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「由利麟太郎」の版間の差分

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* 『[[真珠郎#1978年版|横溝正史シリーズII 真珠郎]]』(1978年)主演:古谷一行
* 『[[真珠郎#1978年版|横溝正史シリーズII 真珠郎]]』(1978年)主演:古谷一行
* 『[[仮面劇場#テレビドラマ|横溝正史シリーズII 仮面劇場]]』(1978年)主演:古谷一行
* 『[[仮面劇場#テレビドラマ|横溝正史シリーズII 仮面劇場]]』(1978年)主演:古谷一行
* 『[[古谷一行の金田一耕助シリーズ#名探偵・金田一耕助シリーズ|名探偵・金田一耕助シリーズ2 ミイラの花嫁]]』(1983年)主演:古谷一行(原作:『木乃伊の花嫁』)
* 『[[古谷一行の金田一耕助シリーズ#名探偵・金田一耕助シリーズ(1983年 - 2005年)|名探偵・金田一耕助シリーズ2 ミイラの花嫁]]』(1983年)主演:古谷一行(原作:『木乃伊の花嫁』)
* 『[[真珠郎#1983年版|横溝正史の真珠郎 金田一耕助の愛した女]]』(1983年)主演:小野寺昭
* 『[[真珠郎#1983年版|横溝正史の真珠郎 金田一耕助の愛した女]]』(1983年)主演:小野寺昭
* 『[[古谷一行の金田一耕助シリーズ#名探偵・金田一耕助シリーズ|名探偵・金田一耕助シリーズ21 悪魔の花嫁]]』(1994年)主演:古谷一行(原作:『悪魔の家』)<ref group="注">由利麟太郎ではなく三津木俊助を金田一耕助に置き換えている。</ref>
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* 『[[真珠郎#2005年版|名探偵・金田一耕助シリーズ32 神隠し真珠郎]]』(2005年)主演:古谷一行(原作:『真珠郎』)
* 『[[真珠郎#2005年版|名探偵・金田一耕助シリーズ32 神隠し真珠郎]]』(2005年)主演:古谷一行(原作:『真珠郎』)



2021年4月18日 (日) 07:55時点における版

由利 麟太郎
初登場 『獣人』(1935年)
最後の登場 『カルメンの死』(1950年)
作者 横溝正史
詳細情報
性別 男性
職業 私立探偵
国籍 日本の旗 日本
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由利 麟太郎(ゆり りんたろう)は、横溝正史推理小説に登場する架空の私立探偵

概要

由利麟太郎の初登場作品は1935年の『獣人』であるが[注 1]、この作品では「由利太郎」と表記されており[注 2]、まだキャラクターが固まっていなかったものと考えられている。この作品では由利は「学生上りのまだ年若い青年」であるが、後に私立探偵になったとの記述もあり、由利が若いころに遭遇した古い事件と考えられることが多い[1]

キャラクタ設定が固まった由利麟太郎は、1936年に『白蝋変化』と『石膏美人』(初題『妖魂』)にほぼ同時に登場しており、どちらが初出か決めがたいが[注 3]、作者自身は『石膏美人』を第1作としている[2]。『石膏美人』では由利の人物像を事件の3年前に遡って詳しく紹介しており、その意味でも初登場にふさわしい内容になっている。また、『石膏美人』では三津木俊助が由利麟太郎に3年ぶりに再会する設定となっており、『白蝋変化』で三津木が由利を訪ねる場面はそれ以降としないと辻褄が合わない。

戦前には横溝正史の捕物帖でない同時代作品における代表的な探偵役であった。戦時中に探偵小説が弾圧され、戦後に創作を再開するに際して、由利麟太郎の過去の事件という形をとった『蝶々殺人事件』と、新たな探偵役として金田一耕助を登場させた『本陣殺人事件』の2つの長編の連載を1946年に開始した[3]。そのあと金田一耕助が探偵役として定着する結果となり、戦後に全く新たに執筆されて完結した由利麟太郎登場作品は、ジュヴナイル作品を除くと『蝶々殺人事件』とその続編という性格もある『カルメンの死』の2作品のみである。

人物

警視庁にその人ありと知られた捜査課長であったが、突如その輝かしい地位から失脚した。庁内にわだかまっている政治的な軋轢の犠牲になったのであろうと言われている。一時は憂悶の揚句発狂したとまでいわれ、3年間行方不明になっていた。この間に「実に恐ろしい、思いもよらぬ事」を経験して見事な白髪になり、顔を見ると40歳前後の壮者に見えるのに、頭を見ると60歳以上である(『石膏美人』)。

三津木俊助

由利麟太郎のワトスン役である三津木俊助(みつぎ しゅんすけ)は、由利が登場する26作(ジュヴナイル作品や未完作品を除く)のうち20作に登場する。また、由利が登場することなく三津木が単独で事件を解決するものがジュヴナイル作品以外に5作ある。ジュヴナイル作品は三津木と御子柴進少年を中心に展開するのが基本で、由利の登場はむしろ少ない。

三津木は新日報社(『石膏美人(妖魂)』の当初版では「新報知」[4]、『蜘蛛と百合』では「S新聞社」)の記者である。新聞記者という立場から事件に遭遇したり事件関係者から調査を依頼されたりすることが多く、その解決のために由利を訪ねて協力を依頼するというストーリーになっている作品も多い。一方で、まず由利が事件に遭遇し、関連する調査を三津木に依頼するという展開の作品もある(『仮面劇場』など)。

『石膏美人』には三津木の婚約者・一柳瞳(いちやなぎ ひとみ)が登場するが、事件を通じて親子関係や夫婦関係に深い疑問を感じた瞳は、三津木の手を振り切って修道院に入ってしまう。また、『猫と蝋人形』には三津木の妹・矢田貝通子(やたがい みちこ)が登場する。その後の作品で三津木の家族が語られることは無かった。

登場作品リスト

三津木俊助が登場するが由利麟太郎は登場しない作品も併せて列挙する。

長編

  • 白蝋変化(『講談雑誌』1936年4月号 - 12月号、1946年11月に『白蝋怪』に改題、1975年6月に元通りに再改題)
  • 真珠郎(『新青年』1936年10月号 - 1937年2月号、三津木俊助は登場せず)
  • 夜光虫(『日の出』1936年11月号 - 1937年6月号)
  • 幻の女(『富士』1937年1月号 - 4月号)
  • 双仮面(『キング』1938年7月号 - 12月号、三津木俊助は登場せず)
  • 仮面劇場(『サンデー毎日』1938年10月 - 11月、1942年7月に『旋風劇場』に改題、1947年8月に長編化して『暗闇劇場』に改題、1970年10月に元の『仮面劇場』に改題)
  • 蝶々殺人事件(『ロック』1946年5月号 - 1947年4月号)

中短編

  • 憑かれた女(『大衆倶楽部』1933年10月号 - 12月号、1948年1月に由利麟太郎が登場する形に改稿出版)
  • 獣人(『講談雑誌』1935年9月号、三津木俊助は登場せず)
  • 石膏美人(『講談倶楽部』1936年5月増刊号 - 6月号、原題『妖魂』を1936年12月に『呪いの痣』に改題、1953年2月に再改題)
  • 蜘蛛と百合(『モダン日本』1936年7月号 - 8月号)
  • 猫と蝋人形(『キング』1936年8月号、由利麟太郎は登場せず)
  • 首吊船(『富士』1936年10月増刊号 - 11月号)
  • 薔薇と鬱金香(『週刊朝日』1936年11月)
  • 焙烙の刑(『サンデー毎日』1937年1月号)
  • 鸚鵡を飼う女(『キング』1937年4月増刊号)
  • 花髑髏(『富士』1937年6月号 - 7月号)
  • 迷路の三人(『キング』1937年8月増刊号、三津木俊助は登場せず)
  • 猿と死美人(『キング』1938年2月号、由利麟太郎は登場せず)
  • 木乃伊の花嫁(『富士』1938年2月増刊号、三津木俊助は登場せず)
  • 白蝋少年(『キング』1938年4月号、由利麟太郎は登場せず)
  • 悪魔の家(『富士』1938年5月号、由利麟太郎は登場せず)
  • 悪魔の設計図(『富士』1938年6月増刊号 - 7月号)
  • 銀色の舞踏靴(『日の出』1939年3月号)
  • 黒衣の人(『婦人倶楽部』1939年4月号)
  • 盲目の犬(『キング』1939年4月号)
  • 血蝙蝠(『現代』1939年10月号)
  • 嵐の道化師(『富士』1939年10月号)
  • 菊花大会事件(『譚海』1942年1月号、三津木俊助とほぼ同一キャラクタの「宇津木俊介」という人物が登場、由利麟太郎は登場せず)
  • 三行広告事件(『満州良男』1943年8月号)
  • カルメンの死[注 4](『講談倶楽部』1950年1月号 - 3月号、三津木俊助は登場せず)

未完作品

  • 神の矢(『ロック』1949年2月号 - 5月号)[注 5]
  • 模造殺人事件(『スタイル読物版』1950年5月号)

ジュヴナイル作品

ジュヴナイル作品には主として三津木俊助が登場し、由利麟太郎登場作品は少ない。 一般にジュヴナイル作品は掲載誌が散逸しやすい傾向があり、由利&三津木登場作品についても網羅が困難な状況になっている。

角川文庫収録作品

  • ビーナスの星(『少女倶楽部』1936年11月号)
  • 幽霊鉄仮面(『新少年』1937年4月号 - 1938年3月号、由利麟太郎登場)
  • 真珠塔(『新少年』1938年8月号 - 1939年1月号、原型作品『深夜の魔術師』(由利麟太郎登場)[注 6]を改稿)[5]
  • 怪盗どくろ指紋(『譚海』1940年1月号、由利麟太郎登場)
  • 夜光怪人(『譚海』1949年5月号 - 1950年5月号、由利麟太郎登場、角川文庫収録時に金田一耕助登場作品に改稿)
  • 白蝋仮面(『野球少年』1953年2月号)
  • 青髪鬼(『少年倶楽部』1953年1月号 - 12月号、原題『大宝窟』)
  • 獣人魔島(『冒険王』1954年9月号 - 1955年6月号)
  • 蝋面博士(1954年12月、偕成社、角川文庫収録時に金田一耕助登場作品に改稿)
  • 風船魔人(『小学五年生』1956年4月号 - 1957年3月号)
  • 黄金魔人(『おもしろブック』1957年1月号 - 8月号)
  • まぼろしの怪人(『中一コース』1958年1月号 - 1959年3月号)
  • 姿なき怪人(『中一コース』1959年4月号 - 1960年4月号)
  • 怪盗X・Y・Z(『中二コース』1960年5月号 - 1961年4月号)[注 7]

横溝正史探偵小説選収録作品

論創社『横溝正史探偵小説選2』 ISBN 978-4-8460-0733-1 『横溝正史探偵小説選3』 ISBN 978-4-8460-0734-8 『横溝正史探偵小説選5』 ISBN 978-4-8460-1545-9 所収作品

  • 孔雀扇の秘密(『少年倶楽部』1950年12月号)
  • 探偵小僧(『読売新聞』1952年12月 - 1953年2月)
  • 赤いチューリップ(『太陽少年』1953年2月号)
  • 魔人都市(『少年倶楽部』1954年8月号、1955年『鋼鉄魔人』に改稿)
  • 鉄仮面王(『おもしろブック』1955年1月号)
  • まほうの金貨(『幼年ブック』1956年1月号 - 12月号)
  • のろいの王冠(『幼年クラブ』1957年1月号 - 12月号)

全集などへの収録

2018 - 2019年に刊行された「由利・三津木探偵小説集成」(柏書房)には33作(併せて収録されている原型作品などを除く)が収録されている。1971年から1984年にかけて横溝正史作品を網羅しようとした角川文庫には、このうち翻案作品(『迷路の三人』)と未完作品を除く30作が収録された。由利麟太郎登場作品の集成としては、他に1956 - 1961年に刊行された「由利・三津木探偵小説選」(東方社)があり、22作[注 8]が収録されている。

他に、1970年に刊行された「横溝正史全集」(講談社)には6作、1974 - 1975年に刊行された「新版横溝正史全集」(講談社)には12作が収録されている。また、『蝶々殺人事件』は「横溝正史傑作選集」(東都書房、1965年)、「横溝正史自選集」(出版芸術社、2006 - 2007年)に、『カルメンの死』は「金田一耕助探偵小説選第2期」(東京文芸社、1955年)、「金田一耕助推理全集」(東京文芸社、1958 - 1961年)、「金田一耕助探偵小説選」(東京文芸社、1975年)に、各々金田一耕助登場作品に並んで収録されており、この両作品は春陽文庫にも収録されている。

映像化

劇場映画

  • 蝶々失踪事件』(1947年)主演:岡譲二(原作:『蝶々殺人事件』)

テレビドラマ

由利麟太郎を金田一耕助に置き換えたもの

漫画化

  • 『蜘蛛と百合』 - 玄太郎画、『週刊漫画サンデー』(実業之日本社)1976年5月4日号から1976年5月25日号に連載。
  • 『カルメンの死』 - 玄太郎画、『週刊漫画サンデー』(実業之日本社)1976年6月22日号から1976年7月13日号に連載。
  • 『週刊漫画サンデー別冊 蔵の中/カルメンの死/蜘蛛と百合 横溝正史傑作画特集』(実業之日本社) - 玄太郎画、1977年
    上述の『週刊漫画サンデー』に連載された漫画をまとめた雑誌。「蔵の中」は1976年11月9日号から1976年11月30日号に連載。
  • 『真珠郎 名探偵・由利麟太郎』 - JET画、あすかコミックスDX角川書店)、2004年、ISBN 9784048537360

脚注

注釈

  1. ^ 最初の作品として1933年の『憑かれた女』を挙げる記述がみられるが、1948年に由利麟太郎が登場する形に改稿されたものであり、1933年の段階では由利麟太郎は登場しない。
  2. ^ 角川文庫などでは「麟太郎」に修正されている。
  3. ^ 連載開始は『白蝋変化』の方が先だが『石膏美人』の方が早く終わっており、いずれの作品でも半分程度進んでから由利麟太郎が登場している。
  4. ^ 原題「迷路の花嫁」。春陽文庫『蝶々殺人事件』には表題を『カルメン殺人事件』に変更して収録されている。『蝶々殺人事件』最後の相良千恵子の科白「カルメン殺人事件なんか起りゃしないから。」に呼応している。
  5. ^ 既発表部分に由利麟太郎は登場しないが、三津木俊助が登場する場面で由利のことを詳しく紹介している。
  6. ^ 出版芸術社『横溝正史探偵小説コレクション2』 ISBN 978-4-88293-259-8 に所収。
  7. ^ 角川文庫未収録の第4話は論創社『横溝正史探偵小説選2』 ISBN 978-4-8460-0733-1 に所収。
  8. ^ 他に由利麟太郎も三津木俊助も登場しない『幽霊騎手』が収録されている。
  9. ^ 由利麟太郎ではなく三津木俊助を金田一耕助に置き換えている。

出典

  1. ^ 日下三蔵「編者解説」『由利・三津木探偵小説集成1 真珠郎』柏書房、2018年12月5日、476頁。ISBN 978-4-7601-5051-9 
  2. ^ 「横溝正史の生んだ二大名探偵」『別冊宝島 僕たちの好きな金田一耕助』宝島社、2007年1月5日、118頁。ISBN 978-4-7966-5572-9 
  3. ^ 横溝正史「探偵小説を二本平行に書くということ 鬼と化して田圃の畦道を彷徨すること」『金田一耕助のモノローグ』角川書店、1993年11月10日、73 - 86頁。ISBN 4-04-130496-2 
  4. ^ 日下三蔵「編者解説」『由利・三津木探偵小説集成1 真珠郎』柏書房、2018年12月5日、480頁。ISBN 978-4-7601-5051-9 
  5. ^ 由利麟太郎&三津木俊助シリーズ”. 2021年3月14日閲覧。