思考機能・神経の使い過ぎから起こる神経症レベルで説明がつくほど単純な疾患ではない。重度の神経症・神経障害と同等レベルで解釈できるか否かは区別の判断が微妙に困難極まるものがある。勿論、統合失調症患者の精神症状と、強迫神経障害患者の神経症状とを比べた時、前者の方がはるかに症状が複雑で重いとされる今日の医学的な考え方・見解が肯定・是認できうるものと言える。
思考内容の障害(妄想)
妄想 (Delusions) とは、客観的に見てありえないことを事実だと完全に信じること[10][11]。以下のように分類される。
- 被害妄想:「近所の住民に嫌がらせをされる」「通行人がすれ違いざまに自分に悪口を言う」「自分の体臭を他人が悪臭だと感じている」などと思い込む[11]。
- 関係妄想:周囲の出来事を全て自分に関係付けて考える。「あれは悪意の仄めかしだ」「自分がある行動をするたびに他人が攻撃をしてくる」などと思い込む。
- 注察妄想:常に誰かに見張られていると思い込む[11]。「近隣住民が常に自分を見張っている」「盗聴器で盗聴されている」「思考盗聴されている」「監視カメラで監視されている」などと思い込む[注 1]。
- 追跡妄想:誰かに追われていると思い込む[11]。
- 心気妄想:重い体の病気にかかっていると思い込む。
- 誇大妄想:患者の実際の状態よりも、遥かに裕福だ、偉大だなどと思い込む。
- 宗教妄想:自分は神だ、などと思い込む。
- 嫉妬妄想:配偶者や恋人が不貞を行っている等と思い込む。
- 恋愛妄想:異性に愛されていると思い込む。仕事で接する相手(自分の元を訪れるクライアントなど)が、好意を持っていると思い込む場合もある。
- 被毒妄想:飲食物に毒が入っていると思い込む[11]。
- 血統妄想:自分は貴人の隠し子だ、などと思い込む。
- 家族否認妄想:自分の家族は本当の家族ではないと思い込む。
- 物理的被影響妄想:電磁波で攻撃されている、などと思いこむ。
- 妄想気分:まわりで、何かただ事でないことが起きている感じがする、などと思いこむ。
- 世界没落体験:妄想気分の一つ、世界が今にも破滅するような感じがする、などと思いこむ。
一人の統合失調症患者においてこれら全てが見られることは稀で、1種類から数種類の妄想が見られることが多い。また統合失調症以外の疾患に伴って妄想がみられることもある。関連語に妄想着想(妄想を思いつくこと)、妄想気分(世界が全体的に不吉であったり悪意に満ちているなどと感じること)、妄想知覚(知覚入力を、自らの妄想に合わせた文脈で認知すること)がある。
また、上記の妄想に質的に似ているが、程度が軽く患者自身もその非合理性にわずかに気づいているものを「 - 念慮」という。
これら妄想症状は突発的に起こることもあれば、数週間をかけて形成されていくこともある[11]。クレペリンは躁うつ病の特徴として迫害妄想をあげており、双極性でないことが診断に重要である。
知覚の障害と代表的な表出
幻覚 (Hallucination) とは実在しない知覚情報を体験する症状[10][11]。以下のものがある。
- 幻聴 (auditory hallucination):聴覚の幻覚[注 2]
- 幻視 (visual hallucination):視覚性の幻覚
- 幻嗅 (olfactory hallucination):嗅覚の幻覚
- 幻味 (gustatory hallucination):味覚の幻覚
- 体感幻覚 (cenesthesic hallucination):体性感覚の幻覚
統合失調症では幻聴が多くみられる一方[11]、幻視は極めて稀である。また、統合失調症以外の疾患(せん妄、てんかん、ナルコレプシー、気分障害、認知症など)、あるいは特殊な状況(断眠、感覚遮断、薬物中毒など)におかれた健常者でも幻覚がみられることがある。
幻覚を体験する本人は外部から知覚情報が入ってくるように感じるため、実際に知覚を発生する人物や発生源が存在すると考えやすい[11]。これらの幻覚の症状を説明するために、患者は妄想を形成しているのである[11]。
そのため、「悪魔が憑いた」、「狐がついた」、「神が話しかけてくる」、「宇宙人が交信してくる」、「電磁波が聴こえる」、「頭に脳波が入ってくる」などと妄想的に解釈する患者も多い。幻聴は、人によっては親切・丁寧であることもあるが[11]、多くの場合はしばしば悪言の内容を持ち[11]、患者が「通りすがりに人に悪口を言われる」、「家の壁越しに悪口を言われる」、「周囲の人が組織的に自分を追い詰めようとしている」などと訴える例は典型的である。また、幻味、幻嗅などは被毒妄想に結びつくことがある。
なお、体感幻覚に類似するものとして、体感症(cenestopathy)があるが、その異常感が常態ではみられない奇妙な性状のものであることをよくわきまえている点で,他のさまざまな体感幻覚とは異なる。
- 知覚過敏:音や匂いに敏感になる。光がとても眩しく感じる。
- 知覚変容発作:抗精神病薬の副作用からくる。
自我意識の障害
自己と他者を区別することの障害である。自己モニタリング機能の障害と言われている。すなわち、自己モニタリング機能が正常に作動している人であれば、空想時などに自己の脳の中で生じる内的な発声を外部からの音声だと知覚することはないが、この機能が障害されている場合、外部からの音声だと知覚して幻聴が生じることになる。音声に限らず、内的な思考を他者の考えと捉えると考想伝播につながり、ひいては「考えが盗聴される」などという被害妄想、関係妄想につながることになる。
- 考想操作(思考操作):他人の考えが入ってくると感じる。世の中には自分を容易に操作できる者がいる、心理的に操られている、と感じる。進むと、テレパシーで操られていると感じる。
- 考想奪取(思考奪取):自分の考えが他人に奪われていると感じる。自分の考えが何らかの力により奪われていると感じる。世の中には自らの考えがヒントになり、もっといい考えを出すものもいると感じる。進むと、脳に直接力がおよび考えが奪われていると感じる。
- 考想伝播(思考伝播):自分の考えが他人に伝わっていると感じる。世の中には洞察力の優れたものがいると感じる。その人に対して敏感になっている。進むとテレパシーを発信していると感じる。
- 自生思考(思考即迫):常に頭の中に何らかの考え・思考があり、うつ病患者の症例に多い「観念奔逸」と似て、思考がどんどん湧いてくる、思考が自らの意志でもっても抑えられない特有な思考の苦痛な異常状態をいう。これは、統合失調症の陽性症状の中でも最も深刻で重要な精神症状であるとされる。程度が重い患者では、頭の中が不自然な思考の熱状態で気がめいり、頭の中がとても騒がしく落ち着かないと訴え思える様な心理状態になる。
- 考想察知(思考察知):自分の考えは他人に知られていると感じる。世の中には自分の考えを言動から読めるものがいると感じる。進むと、自分は考えを知られてしまう特別な存在と感じる。自らのプライドを高く実際を認められずに、被害的にとらえてしまう。進むと、考想が自己と他者との間でテレパシーのように交信できるようになったと考え、波長が一致していると感じる。
- 強迫思考:自生思考と似て、ある考えを考えないと気が済まない、考えたくもない、あってはならない考えが不自然に浮かび上がり、他人に考えさせられていると感じられる様な尋常ではない状態をいう。中には、読書をする際に、「この部分を何回読まないと頭に記憶されない、覚えられない」といった内容の不合理な思考が瞬間的および随伴的に浮かぶ「文字強迫」などの症状が表面化されることもある。統合失調症の患者の中には、こうした抗不安薬などの服用でも効果および治癒率が低いとされる強迫性障害(旧名:強迫神経症)を発病当初から慢性的に同時に併せ持つ型の人もいるとされる。
行動や思考の変化
行動が無秩序かつ予測不可能となる[11]。
- 興奮:妄想などにより有頂天になっている[11]。意味もなく叫ぶ[11]。また自分が神か神に近きものまたは天才と思い一種の極限状況にある場合もある。
- 昏迷:意識障害なしに何の言動もなく、外からの刺激や要求にさえ反応しない状態。統合失調症の場合は表情や姿態が冷たく硬い上、周囲との接触を拒絶反抗的であったり(拒絶症)、終始無言(無言症)、不自然な同じ姿勢をいつまでも続ける(常同姿態〈カタレプシー〉)[12]。
- 拒食
陰性症状
陰性症状(Negative symptoms)とは、エネルギーの低下からおこる症状で、おおよそ消耗期に生じるもの。無表情、感情的アパシー、活動低下、会話の鈍化、社会的ひきこもり、自傷行為など[2][11]。
陰性症状は、初回発症エピソードから数年以上継続しうえる[11]。患者はこれらの陰性エピソードのために、家族や友人との関係にトラブルを招きやすい[11]。
感情の障害
- 感情鈍麻:感情が平板化し、外部に現れない。
- 疎通性の障害:他人との心の通じあいがない。
- カタレプシー:受動的にとらされた姿勢をとりつづける。
- 緘黙:まったく口をきかない。
- 拒絶:面会を拒否する。
- 自閉:自己の内界に閉じ込もる。
思考の障害
- 常同的思考:無意味な思考にこだわり続けている。興味の対象が少数に限定されている。
- 抽象的思考の困難:物事を分類したり一般化することが困難である。問題解決においてかたくなで自己中心的。
意志・欲望の障害
- 自発性の低下:自分ひとりでは何もしようとせず、家事や身の回りのことにも自発性がない。
- 意欲低下:頭ではわかっていても行動に移せず、行動に移しても長続きしない。
- 無関心:世の中のこと、家族や友人のことなどにも無関心でよく知らない。
- 引きこもり:外出意欲の低下[11]。
その他の症状
- 認知機能障害
- 認知機能障害は統合失調症の中核をなす基礎的障害である。クレペリンやブロイラーなどの当該疾患の定義の時代(1900年頃)より、統合失調症に特異的な症状群として最も注目されていた。認知機能とは、記憶力、注意・集中力などの基本的な知的能力から、計画・思考・判断・実行・問題解決などの複雑な知的能力をいう。この認知機能が障害されるため、社会活動全般に支障を来たし、疾患概念より障害概念に近いものとして理解されている。
- この障害ゆえに、作業能力の低下、臨機応変な対処の困難、経験に基づく問題解決の困難、新しい環境に慣れにくい、発達障害患者の代表的な症状の一つとされるディスレクシア(読字障害、難読症)と似ていて、判断力・理解力・注意力の低下・散漫さから、本・文章・文字を理解して目で追って黙読したり、記憶・暗記したりすることが困難になる。
- しばしば、読書が普通にできない、本・文章・文字を読んだ時に、そこに書かれている内容が瞬間的に一見して、ちらりと目には認知できうるが、本を読んでも全く頭に内容がスムーズに入ってゆかない、味わい咀嚼しながら理解・認識できないなどと訴えるなど、社会生活上多くの困難を伴い、長期のリハビリが必要となる。
- 統合失調症が、慢性の脳細胞の機能性疾患・障害であると言われるのは、このためである。
- 感情の障害
- 不安感・焦燥感・緊張感。挑戦的行動[13]
- 抑うつ・不安を伴うこともある。自分には解決するのが非常に難しい問題が沢山あり、抑うつ・不安になっていることもあるだろう。抑うつは現状・将来を悲観するという場合と病名から来る自分のイメージ、他者の健常者や同じ心の病の者との比較ということもある。一般的には、統合失調症の患者の中には、理性および感情面で、鈍感と敏感の共存状態に陥る例が多く認められると言われる。
- 躁状態:何でもできる気分・万能感、金遣いが荒くなる、睡眠時間が少ないなど。
- パニック発作
- 統合失調症でもパニック障害類似のパニック発作が起こることがある[14][15]。治療法はパニック障害にほぼ準じる[16]。
- 連合弛緩
- 連想が弱くなり、話の内容がたびたび変化してしまう。単語には連合がある。わかりやすく言えば単語の意味での関係でのグループ(連合)がある。この連合が弛緩して全然関係のない単語を連想することである。しかし落語にあるようなダジャレは連合弛緩でない。連想が関係を無視しているのである。
- 両価性
- 一つの物事に対して、逆の感情を同時に持つこと。
- 独言・独笑
- 幻聴や妄想世界での会話である。原因には、長年の投薬による認知機能低下の説もある[17]。
- 言葉のサラダ
- ワードサラダとも呼ぶ。単語が並んでいるだけで正しい文章にならず、作語もある病状を指す。精神医学用語である。
原因
薬物誘発性精神病の症状は、統合失調症の症状と違いがなく、熟練した精神科医でも区別は困難とさる。薬物誘発性精神病と統合失調症の区別が曖昧なため、薬物誘発性精神病モデルは、統合失調症モデルとして研究で頻用されている。症状は同じだが、薬物誘発性精神病は後天性で、統合失調症は遺伝性という点で異なる[18]。しかし、DSM-5においては、薬物誘発性精神病は統合失調症と区別されている。
発病メカニズムは不明であり、明確な病因は未だに確定されておらず、いずれの報告も仮説の域を出ない。仮説は何百という多岐な数に及ぶため、特定的な原因の究明が非常に煩わしく困難であるとされるが今日の精神医学の発達上の限界・壁であるとされる。
根本的な原因は不明であるが、遺伝要因が大きい。遺伝の影響度は研究によって異なるが、双子を用いた研究のメタ分析では遺伝率が81%と報告されている[19]。ほか神経伝達物質のインバランス等の脳の代謝異常と、心理社会的なストレスなど環境因子の相互作用が発症の発端になると予想されている。心理社会的な因子としては、「ダブルバインド」や「HEE(高い感情表出家族)」などが注目されている。生物学的な因子としては、妄想および幻覚症状は脳内の神経伝達物質の化学的不均衡であるという仮説が提唱されている。主にドーパミン拮抗薬である抗精神病薬の適量の投与によって、症状の抑制が可能であるとされる。
検査
- 血液検査
- 血液検査は患者の血液採取を行い、規模の小さな開業医の場合検査結果を外部委託することになる。薬物投与による肝機能の衰えなど(ALT:GPTなど)の副作用の有無を検査するためである。通常の場合3か月程度の間隔で行われると同時に、電解質の異常や糖尿病の形跡、低血糖症、栄養失調の診断にも生かされ、より正確な診断がなされる。外部委託先にビタミンやミネラル類の検査項目も追加できるが、そのような依頼は極めてまれである[20]。
- CT・MRI検査
- CT・MRIにて、側頭葉・頭頂葉の灰白質の体積の減少を認める場合がある。白質の体積は減少していない。
- 脳体積の減少は長期的な話である。人間間でも脳体積は少なくとも10%は異なるため、一度の体積測定で判定することはできない。また、抗精神病薬が脳体積を減少させることも知られている[21][22][23][24][25][26]。
- →「抗精神病薬 § 副作用」も参照
- SPECTによる検査
- SPECTにて、課題遂行中や会話時に通常見られる前頭前野の血流増加が少ないという報告がある。
- プレパルス抑制試験
- プレパルス抑制を参照。
- 遺伝子検査
- 遺伝子性の疾患を特定するためのツールとしてDNAシークエンシングがある。
- 尿検査
- 国内の精神科において尿検査を行うことはない。ピロール尿症におけるクリプトピロールや違法薬物の使用有無を調査することができるが、臨床試験的に尿を検査することがごく稀にある。生化学研究設備があればクリプトピロールなどの化学物質を判別できるが、そのような精神医療機関は国内には存在しない。
- NIRS脳計測装置・光トポグラフィー検査
- NIRS脳計測装置や光トポグラフィー検査により、問診と同時に脳内の血流量を赤外線により測定する。うつ病、統合失調症、双極性障害の判断材料になる可能性がある現在研究中の検査手法である。国内ではわずかだが実施している。最先進医療の分野である。
- 信頼性は未だ低く、「高価なおもちゃ(原文ママ)」の域を出ていない[27][28]。
PANSS (Positive and Negative Syndrome Scale) での評価[29]
- 陽性尺度
- 7項目 - 妄想・概念の統合障害・幻覚による行動・興奮・誇大性・猜疑心・敵意
- 陰性尺度
- 7項目 - 情動の平板化・情動的ひきこもり・疎通性の障害・受動性意欲低下による社会的ひきこもり・抽象的思考の困難・会話の自発性と流暢さの欠如・常同的思考
- 総合精神病理評価尺度
- 16項目 - 不安・罪責感・緊張・衒奇症と不自然な姿勢・抑うつ・運動減退・非協調性・不自然な思考内容・失見当識・注意の障害・判断力と病識の欠如・意志の障害・衝動性の調節障害・没入性・自主的な社会回避
診断
生物学的指標はない[30]。
診断基準
ICD-10での診断基準[31] | DSM-IV-TRでの診断基準[31] |
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統合失調症で一番目立つ症状は被害妄想と幻聴である。しかし必ずしも上記の症状が現れるという訳ではない。統合失調症患者が初診時に心因反応という診断名が付いている場合がある。心因反応は心因性で統合失調症は内因性である。外因性精神病という外傷によるものもある。これらは違う病気とする学説もある。
下位分類
分類はICD-10により[32][33][注 3]以下それぞれ「〜」に「統合失調症」が入る。「妄想型」「破瓜型」「緊張型」の3つが代表的である。
- 妄想型〜 (ICD-10 F20.0 Paranoid schizophrenia)
- 連合障害や自閉などの基礎症状が目立たず妄想・幻覚が症状の中心である。統合失調症はかつて早発性痴呆症と呼ばれていたように早発(思春期から青年期)することが多いが、当該亜型は30代以降の比較的遅い発症が特徴的であるとされる。また、薬物療法に比較的感応的とされる。しかし、抗精神病薬の服薬をしても精神症状がとれず慢性的に持続する症例もある。
- 破瓜型〜 (ICD-10 F20.1 Disorganized schizophrenia)
- 破瓜(はか)とは女子16歳のことで、破瓜型は思春期・青年期に好発とされる。連合弛緩等の連合障害が主要な症状で、解体した思考や行動(Disorganized thinking and behavior)が目立つ。幻覚妄想はあっても体系的ではない。感情の表出、自発的行動が徐々に失われ、最終的に人格荒廃に至るケースもあるとされる。今日では破瓜型は社会的・精神医学的な発達の結果として、比較的軽症な程度ですみ、人格のまとまりを保つ症例が報告されるようになってきてもいる。
- アメリカ精神医学では、この破瓜型(Hebephrenia)を「解体型(Disorganized)」と呼んでいる。
- 緊張型〜(ICD-10 F20.2 Catatonia schizophrenia)
- 筋肉の硬直症状が特異的で興奮・昏迷などの症状を呈する。陽性時には不自然な姿勢で静止したまま不動となったり、また逆に無目的の動作を繰り返したりする。近年では比較的その発症数は減少したと言われる場合がある。
- 型分類困難な〜 (ICD-10 F20.3 Undifferentiated schizophrenia)
- 一般的な基準を満たしているものの、妄想型、破瓜型、緊張型のどの亜型にも当てはまらないか、二つ以上の亜型の特徴を示す状態。
- 〜後抑うつ (ICD-10 F20.4 Post-schizophrenic depression)
- 急性期の後に訪れることが多く、自殺などを招くことがある。治療法は、うつ病にほぼ準じる。
- 残遺型〜 (ICD-10 F20.5 Residual schizophrenia)
- 陰性症状が1年以上持続したもの。陽性症状はないかあっても弱い。他の病型の後に見られる急性期症状が消失した後の安定した状態である。
- 単純型〜 (ICD-10 F20.6 Simple schizophrenia)
- 連合障害、自閉などの基礎症状が主要な症状で、幻覚妄想はないかわずかである。破瓜型の亜型に含めるケースもある。解体型に比べ内省的で病識の欠如が稀であるとされる。
- その他の〜 (ICD-10 F20.8 Other schizophrenia)
- その他の統合失調症は医療診断を示すために使用することができない。
- その他の統合失調症には、F20.81(Schizophreniform disorder)とF20.89(Other schizophrenia)の2種のコードが含まれる。
- この節の加筆が望まれています。
- 〜、詳細不明 (ICD-10 F20.9 Schizophrenia, unspecified)
- 統合失調症、特定不能のもの。
- この節の加筆が望まれています。
先進事例
先進的な医療、研究事例として統合失調病の判別に光トポグラフィー、脳SPECTなどの装置による画像診断をおこなうことがある[34][35][36]。
鑑別疾患
以下の疾患を除外する[31]。
- てんかん
- 中枢神経系腫 (特に前頭葉・大脳辺縁系)
- 中枢神経系外傷
- 中枢神経系感染(特にマラリアや他の寄生虫性疾患、神経梅毒、ヘルペス脳炎)
- 脳血管発作
- そのほかの中枢神経系疾患(白質萎縮、ハンチントン病、ウィルソン病、全身性エリテマトーデスなど)
- 急性一過性の精神病
- 情動障害
- 妄想性障害
- 統合失調感情障害、気分障害
- 物質乱用、投薬による症状、一般身体疾患
- 広汎性発達障害 [注 4]
抗NMDA受容体抗体脳炎も2007年に提唱された比較的新しく発見された疾患であるが、NMDA受容体機能低下による統合失調症と共通病態と考えられるため、鑑別が必要である[38]。
精神医学は数字で測れる指標は少ないが、主要な精神疾患については症状や経過の詳細がわかれば通常の診断能力を持つ精神科医にとって、正確に診断することは難しいものではなく、誤診も一般に思われているよりはるかに少ないとしている[39]。
前述におけるプレパルス抑制およびびっくり病、さらには糖尿病や低血糖症と差異を見出さなければならない。長時間に渡る問診と共に、エビデンスすなわち科学的な根拠を基とする判断の上で、精神科医は正確な統合失調症の症状を診断しなければならない。
診断の問題点
統合失調症の確定診断はそもそも難しいとされる。DSM-II(1968年)の前文は「最善は尽くしましたが、(アメリカ精神医学会の)委員会はこの障害について合意を得ることができませんでした。合意できたのは診断名だけです[注 5]」(ix頁)と述べている。DSM-III(1980年)は「統合失調症の概念の範囲は曖昧です[注 6]」(181頁)、DSM-III-R(1987年)は「統合失調症に限っては、単一の特徴をいつも示さなかったり、生じないことに注意すべきです[注 7]」(188頁)と述べている[40][41][42][43]。
1988年、ニューヨーク州立大学のトーマス・サズ博士は「統合失調症はとても曖昧に定義されています。実のところ、話し手の気に入らない行動のほとんど全てにしばしば適用される用語です[注 8]」と述べている[44]。
1994年、著名な統合失調症研究者[注 9]であるナンシー・C・アンドレアセン博士は、何が統合失調症なのか分からないと認めており、「ヨーロッパの人々は、誰が本当に統合失調症を持っているのか、何が本当の統合失調症なのか、解決策を見つけて私たちを助けることによって、アメリカの科学を救うことができます[注 10]」と述べている[46][47][48]。
精神科医にとって、統合失調症の病の性格、精神医療現場の環境から他の精神疾患や発達障害との誤診が起きる可能性があるとの意見や報道もある[49]。児童精神医学は専門外の場合がある。数を上げるとその医学を専門としている『児童精神科医』は約200人ほどしかいない[50]など。誤診されやすいものとしては双極性障害、統合失調感情障害、強迫性障害、びっくり病 (Hyperekplexia)、ナルコレプシーにおける情動脱力発作 (Cataplexy) やアスペルガー症候群が挙げられている。特に双極性障害は統合失調と遺伝子的スペクトラムをなすとの仮説もあり、しばしば幻聴やてんかんを伴う。
予防の可能性
統合失調症の予防医学対策としては、様々な提唱がされているが、反証可能性がない。貧困対策、大麻および違法薬物の使用の防止あるいは大麻の推奨、アルコール飲料摂取の防止、喫煙の防止、あるいは喫煙の推奨、小麦製品などのグルテン含有食品の摂取の防止 (グルテン原因仮説)、レバー等に含まれるピリドキサミンの積極的な摂取 (カルボニルストレス説)、コーヒーなどのカフェインの摂取の防止、幼少時期のトラウマ(虐待、いじめ等)の防止、家族・医療関係者の高感情表出、いわゆるHIGH-EE(High expressed emotion)の防止、妊婦のインフルエンザなどの感染症の防止、睡眠不足の防止あるいは過眠の防止、過食の防止、運動不足の解消、魚介類に多く含まれるω-3脂肪酸の積極的な摂取、朝食の摂取、親知らずの抜歯などが挙げられが、いずれも仮説である[要出典]。
英国国立医療技術評価機構(NICE)は、統合失調症発症リスクの高いグループについては、個人単位での認知行動療法(CBT)を提供し、かつ、パーソナリティ障害、薬物乱用、うつ病、不安障害などが見られれば、それらに診療ガイドラインに従った治療を提供するとしている[51]。発症防止、予防を目的とした抗精神病薬の投与は行ってはならない[52]。
治療
英国国立医療技術評価機構(NICE)のガイドラインによれば、第一選択肢は経口抗精神病薬と心理療法(個別CBTおよび家族介入)の両方を行うことを提案している[53]。しかしプライマリケア医は、精神科専門医のアドバイスを得ていない限り、初回発症の段階で抗精神病薬を処方してはならないともしている[54]。
外来治療と入院治療に分けられる。薬物療法が大きな柱となるが、その他の治療法も病相の時期(急性期、慢性期など)に応じて適宜選択される。いずれにせよ、精神科医に受診、相談することが望ましい。また、患者による申請により、障害者総合支援法による自立支援医療(精神通院医療)による、数年に渡る長期間の治療に対する医療費(国民健康保険による3割負担)の自己負担軽減策として、公費負担医療による医療費減額が受けられる。支援者として、精神科医(精神保健指定医)・看護師・薬剤師・精神保健福祉士・社会福祉士・作業療法士・理学療法士・保健師・公認心理師・音楽療法士・栄養士・管理栄養士などが専門職として挙げられる。患者同士のピアサポートも注目されている。
援助の方針
家族の負担は大きいとされる。自らが病気であると認識できないケースも多いため、通院拒否する場合も多く、これも家族への負担を増加させている。患者に妄想・妄言が含まれる場合、それを否定すると孤立感を増し症状が悪化する例が多いとされる。また、反対に肯定した場合も妄想を補強することになり、症状の悪化をもたらす可能性がある。また、話を聞かない場合においても孤立感をもたらすため、話を根気よく聞く必要があるが、あまりにも真剣に聞きすぎると、聞き手側のストレスになり、場合によっては聞き手側にうつ病などの精神疾患をもたらすことがあるため、あまり真剣に聞くことも推奨されない。
介護職の対応としては、妄想の話をしているときには、否定も肯定もせず、中立的に話を最後まで聞き、相手には真剣に聞いている態度を示しつつも、内実あまり真剣に聞かずに軽く受け流すという対応を正解としている(ただし症例は多様であり、ケースバイケースのため専門医の指示は必須)とされる[55]。
厚生労働省のサイトにおいて、患者家族に対して「病気とそのつらさを理解する」「医療チームの一員になる」「接し方を少し工夫する」「自分自身を大切にする」事などを推奨しており、患者に対して非難的あるいは批判的な言動を慎み、また「原因を探すのはひとまず脇に置いて、具体的な解決策を一緒に考える、という接し方が理想的」と呼びかけている。また、心配しすぎてオロオロしないようにも勧めている[56]。
治療や社会復帰をすすめるために必要な生活保護などの公的扶助制度、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の活用、様々なアドバイスなどの社会的援助を、精神保健福祉士などが支援する。看護師と精神保健福祉士が協働する訪問看護などもある。患者家族の相互扶助のため、全国精神保健福祉会連合会が結成されている。また、地方自治体にも家族への相談窓口などが設置されていることが多い。
薬物療法
主にドーパミンD2受容体拮抗作用を持つ抗精神病薬(日本では20数種類が使用できる)の投与が、陽性症状を中心とした症状の軽減に有効である。近年、従来の抗精神病薬よりも、副作用が少なく陰性症状にも有効性が高いなどの特徴をもった『非定型抗精神病薬』と呼ばれる新しいタイプの薬剤(リスペリドン、リスパダール・コンスタ、ペロスピロン、オランザピン、クエチアピン)が開発され、治療の主流になりつつある。さらに、最近アリピプラゾール、ブロナンセリン、クロザピン、パリペリドンが加わり、日本では現在8種類の非定型抗精神病薬が使用可能となっている。ただ、非定型抗精神病薬における新たな問題もある。副作用面では、オランザピン、クエチアピンが、稀に高血糖・糖尿病・体重増加を誘発することがある。また、医療経済的に見るとオランザピン、クエチアピン、アリピプラゾールなどの薬価が非常に高く設定されている。こうした見解を経て、定型抗精神病薬が再考されている。
抗精神病薬の一般的な副作用として、黒質線条体系のドーパミン拮抗作用によるパーキンソン症候群、錐体外路症状、アカシジア、ムスカリン拮抗作用による便秘、口渇、眼のかすみ、抗ヒスタミン作用などによる眠気、体重増加など、抗アドレナリンα1拮抗作用による低血圧が生じることがある。また、統合失調症に抑うつ症状や強迫症状を伴う場合などに抗うつ薬を、不安症状が強い場合に抗不安薬を、不眠が強い場合に睡眠薬を併用することもある。
抗精神病薬の換算方法としてクロルプロマジン換算があり、参考の一つとして利用されている。NICEは、薬剤切替時を除いて抗精神病薬を多剤投与してはならない[57]、急速大量抗精神病薬飽和療法(Rapid Neuroleptization) は、急性エピソード時の差し迫った暴力鎮静を除いて行ってはならないと勧告している[57][13]。日本の薬物療法においては多剤大量処方という問題を抱えており、その副作用で死亡者が出るなどの事例がある[58]。
また薬物療法を中断すると、やめた当初は調子がいいように感じることもあるが、多くは3か月、半年と時間が経つにつれて再発する(怠薬)。自己判断で止めるのではなく、精神科医の指導のもと継続して服用することが重要である[59]。NICEは、抗精神病薬の処方は利益と副作用を考慮の上、年に一度レビューするとしている[60]。
統合失調症に柴胡加竜骨牡蛎湯、抑肝散、加味逍遥散、半夏瀉心湯等、漢方薬が有効なこともある。ただし、統合失調症を漢方薬のみで治療するのは難しく関連症状に対して使用される[61]。また、漢方の温胆湯が統合失調症に効く。短期的に全体的改善が生じる。他の抗精神病薬と比較して有効性が高いわけではないが、錐体外路症状が生じにくいことが示された。[62]
身体的健康
NICEは患者に対し、健康的な食事と運動プログラムの組み合わせを提供すべきであるとしている[63]。
心理社会的介入
- 認知行動療法(CBT)
- 薬物療法と並行して、疾患の心理的な受容、疾患や治療に伴い経験した喪失体験の受容などを援助するために個人精神療法を行うこともある。異性関係のことが自分の中であまりにも整理されていない人が多いとされる。異性の気持ちになって物事を見ることも大切な心理療法である。
- NICEは、統合失調症を持つすべての人にCBTをオファーすべき[64]、その場合は個人別セッションを最低16回行うとしている[65]。
- 心理教育(Psycoeducation)
- 薬物療法によって陽性症状が軽減しても、自らが精神疾患に罹患しているという自覚(病識)を持つことは容易ではない。病識の不足は、服薬の自己中断から再発率を上昇させることが知られている。病識をもつことを援助し、疾患との折り合いの付け方を学び、治療意欲を向上させるために心理教育を行うことが望ましい。また、患者本人のみならず、家族の援助(家族教育)も行うこともある。精神保健福祉士が主に担当。
- 統合失調症の患者は正直すぎると言われる。なにもかも正直でなくていい、秘密があっていいということを教育する。秘密にすることで自分を守ることはマナーでもある。これを身につけることが社会復帰のために必要である。
- ソーシャル・スキル・トレーニング (SST)
- 統合失調症を有する患者は、陰性症状に起因するために、社会的経験が不足しがちなことにより、社交、会話などの社会的技能(ソーシャル・スキル)が不足していることが多い。それらの訓練として、ソーシャル・スキル・トレーニング (SST) を行うことがある。デイケアプログラムの一環として行われることが多い。精神保健福祉士・作業療法士が主に担当。
- NICEは、SSTをルーチンとして実施してはならないとしている[64]。
- 作業療法、芸術療法
- 絵画、折り紙、手芸、園芸、陶芸、スポーツなどの作業活動を主体として行う治療。非言語的な交流がストレス解消につながったり自己価値観を高めたりする効果がある。病棟活動やデイケアプログラムの一環として行われることが多い。作業療法士が担当。急性期では、作業活動を通して幻覚・妄想などを抑え、現実世界で過ごす時間を増やしたり、生活リズムを整えることを目標とする。そのためには患者が集中できるような作業活動を見つけて適用することが必要となる。慢性期では、退院を目標とする。そのためには服薬管理や生活リズム管理など、自分のことは自分でおこない自己管理ができるようになり、作業能力と体力も向上することが必要となる。慢性期での作業療法では患者のペースで行なえる作業活動を徐々に増やしていくよう心がける。
- NICEは、陰性症状の緩和のため、統合失調症を持つすべての人に芸術療法がオファーされるべきであるとしている[64]。
アドヒアランス療法は行ってはならない[64]。カウンセリングや支持的精神療法はルーチン実施してはならないが、しかし他の心理療法が提供できない場合などは、患者の好みに合わせて提供できる[64]。
その他
- 電気けいれん療法 (ECT)
- 薬物療法が確立される以前には電気けいれん療法(電気ショック療法)が多く用いられてきた。これは左右の額の部分から100V、パルス電流を脳に1 - 3秒間通電してけいれんを引き起こすものである。
- 電気けいれん療法の有効性は確立されているとされている[66]が、一方で有効性の皆無も臨床実験で報告されている[67][68][69]。かつて電気けいれん療法が「懲罰的」にされていたこともあり、実施の際に患者がけいれんを起こす様子が残虐であると批判されていること、稀に電気けいれん療法が脊椎骨折等の危険性があるため、現在では麻酔を併用した「無痙攣電気けいれん療法」が主流である。しかし、副作用や無痙攣電気けいれん療法の実施の際には、麻酔科医との協力が必要であることなどからして、実質的に大規模な病院でしか実施できない。現在では、この治療法は主力の座を薬物療法にその座を譲ったものの、急性期の興奮状態の際などに行われることもある。
- NICEは「現在の根拠では、ECTを統合失調症の一般的管理としては推奨することはできない」としている[注 11]。ECTは全ての治療選択肢が失敗したか、または差し迫った生命危機の状況のみに使われるべきであるとしている[70]。
- 鍼治療
- 統合失調症の症状の軽減と関連疾患に対して鍼治療が行われることがある[71][72]。
経過
前駆期、急性期、消耗期(休息期)、回復期と経過を分けている。
- 前駆期
- かかりはじめで、妙に身辺が騒がしく感じる・担がれている感じがする(神輿に乗った気分と騙されている気分の両方)、眠れない、音に敏感になるなど。過労、睡眠不足に注意。
- 急性期
- 症状が激しい時期。不安になりやすい・不眠・幻聴・妄想、脳が働き過ぎの状態。
- 消耗期
- 元気がなくなる時期。眠気が強い・体がだるい・ひきこもり・意欲がない・やる気がでない・自信が持てない、脳が働かなさすぎの状態。数か月単位の休息、焦りは禁物。
- 回復期
- ゆとりがでてくる・周囲への関心が増える、SST・リハビリテーションなどを行う時期。
例えば、重度の骨折をした場合、一般的に診断、治療、回復、リハビリ、寛解(かんかい)という段階を経る。この中でもリハビリは困難を伴う一方大変重要な段階であるが、この疾患にもこれと同じことが当てはまる。
陽性症状は時間の経過により改善することも多く、それとともに陰性症状が目立ってくる。しかし、抗精神病薬の投与をしても慢性的に陽性および陰性症状が持続して残る患者の例も多い。長期療養の結果、晩年期になると長年におよび続いた顕著な精神症状が燃え尽きる様に寛解されるに至るという医学的な考え方もある。いわゆる「晩期寛解」のことである。
予後
統合失調症の予後については「進行性経過を取り、ほとんどが人格の荒廃状態に至る」というイメージ、ないしスティグマ(偏見)が今日もなお残っているが[2][73]、これは事実に反している。
過去(特に薬物療法がなかった時代)に比べ、全体的に予後はかなり向上しているといわれている。英国のデータでは、患者は困難や将来的な再発への脆弱性を抱えながらも、ほとんどの人々は回復するという根拠がある[注 12]。英国での5年追跡調査では、22%は1回の発病エピソードのみで完全寛解、35%は数回のエピソードを繰り返し軽い機能障害が見られる、8%は数回のエピソードで障害も継続、35%は数回のエピソードで障害も増悪していた[74]。
病型別に予後を見ると、緊張型や妄想型では、幻覚妄想などの症状の方が抗精神病薬に反応しやすく、予後がよく、破瓜型や単純型などの陰性症状には、治療の効果が得られにくいため予後が悪いと一般的に言われている。ただし、こうした傾向はあるが、妄想型などでも治療に反応しない例も稀ではなく、病型により機械的に予後が予測できるようなものではない。
患者の生活態度や薬物投与を含めた環境を改善することで症状を軽減できるが、生活レベルでの具体的な改善策は得られていないのが現状である。患者にもよるが、患者本人の病気に対する問題意識が欠如していてフィードバックが効かず、患者が入退院を繰り返すなどの日本固有の問題も指摘されている。一定数一定規模における精神科ではソーシャルワーカーを設置する義務があるが、ソーシャルワーカーは患者本人の生活改善を提案・提示するまでもなく、生活保護の申請を幇助したり、障害年金受給の斡旋などを行っているのが現状である。欧米諸国では精神疾患[何の?]で入退院をするような事例はほんのわずかであり、通常では5-6回の通院で終わる。[要検証 ]日本では開業医を除いた場合、精神科精神病棟での一定の病床数を構えるという独特な形態をとるとされており、海外からは異端視されていると同時に、商業経営化した医療と揶揄されている。
死亡率
統合失調症患者の死亡率は、一般人口の約2倍以上とされる[75]。
また患者の生涯自殺率は10%以上で、これは一般人口の12倍の値であり[6]、およそ5%が自殺を完遂する[76]。発症後数年間は特に自殺リスクが高い[2]。特に患者が喫煙者の場合、自殺企図の危険は有意に高くなる[77]。
陽性症状が強い時期に、幻聴から逃れたり妄想のために自殺をする患者もいるが、陰性症状しか見られない段階でも思考の短絡化(健康な人の適切な思考でなく、例えば、会社を辞めればすむ問題なのに究極の選択である自殺を考えるように順序建てて物事を考えられない。優先順位がつけられない)によって少しの不安でも耐えられずに自殺してしまうこともある。
疫学
どの年齢でも発症するが、特に思春期から青年期において、自立した生活を開始した頃に発症することが多い[2]。男性と比較して女性は平均発症年齢が遅く、閉経後にも小さな発症のピークがある。
罹患率・有病率など
no data < 185 185 - 197 197 - 207 207 - 218 218 - 229 229 - 240 | 240 - 251 251 - 262 262 - 273 273 - 284 284 - 295 > 295 |
生涯発病率は約0.85%(120人に1人)であり、まれな病気ではない[2]。米国では、生涯罹患率は約1%[78]で年間発症者数は10万人当たり1000人[79]。カナダにおける12ヶ月有病率は0.61%(男性0.61%、女性0.61%)[80]であった。
児童青年(5 - 18歳)においては、有病率は0.4%[81]。英国の精神病院に入院する10 - 18歳のうち、24.5%は統合失調症であった[81]。
日本においては、厚生労働省による2008年調査では、統合失調症あるいはそれに近い診断名で日本の医療機関に受診中の患者数は79.5万人[82]。
研究対象となった地域・人種などにより罹患率の差があるが、診断基準にも左右され、その意味は明らかではない[83]。アイルランドでの地方間における罹患率の差も議論の対象となっている。
合併症の疫学
統合失調症患者の合併症で、特に多いのは抑うつと薬物乱用である[75]。患者の少なくとも25%は常時抑うつであり、また米国患者ではアルコール依存が30%以上、麻薬25%以上、喫煙率は50%以上であった[75]。
またがんによる死亡率が低いことが知られている。デンマークで1980年まで行われた研究では、がん発生率は男性で健常者の67%、女性で92%であった。男性統合失調症患者の肺がんは高い喫煙率にもかかわらず、健常者の38%であった。統合失調症治療に使われる向精神薬が抗腫瘍効果をもつためであるとされている[84]。さらに、統合失調症の患者は関節リウマチに罹患しにくいことが知られている。最近の研究[85]によれば、およそ4倍前後の差があるとされる。
歴史
19世紀のドイツの精神科医エミール・クレペリンが複数の脳疾患を統一的な脳疾患カテゴリーとしてまとめ、早発性痴呆症を提唱した。1911年、スイスの精神科医オイゲン・ブロイラーが症状群の性質から、著書『早発性痴呆症あるいは精神分裂病群の集団』(『Dementia Praecox oder Gruppe der Schizophrenien』)の中でSchizophreniaを造語し定義した[4]。ブロイラーによれば、当該疾患の特徴は「精神機能の特徴的な分裂(Spaltung der verschiedensten psychischen Funktionen)」であるとし、Schizo(分裂)、Phrenia(精神病)と呼称した。ここでいう精神機能とは、当時流行した連合主義心理学の概念であり、また精神機能の分裂とは主に連合機能の緩みおよび自閉症状を意味する。
クレペリンは死後の脳解剖から前頭葉に類似の細胞変性を観察しており、早発性痴呆群を統一的な統計カテゴリーとした。しかし、ブロイラーは相当多数の疾患群の集合からなると予想しており、現在まで決着はついていない。
クレペリンおよびブロイラーが例示した疾患群は以下である。
- 単純型痴呆
- 破瓜病
- 緊張病
- 妄想性痴呆
ここでいう痴呆は、認知症とは全く異なり、当時、精神の不調全般に使われていた用語である。
年表
- 古代ギリシャから似たような病の存在が知られていた。
- 1852年、フランスのベネディクト・モレルが、統合失調症を初めて公式に記述し、Demence precoce(「早発性痴呆」)と呼称した。
- 1871年、ドイツのエヴァルト・ヘッカーが「破瓜病」[注 13]を著す。
- 1874年、ドイツのカール・カールバウムが「緊張病」[注 14]を著す。
- 1899年、ドイツのエミール・クレペリンが Dementia Praecox(「早発性痴呆」)を著し、破瓜病、緊張病に妄想病を加えてまとめる。
- 1911年、スイスのオイゲン・ブロイラーは、必ずしも若年時に発症するとは限らず、また必ずしも痴呆に到るとは限らず、この病気の本性は観念連合の弛緩にあるとして Dementia Praecox(「早発性痴呆」)を Schizophrenie(旧称「精神分裂病」)と改名し疾患概念を変えた。
- 1935年以降、日本では公式には1975年まで多くの人がロボトミー(脳の外科手術)を受ける。
- 1937年、日本精神神経学会の精神病学用語統一委員会が、Schizophrenie の日本語訳を「(精神)分裂病」とする試案を提出した。それ以前は、日本国内では、「精神内界失調疾患」「精神解離症」「精神分離症」「精神分裂症」など、様々な訳語が使用されていた。
- 1939年以降、ナチス・ドイツでは統合失調症患者等をユダヤ人と同等に見なし虐殺した(T4作戦)。
- 1952年、フランスの精神科医ジャン・ドレーとピエール・ドニカーがクロルプロマジンの統合失調症に対する治療効果を初めて正しく評価し、精神病に対する精神科薬物療法の時代が幕を開けた。
- 1957年、ベルギーの薬理学者パウル・ヤンセンが抗精神病薬ハロペリドールを開発。
- 1967年、イギリスの精神科医デヴィッド・クーパーは反精神医学を唱え、精神分裂病は存在しないと主張。その理論は大方の承認を得るまでには至っていない[86]。
- 1984年、非定型抗精神病薬のリスペリドンが開発される。
- 1990年、中安信夫が初期分裂病(現・初期統合失調症)という臨床単位を提唱。
- 1993年、「精神分裂病」という名称が、精神そのものが分裂しているというイメージを与え、患者の人格の否定や誤解、差別を生み出してきた経緯があることから、精神障害者の家族の全国連合組織全国精神障害者家族会連合会(全家連)が日本精神神経学会に対し改名の要望を出す。
- 2002年8月、日本精神神経学会の決議で精神分裂病は統合失調症と改名された。同月、厚生労働省が新名称の使用を認め全国に通知した。
- 2005年5月、文部科学省科学技術政策研究所の第8回デルファイ調査報告書によると2022年までに統合失調症の原因が分子レベルで解明されると予測している。
江戸時代の日本
江戸時代の日本の医家の間では、「柔狂」や「剛狂」と呼ばれる精神疾患が知られており、それぞれヨーロッパでの「破瓜病」、「緊張病」に相当する病状であったとされている[87]。中期の儒医香川修徳(香川修庵)は著書『一本堂行余医言』[88]で「狐憑きも野狐の祟りなどではない。被害妄想、誇大妄想、感情荒廃、強迫観念、自閉、不眠、幻想、抑うつなどは狂の症状である」との意味を記していた[89]。
病名呼称の歴史
19世紀には原因は不明であり、認知症が早期に発症したものと誤解されたため早発性痴呆という名称がモレルによってつけられ浸透した。 古代ギリシャ語の σχ?ζειν+φρ?να(分裂+理性、心) に由来し、ドイツ語の Schizophrenie という言葉が作られた。
日本では、明治時代に精神分裂病が、ドイツ語の Schizophrenie に対する訳語として用意された。
精神分裂病の「精神 (phrenie)」は、本来は心理学的な意味合いで用いられた単語であり、知性や理性を現す一般的な意味での精神とは意味が異なる。ところが日本では、「精神分裂病」という名称から、文字通り「精神が分裂する病気」と一般的に解釈され、ひいては「理性が崩壊する病気」と誤った解釈がされてしまうことが多々あった。実際には、重度の統合失調症を患っておりながら、ノーベル経済学賞を受賞したジョン・ナッシュなどがおり、理性が崩壊するとは限らない。
統合失調症の患者の家族に対して、社会全体からの支援が必要とされておりながら、誤った偏見による患者家族の孤立[90]も多く、その偏見を助長するとして患者・家族団体等から、病名に対する苦情が多かった。また、医学的知見からも「精神が分裂」しているのではなく、脳内での情報統合に失敗しているとの見解が現れ始め、学術的にも分裂との命名が誤りとみなされてきた。そこで、2002年に、日本精神神経学会総会で Schizophrenia に対する訳語を統合失調症にするという変更がなされた[91]。「病」ではなく「症状群」であるといった指摘もなされた[91]。
名称変更にかかった費用の一部は治療に使われる抗精神病薬を販売している外資系企業から提供されたという[92]。(全国精神障害者家族会連合会を参照のこと。)
治療史
古代ギリシャ時代から色々な治療が試みられており、近代医療においても100年以上の歴史を有する事から、膨大な種類の治療が試みられてきた。現代の主流は、薬による薬物治療が効果をあげており、それにより80 - 90%が治癒する。しかし、再発する確率も高く、治療および再発防止には家族の協力が不可欠とされる。古くは、日本において漢方薬での治療[93]が試みられた他に、西洋などでは治療不可能と判断して監禁したり、手足を拘束する、あるいは折檻する、また、近代においても脳の一部を切断するなど現代から見たら非人道的な行為が行われてきた他、長らく説得(あるいは根気よく話を聞いたり、対話したり)による治療が試みられてきたが、それらについてはあまり効果が確認できず、近代医学では掃除などの簡易作業を行わせる軽作業型の作業治療による若干の改善が認められて一時期盛んに研究され実施された。この軽作業型の作業治療は、医療現場で患者と接することが多い看護婦(当時の名称)から好まれたという。しかしながら、患者を安全に作業させるには医療機関の手間・暇等の負担が大きい上に、劇的に効果を確認できるものでもなく、症状が若干改善したとしても、他のストレスなどの悪化要因があれば、一進一退を繰り返すなど、根気と忍耐がいるものであり、当時は労務させられる患者や一刻も早く治癒を望むその家族からは不評であり、軽作業型の作業治療は下火となってくる。軽作業の代わりに、趣味(園芸など)を行う作業治療が登場したが、患者の要望に応えるためには看護師が、その趣味を指導できる程に覚える必要があり、趣味には膨大な種類がある事から患者から寄せられる数多い要望に対応できず、また、要望を出しても病院が対応できない場合は患者症状に悪化をもたらす事もある事から、次第に医療現場では減っていった。しかしながら、薬ほど劇的ではないものの、確かに改善効果は認められるために、現在では専門の作業療法士制度を創設して担当している。1950年代から様々な薬が開発されると、劇的に効果を上げるようになったため、歴史的に様々な経緯を経て薬物治療がその主流に存在しており、他の治療法はその補佐的に利用されている。
かつて行われていた治療法
- 精神外科による外科手術
- 脳の前頭葉部分を切る手術で、ロボトミーと呼ぶ。向精神薬の開発と副作用、医療倫理の問題で行われなくなった。1975年(昭和50年)に、日本精神神経学会が精神外科を否定する決議を可決しており、医学上の禁忌である。
- インスリン・ショック療法
- かつて行われていた治療法の一つで、患者に対してインスリン注射を行い、失神させショック状態に陥らせた後に、グルコースを投与し覚醒させる。強制的な低血糖状態による医療事故の危険性や、薬物療法・抗精神病薬の出現により、2013年(平成25年)では、行われない治療法となった。
- 私宅監置
- かつて行われていた、患者の処遇の一つで1950年(昭和25年)の精神衛生法施行にて禁止された。
- 信仰療法
- 自分が絶対ではなく、神が絶対と信じることにより、独特の考えを是正したり、謙虚に聞き入れる姿勢をもたせる。自分が絶対者でないことがわかればよいとするもの。
社会的側面
統合失調症を患ったとされる著名人
日本人
- 夏目漱石 - 日本の小説家。精神科医呉秀三博士に妄想性痴呆(妄想型統合失調症)と診断されている[94]。エピソードとして「恋愛妄想」があり、病院で出会った女性が自分との結婚を熱望しているという妄想だが、実際にはそうした事実はなかった[95]。
- 高村智恵子 - 画家。彫刻家で詩人・高村光太郎の妻。46歳時に統合失調症の最初の兆候が現れる[96]。
- ハウス加賀谷 - お笑いコンビ「松本ハウス」のメンバー。著書『統合失調症がやってきた』の中で明らかにし、以後も罹患者としてテレビ番組などで体験を語っている[97]。
外国人
- エドヴァルド・ムンク - ノルウェーの画家。代表作『叫び』は統合失調症の前駆期の影響による世界没落体験と幻聴を絵にしたものであるとされている[98][99]。
- フィンセント・ファン・ゴッホ - 画家。発作などの症状については、数多くの仮説のうち、てんかんとする説と統合失調症とする説が有力である。(木下 (2002: 100))[100]。
- カミーユ・クローデル - フランスの彫刻家。40代後半に統合失調症を発症した[101]。
- アイザック・ニュートン - イギリスの物理学者。30歳前後と50歳前後に、妄想型の統合失調症を患ったとする説を精神科医の福島章が述べている[102]。
- バディ・ボールデン - アメリカ合衆国のコルネット奏者。統合失調症の影響によりジャズ音楽のルーツを創ったと考えられている[103]。
ドイツの物理学者、アルベルト・アインシュタインの二男エドゥアルト・アインシュタインや、イギリスの数学者・哲学者バートランド・ラッセルの多くの家族・親類(叔父、叔母、息子、孫娘)、ジェイムズ・ジョイスの娘ルチアなども統合失調症を患ったため、病跡学(エピ・パトグラフィー)上の研究対象となっている[104]。『レ・ミゼラブル』などで知られる、フランスの文豪ヴィクトル・ユーゴーの二女アデルも統合失調症を患い、映画『アデルの恋の物語』として映画化された。
研究事例
新しい診断法
2014年11月、大阪大学大学院連合小児発達学研究科の橋本亮太准教授と京都大学大学院医学研究科の三浦健一郎助教のグループが、統合失調症患者の眼球運動の特徴の研究の結果、統合失調症患者と健常者を88%以上判別できること発見した。統合失調症の客観的な診断法は未だなく、医師の主観により診断していたが、客観的な診断法につながるとして精神医学界で注目され、統合失調症の補助診断法の開発に発展する可能性がある。本研究結果は、精神医学雑誌『Schizophrenia Research』電子版に掲載された(2014年11月1日)[105]。
脳研究
大阪大、東京大のチームは患者の淡蒼球と呼ばれる部分の体積が大きくなっていることを発見した[106]。
近縁疾患
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- 統合失調型パーソナリティ障害(旧称:分裂病型人格障害)- 統合失調症患者の親族に多く、統合失調症の陽性症状に似た状態を示す。
- 統合失調感情障害(旧称:分裂感情障害)- 統合失調症と気分障害(感情障害)の症状を併せ持つ。
- 非定型精神病 - 錯乱を示し、意識変容も見られる。症状は激しいが予後はいい。
- 類破瓜病 - 異常体験や人格崩壊は目立たない。単純型に類似する。
- 接枝統合失調症 - 知的障害者に統合失調症が発病したもの。
- 妄想性障害
- パラフレニー - 人格崩壊が少ない妄想型。
- パラノイア - 妄想型に類似するが、妄想の内容が異なる。悪役のような妄想がある。進んでしまうと悪魔ではないかと思ってしまう。悪魔主義的で支配者たろうとする激しい気性がある。
- 敏感関係妄想
注釈
- ^ ジョン・ナッシュの症状は、赤いネクタイをした男はすべて、反共スパイ運動家であるとの思い込みであった。
- ^ 脳機能イメージングを用いた研究では、幻聴が発生した際に脳の言語野に変化が現れていることが分かっている[11]。
- ^ ( )内英語表記は最新のICD-10は2015年版であるが、日本では平成27年2月13日付け総務省告示第35号をもって「疾病及び関連保健問題の国際統計分類ICD-10(2013年版)」に準拠する改正が行われ、平成28年1月1日から施行されている。このため日本語はICD-10 2013年版に対応している。
- ^ アスペルガー症候群は統合失調症に似た症状がおきやすいと以前から指摘がある。アスペルガー症候群を再評価し紹介したイギリスの医師ローナ・ウィングの最初の論文(1981年発表)では報告された18人のうち1人に統合失調症様の症状があった[37]
- ^ 原文: “Even if it had tried, the Committee could not establish agreement about what this disorder is; it could only agree on what to call it.” [40][41]
- ^ 原文: “The limits of the concept of Schizophrenia are unclear” [42][43]
- ^ 原文: “It should be noted that no single feature is invariably present or seen only in Schizophrenia” [42][43]
- ^ 原文: “Schizophrenia is defined so vaguely that, in actuality, it is a term often applied to almost any kind of behavior of which the speaker disapproves.” [44]
- ^ 2000年には生物科学分野でアメリカ国家科学賞を受賞している[45]。
- ^ 原文: “Europeans can save American science by helping us figure out who really has schizophrenia or what schizophrenia really is.” [46][47][48]
- ^ 原文: The current state of the evidence does not allow the general use of ECT in the management of schizophrenia to be recommended. [70]
- ^ 原文:There is evidence that most people will recover, although some will have persisting difficulties or remain vulnerable to future episodes. (英国国立医療技術評価機構 2014, Introduction)
- ^ 独: Hebephrenie
- ^ 独: Katatonie
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の日付が不正です。 (説明) - CG155: Psychosis and schizophrenia in children and young people: Recognition and management (Report). 英国国立医療技術評価機構. 2013-01.
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の日付が不正です。 (説明)
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- 1997年『分裂病はどんな病気か』 遠山照彦 萌文社
- 1998年『分裂病はどう治すのか』 遠山照彦 萌文社
- 2005年『統合失調症?正しい理解と治療法』 伊藤 順一郎 講談社
- 2003年『よくわかる統合失調症』 三野 善央 メディカ出版
- 岡田尊司『統合失調症』PHP新書〈叢書〉、2010年10月。ISBN 4569793061。
- 「臨床家がなぜ研究をするのか」糸川昌成 星和書店
関連項目
- 精神科医 - 精神保健指定医
- 障害者 - 障害者虐待防止法 - 精神保健福祉法 - 精神障害者保健福祉手帳
- 障害者福祉
- 社会的入院
- 障害者雇用促進法
- 運転免許に関する欠格条項問題
- 生活臨床
- デイケア
- グループホーム
- 生物時計
- 日本航空350便墜落事故
外部リンク
- Schizophrenia - WHO
- Psychosis and schizophrenia - NICE Pathways
- 日本統合失調症学会
- Schizophrenia - スカラーペディア百科事典「統合失調症」の項目。
- Dopamine and Schizophrenia - スカラーペディア百科事典「スカラーペディアにある「ドーパミンと統合失調症」についての項目。」の項目。
- 統合失調症(メルクマニュアル)
- 統合失調症(メルクマニュアル家庭版)
- 統合失調症 - 脳科学辞典
- 統合失調症関連遺伝子 - 脳科学辞典
- ドーパミン仮説 - 脳科学辞典