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「そして誰もいなくなった」の版間の差分

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本作そのものの「社会的評価」と「書誌情報」よりも、本作でない「派生作品」と「関連書籍」の方が上位なのはおかしいので位置を修正。「テレビ朝日のテレビドラマ」を「派生作品」の中に移行・修正。
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クリスティはこの2つの歌詞を利用して、自身が手がけた戯曲では小説と異なり生存者が存在する結末とした。舞台で登場人物すべてを殺すのはまずいとの配慮で結末が変更されたとされている<!--新水社発行・福田逸訳「そして誰もいなくなった」p184-->。戯曲では最後に残ったヴェラに対して首吊りロープを準備したウォーグレイヴが登場し、事件の中で惹かれ合うようになったロンバードを疑心暗鬼の末に殺害した罪悪感を盾にヴェラに自殺を促すが、実はヴェラはロンバードを殺すことができず、愛し合うヴェラとロンバードを見て、ウォーグレイヴは計画の失敗を悟って自決するストーリーになる。映像化された幾つかの作品も戯曲版を基にしている。
クリスティはこの2つの歌詞を利用して、自身が手がけた戯曲では小説と異なり生存者が存在する結末とした。舞台で登場人物すべてを殺すのはまずいとの配慮で結末が変更されたとされている<!--新水社発行・福田逸訳「そして誰もいなくなった」p184-->。戯曲では最後に残ったヴェラに対して首吊りロープを準備したウォーグレイヴが登場し、事件の中で惹かれ合うようになったロンバードを疑心暗鬼の末に殺害した罪悪感を盾にヴェラに自殺を促すが、実はヴェラはロンバードを殺すことができず、愛し合うヴェラとロンバードを見て、ウォーグレイヴは計画の失敗を悟って自決するストーリーになる。映像化された幾つかの作品も戯曲版を基にしている。

== 派生作品 ==
ここでは作品の主要な登場人物、場所、ストーリーが原作とおおよそ同等の派生作品を挙げる。

=== 戯曲 ===
[[File:TenLittleIndians 1 (27527308795).jpg|thumb|戯曲のエミリー・キャロライン・ブレントが死亡して、犯人捜しの議論している一場面]]
; ''{{仮リンク|And Then There Were None (戯曲)|en|And Then There Were None (play)|label=And Then There Were None}}''
: ''And Then There Were None''は、1943年にアガサ・クリスティ自身が脚本を書いたイギリスの[[戯曲]]である<ref>{{cite book |last=Christie |first=Agatha |title=The Mousetrap and Other Plays |page=2 |publisher=HarperCollins |year=1993 |isbn=0-00-224344-X}}</ref>。原作小説とあらすじが異なり、童話の歌詞の最後の文を「He got married and then there were none」に変更して、フィリップ・ロンバードとヴェラ・エリザベス・クレイソーンの登場人物の罪状を修正した上で、2人が生き残る脚本となっている。
; ''Ten little niggers''
: ''Ten little niggers''は、1944年に[[ダンディー・レップシアター]]が上演した戯曲である<ref>{{cite web |author= |url=http://www.ibdb.com/production.asp?ID=1316 |title=Ten Little Indians at Two New York City playhouses 1944-1945 |publisher=The Broadway League, including cast and characters |date= |accessdate=1 July 2018}}</ref>。脚本家アガサ・クリスティのクレジットを伴って、舞台で全ての登場人物が死亡する原作小説のあらすじを忠実に再現することを認められた最初の舞台・映像作品である<ref name=Dundee1944>{{cite web |url=http://special.lib.gla.ac.uk/sta/search/detaile.cfm?EID=14788 |title=Ten little niggers, stage production at Dundee Repertory Theatre |date=August 1944 |location=Dundee, Scotland |publisher=Scottish Theatre Archive - Event Details |accessdate=1 July 2018}}</ref>。1965年に再演している<ref>{{cite web |url=https://www.nls.uk/collections/british/theatres/place/?startRow=541&LOCALE=dundee&COM=1 |title=Ten little niggers staged at Dundee Repertory Theatre 1944 and 1965 |publisher=National Library of Scotland |accessdate=1 July 2018}}</ref>。
; ''And Then There Were None''
: ''And Then There Were None''は、2005年に{{仮リンク|ケビン・エリオット|en|Kevin Elyot}}が脚本を書いて{{仮リンク|ギールグッド劇場|en|Gielgud Theatre}}で上演された戯曲である。原作小説のあらすじに沿ってすべての登場人物が死亡する脚本である<ref>{{cite web |url=http://www.thisistheatre.com/londonshows/andthentherewerenone.html |title=And Then There Were None |department=Review |publisher=This Is Theatre |date=14 October 2005 |accessdate=1 July 2018}}</ref>。

=== 映画 ===
; ''{{仮リンク|And Then There Were None (1945年の映画)|en|And Then There Were None (1945 film)|label=And Then There Were None}}''
: ''And Then There Were None''は、1945年に[[20世紀フォックス]]が制作した[[アメリカ]]の映画である<ref>{{cite book| last = Hurst| first = Walter| title = [[Film Superlist|Film Superlist: Motion Pictures in the U.S. Public Domain (1940-1949)]]| publisher = Hollywood Film Archive| year = 2008| location =| pages =| url =| doi =| id =| isbn = 0-913616-27-3}}</ref>。アガサ・クリスティ脚本の戯曲と同じく2人の登場人物が存命する脚本となっている。
; ''[[Ten Little Indians (1987年の映画)|Десять негритят]]''
: ''Десять негритят''は、1987年に{{仮リンク|Одесская киностудия|ru|Одесская киностудия}}が制作した[[ソビエト]]の映画である<ref>{{imdb title|tt0092879|Десять негритят}} 2018年8月11日閲覧。</ref>。

=== ラジオドラマ ===
; ''Ten Little Niggers''
: Ten Little Niggersは、1947年にエイトン・ウィテイカーが脚本を書いた[[ラジオドラマ]]である<ref name=RT>{{cite news|work=Radio Times|title=''Ten Little Niggers''|date=26 December 1947|issue=1263}}</ref>。12月27日に{{仮リンク|BBC Home Service|en|BBC Home Service}}の''Monday Matinee''で放送された他、12月29日に{{仮リンク|BBC Light Programme|en|BBC Light Programme}}の''{{仮リンク|Saturday Night Theatre|en|Saturday Night Theatre}}''でも放送された。

=== テレビドラマ ===
; ''Ten Little Niggers''
: ''Ten Little Niggers''は、1949年に[[BBC]]系で放送された[[イギリス]]の[[テレビドラマ]]である<ref name=RT1>{{cite news|work=Radio Times|issue=1348|page=39|author=BBC TV|date=20 August 1949|title=Ten Little Niggers}}</ref>。
; ''Ten Little Niggers''
: ''Ten Little Niggers''は、1959年に[[ITV (イギリス)|ITV]]系で放送された[[イギリス]]の[[テレビドラマ]]である<ref>{{cite news|publisher=ITV|work=Play of the Week|title=Season 4, Episode 20 'Ten Little Niggers'|date=January 13, 1959}}</ref>。
; ''Ten Little Indians''
: ''Ten Little Indians''は、1959年に[[NBC]]系で放送された[[アメリカ]]の[[テレビドラマ]]である<ref>{{IMDb title |tt0278766|Ten Little Indians}} 2018年8月11日閲覧。</ref>。
; ''Zehn kleine Negerlein''
: ''Zehn kleine Negerlein''は、1969年に[[ZDF]]系で放送された[[西ドイツ]]の[[テレビドラマ]]である<ref>{{IMDb title |tt1014692|Zehn kleine Negerlein}} 2018年8月11日閲覧。</ref>。
; ''Achra Abid Zghar''
: ''Achra Abid Zghar''は、1974年に{{仮リンク|Télé Liban|en|Télé Liban|label=TL}}系で放送された[[レバノン]]の[[テレビドラマ]]である。
; ''Achra Abid Zghar''
: ''Achra Abid Zghar''は、2014年に{{仮リンク|Murr Television|en|MTV (Lebanon)|label=MTV}}系で放送された[[レバノン]]の[[テレビドラマ]]である。
; ''{{仮リンク|そして誰もいなくなった (イギリスのテレビドラマ)|en|And Then There Were None (miniseries)|label=And Then There Were None}}''
: ''And Then There Were None''は、2015年に[[BBC One]]系で放送された[[イギリス]]の[[テレビドラマ]]である。原作にほぼ忠実に制作されているが、最終盤の真相を明かす演出が異なっている。原作のエピローグを表現したシーンはカットされており、真犯人が死亡する直前に独白することで真相が明かされる。
; 『[[#テレビ朝日のテレビドラマ|そして誰もいなくなった]]』
: 『そして誰もいなくなった』は、2017年に[[テレビ朝日]]系で放送された[[日本]]の[[テレビドラマ]]である。あらすじはおおよそ原作に沿っているが、舞台設定を2010年代の日本としている。

=== ビデオゲーム ===
; ''{{仮リンク|Agatha Christie: And Then There Were None|en|Agatha Christie: And Then There Were None}}''
: ''Agatha Christie: And Then There Were None''は、2005年に{{仮リンク|The Adventure Company|en|The Adventure Company}}が作成したPCゲームである<ref>{{cite web|url=http://pc.gamespy.com/pc/and-then-there-were-none/ |title=Agatha Christie: And Then There Were None (PC) |publisher=[[GameSpy]] |accessdate=January 5, 2011 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20110104182424/http://pc.gamespy.com/pc/and-then-there-were-none/ |archivedate=January 4, 2011 |deadurl=no |df= }}</ref>


== 社会的評価 ==
== 社会的評価 ==
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クリスティ自身がお気に入り作品10作のうちのひとつに挙げている作品である。なお、この10作品に順位は付けられていない<ref>『[[ゴルフ場殺人事件|ゴルフ場の殺人]]』(創元推理文庫、1976年)巻末解説、および『終りなき夜に生れつく』(ハヤカワ・ミステリ文庫版)巻末「クリスティーお気に入りの自作」参照。</ref>。
クリスティ自身がお気に入り作品10作のうちのひとつに挙げている作品である。なお、この10作品に順位は付けられていない<ref>『[[ゴルフ場殺人事件|ゴルフ場の殺人]]』(創元推理文庫、1976年)巻末解説、および『終りなき夜に生れつく』(ハヤカワ・ミステリ文庫版)巻末「クリスティーお気に入りの自作」参照。</ref>。

== 関連書籍 ==
* 『本棚のスフィンクス 掟やぶりのミステリ・エッセイ』[[直井明]]、[[論創社]]、ISBN 978-4846007294 - 本作のプロットについて、詳細に分析した文章が収録されている。


== 書誌情報 ==
== 書誌情報 ==
352行目: 305行目:
** 「そして誰もいなくなった」、麻田実訳、早川書房(『[[ハヤカワ・ミステリマガジン]]』)、2017年3月号
** 「そして誰もいなくなった」、麻田実訳、早川書房(『[[ハヤカワ・ミステリマガジン]]』)、2017年3月号


== 影響を受けた作品 ==
== 派生作品 ==
ここでは作品の主要な登場人物、場所、ストーリーが原作とおおよそ同等の派生作品を挙げる。
本作に影響を受けた主な作品を、以下に年代順に記述する。

; 『[[獄門島]]』([[横溝正史]]、1948年)
=== 戯曲 ===
: 獄門島で起きた俳句の見立てによる3姉妹連続殺人の謎を[[金田一耕助]]が解き明かす。
[[File:TenLittleIndians 1 (27527308795).jpg|thumb|戯曲のエミリー・キャロライン・ブレントが死亡して、犯人捜しの議論している一場面]]
: 『[[僧正殺人事件]]』([[S・S・ヴァン・ダイン]]、1929年)や本作のような童謡殺人の作品を書きたいと思っていた作者が、童謡の替わりに俳句を用いて執筆した作品<ref>『<small>真説</small> 金田一耕助』(横溝正史著・[[角川文庫]]、1979年)参照。</ref>。
; ''{{仮リンク|And Then There Were None (戯曲)|en|And Then There Were None (play)|label=And Then There Were None}}''
; 『[[ダブル・ダブル (推理小説)|ダブル・ダブル]]』([[エラリー・クイーン|エラリイ・クイーン]]、1950年)
: ''And Then There Were None''は、1943年にアガサ・クリスティ自身が脚本を書いたイギリスの[[戯曲]]である<ref>{{cite book |last=Christie |first=Agatha |title=The Mousetrap and Other Plays |page=2 |publisher=HarperCollins |year=1993 |isbn=0-00-224344-X}}</ref>。原作小説とあらすじが異なり、童話の歌詞の最後の文を「He got married and then there were none」に変更して、フィリップ・ロンバードとヴェラ・エリザベス・クレイソーンの登場人物の罪状を修正した上で、2人が生き残る脚本となっている。
: [[ライツヴィル]]で「金持、貧乏人、乞食に泥棒、お医者に弁護士、商人、かしら(チーフ)」とマザー・グースの唄<ref group="注">作中で歌われているのはアメリカの歌詞であり、イギリスでは歌詞が異なり「鋳かけ屋、仕立て屋、兵隊、船乗り、金持ち、貧乏人、乞食、泥棒」と歌われる。</ref>の順に発生した連続殺人の謎を、探偵・[[エラリー・クイーン (架空の探偵)|エラリイ・クイーン]]が解き明かす。
; ''Ten little niggers''
: 作者は1930年代後半に童謡殺人をテーマとした長編作品の構想を描いたが、たまたま本作と同じプロットであったため執筆を中断せざるを得なくなった<ref>『ダブル・ダブル』(エラリイ・クイーン著・[[ハヤカワ文庫]]、1976年)の巻末解説参照。</ref>。その後、複数のマザー・グースを扱った『靴に棲む老婆』(1943年)を執筆した後、ようやくこの作品で本作同様1つの童謡の歌詞の順に起きる連続殺人の作品を執筆するに至った。
: ''Ten little niggers''は、1944年に[[ダンディー・レップシアター]]が上演した戯曲である<ref>{{cite web |author= |url=http://www.ibdb.com/production.asp?ID=1316 |title=Ten Little Indians at Two New York City playhouses 1944-1945 |publisher=The Broadway League, including cast and characters |date= |accessdate=1 July 2018}}</ref>。脚本家アガサ・クリスティのクレジットを伴って、舞台で全ての登場人物が死亡する原作小説のあらすじを忠実に再現することを認められた最初の舞台・映像作品である<ref name=Dundee1944>{{cite web |url=http://special.lib.gla.ac.uk/sta/search/detaile.cfm?EID=14788 |title=Ten little niggers, stage production at Dundee Repertory Theatre |date=August 1944 |location=Dundee, Scotland |publisher=Scottish Theatre Archive - Event Details |accessdate=1 July 2018}}</ref>。1965年に再演している<ref>{{cite web |url=https://www.nls.uk/collections/british/theatres/place/?startRow=541&LOCALE=dundee&COM=1 |title=Ten little niggers staged at Dundee Repertory Theatre 1944 and 1965 |publisher=National Library of Scotland |accessdate=1 July 2018}}</ref>。
; 『[[悪魔の手毬唄]]』([[横溝正史]]、1959年)
; ''And Then There Were None''
: 鬼首村で手毬唄の順に起きた連続殺人の謎を金田一耕助が解き明かす。
: ''And Then There Were None''は、2005年に{{仮リンク|ケビン・エリオット|en|Kevin Elyot}}が脚本を書いて{{仮リンク|ギールグッド劇場|en|Gielgud Theatre}}で上演された戯曲である。原作小説のあらすじに沿ってすべての登場人物が死亡する脚本である<ref>{{cite web |url=http://www.thisistheatre.com/londonshows/andthentherewerenone.html |title=And Then There Were None |department=Review |publisher=This Is Theatre |date=14 October 2005 |accessdate=1 July 2018}}</ref>。
: 童謡殺人という点で『獄門島』ではまだ物足りなさを感じていた作者が、[[深沢七郎]]の『[[楢山節考]]』を読んで童謡の創作を思いつき、手毬唄を創作して執筆した作品<ref>『悪魔の手毬唄』(横溝正史著・[[角川文庫]]旧版、1971年)の[[大坪直行]]による巻末解説、および『横溝正史読本』(小林信彦編・[[角川文庫]]、2008年改版)参照。</ref>。

; 『[[殺しの双曲線]]』([[西村京太郎]]、1971年)
=== 映画 ===
: 都内で双生児による連続強盗が頻発する一方<ref group="注">双生児の入れ替えがこの作品のメイントリックであることを、作品の冒頭で作者自身が明らかにしている。</ref>、ホテル「観雪荘」の主人から招待された6人の見知らぬ男女が積雪に閉ざされた中、順に殺されていく。そして1人殺されるごとにボウリングのピンが減っていく。
; ''{{仮リンク|And Then There Were None (1945年の映画)|en|And Then There Were None (1945 film)|label=And Then There Were None}}''
: 作品中で登場人物に何度も『そして誰もいなくなった』と状況が似ていることが語られている。
: ''And Then There Were None''は、1945年に[[20世紀フォックス]]が制作した[[アメリカ]]の映画である<ref>{{cite book| last = Hurst| first = Walter| title = [[Film Superlist|Film Superlist: Motion Pictures in the U.S. Public Domain (1940-1949)]]| publisher = Hollywood Film Archive| year = 2008| location =| pages =| url =| doi =| id =| isbn = 0-913616-27-3}}</ref>。アガサ・クリスティ脚本の戯曲と同じく2人の登場人物が存命する脚本となっている。
; 『一、二、三 - 死』([[高木彬光]]、1973年)
; ''[[Ten Little Indians (1987年の映画)|Десять негритят]]''
: 登場人物の1人にドイツ語で “EIN,TWEI,DREI - TOD” (一、二、三 - 死)と記された手紙が届けられ、それを機に「鬼の数え歌」<ref group="注">作品中では、明治の中ごろまで四国の田舎に残っていた「悪党の数え歌」「鬼の数え歌」などと言われるものだと説明されている。</ref>の歌詞の順に起きた連続殺人の謎を、謎の名探偵・[[墨野隴人]](すみのろうじん)が解き明かす。
: ''Десять негритят''は、1987年に{{仮リンク|Одесская киностудия|ru|Одесская киностудия}}が制作した[[ソビエト]]の映画である<ref>{{imdb title|tt0092879|Десять негритят}} 2018年8月11日閲覧。</ref>。
: 作品中で、童謡殺人を扱った推理作品の例として『僧正殺人事件』と本作が挙げられている。

; 『「そして誰もいなくなった」殺人事件』<ref group="注">『11人目の小さなインディアン』の改訳題。</ref>(イヴ・ジャックマール&ジャン・ミシェル・セネカル、1977年)
=== ラジオドラマ ===
: 「そして誰もいなくなった」の舞台を上演中のパリのジェラール座で、遅れて楽屋に入った主人公以外の役者9人全員と、もう1人正体不明の人物が殺されていた。
; ''Ten Little Niggers''
; 『[[うる星やつら (アニメ)|うる星やつら]]』TVシリーズ 「そして誰もいなくなったっちゃ!?」(原作 [[高橋留美子]]/監督 [[押井守]]/脚本 [[伊藤和典]]/演出 [[西村純二]]、1983年)
: Ten Little Niggersは、1947年にエイトン・ウィテイカーが脚本を書いた[[ラジオドラマ]]である<ref name=RT>{{cite news|work=Radio Times|title=''Ten Little Niggers''|date=26 December 1947|issue=1263}}</ref>。12月27日に{{仮リンク|BBC Home Service|en|BBC Home Service}}の''Monday Matinee''で放送された他、12月29日に{{仮リンク|BBC Light Programme|en|BBC Light Programme}}の''{{仮リンク|Saturday Night Theatre|en|Saturday Night Theatre}}''でも放送された。
: 無人島にメンバー一同が何者かに招待された。しかし、マザーグースの[[クックロビン]]に見立てて次々とメンバーが殺されていき、とうとう主人公の[[諸星あたる|あたる]]以外全員殺されてしまう<ref group="注">TVオリジナルエピソード。後に行われた人気投票で全作品中2位となった。</ref>。

; 『[[十角館の殺人]]』([[綾辻行人]]、1987年)
=== 各国のテレビドラマ ===
: お互いを「エラリイ」「アガサ」「カー」など有名推理作家の名前で呼び合う推理小説研究会の一行7人が角島と呼ばれる孤島を訪れ、島の唯一の建物「十角館」で次々と殺されていく。
; ''Ten Little Niggers''
: 作品中で登場人物たちにより何度も『そして誰もいなくなった』が例えとして挙げられている(というより、全体的に流れをそのまま踏襲している)ほか、研究会の会誌のタイトルが本作の初訳題である『死人島』であったり、「MOTHER GOOSE」という喫茶店での会話場面があったりする。
: ''Ten Little Niggers''は、1949年に[[BBC]]系で放送された[[イギリス]]の[[テレビドラマ]]である<ref name=RT1>{{cite news|work=Radio Times|issue=1348|page=39|author=BBC TV|date=20 August 1949|title=Ten Little Niggers}}</ref>。
; 『そして誰かいなくなった』([[夏樹静子]]、1988年)
; ''Ten Little Niggers''
: 沖縄を目指す豪華クルーザーのインディアナ号に正体不明のオーナーから招待された5人の見知らぬ男女が、2人のクルーとともに謎のテープにより告発され1人ずつ殺されていく。そしてそのたびに、彼らの干支の置物が消えていく。
: ''Ten Little Niggers''は、1959年に[[ITV (イギリス)|ITV]]系で放送された[[イギリス]]の[[テレビドラマ]]である<ref>{{cite news|publisher=ITV|work=Play of the Week|title=Season 4, Episode 20 'Ten Little Niggers'|date=January 13, 1959}}</ref>。
: 最後の1人となった主人公のために本作同様、首吊りロープが用意される。
; ''Ten Little Indians''
; 『[[そして誰もいなくなる]]』([[今邑彩]]、1993年)
: ''Ten Little Indians''は、1959年に[[NBC]]系で放送された[[アメリカ]]の[[テレビドラマ]]である<ref>{{IMDb title |tt0278766|Ten Little Indians}} 2018年8月11日閲覧。</ref>。
: 女子高の七夕祭で、演劇部による舞台劇「そして誰もいなくなった」が上演された。しかし、舞台上でアンソニー役の生徒が本当に毒で死んでしまう。劇は即刻中止となったが、その後も劇のあらすじに見立てたかのような死が連続する。
; ''Zehn kleine Negerlein''
; 『[[探偵学園Q]]』([[天樹征丸]]・[[さとうふみや]]、2001年)
: ''Zehn kleine Negerlein''は、1969年に[[ZDF]]系で放送された[[西ドイツ]]の[[テレビドラマ]]である<ref>{{IMDb title |tt1014692|Zehn kleine Negerlein}} 2018年8月11日閲覧。</ref>。
:「切り裂き島の惨劇」において、ウォーグレイヴの肖像画が切断された死体と同様に切り裂かれる<ref group="注">同様に『[[最後の事件]]』の[[シャーロック・ホームズ]]と『[[エジプト十字架の謎]]』のアンドルー・ヴァンの肖像画も死体同様に切り裂かれ、この3人の共通点が事件の重要なヒントとなる。</ref>。
; ''Achra Abid Zghar''
; 『[[インシテミル]]』([[米澤穂信]]、2007年)
: ''Achra Abid Zghar''は、1974年に{{仮リンク|Télé Liban|en|Télé Liban|label=TL}}系で放送された[[レバノン]]の[[テレビドラマ]]である。
: 「ある人文科学的実験の被験者」として、高額な報酬により「暗鬼館」に集められた年齢・性別が様々な男女12人は、より多くの報酬を巡って参加者同士が殺し合うよう仕向けられ、連続して殺人が発生する。
; ''Achra Abid Zghar''
: ラウンジのテーブルに飾られている「[[ネイティブ・アメリカン|ネイティブアメリカン]]人形」のことを、「『そして誰もいなくなった』を象徴する」と登場人物により説明されているほか、「[[クローズド・サークル|クローズドサークル]]は全滅アリ」との会話場面があったりする。
: ''Achra Abid Zghar''は、2014年に{{仮リンク|Murr Television|en|MTV (Lebanon)|label=MTV}}系で放送された[[レバノン]]の[[テレビドラマ]]である。
; ''{{仮リンク|そして誰もいなくなった (イギリスのテレビドラマ)|en|And Then There Were None (miniseries)|label=And Then There Were None}}''
: ''And Then There Were None''は、2015年に[[BBC One]]系で放送された[[イギリス]]の[[テレビドラマ]]である。原作にほぼ忠実に制作されているが、最終盤の真相を明かす演出が異なっている。原作のエピローグを表現したシーンはカットされており、真犯人が死亡する直前に独白することで真相が明かされる。


== テレビ朝日のテレビドラマ ==
=== テレビ朝日のテレビドラマ ===
{{基礎情報 テレビ番組
{{基礎情報 テレビ番組
|番組名=<small>二夜連続ドラマスペシャル<br />アガサ・クリスティ</small><br />そして誰もいなくなった
|番組名=<small>二夜連続ドラマスペシャル<br />アガサ・クリスティ</small><br />そして誰もいなくなった
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本ドラマで登場した相国寺竜也などのキャラクターは、同じくアガサ・クリスティ原作ドラマの『[[パディントン発4時50分]]~寝台特急殺人事件~』(2018年3月24日)と『女優殺人事件~[[鏡は横にひび割れて]]~』(2018年3月25日)にも登場する。
本ドラマで登場した相国寺竜也などのキャラクターは、同じくアガサ・クリスティ原作ドラマの『[[パディントン発4時50分]]~寝台特急殺人事件~』(2018年3月24日)と『女優殺人事件~[[鏡は横にひび割れて]]~』(2018年3月25日)にも登場する。


=== あらすじ ===
==== あらすじ ====
{{要あらすじ}}
{{要あらすじ}}


=== 登場人物 ===
==== 登場人物 ====
==== 「自然の島ホテル」滞在者 ====
===== 「自然の島ホテル」滞在者 =====
; 白峰 涼(しらみね りょう)
; 白峰 涼(しらみね りょう)
: 演 - [[仲間由紀恵]]<ref name="hochi20170131"/>
: 演 - [[仲間由紀恵]]<ref name="hochi20170131"/>
472行目: 428行目:
: 原作のローレンス・ジョン・ウォーグレイヴに相当。
: 原作のローレンス・ジョン・ウォーグレイヴに相当。


==== 警察関係者 ====
===== 警察関係者 =====
; 相国寺 竜也(しょうこくじ りゅうや)
; 相国寺 竜也(しょうこくじ りゅうや)
: 演 - [[沢村一樹]]<ref name="oricon20170222">{{Cite news|url=http://www.oricon.co.jp/news/2086343/full/ |title=『そして誰もいなくなった』原作にない刑事役で沢村一樹&荒川良々出演 |newspaper=|publisher=オリコン|date=2017-02-22 |accessdate=2017-02-22}}</ref>
: 演 - [[沢村一樹]]<ref name="oricon20170222">{{Cite news|url=http://www.oricon.co.jp/news/2086343/full/ |title=『そして誰もいなくなった』原作にない刑事役で沢村一樹&荒川良々出演 |newspaper=|publisher=オリコン|date=2017-02-22 |accessdate=2017-02-22}}</ref>
487行目: 443行目:
: 八丈島東署捜査課刑事。
: 八丈島東署捜査課刑事。


==== 「自然の島ホテル」滞在者が関わって死亡した人々 ====
===== 「自然の島ホテル」滞在者が関わって死亡した人々 =====
; 長谷部 継介
; 長谷部 継介
: 演 - [[斉藤陽一郎]]
: 演 - [[斉藤陽一郎]]
510行目: 466行目:
: 5年前、溺死。白峰涼の元教え子。心臓に持病を抱えていた。
: 5年前、溺死。白峰涼の元教え子。心臓に持病を抱えていた。


==== その他 ====
===== その他 =====
; 浜田 茂兵衛
; 浜田 茂兵衛
: 演 - [[でんでん]]
: 演 - [[でんでん]]
531行目: 487行目:
: 手動式の蓄音機のレコードから流れた声。10人の罪状を告発。
: 手動式の蓄音機のレコードから流れた声。10人の罪状を告発。


=== スタッフ ===
==== スタッフ ====
* 原作 - アガサ・クリスティ 『そして誰もいなくなった』
* 原作 - アガサ・クリスティ 『そして誰もいなくなった』
* ナレーション ‐ [[石坂浩二]]
* ナレーション ‐ [[石坂浩二]]
553行目: 509行目:
* 制作著作 - [[テレビ朝日]]
* 制作著作 - [[テレビ朝日]]


=== 原作との相違点 ===
==== 原作との相違点 ====
* 舞台は[[八丈島]]沖に浮かぶ「兵隊島」の「自然の島ホテル」となり、童謡のインディアンも兵隊に変えられている。
* 舞台は[[八丈島]]沖に浮かぶ「兵隊島」の「自然の島ホテル」となり、童謡のインディアンも兵隊に変えられている。
* 登場人物および舞台は現代の日本に置き換えられており、一部の人物の職業や過去に犯した殺人の方法、動機が変更されている。
* 登場人物および舞台は現代の日本に置き換えられており、一部の人物の職業や過去に犯した殺人の方法、動機が変更されている。
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* 原作では真犯人の告白書が偶然発見されたことにより真相が明らかになるのに対し、ドラマでは警察の捜査により真犯人の最期の様子と動機を告白するメッセージを録画した最後の隠しカメラの在り処が突き止められている。
* 原作では真犯人の告白書が偶然発見されたことにより真相が明らかになるのに対し、ドラマでは警察の捜査により真犯人の最期の様子と動機を告白するメッセージを録画した最後の隠しカメラの在り処が突き止められている。
* 原作のアイザック・モリスに相当する人物について、ドラマでは真犯人の手で兵隊島に一同を集める工作が済んだ後で、なおかつ島に集まる前の時点で殺害され、真犯人の自宅の敷地内に死体を埋められている様子が明確に描かれている。
* 原作のアイザック・モリスに相当する人物について、ドラマでは真犯人の手で兵隊島に一同を集める工作が済んだ後で、なおかつ島に集まる前の時点で殺害され、真犯人の自宅の敷地内に死体を埋められている様子が明確に描かれている。

=== ビデオゲーム ===
; ''{{仮リンク|Agatha Christie: And Then There Were None|en|Agatha Christie: And Then There Were None}}''
: ''Agatha Christie: And Then There Were None''は、2005年に{{仮リンク|The Adventure Company|en|The Adventure Company}}が作成したPCゲームである<ref>{{cite web|url=http://pc.gamespy.com/pc/and-then-there-were-none/ |title=Agatha Christie: And Then There Were None (PC) |publisher=[[GameSpy]] |accessdate=January 5, 2011 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20110104182424/http://pc.gamespy.com/pc/and-then-there-were-none/ |archivedate=January 4, 2011 |deadurl=no |df= }}</ref>

== 関連書籍 ==
* 『本棚のスフィンクス 掟やぶりのミステリ・エッセイ』[[直井明]]、[[論創社]]、ISBN 978-4846007294 - 本作のプロットについて、詳細に分析した文章が収録されている。

== 影響を受けた作品 ==
本作に影響を受けた主な作品を、以下に年代順に記述する。
; 『[[獄門島]]』([[横溝正史]]、1948年)
: 獄門島で起きた俳句の見立てによる3姉妹連続殺人の謎を[[金田一耕助]]が解き明かす。
: 『[[僧正殺人事件]]』([[S・S・ヴァン・ダイン]]、1929年)や本作のような童謡殺人の作品を書きたいと思っていた作者が、童謡の替わりに俳句を用いて執筆した作品<ref>『<small>真説</small> 金田一耕助』(横溝正史著・[[角川文庫]]、1979年)参照。</ref>。
; 『[[ダブル・ダブル (推理小説)|ダブル・ダブル]]』([[エラリー・クイーン|エラリイ・クイーン]]、1950年)
: [[ライツヴィル]]で「金持、貧乏人、乞食に泥棒、お医者に弁護士、商人、かしら(チーフ)」とマザー・グースの唄<ref group="注">作中で歌われているのはアメリカの歌詞であり、イギリスでは歌詞が異なり「鋳かけ屋、仕立て屋、兵隊、船乗り、金持ち、貧乏人、乞食、泥棒」と歌われる。</ref>の順に発生した連続殺人の謎を、探偵・[[エラリー・クイーン (架空の探偵)|エラリイ・クイーン]]が解き明かす。
: 作者は1930年代後半に童謡殺人をテーマとした長編作品の構想を描いたが、たまたま本作と同じプロットであったため執筆を中断せざるを得なくなった<ref>『ダブル・ダブル』(エラリイ・クイーン著・[[ハヤカワ文庫]]、1976年)の巻末解説参照。</ref>。その後、複数のマザー・グースを扱った『靴に棲む老婆』(1943年)を執筆した後、ようやくこの作品で本作同様1つの童謡の歌詞の順に起きる連続殺人の作品を執筆するに至った。
; 『[[悪魔の手毬唄]]』([[横溝正史]]、1959年)
: 鬼首村で手毬唄の順に起きた連続殺人の謎を金田一耕助が解き明かす。
: 童謡殺人という点で『獄門島』ではまだ物足りなさを感じていた作者が、[[深沢七郎]]の『[[楢山節考]]』を読んで童謡の創作を思いつき、手毬唄を創作して執筆した作品<ref>『悪魔の手毬唄』(横溝正史著・[[角川文庫]]旧版、1971年)の[[大坪直行]]による巻末解説、および『横溝正史読本』(小林信彦編・[[角川文庫]]、2008年改版)参照。</ref>。
; 『[[殺しの双曲線]]』([[西村京太郎]]、1971年)
: 都内で双生児による連続強盗が頻発する一方<ref group="注">双生児の入れ替えがこの作品のメイントリックであることを、作品の冒頭で作者自身が明らかにしている。</ref>、ホテル「観雪荘」の主人から招待された6人の見知らぬ男女が積雪に閉ざされた中、順に殺されていく。そして1人殺されるごとにボウリングのピンが減っていく。
: 作品中で登場人物に何度も『そして誰もいなくなった』と状況が似ていることが語られている。
; 『一、二、三 - 死』([[高木彬光]]、1973年)
: 登場人物の1人にドイツ語で “EIN,TWEI,DREI - TOD” (一、二、三 - 死)と記された手紙が届けられ、それを機に「鬼の数え歌」<ref group="注">作品中では、明治の中ごろまで四国の田舎に残っていた「悪党の数え歌」「鬼の数え歌」などと言われるものだと説明されている。</ref>の歌詞の順に起きた連続殺人の謎を、謎の名探偵・[[墨野隴人]](すみのろうじん)が解き明かす。
: 作品中で、童謡殺人を扱った推理作品の例として『僧正殺人事件』と本作が挙げられている。
; 『「そして誰もいなくなった」殺人事件』<ref group="注">『11人目の小さなインディアン』の改訳題。</ref>(イヴ・ジャックマール&ジャン・ミシェル・セネカル、1977年)
: 「そして誰もいなくなった」の舞台を上演中のパリのジェラール座で、遅れて楽屋に入った主人公以外の役者9人全員と、もう1人正体不明の人物が殺されていた。
; 『[[うる星やつら (アニメ)|うる星やつら]]』TVシリーズ 「そして誰もいなくなったっちゃ!?」(原作 [[高橋留美子]]/監督 [[押井守]]/脚本 [[伊藤和典]]/演出 [[西村純二]]、1983年)
: 無人島にメンバー一同が何者かに招待された。しかし、マザーグースの[[クックロビン]]に見立てて次々とメンバーが殺されていき、とうとう主人公の[[諸星あたる|あたる]]以外全員殺されてしまう<ref group="注">TVオリジナルエピソード。後に行われた人気投票で全作品中2位となった。</ref>。
; 『[[十角館の殺人]]』([[綾辻行人]]、1987年)
: お互いを「エラリイ」「アガサ」「カー」など有名推理作家の名前で呼び合う推理小説研究会の一行7人が角島と呼ばれる孤島を訪れ、島の唯一の建物「十角館」で次々と殺されていく。
: 作品中で登場人物たちにより何度も『そして誰もいなくなった』が例えとして挙げられている(というより、全体的に流れをそのまま踏襲している)ほか、研究会の会誌のタイトルが本作の初訳題である『死人島』であったり、「MOTHER GOOSE」という喫茶店での会話場面があったりする。
; 『そして誰かいなくなった』([[夏樹静子]]、1988年)
: 沖縄を目指す豪華クルーザーのインディアナ号に正体不明のオーナーから招待された5人の見知らぬ男女が、2人のクルーとともに謎のテープにより告発され1人ずつ殺されていく。そしてそのたびに、彼らの干支の置物が消えていく。
: 最後の1人となった主人公のために本作同様、首吊りロープが用意される。
; 『[[そして誰もいなくなる]]』([[今邑彩]]、1993年)
: 女子高の七夕祭で、演劇部による舞台劇「そして誰もいなくなった」が上演された。しかし、舞台上でアンソニー役の生徒が本当に毒で死んでしまう。劇は即刻中止となったが、その後も劇のあらすじに見立てたかのような死が連続する。
; 『[[探偵学園Q]]』([[天樹征丸]]・[[さとうふみや]]、2001年)
:「切り裂き島の惨劇」において、ウォーグレイヴの肖像画が切断された死体と同様に切り裂かれる<ref group="注">同様に『[[最後の事件]]』の[[シャーロック・ホームズ]]と『[[エジプト十字架の謎]]』のアンドルー・ヴァンの肖像画も死体同様に切り裂かれ、この3人の共通点が事件の重要なヒントとなる。</ref>。
; 『[[インシテミル]]』([[米澤穂信]]、2007年)
: 「ある人文科学的実験の被験者」として、高額な報酬により「暗鬼館」に集められた年齢・性別が様々な男女12人は、より多くの報酬を巡って参加者同士が殺し合うよう仕向けられ、連続して殺人が発生する。
: ラウンジのテーブルに飾られている「[[ネイティブ・アメリカン|ネイティブアメリカン]]人形」のことを、「『そして誰もいなくなった』を象徴する」と登場人物により説明されているほか、「[[クローズド・サークル|クローズドサークル]]は全滅アリ」との会話場面があったりする。


== 脚注 ==
== 脚注 ==

2018年8月17日 (金) 23:05時点における版

そして誰もいなくなった
And Then There Were None
著者 アガサ・クリスティー
訳者 清水俊二 など
発行日
発行元
ジャンル 推理小説
イギリス
言語 英語
形態 ハードカバー
ページ数 256
前作 黄色いアイリス
次作 杉の柩
公式サイト www.agathachristie.com
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そして誰もいなくなった』(原題: And Then There Were None)は、1939年イギリスで刊行されたアガサ・クリスティの長編推理小説である。

クローズド・サークルの代表作品であると同時に、見立て殺人の代表的作品とも評される[注 1][2]。孤島の兵隊島を舞台にして、10人の登場人物が童話「十人の小さな兵隊さん」の詩になぞらえて殺されていく。10人全員が死亡することで題名の『そして誰もいなくなった』を回収する。物語りはエピローグに続き、警察の捜査では迷宮入りとなった後に真犯人による独白手記が見つかり、真相が明かされることで終結する。

1939年6月6日から1939年7月1日にイギリスのDaily ExpressTen Little Niggersとして新聞連載した後、1939年11月6日にイギリスのコリンズ社のクライム・クラブから書籍が刊行された[3]。日本語訳は1939年に雑誌『スタア』で清水俊二が「死人島」として連載したのが初出で[4]、1955年6月に早川書房から『そして誰もいなくなった』として刊行された[5]。初期版では題名・内容に差別用語を用いていたが、改稿を重ねて1985年にAnd Then There Were Noneとなった[6]

作者自身により戯曲化されている。また、ルネ・クレール監督の映画を初めとして、多数の映画化作品や舞台化作品、テレビドラマ化作品がある。全世界で1億部以上を売り上げ、評価はクリスティ作品中でも特に高く、代表作に挙げられることが多い。

あらすじ

兵隊島へ向かっている招待客の1人、エミリー・キャロライン・ブレント

序章から顛末

イギリスデヴォン州の兵隊島に、年齢も職業も異なる8人の男女が招かれた。2人の召使が出迎えたが、招待状の差出人でこの島の主でもあるオーエン夫妻は、姿を現さないままだった。やがてその招待状は虚偽のものであることがわかった。不安に包まれた晩餐のさなか、彼らの過去の罪を告発する謎の声が響き渡った。告発された罪は事故とも事件ともつかないものだった。その声は蓄音機からのものとすぐに知れるのだが、その直後に生意気な青年が毒薬により死亡する。

さらに翌朝には召使の女性が死んでしまう。残された者は、それが童謡「10人のインディアン」を連想させる死に方であること、また10個あったインディアン人形が8個に減っていることに気づく。その上、迎えの船が来なくなったため、残された8人は島から出ることができなくなり、完全な孤立状態となってしまう。

さらに老将軍の撲殺された死体が発見され、人形もまた1つ減っているのを確認するに至り、皆はこれは自分たちを殺すための招待であり、犯人は島に残された7人の中の誰かなのだ、と確信する。

誰が犯人かわからない疑心暗鬼の中で、召使・老婦人・元判事・医師が死体となり、人形も減っていく。そして、残された3人のうち2人が死に、最後の1人も犯人がわからないまま精神的に追いつめられて自殺、そして誰もいなくなった

後日の捜査

後日、救難信号に気がついたボーイスカウトから連絡を受けた救助隊が、島で10人の死体を発見し、事件の発生が明らかとなる。事件を担当するロンドン警視庁は、被害者達が残した日記やメモ、そして死体の状況などから(それは読者が知りえたのと同じくらいに)、事件の経緯、大まかな流れをつかむ。そして、当時の島の状況から、犯人が10人の中にいると考えると矛盾が生じるため11人目がいたと推理するが、それが何者で島のどこに潜んでいてどこに消えてしまったのかまではわからない。

しかし、ある漁師がボトルに入った手紙を見つけることですべての謎が解明する。

事件の真相

ボトルの中の手紙は真犯人による告白文であった。真犯人は被害者の1人と思われた招待客の1人、ローレンス・ウォーグレイヴ判事であり、事件で不明だった犯行方法・犯行動機などすべての謎に対する真相をボトルの中の手紙に記していた。

ウォーグレイヴ判事は幼少より生物を殺すことに快楽を感じる性質を持っていたが、同時に正義感や罪なき人間を傷付けることへの抵抗感も強かったため、判事として罪人に死刑を言い渡すという迂遠な手段で殺人願望を満たしていた。しかし、病を患ったことを機に自らの手で人を殺したいという欲望を抑えきれなくなったウォーグレイヴ判事は、欲望を満たしかつ正義を行えることとして、法律では裁かれなかった殺人を犯した9人の人間を集めて、1人ずつ殺していく計画を実行したのである。ウォーグレイヴ判事は作中で殺害されることになるが、それは巧妙な偽装死であり、すべてが終わった後に告白文を書き、海に流して本当に自殺した。真犯人が最後のページで死ぬことを語ることによって幕を閉じる。

登場人物

オーエン夫妻
兵隊島の持ち主。招待客8人と使用人2人は会ったことがない。
夫はユリック・ノーマン・オーエン(Ulick Norman Owen)、妻はユナ・ナンシー・オーエン(Una Nancy Owen)[注 2]と名乗って、招待客への招待状の差出人になっている。最初の日の夕食後、レコードに記録した音声(謎の声)で島にいる10人全員の罪状を述べあげた。略すとどちらもU. N. Owen英語版UNKNOWN (何者とも判らぬ者)とかけられている。
アンソニー・ジェームズ・マーストン [注 3]
遊び好きで生意気な青年。
謎の声によると、自動車事故で2人の子供を死なせたが、本当には反省することなく自身の責任を認めず、運転免許が取り消されたことに不満を表明していた。島での最初の死亡者。
エセル・ロジャース
オーエンに雇われた召使で料理人。トマスの妻。
謎の声によると、以前の雇用主の遺産を回収するために発作を起こした高齢の独身婦人を助けようとせず死なせた。島での2人目の死亡者。
ジョン・ゴードン・マッカーサー
退役した老将軍。第一次世界大戦の英雄。
謎の声によると、大戦の際に妻の愛人だった部下を故意に死地に追いやった。妻のレスリー・マッカーサーが夫と愛人の両方に手紙を書いた時に手紙を誤って封筒に入れたことで、彼は妻の不倫に気付いた。島での3人目の死亡者。
トマス・ロジャース[注 4]
オーエンに雇われた召使。エセルの夫。
謎の声によると、彼は意志の弱い妻を従えて、高齢の雇用主の薬を控えて必然的に心不全によって死においやり、彼女の遺産を回収した。妻の死亡にも関わらず、島では引き続き使用人として働いた。島での4人目の死亡者。
エミリー・キャロライン・ブレント
キリスト教の信仰のあつい社会的に信頼できる老婦人。
謎の声によると、何年も昔に雇っていた10代のメイドが妊娠したことに厳しく接し、両親からも同じ理由で決別されていた娘を自殺に追い込んだ。メイドが自殺したことに対しても更に罪を重ねたと糾弾している。島での5人目の死亡者。
ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ[注 5]
殺人事件で多くの絞首罰を出すことで著名な元判事
謎の声によると、無実の被告が有罪になるように陪審員を誘導して、多くの者が無罪と推定するであろう殺人事件で、不当に死刑判決を出した。死刑執行後に新しい証拠が見つかり、改めて裁判をしたならば明らかに有罪であった。島での6人目の死亡者(偽装死亡)。
後に発見された告白文で、自身に生涯隠していたサディスティックな殺人衝動があり、罪人にのみその衝動が向けられていたことを述べている。病気であることを知って、この殺人を計画し、実行した。
エドワード・ジョージ・アームストロング
ロンドンのメインストリート・ハーレー通り英語版で働く医師
謎の声によると、酔ったまま手術をして患者を死なせた。自身が死亡するまで島内での死亡鑑定を行い、ウォーグレイヴの偽装死亡も手伝った。ウォーグレイヴの死亡鑑定後に行方不明となり、後に死体で見つかる。島での7人目の死亡者。
ウィリアム・ヘンリー・ブロア
警部の探偵。
謎の声によると、犯罪組織からの賄賂のために法廷で嘘の証言を行い、その結果、無実の男が銀行強盗の罪を着せられて終身刑に処せられた。男はその後、妻と幼い子供を残して、刑務所で死亡した。ブロアは南アフリカから秘密の仕事で来たデイビスだと名乗っていたが、謎の声によって本名と罪状を述べられ、一度は否定したものの後に肯定した。島での8人目の死亡者。
フィリップ・ロンバード
元陸軍大尉。
謎の声によると、東アフリカで先住民を見捨てて食糧を奪い、21人を死なせた。U・N・オーエンがウォーグレイヴかもしれないと唯一理論的に述べた者であるが、他の者たちはその意見を否定した。ロンバードとクレイソーンはU・N・オーエンによって死に追いやられなかった人物である。島での9人目の死亡者。
ヴェラ・エリザベス・クレイソーン
秘書・家庭教師を職業とする娘。
謎の声によると、家庭教師をしていた病弱な子供に、泳げるはずのない距離を泳ぐことを許可して溺死させた。子供の父親と恋愛関係にあったが、その出来事が原因で破局した。ロンバートと共に島で残りの2人となり、双方が相手がU・N・オーエンであると疑った状態で、ロンバートの隙をついて殺害する。最後の1人として生き残るが、部屋に用意されていた首吊りロープを見たことで精神崩壊して自殺する。島での10人目の死亡者。
フレッド・ナラカット[注 6]
兵隊島への船を操縦した人物。食事等も彼が運んでくる予定であったが、結局姿を現さなかった。
アイザック・モリス
数々の悪事に手を染めているが、決して尻尾はつかませない狡猾な男。オーエン夫妻の代理として、兵隊島の売買や管理を手配していた。10人が兵隊島に集められた日に別の場所で死亡していたため、ロンドン警視庁はオーエン夫妻の正体を解明することができなかった。
トマス・レッグ卿
ロンドン警視庁副警視総監。この事件の担当者。エピローグにて事件を総括する役割を持つ。

十人の小さな兵隊さん

作品内で登場するTen Little Soldier Boys

「十人の小さな兵隊さん」(: Ten Little Soldier Boys)は、作中に登場する童謡である[7]

詩は、マザーグースの1つとして分類される童謡「10人のインディアン」を元としている。童謡の作者が明らかなため厳密にはマザーグースではないという見方もある[注 7][注 8]。原曲のTen Little Injunsは、1868年にアメリカのセプティマス・ウィナー英語版ミンストレル・ショー向けに作詞・作曲したが[8]、1869年にはイギリスのフランク・グリーンが全ての行で韻を踏んだ歌詞に書き換えたTen Little Niggersを作成している。その後も歌詞やリズムの改変が続き、現代の「10人のインディアン」は原曲と比較すると別物になっている[9]

『そして誰もいなくなった』の初版ではフランク・グリーンのTen Little Niggersが使われていたが、歌詞の改変が何度か行われて最終的にアガサ・クリスティのオリジナルの詞となり、題名をTen Little Soldier Boysとして歌詞も原曲の物とも現代の物とも異なっている。

「十人の小さな兵隊さん」

小さな兵隊さんが10人、食事に行ったら1人が喉につまらせて、残り9人

小さな兵隊さんが9人、寝坊をしてしまって1人が出遅れて、残り8人

小さな兵隊さんが8人、デボンへ旅行したら1人が残ると言い出して、残り7人

小さな兵隊さんが7人、薪割りしたら1人が自分を割ってしまって、残り6人

小さな兵隊さんが6人、丘で遊んでたら1人が蜂に刺されて、残り5人

小さな兵隊さんが5人、大法官府に行ったら1人が裁判官を目指すと言って、残り4人

小さな兵隊さんが4人、海に行ったら燻製ニシンに食べられて、残り3人

小さな兵隊さんが3人、動物園に歩いて行ったら熊に抱かれて、残り2人

小さな兵隊さんが2人、日向ぼっこしてたら日に焼かれて、残り1人

小さな兵隊さんが1人、1人になってしまって首を吊る、そして誰もいなくなった — 原作の日本語訳[10]

19世紀に作詞されたセプティマス・ウィナーおよびフランク・グリーンの歌詞は以下の通りである。

Ten Little Injuns
(セプティマス・ウィナー、1968年)[8]
Ten Little Niggers
(フランク・グリーン、1969年)
Ten little Injuns standin' in a line,

One toddled home and then there were nine;
Nine little Injuns swingin' on a gate,
One tumbled off and then there were eight.

Refrain :
One little, two little, three little, four little, five little Injuns boys,
Six little, seven little, eight little, nine little, ten little Injuns boys.

Eight little Injuns gayest under heav'n,
One went to sleep and then there were seven;
Seven little Injuns cutting up their tricks,
One broke his neck and then there were six.

Six little Injuns kickin' all alive,
One kick'd the bucket and then there were five;
Five little Injuns on a cellar door,
One tumbled in and then there were four.

Four little Injuns up on a spree,
One he got fuddled and then there were three;
Three little Injuns out in a canoe,
One tumbled overboard and then there were two.

Two little Injuns foolin' with a gun,
One shot t'other and then there was one;
One little Injuns livin' all alone,
He got married and then there were none.

Ten little nigger boys went out to dine

One choked his little self, and then there were nine.

Nine little nigger boys sat up very late
One overslept himself, and then there were eight.

Eight little nigger boys traveling in Devon
One said he'd stay there, and then there were seven.

Seven little nigger boys chopping up sticks
One chopped himself in half, and then there were six.

Six little nigger boys playing with a hive
A bumble-bee stung one, and then there were five.

Five little nigger boys going in for law
One got in chancery, and then there were four.

Four little nigger boys going out to sea
A red herring swallowed one, and then there were three.

Three little nigger boys walking in the zoo
A big bear hugged one, and then there were two.

Two little nigger boys sitting in the sun
One got frizzled up, and then there was one.

One little nigger boys living all alone
He went and hanged himself and then there were none.

作風とテーマ

クローズド・サークル

本作はクローズド・サークルの代表作としてよく挙げられる[11][2]。また、同じくクリスティの代表作である『アクロイド殺し』のように叙述トリックの要素が用いられている。本作は第三者視点で描かれ、さらに登場人物の心中も直接明らかにされるが、この中で犯人の(その偽装死も含めた)描写は、巧妙な文章によって読者が誤解を招くように表現されている(翻訳版に関しては訳の問題上この限りではない)。

見立て殺人

本作の連続殺人は童謡「十人の小さな兵隊さん」になぞらえた見立て殺人である[2]。童謡の詩が各招待客の部屋に飾られており、10体の兵隊の人形がダイニングルームに飾られている。見立て殺人はその性質から、詩の筋立て通りに殺人が遂行される、対となっている人形の破壊で殺人が遂行を認知するなど、異様な不気味さを演出させる[12]

登場人物は詩の1文を順になぞらえて殺されていき、その度に人形が破壊・紛失されていく。殺害手法は毒殺、撲殺、射殺などの詩とは関係のないものであるが、小道具や衣装、場所を細工することで詩の1文に併せている。本作では真犯人に詩と人形を対にした見立て殺人を遂行させており、最後の1人となったヴェラ・エリザベス・クレイソーンは部屋に用意されていた首吊りロープを見て最後の人形を落として壊してしまったことにより、詩の最後の1文を自ら遂行している。

3つの伏線

作中に真犯人がローレンス・ジョン・ウォーグレイヴであることを暗示する読者に対する3つの伏線があり、最後に明かされるウォーグレイヴの犯行手記では他の登場人物たちがU. N. Owenの正体を暴くことが出来る3つのヒントとして記されている。

1つ目のヒントは、夕食後にレコードで告発された罪状の真偽である。ウォーグレイヴ判事は、ある裁判で陪審員を誘導して不当に死刑判決を出したが、死刑執行後に有罪を裏付ける証拠が見つかっており、U. N. Owenが島へ招待する条件としていた「罪のない者を殺害した」という罪状には当てはまらない。そのため、ウォーグレイヴはゲストとして島に居たのではない、つまり、ホストとして島に居たことを暗示している。

2つ目のヒントは、燻製ニシン: Red Herring)の「人の気をそらすもの」という慣用句的な意味である[13]。童話の6番目の歌詞「A red herring swallowed one」になぞらえらえたアームストロング医師は誰か(真犯人)に欺かれたということを暗示している。誰もが疑心暗鬼にある状況下で彼が信用しうるのは顔見知りのウォーグレイヴ判事のみである。事実、ウォーグレイヴ判事の犯人探しのための偽装死亡に協力した直後に行方不明となり、ウォーグレイヴに巧妙に欺かれている。

3つ目のヒントは、ウォーグレイヴ判事の顔にある「カインの刻印英語版」である。カインの刻印は旧約聖書に登場するカインが神に付けられた印で、神がカインが誰からも殺されないように付けたものである[14]。これはウォーグレイヴ判事は誰からも殺されていない、つまり、自殺したことを暗示している。

制作背景

出版歴

本作はアガサ・クリスティーをベストセラー小説家にした一つである[15] 。同著者の最も多く出版された作品で、1億冊以上を出版し[16]、世界中のミステリ作品の中で最も販売されたベストセラー本である。2009年時点で6番目に多く販売されていた[17]

原作小説は、1939年6月6日から1939年7月1日に、イギリスの新聞紙Daily Expressで題名Ten Little Niggersとして23話を連載した。舞台のモデルとなったデヴォンのバーフ島英語版をイラストレーターPrescottが描いた絵が掲載されていた。連載中は章立てしたチャプターは存在していなかった[18]。書籍としては、イギリスで1939年11月6日にコリンズ社「クライム・クラブ」から題名Ten Little Niggers、アメリカで1940年1月にドッド・ミード社「レッド・バッジ・ミステリー」から題名And Then There Were Noneとして連続して刊行された。

原作とその改訂版は、初版以降様々な題名で出版されており、1939年の原題のTen Little Niggers、1946年の戯曲や1964年のペーパーブックのTen Little IndiansTen Little Soldiers、アガサ・クリスティー公式サイトで挙げられているAnd Then There Were Noneがある。イギリスでは1980年代まで原題のタイトルで出版されており、1985年に初めてAnd Then There Were Noneのタイトルがフォンタナのペーパーバック改訂版として採用された[19]

改題と改編

1939年の発表当時の原題はTen Little Niggers(10人の小さな黒んぼ)であった。これは作中に登場する童謡の題名を引用したものである。しかし、nigger(ニガー)は、アフリカ系アメリカ人に対する差別用語であり、黒人への差別表現に厳しいアメリカでは原題は不適切なものであった。

そのため米版は1940年の発行にあたって、題名をTen Little NiggersからAnd Then There Were Noneへ改題した[20]。その後、1964年に話の鍵となる童謡をTen Little NiggersからTen Little Indiansへ、10体の人形は黒人の少年からインディアンの少年へ、島の名前はNigger Island(ニガー島、または黒人島)からIndian Island(インディアン島)へ改編した[21]。しかし、インディアンもまた差別用語であるとして米版は、童謡をTen Little Soldiers(十人の小さな兵隊さん)へ、10体の人形は兵隊の少年へ、島の名前はSoldiers Island(兵隊島)へ改編した。

繰り返した改題と改編の結果、題名はTen Little NiggersからAnd Then There Were Noneへ、島名はNigger IslandからSoldier Islandへ、童話はTen Little NiggersからTen Little Soldier Boysへ、人形はLittle NiggerからLittle Soldierへ改題・改編された。

日本においても2010年発行の青木久恵訳クリスティー文庫版ではインディアン島は兵隊島、インディアンは小さな兵隊さん、インディアン人形は兵隊人形へと変更されている。

戯曲の顛末

童謡には歌詞が2通りあり、1つはセプティマス・ウィナー作詞の「首を吊る」で、もう1つはフランク・グリーン作詞の「結婚する」である。小説ではセプティマス・ウィナーの歌詞が登場しているが、登場人物であるヴェラ・エリザベス・クレイソーンも2パターンの歌詞があることは認識している。

クリスティはこの2つの歌詞を利用して、自身が手がけた戯曲では小説と異なり生存者が存在する結末とした。舞台で登場人物すべてを殺すのはまずいとの配慮で結末が変更されたとされている。戯曲では最後に残ったヴェラに対して首吊りロープを準備したウォーグレイヴが登場し、事件の中で惹かれ合うようになったロンバードを疑心暗鬼の末に殺害した罪悪感を盾にヴェラに自殺を促すが、実はヴェラはロンバードを殺すことができず、愛し合うヴェラとロンバードを見て、ウォーグレイヴは計画の失敗を悟って自決するストーリーになる。映像化された幾つかの作品も戯曲版を基にしている。

社会的評価

批評

The Observerで1939年11月5日にモーリス・リチャードソン英語版は、「アガサ・クリスティの最新作が出版社をヴァティック・トランスに送り込んだのは不思議ではない。しかし、『アクロイド殺し』と過度に比較しても『そして誰もいなくなった』はアガサ・クリスティの本当に恐ろしい最高傑作の1つと考えている。この作品を詳細に解説することは控えなければならず、穏やかな暴露でさえ誰かの衝撃を奪ってしまう可能性をはらんでいる。読者は純粋な批評が与えられるよりも興奮を新鮮に保たれることを望んでいると私は確信している。」と述べた。続けて、あらすじを解説した後に、「あらすじと登場人物だけを眺めることはアガサ・クリスティの作品を害する。プロットは高度に人工的であるかもしれないが、それは精密で、巧みに狡猾で、着実に構築されており、これらの燻製ニシンの虚偽ミスリード)の解説は時に彼女の仕事を冒涜している。」と述べた[22]

The Times Literary Supplement英語版で1939年11月11日にモーリス・パーシー・アシュリー英語版は、「アガサ・クリスティの近年の作品には殺人犯罪はほとんど見かけない。死の規則性において確かに避けられない単調感が存在し、長編小説より新聞連載に適している。しかし、真犯人の名前を特定する巧妙なトリックが含まれている。」と述べ、続けて「それは正しく推理する非常に巧妙な読者にさせる。」と述べた[23]

The New York Times Book Review英語版で1940年2月25日にアイザック・アンダーソンは、「謎の声」が10人の過去の犯罪を告発してその結果が登場人物の死を招いたことに言及し、「あなたは信じられないだろうが読み進めると確かにそれが起きて、そしてさらに読み進めると信じられない出来事が次々と起きていく。全ての出来事が完全に不可能で、完全に魅力的である。それはアガサ・クリスティが今までに書いた中で最も難解なミステリであり、もし他の作家がその純粋なミステリを上回っているなら、その作家の名前は私達の記憶から忘却されている。私達は、もちろん、そのミステリのあるがままに論理的な物語を読んでいる。それは長い物語であるが、確かに起きた出来事だった。」と述べた[24]

Toronto Daily Starで1940年3月16日に匿名読者は、本作と同著者の小説『アクロイド殺し』を比較して、「他の作家はアガサ・クリスティよりも優れたミステリ作品を書いているが、独創的なプロットや驚愕的なエンディングにおいては彼女には及ばない。『そして誰もいなくなった』の独創的なプロットや驚愕的なエンディングは、彼女の標準的な作品に比べて大きく超えており、『アクロイド殺し』のレベルに近い。」と感想を述べた[25]

小説家であり評論家のロバート・バーナード英語版は、サスペンスと脅迫的な探偵物語を兼ね備えたスリラーと評し、閉ざされた空間での連続した殺人は本作では論理的な結論に至り、読者たちの不毛な推測や論争を回避していると述べた。そして、アガサ・クリスティの最も有名で最も人気のある作品の1つであると述べた[26]

ランキング

1990年英国推理作家協会が選出した『史上最高の推理小説100冊』で19位に評価されている。同著者作品では他に、5位に『アクロイド殺し』、83位に『死が最後にやってくる英語版』が選出されている。

1995年アメリカ探偵作家クラブが選出した『史上最高のミステリー小説100冊』の本格推理もののジャンルで1位、総合では10位に評価されている。同著者作品では他に、12位に『アクロイド殺し』、19位に『検察側の証人』、41位に『オリエント急行の殺人』が選出されている。

作者ベストテンでは、1971年の日本全国のクリスティ・ファン80余名による投票、および1982年に行われた日本クリスティ・ファンクラブ員の投票のいずれにおいても、本書は1位に挙げられている[27]

日本各誌の海外ミステリー・ベストテンでは、1975年週刊読売』で2位、1985年週刊文春』(東西ミステリーベスト100)で4位、1999年EQ』で3位、2005年ジャーロ』で3位、2006年ミステリ・マガジン』で3位、2010年ミステリが読みたい!』(海外ミステリ オールタイム・ベスト100 for ビギナーズ)で1位、2012年週刊文春』(東西ミステリーベスト100)で1位と、近年においても高評価を維持している。

Entertainment Weeklyで2014年に「Nine Great Christie Novels」の1作に『そして誰もいなくなった』が挙げられた[28]

クリスティ自身がお気に入り作品10作のうちのひとつに挙げている作品である。なお、この10作品に順位は付けられていない[29]

書誌情報

英語版

イギリスで出版された書籍、および、改編後の最初の書籍を以下に挙げる。

  • Ten Little Niggers
    • Christie, Agatha (November 1939). Ten Little Niggers. London: Collins Crime Club. OCLC 152375426  Hardback, 256 pp. - 原作の初版
    • Christie, Agatha (1947). Ten Little Niggers. London: Pan Books (Pan number 4). Paperback, 190 pp.
    • Christie, Agatha (1958). Ten Little Niggers. London: Penguin Books (Penguin number 1256). Paperback, 201 pp.
    • Christie, Agatha (1977). Ten Little Niggers (Greenway ed.). London: Collins Crime Club. ISBN 0-00-231835-0  Collected works, Hardback, 252 pp.
  • Ten Little Indians
    • Christie, Agatha (1964). Ten Little Indians. New York: Pocket Books. OCLC 29462459  - Ten Little Indiansとしての初版
  • And Then There Were None
    • Christie, Agatha (1985). And Then There Were None. London: Fontana. OCLC 12503435  Paperback, 190 pp. - And Then There Were Noneとしての初版
    • Christie, Agatha (2016). And Then There Were None. William Morrow Paperbacks. ISBN 978-0062490377 

日本語訳版

派生作品

ここでは作品の主要な登場人物、場所、ストーリーが原作とおおよそ同等の派生作品を挙げる。

戯曲

戯曲のエミリー・キャロライン・ブレントが死亡して、犯人捜しの議論している一場面
And Then There Were None英語版
And Then There Were Noneは、1943年にアガサ・クリスティ自身が脚本を書いたイギリスの戯曲である[30]。原作小説とあらすじが異なり、童話の歌詞の最後の文を「He got married and then there were none」に変更して、フィリップ・ロンバードとヴェラ・エリザベス・クレイソーンの登場人物の罪状を修正した上で、2人が生き残る脚本となっている。
Ten little niggers
Ten little niggersは、1944年にダンディー・レップシアターが上演した戯曲である[31]。脚本家アガサ・クリスティのクレジットを伴って、舞台で全ての登場人物が死亡する原作小説のあらすじを忠実に再現することを認められた最初の舞台・映像作品である[32]。1965年に再演している[33]
And Then There Were None
And Then There Were Noneは、2005年にケビン・エリオット英語版が脚本を書いてギールグッド劇場英語版で上演された戯曲である。原作小説のあらすじに沿ってすべての登場人物が死亡する脚本である[34]

映画

And Then There Were None英語版
And Then There Were Noneは、1945年に20世紀フォックスが制作したアメリカの映画である[35]。アガサ・クリスティ脚本の戯曲と同じく2人の登場人物が存命する脚本となっている。
Десять негритят
Десять негритятは、1987年にОдесская киностудияロシア語版が制作したソビエトの映画である[36]

ラジオドラマ

Ten Little Niggers
Ten Little Niggersは、1947年にエイトン・ウィテイカーが脚本を書いたラジオドラマである[37]。12月27日にBBC Home Service英語版Monday Matineeで放送された他、12月29日にBBC Light Programme英語版Saturday Night Theatre英語版でも放送された。

各国のテレビドラマ

Ten Little Niggers
Ten Little Niggersは、1949年にBBC系で放送されたイギリステレビドラマである[38]
Ten Little Niggers
Ten Little Niggersは、1959年にITV系で放送されたイギリステレビドラマである[39]
Ten Little Indians
Ten Little Indiansは、1959年にNBC系で放送されたアメリカテレビドラマである[40]
Zehn kleine Negerlein
Zehn kleine Negerleinは、1969年にZDF系で放送された西ドイツテレビドラマである[41]
Achra Abid Zghar
Achra Abid Zgharは、1974年にTL英語版系で放送されたレバノンテレビドラマである。
Achra Abid Zghar
Achra Abid Zgharは、2014年にMTV英語版系で放送されたレバノンテレビドラマである。
And Then There Were None英語版
And Then There Were Noneは、2015年にBBC One系で放送されたイギリステレビドラマである。原作にほぼ忠実に制作されているが、最終盤の真相を明かす演出が異なっている。原作のエピローグを表現したシーンはカットされており、真犯人が死亡する直前に独白することで真相が明かされる。

テレビ朝日のテレビドラマ

二夜連続ドラマスペシャル
アガサ・クリスティ

そして誰もいなくなった
ジャンル テレビドラマ
原作 アガサ・クリスティ
脚本 長坂秀佳
演出 和泉聖治
出演者 仲間由紀恵
沢村一樹
向井理
大地真央
柳葉敏郎
藤真利子
荒川良々
國村隼
余貴美子
橋爪功
津川雅彦
渡瀬恒彦
製作
プロデューサー 藤本一彦(テレビ朝日)
下山潤(ジャンゴフィルム)
吉田憲一(ジャンゴフィルム)
三宅はるえ(ジャンゴフィルム)
制作 テレビ朝日
放送
音声形式ステレオ放送
放送国・地域日本の旗 日本
公式サイト
第1夜
放送期間2017年3月25日
放送時間土曜21:00 - 23:06[注 9]
放送分126分
回数1
第2夜
放送期間2017年3月26日
放送時間日曜21:00 - 23:10
放送分130分
回数1

特記事項:
両日とも20:58 - 21:00に『今夜のドラマスペシャル』も別途放送。
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テレビ朝日系列にて2017年3月25日21:00 - 23:06・26日21:00 - 23:10に『二夜連続ドラマスペシャル アガサ・クリスティ そして誰もいなくなった』のタイトルで放送[42]された[43]。視聴率は、第一夜15.7パーセント、第二夜13.1パーセントと2夜連続で高視聴率を記録した(ビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯・リアルタイム)[44]

本ドラマで登場した相国寺竜也などのキャラクターは、同じくアガサ・クリスティ原作ドラマの『パディントン発4時50分~寝台特急殺人事件~』(2018年3月24日)と『女優殺人事件~鏡は横にひび割れて~』(2018年3月25日)にも登場する。

あらすじ

登場人物

「自然の島ホテル」滞在者
白峰 涼(しらみね りょう)
演 - 仲間由紀恵[42]
「自然の島ホテル」6号室の宿泊客。
家庭教師。元水泳選手で世界水泳金メダリスト。5年前に心臓に持病のある教え子から目を離し、プールで溺死させた。
原作のヴェラ・エリザベス・クレイソーンに相当。
五明 卓(ごみょう たく)
演 - 向井理[42]
「自然の島ホテル」8号室の宿泊客。
新鋭ミステリー作家。元アマチュアボクサー。5年前にあるサラリーマンを暴漢と勘違いし、誤って殴り殺した。
原作のアンソニー・ジェームズ・マーストンに相当。
星空 綾子(ほしぞら あやこ)
演 - 大地真央[42]
「自然の島ホテル」1号室の宿泊客。
女優。8年前、お手伝いの女性に残酷な仕打ちを行い、死に追いやった。
原作のエミリー・キャロライン・ブレントに相当。
ケン 石動(けん いしるぎ)
演 - 柳葉敏郎[42]
「自然の島ホテル」7号室の宿泊客。
軍事評論家。元傭兵。13年前、東ヨーロッパにあるボスゴナで味方の兵士5名を見殺しにした。
原作のフィリップ・ロンバードに相当。
翠川 つね美(みどりかわ つねみ)
演 - 藤真利子[42]
「自然の島ホテル」使用人兼料理人。翠川の妻。10年前、夫と共謀して当時の雇い主を殺害した。
原作のエセル・ロジャースに相当。
久間部 堅吉(くまべ けんきち)
演 - 國村隼[42]
「自然の島ホテル」3号室の宿泊客。
イーグルリサーチ 調査員。元警視庁捜査一課刑事。偽名「橋元陽二」。11年前、妻に暴力を振るう男が強盗殺人で有罪になるよう偽証を行った。
原作のウィリアム・ヘンリー・ブロアに相当。
神波 江利香(こうなみ えりか)
演 - 余貴美子[42]
「自然の島ホテル」2号室の宿泊客。
東京中央救急センター 外科部長。16年前、酔ったまま手術を行い患者を死亡させた。
原作のエドワード・ジョージ・アームストロングに相当。
翠川 信夫(みどりかわ しのぶ)
演 - 橋爪功[42]
「自然の島ホテル」執事。10年前、当時の雇い主を殺害した。
原作のトマス・ロジャースに相当。
門殿 宣明(もんでん せんめい)
演 - 津川雅彦[42]
「自然の島ホテル」5号室の宿泊客。
元国会議員。15年前、妻の不倫相手だった秘書をテロの危険がある場所へ向かわせ、死に追いやった。
原作のジョン・ゴードン・マッカーサーに相当。
磐村 兵庫(いわむら ひょうご)
演 - 渡瀬恒彦[42][注 10]
「自然の島ホテル」9号室の宿泊客。
元東京地方裁判所裁判長。7年前、担当裁判の被告人に私情から死刑判決を下した。
原作のローレンス・ジョン・ウォーグレイヴに相当。
警察関係者
相国寺 竜也(しょうこくじ りゅうや)
演 - 沢村一樹[45]
警視庁捜査一課警部。事件発生後の兵隊島に乗り込んできた警察の捜査陣の現場指揮官。どんな些細な証拠も決して見逃さない観察眼の持ち主だが、常人離れした性格や話し方で多々良をはじめとする捜査陣を振り回す。
原作のトマス・レッグ卿の役割を担っているが、彼と比べて事件の真相を自ら解明する場面が多く、犯人の独自の正義感を含めた動機を全て知った上で否定する、ある意味模範的な警察官らしい正義感の持ち主である。
多々良 伴平(たたら ばんぺい)
演 - 荒川良々[45]
八丈島東署捜査課警部補。事件現場の兵隊島が八丈島東署の管轄である関係で、相国寺率いる捜査陣に加わる。ネズミが大の苦手。
佐賀 加奈
演 - 夏菜[46]
八丈島東署捜査課刑事。
伊笠 伸弥
演 - 粟島瑞丸[47]
八丈島東署捜査課刑事。
「自然の島ホテル」滞在者が関わって死亡した人々
長谷部 継介
演 - 斉藤陽一郎
15年前、死亡。門殿宣明の元公設第一秘書。門殿詩織の不倫相手。
黒丸 丈二
演 - 小沢和義
11年前、獄中死。久間部堅吉の証言が決め手となって有罪判決を受けた強盗殺人犯。
町田 しげ
演 - 山村崇子
16年前、死亡。神波江利香が手術した元患者。
武藤 昇三
演 - 稲荷卓央
7年前、死亡。磐村兵庫が死刑判決を下した強盗殺人の被告人。
春日 七七子
演 - 石崎なつみ[48]
8年前、死亡。星空綾子の元お手伝い。
小早川 暁子
演 - 新海百合子
10年前、死亡。翠川夫妻の元雇い主。
菱井 草太
演 - 宮崎順之介[49]
5年前、溺死。白峰涼の元教え子。心臓に持病を抱えていた。
その他
浜田 茂兵衛
演 - でんでん
「自然の島ホテル」のチャーター船「AGASA」の船長。
原作のフレッド・ナラカットに相当(アイザック・モリスの役割も一部担当している)。
香月 新介
演 - 髙橋洋
白峰涼の恋人。菱井草太の従兄弟。絵描き。
新城 岳志
演 - 河西健司
武藤昇三の弁護人。
黒丸 みゆき
演 - 嘉門洋子
黒丸丈二の妻。黒丸からDVを受けていた。
門殿 詩織
演 - 赤間麻里子
門殿宣明の妻。長谷部継介が死亡した翌年に病死。
男の声
声 - 相沢まさき[50]
手動式の蓄音機のレコードから流れた声。10人の罪状を告発。

スタッフ

原作との相違点

  • 舞台は八丈島沖に浮かぶ「兵隊島」の「自然の島ホテル」となり、童謡のインディアンも兵隊に変えられている。
  • 登場人物および舞台は現代の日本に置き換えられており、一部の人物の職業や過去に犯した殺人の方法、動機が変更されている。
  • 「自然回帰」というホテルのルールとして、宿泊客のスマートフォンタブレット等の電子機器は没収され金庫に保管されていた。これらのバッテリーを抜かれていたことが発覚するという形で、島が孤立する。
  • 招待主の名前のアナグラムは、招待主の「七尾審(ななおしん)」と代理人の「伊井弁吾(いいべんご)」の名前を合わせて組み替えると「名無しの権兵衛」になるというもの。
  • 警察が事件の概要を把握した手段を、犠牲者たちの手記等から、各所に仕掛けられていた隠しカメラの映像に変更。
  • 原作では真犯人の告白書が偶然発見されたことにより真相が明らかになるのに対し、ドラマでは警察の捜査により真犯人の最期の様子と動機を告白するメッセージを録画した最後の隠しカメラの在り処が突き止められている。
  • 原作のアイザック・モリスに相当する人物について、ドラマでは真犯人の手で兵隊島に一同を集める工作が済んだ後で、なおかつ島に集まる前の時点で殺害され、真犯人の自宅の敷地内に死体を埋められている様子が明確に描かれている。

ビデオゲーム

Agatha Christie: And Then There Were None英語版
Agatha Christie: And Then There Were Noneは、2005年にThe Adventure Company英語版が作成したPCゲームである[51]

関連書籍

  • 『本棚のスフィンクス 掟やぶりのミステリ・エッセイ』直井明論創社ISBN 978-4846007294 - 本作のプロットについて、詳細に分析した文章が収録されている。

影響を受けた作品

本作に影響を受けた主な作品を、以下に年代順に記述する。

獄門島』(横溝正史、1948年)
獄門島で起きた俳句の見立てによる3姉妹連続殺人の謎を金田一耕助が解き明かす。
僧正殺人事件』(S・S・ヴァン・ダイン、1929年)や本作のような童謡殺人の作品を書きたいと思っていた作者が、童謡の替わりに俳句を用いて執筆した作品[52]
ダブル・ダブル』(エラリイ・クイーン、1950年)
ライツヴィルで「金持、貧乏人、乞食に泥棒、お医者に弁護士、商人、かしら(チーフ)」とマザー・グースの唄[注 11]の順に発生した連続殺人の謎を、探偵・エラリイ・クイーンが解き明かす。
作者は1930年代後半に童謡殺人をテーマとした長編作品の構想を描いたが、たまたま本作と同じプロットであったため執筆を中断せざるを得なくなった[53]。その後、複数のマザー・グースを扱った『靴に棲む老婆』(1943年)を執筆した後、ようやくこの作品で本作同様1つの童謡の歌詞の順に起きる連続殺人の作品を執筆するに至った。
悪魔の手毬唄』(横溝正史、1959年)
鬼首村で手毬唄の順に起きた連続殺人の謎を金田一耕助が解き明かす。
童謡殺人という点で『獄門島』ではまだ物足りなさを感じていた作者が、深沢七郎の『楢山節考』を読んで童謡の創作を思いつき、手毬唄を創作して執筆した作品[54]
殺しの双曲線』(西村京太郎、1971年)
都内で双生児による連続強盗が頻発する一方[注 12]、ホテル「観雪荘」の主人から招待された6人の見知らぬ男女が積雪に閉ざされた中、順に殺されていく。そして1人殺されるごとにボウリングのピンが減っていく。
作品中で登場人物に何度も『そして誰もいなくなった』と状況が似ていることが語られている。
『一、二、三 - 死』(高木彬光、1973年)
登場人物の1人にドイツ語で “EIN,TWEI,DREI - TOD” (一、二、三 - 死)と記された手紙が届けられ、それを機に「鬼の数え歌」[注 13]の歌詞の順に起きた連続殺人の謎を、謎の名探偵・墨野隴人(すみのろうじん)が解き明かす。
作品中で、童謡殺人を扱った推理作品の例として『僧正殺人事件』と本作が挙げられている。
『「そして誰もいなくなった」殺人事件』[注 14](イヴ・ジャックマール&ジャン・ミシェル・セネカル、1977年)
「そして誰もいなくなった」の舞台を上演中のパリのジェラール座で、遅れて楽屋に入った主人公以外の役者9人全員と、もう1人正体不明の人物が殺されていた。
うる星やつら』TVシリーズ 「そして誰もいなくなったっちゃ!?」(原作 高橋留美子/監督 押井守/脚本 伊藤和典/演出 西村純二、1983年)
無人島にメンバー一同が何者かに招待された。しかし、マザーグースのクックロビンに見立てて次々とメンバーが殺されていき、とうとう主人公のあたる以外全員殺されてしまう[注 15]
十角館の殺人』(綾辻行人、1987年)
お互いを「エラリイ」「アガサ」「カー」など有名推理作家の名前で呼び合う推理小説研究会の一行7人が角島と呼ばれる孤島を訪れ、島の唯一の建物「十角館」で次々と殺されていく。
作品中で登場人物たちにより何度も『そして誰もいなくなった』が例えとして挙げられている(というより、全体的に流れをそのまま踏襲している)ほか、研究会の会誌のタイトルが本作の初訳題である『死人島』であったり、「MOTHER GOOSE」という喫茶店での会話場面があったりする。
『そして誰かいなくなった』(夏樹静子、1988年)
沖縄を目指す豪華クルーザーのインディアナ号に正体不明のオーナーから招待された5人の見知らぬ男女が、2人のクルーとともに謎のテープにより告発され1人ずつ殺されていく。そしてそのたびに、彼らの干支の置物が消えていく。
最後の1人となった主人公のために本作同様、首吊りロープが用意される。
そして誰もいなくなる』(今邑彩、1993年)
女子高の七夕祭で、演劇部による舞台劇「そして誰もいなくなった」が上演された。しかし、舞台上でアンソニー役の生徒が本当に毒で死んでしまう。劇は即刻中止となったが、その後も劇のあらすじに見立てたかのような死が連続する。
探偵学園Q』(天樹征丸さとうふみや、2001年)
「切り裂き島の惨劇」において、ウォーグレイヴの肖像画が切断された死体と同様に切り裂かれる[注 16]
インシテミル』(米澤穂信、2007年)
「ある人文科学的実験の被験者」として、高額な報酬により「暗鬼館」に集められた年齢・性別が様々な男女12人は、より多くの報酬を巡って参加者同士が殺し合うよう仕向けられ、連続して殺人が発生する。
ラウンジのテーブルに飾られている「ネイティブアメリカン人形」のことを、「『そして誰もいなくなった』を象徴する」と登場人物により説明されているほか、「クローズドサークルは全滅アリ」との会話場面があったりする。

脚注

  1. ^ 数藤康夫・編『アガサ・クリスティー百科事典』に「文字通りの傑作だが、童謡ミステリの最高峰でもある」と記されている[1]
  2. ^ 2010年発行の青木久恵訳クリスティー文庫版では「ユーナ・ナンシー・オーエン」となっている。
  3. ^ 2010年発行の青木久恵訳クリスティー文庫版では「アンソニー・ジェイムズ・マーストン」となっている。
  4. ^ 2010年発行の青木久恵訳クリスティー文庫版では姓が「ロジャーズ」となっている。
  5. ^ 2010年発行の青木久恵訳クリスティー文庫版では「ロレンス・ジョン・ウォーグレイブ」となっている。
  6. ^ 2010年発行の青木久恵訳クリスティー文庫版では「フレッド・ナラコット」となっている。
  7. ^ マザーグースは原則として作者不詳の伝承童謡であるが、現実としてこの童謡は他にも作者が明らかな「きらきら星」などと合わせて多くのマザーグース集成本に採用されている。
  8. ^ 平野敬一著『マザー・グースの唄 イギリスの伝承童謡』(中公新書、1972年)の中で「作者や発表時期がはっきり確認できる比較的新しい作品のいくつかが、伝承童謡の仲間入りをしている」と記され、この童謡がその1例として紹介されている。
  9. ^ 土曜プライム』枠外で放送された。
  10. ^ 放送直前の3月14日に亡くなったため本作が遺作となった。
  11. ^ 作中で歌われているのはアメリカの歌詞であり、イギリスでは歌詞が異なり「鋳かけ屋、仕立て屋、兵隊、船乗り、金持ち、貧乏人、乞食、泥棒」と歌われる。
  12. ^ 双生児の入れ替えがこの作品のメイントリックであることを、作品の冒頭で作者自身が明らかにしている。
  13. ^ 作品中では、明治の中ごろまで四国の田舎に残っていた「悪党の数え歌」「鬼の数え歌」などと言われるものだと説明されている。
  14. ^ 『11人目の小さなインディアン』の改訳題。
  15. ^ TVオリジナルエピソード。後に行われた人気投票で全作品中2位となった。
  16. ^ 同様に『最後の事件』のシャーロック・ホームズと『エジプト十字架の謎』のアンドルー・ヴァンの肖像画も死体同様に切り裂かれ、この3人の共通点が事件の重要なヒントとなる。

出典

  1. ^ 数藤康夫・編『アガサ・クリスティー百科事典』(ハヤカワ文庫)の「26 そして誰もいなくなった」参照。
  2. ^ a b c アガサ・クリスティの代表作の映画化『そして誰もいなくなった』(1945)が偉大である理由”. CINEMATODAY. 2018年8月11日閲覧。
  3. ^ Christie, Agatha (November 1939). Ten Little Niggers. London: Collins Crime Club. OCLC 152375426 
  4. ^ 「死人島」、清水俊二訳、スタア社(雑誌『スタア』)、1939年
  5. ^ 『そして誰もいなくなった』、清水俊二訳、早川書房ハヤカワ・ポケット・ミステリ 196)、1955年6月
  6. ^ Christie, Agatha (1985). And Then There Were None. London: Fontana. OCLC 12503435 
  7. ^ Christie, Agatha 著、青木久惠 訳『そして誰もいなくなった』早川書房、2010年。 
  8. ^ a b "Reviews and Literary Notices", pp. 770–779, The Atlantic Monthly Vol. III (June, 1859) No. XX, Boston: Phillips, Sampson, and Company.
  9. ^ I. Opie and P. Opie, The Oxford Dictionary of Nursery Rhymes (Oxford University Press, 1951, 2nd edn., 1997), pp. 333–4.
  10. ^ Christie, Agatha (2016). And Then There Were None. William Morrow Paperbacks. ISBN 978-0062490377 
  11. ^ 『そして誰もいなくなった』が日本に遺した「館」「密室」「孤島」とは?”. BOOK倶楽部. 2018年8月11日閲覧。
  12. ^ 江戸川乱歩類別トリック集成」(『続・幻影城』)
  13. ^ Red herring. (n.d.). The American Heritage Dictionary of the English Language, Fourth Edition. Retrieved February 04, 2009, from: http://dictionary.reference.com/browse/Red%20herring
  14. ^ Byron, John (2011). Cain and Abel in text and tradition: Jewish and Christian interpretations of the first sibling rivalry. Leiden: Brill Publishers. p. 119. ISBN 9789004192522. https://books.google.com/books?id=NnnVmbnE-TcC&pg=PA93 
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  16. ^ And Then There Were None: A Novel (Mass Market Paperback) - Amazon.com
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  22. ^ “Review of Ten Little Indian Boys”. The Observer: p. 6. (5 November 1939) 
  23. ^ Ashley, Maurice Percy Ashley (November 11, 1939). “Review: Ten Little Indians”. The Times Literary Supplement: p. 658 
  24. ^ Anderson, Isaac (February 25, 1940). “Review: Ten Little Indians”. The New York Times Book Review: p. 15 
  25. ^ “Review: Ten Little Indians”. Toronto Daily Star: p. 28. (March 16, 1940) 
  26. ^ Barnard, Robert (1990). A Talent to Deceive – an appreciation of Agatha Christie (Revised ed.). Fontana Books. p. 206. ISBN 0-00-637474-3 
  27. ^ 1971年の投票は『ゴルフ場の殺人』(創元推理文庫、1976年)巻末解説を、1982年の投票は乱歩が選ぶ黄金時代ミステリーBEST10 (6) 『アクロイド殺害事件』(集英社文庫、1998年)巻末解説を、各参照。
  28. ^ “Binge! Agatha Christie: Nine Great Christie Novels”. Entertainment Weekly (1343-44): 32–33. (26 December 2014). 
  29. ^ ゴルフ場の殺人』(創元推理文庫、1976年)巻末解説、および『終りなき夜に生れつく』(ハヤカワ・ミステリ文庫版)巻末「クリスティーお気に入りの自作」参照。
  30. ^ Christie, Agatha (1993). The Mousetrap and Other Plays. HarperCollins. p. 2. ISBN 0-00-224344-X 
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  43. ^ 撮影は2016年12月20日から2017年2月13日にかけて行われた。
  44. ^ “「9係」今シリーズは“主人公不在”設定「渡瀬さんの気持ち大事に」”. スポニチ Sponichi Annex (スポニチ). (2017年3月28日). http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2017/03/28/kiji/20170328s00041000131000c.html 2017年3月28日閲覧。 
  45. ^ a b “『そして誰もいなくなった』原作にない刑事役で沢村一樹&荒川良々出演”. オリコン. (2017年2月22日). http://www.oricon.co.jp/news/2086343/full/ 2017年2月22日閲覧。 
  46. ^ バイオグラフィー - トヨタオフィス
  47. ^ プロフィール - 研音
  48. ^ 石崎なつみ - Twitter 2017年3月25日
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  50. ^ 相沢まさき - Twitter 2017年3月27日
  51. ^ Agatha Christie: And Then There Were None (PC)”. GameSpy. January 4, 2011時点のオリジナルよりアーカイブ。January 5, 2011閲覧。
  52. ^ 真説 金田一耕助』(横溝正史著・角川文庫、1979年)参照。
  53. ^ 『ダブル・ダブル』(エラリイ・クイーン著・ハヤカワ文庫、1976年)の巻末解説参照。
  54. ^ 『悪魔の手毬唄』(横溝正史著・角川文庫旧版、1971年)の大坪直行による巻末解説、および『横溝正史読本』(小林信彦編・角川文庫、2008年改版)参照。

外部リンク