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ヘーラクレイダイの[[テーメノス]]は[[デルポイ]]の[[神託]]に従って、[[ポーキス]]地方の都市[[ナウパクトス]]で帰還の準備を進めていた。そのとき[[予言者]]が現れてヘーラクレイダイに向けて予言の言葉を叫んだが、ヒッポテースはペロポネーソス側の人間の陰謀だと考え、[[槍]]を投じて予言者を殺した<ref name="AP283">アポロドーロス、2巻8・3。</ref>。すると様々な彼らに災厄が降りかかり、建造した軍船はことごとく破壊され、兵も飢饉で離散してしまった。テーメノスが災厄の原因を神託にうかがったところ、原因は予言者の殺害にあり、殺害者を追放して、3つ眼の男を帰還の案内人とすることを告げた。このためヒッポテースは追放され、テーメノスが偶然出会った、片眼の馬に乗った[[オクシュロス]](ヘーラクレースの妻[[デーイアネイラ]]の姉妹[[ゴルゲー]]の子孫)を案内者とすることで帰還を果たした<ref name="AP283" />。
ヘーラクレイダイの[[テーメノス]]は[[デルポイ]]の[[神託]]に従って、[[ポーキス]]地方の都市[[ナウパクトス]]で帰還の準備を進めていた。そのとき[[予言者]]が現れてヘーラクレイダイに向けて予言の言葉を叫んだが、ヒッポテースはペロポネーソス側の人間の陰謀だと考え、[[槍]]を投じて予言者を殺した<ref name="AP283">アポロドーロス、2巻8・3。</ref>。すると様々な彼らに災厄が降りかかり、建造した軍船はことごとく破壊され、兵も飢饉で離散してしまった。テーメノスが災厄の原因を神託にうかがったところ、原因は予言者の殺害にあり、殺害者を追放して、3つ眼の男を帰還の案内人とすることを告げた。このためヒッポテースは追放され、テーメノスが偶然出会った、片眼の馬に乗った[[オクシュロス]](ヘーラクレースの妻[[デーイアネイラ]]の姉妹[[ゴルゲー]]の子孫)を案内者とすることで帰還を果たした<ref name="AP283" />。


[[パウサニアス]]はヒッポテースが殺した予言者の名前は[[カルノス]]であり、彼は[[アポローン]]神の予言を授かっていたため、アポローンの怒りがヘーラクレイダイを襲ったのだと述べている。そのためヒッポテースは殺人の罪で追放された。また[[スパルタ]]の[[ドーリス人]]は'''アポローン・カルネイオス'''の祭祀を創始してカルノスを慰霊した<ref>パウサニアス、3巻13・4。</ref>。
[[パウサニアス (地理学者)|パウサニアス]]はヒッポテースが殺した予言者の名前は[[カルノス]]であり、彼は[[アポローン]]神の予言を授かっていたため、アポローンの怒りがヘーラクレイダイを襲ったのだと述べている。そのためヒッポテースは殺人の罪で追放された。また[[スパルタ]]の[[ドーリス人]]は'''アポローン・カルネイオス'''の祭祀を創始してカルノスを慰霊した<ref>パウサニアス、3巻13・4。</ref>。


===系譜===
===系譜===
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* [[アポロドーロス]]『ギリシア神話』[[高津春繁]]訳、[[岩波文庫]](1953年)
* [[アポロドーロス]]『ギリシア神話』[[高津春繁]]訳、[[岩波文庫]](1953年)
* [[シケリアのディオドロス|ディオドロス]]『神代地誌』飯尾都人訳、龍溪書舎(1999年)
* [[シケリアのディオドロス|ディオドロス]]『神代地誌』飯尾都人訳、龍溪書舎(1999年)
* [[パウサニアス]]『ギリシア記』飯尾都人訳、龍渓書舎(1991年)
* [[パウサニアス (地理学者)|パウサニアス]]『ギリシア記』飯尾都人訳、龍渓書舎(1991年)
* 『[[ヘシオドス]] 全作品』[[中務哲郎]]訳、[[京都大学学術出版会]](2013年)
* 『[[ヘシオドス]] 全作品』[[中務哲郎]]訳、[[京都大学学術出版会]](2013年)
* [[ホメロス]]『[[オデュッセイア]](上)』[[松平千秋]]訳、[[岩波文庫]](1994年)
* [[ホメロス]]『[[オデュッセイア]](上)』[[松平千秋]]訳、[[岩波文庫]](1994年)

2021年11月15日 (月) 11:08時点における版

ヒッポテース古希: Ἱππότης, Hippotēs)あるいはヒッポタース古希: Ἱππότας, Hippotās)は、ギリシア神話の人物である。長母音を省略してヒッポテスヒッポタスとも表記される。

風神アイオロスの父

このヒッポテースは、アイオリアー島の王で、風を司るアイオロスの父[1]

ミマースの子

このヒッポテースは、ヘレーンの子アイオロスの子でアイオリス地方の王ミマースの子。メラニッペーと結婚して祖父と同名の息子アイオロスをもうけた。息子アイオロスの娘アルネーはポセイドーンとの間にボイオートスとアイオロスを生んだ[2]

クレオーンの子

このヒッポテースは、コリントスの王クレオーンの子で[3]グラウケーと兄弟[4][5]

コルキス魔女メーデイアイアーソーンへの復讐のためにクレオーンとグラウケーを殺害したとき、ヒッポテースはアテーナイの法廷でメーデイアを訴えたが無罪となった[4]。なお、メーデイアの子メードスの乗った船が敵対するペルセースの国に流されたとき、メードスはヒッポテースと名前を偽ったという話もある[6]

ヘーラクレイダイの1人

このヒッポテースは、ヘーラクレイダイのアンティオコスヘーラクレースとメーダの子)の子ピューラースレイペピレーイオラーオスメガラーの娘)の息子で、テーローと兄妹[7]アレーテースの父[8]。ヘーラクレイダイとともにペロポネーソス半島への帰還を目指していたが、ヒッポテースの行動が帰還を遅らせることになった。

ヘーラクレイダイのテーメノスデルポイ神託に従って、ポーキス地方の都市ナウパクトスで帰還の準備を進めていた。そのとき予言者が現れてヘーラクレイダイに向けて予言の言葉を叫んだが、ヒッポテースはペロポネーソス側の人間の陰謀だと考え、を投じて予言者を殺した[9]。すると様々な彼らに災厄が降りかかり、建造した軍船はことごとく破壊され、兵も飢饉で離散してしまった。テーメノスが災厄の原因を神託にうかがったところ、原因は予言者の殺害にあり、殺害者を追放して、3つ眼の男を帰還の案内人とすることを告げた。このためヒッポテースは追放され、テーメノスが偶然出会った、片眼の馬に乗ったオクシュロス(ヘーラクレースの妻デーイアネイラの姉妹ゴルゲーの子孫)を案内者とすることで帰還を果たした[9]

パウサニアスはヒッポテースが殺した予言者の名前はカルノスであり、彼はアポローン神の予言を授かっていたため、アポローンの怒りがヘーラクレイダイを襲ったのだと述べている。そのためヒッポテースは殺人の罪で追放された。またスパルタドーリス人アポローン・カルネイオスの祭祀を創始してカルノスを慰霊した[10]

系譜

アムピトリュオーン
 
 
 
 
 
アルクメーネー
 
 
 
ゼウス
 
ピューラース
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
クレオーン
 
イーピクレース
 
アウトメドゥーサ
 
 
 
ヘーラクレース
 
メーダ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
メガラー
 
 
 
イオラーオス
 
 
 
 
 
 
 
アンティオコス
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
レイペピレー
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ピューラース
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ヒッポテース
 
テーロー
 
アポローン
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
アレーテース
 
 
 
カイローン
 
 
 


脚注

  1. ^ 『オデュッセイアー』10巻2行。
  2. ^ シケリアのディオドロス、4巻67・3-67・4。
  3. ^ ヒュギーヌス、27話。
  4. ^ a b シケリアのディオドロス、4巻55 ・5。
  5. ^ ヒュギーヌス、25話。
  6. ^ ヒュギーヌス、27話。
  7. ^ ヘーシオドス断片(パウサニアス、9巻40・6による引用)。
  8. ^ パウサニアス、2巻4・3。
  9. ^ a b アポロドーロス、2巻8・3。
  10. ^ パウサニアス、3巻13・4。

参考文献