「酸素中毒」の版間の差分
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{{Infobox medical condition |
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{{Expand English|fa=yes|date=2024年3月}}{{Infobox disease |
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| name = 酸素中毒 |
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| Image = File-Oxygen toxicity testing.jpeg |
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| synonyms = 酸素毒性 |
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| Alt = Three men inside a pressure chamber. One is breathing from a mask and the other two are timing and taking notes. |
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| image = File-Oxygen toxicity testing.jpeg |
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| Caption = 1942年から1943年に英国政府はダイバーの酸素中毒の広範な実験を行った。高圧室は3.7バールの空気圧をかける。中央の被験者は、マスクから100%の酸素を呼吸している<ref name="Donald1947a" />。 |
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| alt = Three men inside a pressure chamber. One is breathing from a mask and the other two are timing and taking notes. |
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| ICD10 = {{ICD10|T|59|8|t|51}} |
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| caption = 1942年から1943年にかけて、英国政府は[[ダイバー]]{{要曖昧さ回避|date=2024年10月}}の酸素毒性に関する広範なテストを実施した。室内は3.7 [[バール (単位)|bar]]の空気で加圧されている。中央の被験者は、マスクから100%の酸素を吸入している{{Sfn|Donald, Part I|1947}}。 |
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| ICD9 = {{ICD9|987.8}} |
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| field = {{仮リンク|潜水医学|en|Diving medicine|redirect=1}}、[[高気圧酸素治療]]、[[新生児学]] |
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| MeshID = D018496 |
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'''酸素中毒'''(さんそちゅうどく、oxygen intoxication<ref>{{Cite web |title=酸素中毒 [JSME Mechanical Engineering Dictionary] |url=https://www.jsme.or.jp/jsme-medwiki/doku.php?id=05:1004792 |website=www.jsme.or.jp |access-date=2024-10-11 |publisher=[[日本機械学会]]}}</ref>、または'''酸素毒性'''({{Lang-en-short|oxygen toxicity}}){{Efn|[[日本医学会医学用語辞典]]では酸素中毒にoxygen intoxication、酸素毒性にoxygen toxicityの訳語があてられている。oxygen toxicityは文脈で酸素による中毒とも毒性とも解される。}})とは、分圧が上昇した[[酸素分子]](O<sub>2</sub>)を吸入することで生じる有害な生体への影響である。その影響は[[中枢神経系]]、[[肺]]、および[[目]]に最もよく見られ、重症の場合、{{仮リンク|細胞損傷|en|cell damage|redirect=1}}が進行して死に至る可能性がある。歴史的に、中枢神経系の状態は{{仮リンク|ポール・ベール|en|Paul Bert|redirect=1}}効果、肺の状態は{{仮リンク|ジェームズ・ロレイン・スミス|en|James Lorrain Smith|redirect=1|label=ロレイン・スミス}}効果と呼ばれ、19世紀後半にそれらを発見して記述した研究者にちなんで名付けたものである。[[潜水艇タイタン沈没事故|ダイバー]]、高濃度の酸素吸入を受けている人、[[高圧酸素療法]]を受けている人は酸素中毒に留意する必要がある。 |
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'''酸素中毒'''(さんそちゅうどく)とは、超高[[分圧]]の[[酸素]]を摂取した場合、またはある程度高分圧の酸素を長期にわたって摂取し続けることによって、身体に様々な異常を発し、最悪の場合は[[死亡]]に至る症状である。特に[[スクーバダイビング]]など、[[空気]]あるいは[[混合ガス]]を用いての潜水時に起こりやすい。 |
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呼吸中の酸素分圧を増加させると、{{仮リンク|高酸素症|en|hyperoxia|redirect=1}}となる。これは要するに体組織内に酸素が過剰に存在しているということである。身体は、酸素曝露の種類に応じてさまざまな方法で影響を受ける。中枢神経系の毒性は、大気圧よりも高い酸素分圧に短時間さらされることによって引き起こされる。肺および眼の毒性は、常圧下で高濃度酸素への長時間の曝露に起因する。症状には、[[失見当識|見当識障害]]、[[呼吸器疾患|呼吸障害]]、[[近視]]などの視力悪化などがある。正常値を超える酸素分圧への長時間の曝露、または非常に高い酸素分圧への短い曝露により、[[細胞膜]]の[[酸化ストレス]]、[[肺胞]]の虚脱、[[網膜剥離]]、および{{仮リンク|発作 (脳)|en|seizures|redirect=1|label=発作}}を引き起こす可能性がありる。酸素中毒の管理は、曝露されている酸素の濃度を減らすことによる。長期的には、ほとんどのタイプの酸素中毒から、着実に回復が可能であることが研究により示されている。 |
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酸素中毒に対する誤解として、酸素濃度だけを問題にすることが見受けられるが、上記のとおり'''[[酸素分圧]]'''が問題であるため、大気圧(1,014ヘクト[[パスカル (単位)|パスカル]])で純酸素(酸素100%のガス)を吸入した場合、長時間(一説では10時間程度<ref>{{Cite web |url=https://awb.co.jp/wp-content/uploads/2021/08/pf_oxygen_poisoning.pdf |title=酸素中毒について |access-date=2024-03-18 |publisher=エア・ウォーター防災}}</ref>)でなければ問題は無く(実際に医療行為として行われる)、低圧であれば初期の[[アポロ計画]]のように、船内気圧を{{分数|1|3}}にして純酸素で[[宇宙船]]内を満たしても、長時間の活動を行える。逆に通常の空気(酸素約21%)であっても深度の潜水などの高圧環境で、酸素分圧が高くなれば酸素中毒を起こす(後述)。 |
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圧縮{{仮リンク|呼吸ガス|en|breathing gases|redirect=1}}を使用する[[潜水]]、[[高圧酸素療法]]、{{仮リンク|新生児医療|en|neonatal care|redirect=1}}、[[有人宇宙飛行]]など、通常よりも高い分圧で酸素を呼吸する分野では、高酸素症の影響を回避するための[[診療ガイドライン|プロトコル]]が存在する。これらのプロトコールにより、酸素中毒による発作はますます稀になり、肺や眼球の障害は、[[未熟児]]の管理にほぼ限定されるようになった。 |
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== 潜水と酸素中毒 == |
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酸素は、[[ヒト]]の生体活動になくてはならないものであるが、潜水中に呼吸するガスに含まれる酸素の分圧が2[[気圧]]程度を超えると、全身の激しい痙攣などを発症し最悪の場合は死亡する。このような症状を急性の酸素中毒と呼ぶ。また酸素分圧が急性の酸素中毒を発症するほど高くなくても、ある程度高い分圧の酸素を長時間にわたって呼吸すると、[[肺]]の障害などさまざまな症状が発生する。これを慢性の酸素中毒と呼ぶこともある。 |
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近年、酸素は[[酸素バー]]で娯楽的に利用できるようになった。[[アメリカ食品医薬品局|米食品医薬品局]]は、心臓や肺に疾患のある人は酸素バーを使用しないよう警告している。[[スクーバダイビング|スキューバダイバー]]は最大100%の酸素を含む呼吸ガスを使用するため、そのようなガスを使用するための特別な訓練を受ける必要がある。 |
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これら急性あるいは慢性の酸素中毒を防ぐためには、呼吸ガス中の酸素分圧は通常で1.4気圧以下、特別な場合でも1.6気圧以下に保つとともに、酸素分圧に応じた潜水時間の制限を設けることが必要とされている。 |
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例えばスクーバダイビングで空気潜水を行う場合、水深約70mで酸素分圧が1.6気圧に達するので、このような大深度まで潜水すると酸素中毒の危険性が高くなる。 |
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== 分類 == |
== 分類 == |
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酸素中毒の影響は、3つの主要な症状を呈し、影響を受ける臓器別に分類することができる<ref name="Brubakk-358-360" /><ref name="Acott" /><ref name="pmid14232720" />。 |
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; [[中枢神経]]系 |
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: 高圧条件下で発生する[[意識喪失]]に引き続いた[[痙攣]]を特徴とする。 |
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; [[肺]] |
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: 長時間の酸素加圧下の環境で[[呼吸困難]]と[[胸]]の痛みが発生する。 |
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; [[眼]]([[網膜症]]) |
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: 長時間の酸素加圧下の環境での呼吸時に発生する、眼の変化が特徴である。 |
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中枢神経系の酸素中毒は、痙攣、意識喪失に引き続く短時間の[[硬直]]の発作が発生する可能性があり、大気圧よりも高い気圧にさらされる[[潜水士|ダイバー]]に懸念されている。肺への酸素中毒は、胸の痛みや呼吸困難を伴う肺の損傷をもたらす。眼に対する酸化的損傷は、[[近視]]や[[網膜]]の部分的な剥離を引き起こす可能性がある。肺や眼への損傷は、特に[[新生児]]の治療の一環として行われる酸素補給の際に最も発生する可能性が高く、また、[[高気圧酸素治療|高圧酸素療法]]中にも同様な損傷が懸念される。 |
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酸化的損傷は、体の任意の[[細胞]]で発生する可能性があるが、影響を受けやすい三大臓器への影響が最初に懸念される。また、酸化的損傷は、[[赤血球]]の破壊([[溶血]])<ref name="pmid5782651" /><ref name="pmid4403030" />、[[肝臓]]への損傷([[肝炎]])<ref name="pmid5885427" />、[[心臓]]([[心筋]])<ref name="pmid5046798" />、[[内分泌腺]]([[副腎]]、[[生殖腺]]、[[甲状腺]])<ref name="pmid13228600" /><ref name="pmid13889254" /><ref name="Gersh" />、または[[腎臓]](腎炎)<ref name="pmid5155150" />に関与する可能性があり、細胞へ一般的な損傷を与え得る<ref name="Brubakk-358-360" /><ref name="pmid4613232" />。 |
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異常な状況下では、他の組織への影響が観察されることがある。それは[[宇宙飛行]]時における高酸素濃度は、[[骨]]の損傷に影響するかもしれないことが疑われている<ref name="Patel" />。高濃度酸素も間接的に[[慢性閉塞性肺疾患]]や呼吸中枢抑制のような肺疾患患者に「[[二酸化炭素]]酔い」を引き起こす可能性がある<ref name="Patel" />。酸素の毒性は、常に[[大気圧]]の[[空気]]を呼吸する[[過換気]]に関連付けられていない。なぜなら大気圧の空気は0.21[[バール (単位)|バール]](21 [[kPa]])の[[酸素分圧]](ppO<sub>2</sub>)であり、酸素中毒の下限値が0.3バール(30 kPa)であるためである<ref name="Clark1970" />。 |
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[[ファイル:Clark1974.png|center|700px|alt=The effects of high inspired oxygen pressure: (1) chemical toxicity, pulmonary damage, hypoxemia; (2) retinal damage, erythrocyte hemolysis, liver damage, heart damage, endocrine effects, kidney damage, destruction of any cell; (3) toxic effects on central nervous system, twitching, convulsions, death.|Breathing air with high oxygen pressure can lead to several adverse effects.]] |
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== メカニズム == |
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[[Image:Lipid peroxidation.svg|thumb|300px|right|[[脂質過酸化反応]]は、脂質の酸化的分解反応のことを言い、フリーラジカルが細胞膜中の脂質から電子を奪い、不飽和脂肪酸の過酸化を進行させる。この過程は、フリーラジカルの連鎖反応のメカニズムによって進行する。]] |
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酸素中毒の生化学的基礎は、酸素の正常な代謝の自然な副産物として形成され<ref name="Brubakk-360" />、細胞[[シグナル伝達]]に重要な役割を持っている酸素の1つまたは2つの電子の部分的な[[還元]]により[[活性酸素]]種が形成されることである<ref>{{cite journal |author=Rhee S.G. |title=Cell signaling. H2O2, a necessary evil for cell signaling |journal=Science |volume=312 |issue=5782 |pages=1882–3 |year=2006 |pmid=16809515 |doi=10.1126/science.1130481}}</ref>。体内で形成される[[スーパーオキシドアニオン]](O<sub>2</sub><sup>-</sup>)は<ref name="pmid1316738">{{cite journal |author=Thom, Steven R. |title=Inert gas enhancement of superoxide radical production |journal=Archives of Biochemistry and Biophysics |volume=295 |issue=2 |pages=391–6 |year=1992 |pmid=1316738 |doi=10.1016/0003-9861(92)90532-2 }}</ref>、多分[[鉄]]の捕捉に関与していると考えられる<ref name="pmid12791678">{{cite journal |author=Ghio, Andrew J.; Nozik-Grayck, Eva; Turi, Jennifer; Jaspers, Ilona; Mercatante, Danielle R.; Kole, Ryszard; Piantadosi, Claude A. |title=Superoxide-dependent iron uptake: a new role for anion exchange protein 2 |journal=American Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology |volume=29 |issue=6 |pages=653–60 |year=2003 |pmid=12791678 |doi=10.1165/rcmb.2003-0070OC |url=http://ajrcmb.atsjournals.org/cgi/content/full/29/6/653 }}</ref>。通常の濃度よりも高い酸素は、活性酸素種の濃度を高める<ref name="Fridovich">{{cite journal |last=Fridovich |first=I. |title=Oxygen toxicity: a radical explanation |journal=Journal of Experimental Biology |volume=201 |issue=8 |pages=1203–9 |year=1998 |url=http://jeb.biologists.org/cgi/reprint/201/8/1203.pdf |format=PDF |pmid=9510531 }}</ref>。酸素は細胞の代謝に必要であり、[[血液]]は身体のすべての部分に酸素を供給する。高分圧の酸素を吸い込むと、高酸素状態が急速に広がっていき、最も[[血管]]が張り巡らされた[[臓器]]が最も弱い立場となる。環境的な[[ストレス (生体)|ストレス]]のもとで活性酸素種の濃度は劇的に増加し、細胞構造に損傷を与え、[[酸化ストレス]]を形成し得る<ref name="Bitterman"/><ref name="pmid18549826">{{cite journal |author=Piantadosi, Claude A. |title=Carbon monoxide, reactive oxygen signaling, and oxidative stress |journal=Free Radical Biology & Medicine |volume=45 |issue=5 |pages=562–9 |year=2008 |pmid=18549826 |doi=10.1016/j.freeradbiomed.2008.05.013 |pmc=2570053 }}</ref>。 |
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酸素中毒の影響は、影響を受ける臓器によって分類され、次の3つの主な形態がある{{Sfn|Clark|Thom|2003|pp=358–60}}<ref name="Acott" /><ref name="pmid14232720" />。 |
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体内でのこれらの活性酸素種のすべての反応メカニズムはまだ完全には解明されていないが<ref name="Imlay2003">{{cite journal |author=Imlay, J.A. |title=Pathways of oxidative damage |journal=Annual Review of Microbiology |volume=57 |pages=395–418 |year=2003 |pmid=14527285 |doi=10.1146/annurev.micro.57.030502.090938}}</ref>、最も反応性の高い酸化ストレスは[[ヒドロキシルラジカル]](·OH)であり、これは[[細胞膜]]の[[不飽和脂肪酸]]に対して有害な[[過酸化脂質]]の形成の連鎖反応を発生させる[[脂質過酸化反応]]を引き起こし得る<ref>{{cite web |author=Bowen, R |url=http://www.vivo.colostate.edu/hbooks/pathphys/misc_topics/radicals.html |title=Free Radicals and Reactive Oxygen |publisher=Colorado State University |accessdate=2008-09-26 }}</ref>。高濃度の酸素は、[[DNA]]や他の生体分子を傷つける[[窒素酸化物]]、ペルオキシニトライト及びトリオキシダン(三重酸素)などの他の[[フリーラジカル]]の形成を増加させる<ref name="Bitterman"/><ref name="pmid1329105">{{cite journal |author=Oury, T.D.; Ho, Y.S.; Piantadosi, Claude A.; Crapo, J.D. |title=Extracellular superoxide dismutase, nitric oxide, and central nervous system O2 toxicity |journal=Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America |volume=89 |issue=20 |pages=9715–9 |year=1992 |pmid=1329105 |pmc=50203 |url=http://www.pnas.org/content/89/20/9715.full.pdf |format=PDF |doi=10.1073/pnas.89.20.9715}}</ref>。生体内の酸化ストレスに対する防御機構は、酸化ストレスに対抗する[[グルタチオン]]などの多くの抗酸化システムを持っているが、最終的には非常に高い濃度の遊離した酸素に圧倒され、細胞の損傷率が高まり、それを修復するシステムの容量を超えてしまう<ref name="pmid2825395">{{cite journal |author=Thom, Steven R.; Marquis, R.E. |title=Free radical reactions and the inhibitory and lethal actions of high-pressure gases |journal=Undersea Biomedical Research |volume=14 |issue=6 |pages=485–501 |year=1987 |pmid=2825395 |url=http://archive.rubicon-foundation.org/2459 |accessdate=2008-09-26 }}</ref><ref name="pmid10372426">{{cite journal |author=Djurhuus, R.; Svardal, A.M.; Thorsen, E. |title=Glutathione in the cellular defense of human lung cells exposed to hyperoxia and high pressure |journal=Undersea and Hyperbaric Medicine |volume=26 |issue=2 |pages=75–85 |year=1999 |pmid=10372426 |url=http://archive.rubicon-foundation.org/2315 |accessdate=2008-09-26 }}</ref><ref name="pmid15485085">{{cite journal |author=Freiberger, John J.; Coulombe, Kathy; Suliman, Hagir; Carraway, Martha-sue; Piantadosi, Claude A. |title=Superoxide dismutase responds to hyperoxia in rat hippocampus |journal=Undersea and Hyperbaric Medicine |volume=31 |issue=2 |pages=227–32 |year=2004 |pmid=15485085 |url=http://archive.rubicon-foundation.org/4014 |accessdate=2008-09-26 }}</ref>。細胞の損傷と細胞死はその結果である<ref name="pmid1886163">{{cite journal |author=Kim, Y.S.; Kim, S.U. |title=Oligodendroglial cell death induced by oxygen radicals and its protection by catalase |journal=Journal of Neuroscience Research |volume=29 |issue=1 |pages=100–6 |year=1991 |pmid=1886163 |doi=10.1002/jnr.490290111 }}</ref>。 |
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* 高気圧条件下で起こる{{仮リンク|発作 (脳)|en|seizure|redirect=1|label=けいれん発作}}とそれに続く{{仮リンク|意識消失|en|unconsciousness|redirect=1}}を特徴とする中枢神経系症状 |
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== 関連項目 == |
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* 長時間にわたって高分圧の酸素を吸入した場合に起こる[[呼吸困難]]と胸部の痛みを特徴とする肺症状 |
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*[[飽和潜水]] |
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* 長時間にわたって高分圧の酸素を吸入した場合に起こる目の変化を特徴とする眼症状([[網膜症]]{{要曖昧さ回避|date=2024年10月}})。 |
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*[[窒素中毒]] |
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*[[減圧症]] |
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中枢神経系の酸素中毒は、発作、短時間の硬直から痙攣や意識消失を引き起こすことがあり、大気圧を越える水圧に遭遇するダイバーにとっては脅威である。肺の酸素中毒は肺傷害から、胸の痛みや呼吸困難を引き起こす{{Sfn|Clark|Thom|2003|pp=358–60}}。眼の酸化的損傷は、近視や[[網膜]]の部分剥離を引き起こすことがある。肺および眼への障害は、治療の一環として[[酸素吸入]]が行われる場合、特に[[新生児]]に最も起こりやすいが、[[高気圧酸素療法]]中にも懸念される<ref name="Best" /><ref name="Bennett and Cooper 2022" />。 |
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*[[抗酸化物質]] |
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酸化的障害は体内のどの細胞にも起こりうるが、最も影響を受けやすい3つの臓器(脳、肺、目)への影響が最も懸念される。[[赤血球]]([[溶血]])<ref name="pmid5782651" /><ref name="pmid4403030" />、[[肝臓]]<ref name="pmid5885427" />、心臓<ref name="pmid5046798" />、{{仮リンク|内分泌腺|en|endocrine gland|redirect=1}}([[副腎]]、{{仮リンク|性腺|en|gonad|redirect=1}}、[[甲状腺]])<ref name="pmid13228600" /><ref name="pmid13889254" /><ref name="Gersh" />、または[[腎臓]]<ref name="pmid5155150" />、および細胞全般の損傷にも関与している可能性がある{{Sfn|Clark|Thom|2003|pp=358–60}}<ref name="pmid4613232" />。 |
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特殊な状況では、他の組織への影響が観察されることがある。宇宙飛行士においては、高濃度の酸素が骨障害の一因になる可能性が疑われている<ref name="Patel" />。高酸素症は、[[慢性閉塞性肺疾患]]などの肺疾患や中枢性[[呼吸抑制]]を有する患者において、間接的に{{仮リンク|高炭酸ガス血症|en|Hypercapnia|redirect=1|label=CO2ナルコーシス}}を引き起こすこともある<ref name="Patel" />。[[海面気圧]]の酸素分圧は0.21 [[バール (単位)|バール]](21 [[kPa]])であるのに対し、0.3 バール(30 kPa)以下では酸素による毒性は生じないため、大気圧下での空気の[[過換気]]は酸素中毒を引き起こさない{{Sfn|Clark|Lambertsen|1970|p=159}}。 |
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== 症状と徴候 == |
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{| class="wikitable" style="float: right; margin-left: 1em; margin-right: 0em;" |
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|+ 乾燥状態で海面高度90フィート(27m)での酸素中毒症状。36人の被験者の曝露時間順{{Sfn|Donald, Part I|1947}} |
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! width="60" | 曝露 (分) |
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! width="50" | 人数 |
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! width="190" | 症状 |
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| align="center" | 96 |
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| align="center" | 1 |
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| 長時間の眩暈、激しい痙攣性嘔吐 |
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|- |
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| align="center" | 60–69 |
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| align="center" | 3 |
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| 激しい唇のぴくつき、多幸感、吐き気とめまい、腕のぴくつき |
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|- |
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| align="center" | 50–55 |
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| align="center" | 4 |
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| 激しい唇のぴくつき、眩暈、唇の水ぶくれ、睡眠、意識朦朧 |
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|- |
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| align="center" | 31–35 |
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| align="center" | 4 |
|||
| 吐き気、めまい、唇のぴくつき、けいれん |
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|- |
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| align="center" | 21–30 |
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| align="center" | 6 |
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| 痙攣、眠気、激しい唇のぴくつき、{{仮リンク|上腹部不快感|en|epigastric aura|redirect=1}}、腕のぴくつき、健忘 |
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|- |
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| align="center" | 16–20 |
|||
| align="center" | 8 |
|||
| 痙攣、めまいと激しい唇のぴくつき、上腹部不快感、痙攣性呼吸; |
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|- |
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| align="center" | 11–15 |
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| align="center" | 4 |
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| 吸気優位、唇のぴくつきと失神、吐き気と錯乱 |
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|- |
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| align="center" | 6–10 |
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| align="center" | 6 |
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| 眩暈と唇のぴくつき、[[異常感覚|パレステジア]]、めまい、横隔膜痙攣、激しい吐き気 |
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|} |
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=== 中枢神経系 === |
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<!-- target for redirect [[Oxygen toxicity seizure]] --> |
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中枢神経系の酸素中毒は、視覚の変化(特に{{仮リンク|視野狭窄|en|tunnel vision|redirect=1}})、[[耳鳴り]]、[[吐き気]]、筋痙攣(特に顔面)、行動の変化(過敏性、[[不安]]、昏迷)、[[めまい]]などの症状として現れる。数秒間の激しい筋収縮(強直期)と、筋弛緩と筋収縮が交互に起こる急激な痙攣([[クローヌス|間代]]期)の2相からなる{{仮リンク|強直間代発作|en|tonic–clonic seizure|redirect=1}}を伴うこともある。この発作後は、意識が消失する({{仮リンク|postictal state|en|postictal state|redirect=1|label=postictal state}}発作後状態){{Sfn|Clark|Thom|2003|p=376}}{{Sfn|U.S. Navy Diving Manual|2011|p=44|loc=vol. 1, ch. 3}}。発作が起こるかどうかは、{{仮リンク|呼吸ガス|en|breathing gas|redirect=1}}中の酸素分圧と曝露時間次第である。しかし、発症までの曝露時間は予測不可能であり、個人間でも同一人物でも日によっても大きなばらつきがあることが研究で示されている{{Sfn|Clark|Thom|2003|p=376}}{{Sfn|U.S. Navy Diving Manual|2011|p=22|loc=vol. 4, ch. 18}}<ref name="Bitterman" />。さらに、水中への浸漬、寒冷への曝露、運動など多くの外的要因により、中枢神経系症状の発症までの時間が短縮される{{Sfn|Donald, Part I|1947}}。この]耐性の低下は、二酸化炭素の血中濃度と密接に関連している{{Sfn|Lang|2001|p=82}}<ref name="rebreather2.0" /><ref name="padi" />暗闇や[[カフェイン]]などの他の要因は、実験動物において耐性を増加させるが、これらの効果はヒトでは証明されていない<ref name="pmid3705247" /><ref name="pmid8574677" />。 |
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=== 肺 === |
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潜水、飛行前の酸素予備吸入、高気圧療法など、0.5気圧を超える酸素分圧への暴露は、肺の中毒症状の発現と関連している<ref name="Loveman 2017" />。肺の中毒症状は、肺につながる[[気道]]から始まり、肺そのものに広がる炎症に起因する。 症状は、上胸部([[胸骨]]下ないしは{{仮リンク|カリーナ (気管)|en|Carina of trachea|redirect=1|label=気管分岐部}})に現れる{{Sfn|Clark|Thom|2003|p=383}}<ref name="pmid4948324" /><ref name="pmid4929472" />。これは、[[吸気]]時の軽いくすぐったさから始まり、頻繁な[[咳嗽|咳]]へと進行する{{Sfn|Clark|Thom|2003|p=383}}。酸素分圧が高い状況で呼吸し続けると、患者は、咳が制御不能となり、時折息切れ([[呼吸困難]])を生じ、吸気時の軽い熱感を自覚する{{Sfn|Clark|Thom|2003|p=383}}。肺毒性に関連する[[身体所見]]には、[[聴診器]]で聴こえる{{仮リンク|ラ音|en|rales|redirect=1|label=水泡音}}、[[発熱]]、{{仮リンク|鼻粘膜|en|nasal mucosa}}の[[充血]]などがある<ref name="pmid4929472" />。[[組織学]]的検査では、間質腔の幅の増大がみられることがある<ref name="Loveman 2017" />。[[胸部X線|肺のX線検査]]では、短期的にはほとんど変化がみられないが、長期間の高濃度酸素暴露により、両肺全体にびまん性陰影が増加する{{Sfn|Clark|Thom|2003|p=383}}。スパイロメトリーでは、肺機能が低下する。すなわち、肺が保持できる空気の量([[肺活量]])が減少し、呼気機能および肺弾性が悪化する<ref name="pmid4929472" />{{Sfn|Clark|Thom|2003|pp=386–87}}。{{仮リンク|肺拡散能|en|Diffusing capacity|redirect=1}}は低下し、最終的には[[低酸素血症]]に至る<ref name="Loveman 2017" />。動物実験では、中枢神経系毒性にみられるのと同様の耐性のばらつきが示され、種間でも大きなばらつきがある。0.5バール(50 kPa)以上の酸素への曝露が断続的である場合、肺の回復が可能となり、中毒症状発現が遅れる<ref name="Smith" />。同様の経過はすべての[[哺乳類]]に共通である<ref name="Loveman 2017" />。数日間酸素曝露しても低酸素血症による死亡が生じない場合、増殖期に移行し、肺胞膜の慢性的肥厚と肺拡散能の低下が生じる。これらの変化は正常酸素濃度環境に戻ればほとんど可逆的であるが、完全な回復に要する時間は不明である<ref name="Loveman 2017" />。 |
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=== 眼 === |
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未熟児の場合、眼球の障害([[未熟児網膜症]])の徴候は、[[眼底検査]]で乳児の網膜の血管のある領域と血管のない領域の境界として、観察される。この境界の程度は、以下の4つの病期に分類される。(I)境界は線状。(II)境界が隆起。(III)新生血管が隆起の周囲で成長している。(IV)網膜が眼球の内壁([[脈絡膜]])から剥離し始める<ref name="Best" />。 |
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== 原因 == |
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酸素中毒は、{{仮リンク|高酸素症|en|hyperoxia|redirect=1}}、すなわち身体が通常曝される酸素分圧よりも高い分圧の酸素に曝されることによって引き起こされる。これは、[[潜水]]<ref name="NOAA Diving Manual 2001" />、[[高気圧酸素治療|高気圧酸素療法]]<ref name="smerz" />、そして[[集中治療室|集中治療]](特に未熟児に対する酸素補給<ref name="Gilbert" />)や慢性疾患の長期治療目的の酸素吸入<ref name="Hochberg et al 2021" />、という3つの主な状況で生じる。それぞれの場合において、{{仮リンク|危険因子|en|risk factors|redirect=1}}は著しく異なる<ref name="NOAA Diving Manual 2001" /><ref name="smerz" /><ref name="Gilbert" />。 |
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通常の、または低下した周囲圧の下では、{{仮リンク|高酸素症|en|hyperoxia|redirect=1}}の影響は、最初は直接曝露される肺に限定されるが、長期間の曝露後または高気圧環境では、他の臓器が危険にさらされる可能性がある。通常の吸入酸素分圧では、血液中に輸送される酸素の大部分はヘモグロビンによって運ばれるが、[[オキシヘモグロビン]]の飽和がほぼ完了する100[[水銀柱ミリメートル|mmHg]](0.13 [[バール (単位)|バール]])を超える動脈酸素分圧では、溶存酸素量が増加する。高濃度では、高酸素症の影響は肺以外の身体組織にも広く及ぶ<ref name="Helmerhorst et al 2015" />。 |
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=== 中枢神経毒性 === |
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{{See also|テクニカルダイビング}} |
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通常の大気圧分圧の約8倍である約{{Convert|1.6|bar|lk=on|}}を超える酸素分圧に数分から数時間さらされることは、通常、中枢神経系の酸素中毒と関連しており、高気圧酸素療法を受けている患者やダイバーに最も起こりやすい。[[海面気圧]]は約{{Convert|1|bar|lk=on|}}であるため、中枢神経系毒性は、{{仮リンク|周囲圧力|en|ambient pressure|redirect=1}}が通常より高い高気圧条件下でのみ起こりうる<ref name="smerz" /><ref name="hampson215-9" />。水深60m(200フィート)を超える深度で空気を呼吸するダイバーは、酸素中毒の{{仮リンク|発作 (脳)|en|seizure|label=発作|redirect=1}}のリスクが高まる。{{仮リンク|ナイトロックス|en|nitrox|redirect=1}}のような酸素が濃縮された混合ガスを吸入するダイバーも同様に、その混合ガスで許容される{{仮リンク|最大運用深度|en|maximum operating depth|redirect=1|label=最大運用深度(MOD)}}より深くまで潜降すると、発作を起こすリスクが高まる{{Sfn|Lang|2001|p=7}}。中枢神経系毒性は、高二酸化炭素分圧、ストレス、疲労、寒さによって悪化するが、これらはすべて、高気圧療法よりもダイビングの方がはるかに起こりやすい<ref name="Cooper et al 2022" />。 |
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=== 肺毒性 === |
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[[ファイル:Pulmonary toxicity tolerance curves.svg|thumb|upright=1.8|alt=A graph of pulmonary toxicity tolerance curves. The X axis is labelled "Duration of oxygen breathing (hours)", and ranges from 0 to 30 hours. The Y axis is labelled "Inspired oxygen partial pressure (bars)", and ranges from 0.0 to 5.0 bars. The chart shows three curves at -2%, -8% and -20% lung capacity, starting at 5.0 bars of pressure and decreasing to between 0.5 and just under 1.5 bars, and displays a heightened decrease in lung capacity related to an increase in duration.|この曲線は、酸素分圧上昇とその曝露時間の[[肺活量]]に及ぼす影響を示している。Lambertsenは1987年、0.5気圧(50kPa)なら無期限に耐えられると結論づけた。]][[肺]]と[[気道]]は、人体で最も高濃度の酸素にさらされるため、最初に酸素による毒性が生じる臓器である。肺の酸素毒性は、{{Convert|0.5|bar||lk=on}}を超える酸素分圧にさらされた場合にのみ発生する。肺毒性の最も早い徴候は、95%以上の酸素で4時間から22時間の無症状期間の後、[[気管気管支炎]]、すなわち[[上気道]]の[[炎症]]で始まる[<ref name="Bitterman2009" />41]が、このレベルの酸素では、通常約14時間後に症状が始まることを示唆する研究もある<ref name="Jackson" />。 |
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2~3 バールの酸素分圧(大気圧の2~3倍で100%酸素)では、これらの症状は酸素暴露後3時間で始まる可能性がある<ref name="Bitterman2009" />。1~3バール(100~300kPa)の圧力で酸素を吸入したラットの実験から、酸素中毒の肺症状は、常圧条件と高気圧条件とでは同じではないかもしれないことが示唆されている<ref name="pmid17416738" />。[[呼吸機能検査|肺機能検査]]で測定される肺機能の低下所見は、100%酸素に連続暴露して24時間という短時間で生じることがあり<ref name="Jackson" />、{{仮リンク|びまん性肺胞傷害|en|diffuse alveolar damage|redirect=1}}の所見と[[急性呼吸窮迫症候群]]の発症は、通常100%酸素に48時間暴露した後に生じる<ref name="Bitterman2009" />。大気圧下100%酸素の吸入も最終的には肺胞の虚脱([[無気肺]])ももたらすが、加圧下での同じ酸素分圧では、かなりの分圧の不活性ガス(典型的には[[窒素]])が存在することでこの影響が防止される<ref name="Wittner" />。 |
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[[早産]]の新生児は、高濃度の酸素に長時間さらされることで、[[気管支肺異形成症]]のリスクが高くなることが知られている<ref name="Bancalari" />。酸素中毒のリスクが高い他のグループは、吸入酸素濃度が50%を超える[[機械換気 (医学)|人工呼吸]]中の患者、[[化学療法剤]][[ブレオマイシン]]など酸素毒性のリスクを高める化学物質にさらされた患者である<ref name="Jackson" />。そのため、[[集中治療室]]で[[機械換気 (医学)|機械換気]]を行っている患者に対する現在の[[診療ガイドライン|ガイドライン]]では、酸素濃度を60%未満に保つことが推奨されている<ref name="Bitterman2009" />。同様に、[[減圧症]]の治療を受けるダイバーは、ダイビング中の酸素曝露に加えて、高気圧条件下での長時間の酸素呼吸にさらされる治療が必要となるため、酸素中毒のリスクが高くなる<ref name="smerz" />。 |
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=== 眼毒性 === |
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{{See also|未熟児網膜症}} |
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高濃度酸素吸入に長期間さらされると、[[網膜]]に損傷が生じる<ref name="NEDU47" /><ref name="pmid754368" /><ref name="pmid1701697" />。常圧で高酸素吸入率にさらされた乳幼児の発達中の眼球への傷害は、高気圧条件下で成人ダイバーに起こる眼球傷害とはメカニズムも影響も異なる<ref name="pmid9603802" /><ref name="Butler" />。{{仮リンク|高酸素症|en|hyperoxia|redirect=1}}は、乳児の[[未熟児網膜症]](ROP)と呼ばれる障害の一因である可能性がある<ref name="pmid9603802" /><ref name="Nichols" />。早産児では、網膜の血管が十分でないことが多い。未熟児網膜症は、網膜血管系の発達が停止し、その後異常に進行することによって起こる。新生血管の成長に伴って[[線維組織]](瘢痕組織)が収縮し、網膜剥離を引き起こすことがある。酸素補充は{{仮リンク|危険因子|en|risk factor|redirect=1}}ではあるが、本疾患発症の主な危険因子ではない。補助酸素の使用を制限しても未熟児網膜症の発症率が低下するとは限らず、[[低酸素症]]に関連した全身合併症のリスクを高める可能性がある<ref name="pmid9603802" />。 |
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高酸素性[[近視]]は、閉鎖回路の{{仮リンク|リブリーザー|en|Rebreather|redirect=1}}を用いる潜水士が長期にわたって酸素に曝露した場合に発生している<ref name="Butler" /><ref name="shykoff3492" /><ref name="pmid18500077" />。また、高気圧酸素療法を繰り返し受けた場合にも起こりやすい<ref name="pmid754368" /><ref name="myopialength" />。[[眼軸長]]や{{仮リンク|角膜形状測定|en|Keratometer|redirect=1}}では[[近視シフト]]の原因となるような[[角膜]]や眼球測定の所見が明らかではないため、これは[[水晶体]]の[[屈折力]]の増加によるものである<ref name="myopialength" /><ref name="pmid16358652" />。この病変は時間が経てば通常可逆的である<ref name="pmid754368" /><ref name="myopialength" />。 |
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高気圧酸素療法の副作用として考えられるのは、[[白内障]]の初期発症または進行である。白内障とは、眼の水晶体の混濁の増大であり、[[視力]]を低下させ、最終的には[[失明]]に至る可能性がある。これは、酸素濃度上昇に生涯さらされることに関連するまれな事象であり、非常にゆっくりと発症するため、見落とされている可能性がある。原因は完全には解明されていないが、酸素濃度が上昇すると、水晶体の[[クリスタリン]]が[[架橋]]によって[[変性]]し、光を散乱させる凝集体が形成されるため、[[硝子体]]の劣化が促進される可能性があることが示唆されている。これは、高気圧治療に関連して、より多く見られる近視シフトの最終段階である可能性がある<ref name="Bennett and Cooper 2022" />。 |
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== 機序 == |
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{{Main|活性酸素|酸化ストレス}} |
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[[ファイル:Lipid peroxidation.svg|thumb|300px|[[脂質過酸化反応|脂質過酸化]]のメカニズム。[[不飽和脂肪酸|不飽和脂質]]が[[過酸化脂質]]に変換される連鎖反応が起こる。|alt=An unsaturated lipid reacts with a hydroxyl radical to form a lipid radical (initiation), which then reacts with di-oxygen, forming a lipid peroxyl radical. This then reacts with another unsaturated lipid, yielding a lipid peroxide and another lipid radical, which can continue the reaction (propagation).]] |
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酸素毒性の[[生化学]]的基盤は、酸素が1つまたは2つの電子によって部分的に還元され、[[活性酸素種]]を形成することである{{Sfn|Clark|Thom|2003|p=360}}。これらは酸素の通常の[[代謝]]の自然な副産物であり、[[細胞シグナル伝達]]において重要な役割を果たしている<ref name="pmid16809515" />。体内で生成される一種の[[超酸化物]][[アニオン]] ({{Chem|O|2|-}})<ref name="pmid1316738" />は、鉄の獲得に関与している可能性がある<ref name="pmid12791678" />。酸素濃度が通常より高いと、活性酸素濃度が増加する<ref name="Fridovich" />。酸素は細胞代謝に必要であり、血液が体のすべての部分に酸素を供給している。酸素が高い分圧で呼吸されると、酸素過剰状態が急速に広がり、最も血管が豊富な組織が最も影響を受けやすくなる。ストレス環境の時期には、活性酸素のレベルが劇的に増加し、細胞構造に損傷を与え、[[酸化ストレス]]を引き起こすことがある<ref name="Bitterman" /><ref name="pmid18549826" />。 |
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これらの活性酸素が体内でどのように作用するかのメカニズムはまだ完全には理解されていないが<ref name="Imlay2003" />、酸化ストレスの最も反応性が高い生成物の一つは[[ヒドロキシルラジカル]]({{Chem|·O|H}})であり、これは[[細胞膜]]内の不飽和[[脂質]]における[[脂質過酸化反応]]の有害な連鎖反応を引き起こす可能性がある<ref name="Bowen" />。高濃度の酸素は、[[一酸化窒素]]、[[過酸化亜硝酸塩]]、[[トリオキシダン]]などの他の[[ラジカル (化学)|フリーラジカル]]の生成も増加させ、これらは[[デオキシリボ核酸]](DNA)やその他の生体分子に損傷を与える<ref name="Bitterman" /><ref name="pmid1329105" />。体内には[[グルタチオン]]などの酸化ストレスを防ぐための多くの[[抗酸化物質]]システムが存在するが、非常に高い濃度の遊離酸素が存在すると、これらのシステムは最終的に飽和し、細胞損傷の速度がシステムが防御または修復する能力を上回るようになる<ref name="pmid2825395" /><ref name="pmid10372426" /><ref name="pmid15485085" />。その結果、[[細胞傷害|細胞損傷]]や[[細胞死]]が引き起こされる<ref name="pmid1886163" />。 |
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== 診断 == |
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視覚障害、耳の症状、めまい、錯乱、吐き気などの症状は、[[窒素中毒]]、うっ血、寒冷など、水中環境に共通する多くの要因による可能性があるため、{{仮リンク|発作 (脳)|en|seizure|label=発作}}前のダイバーにおける中枢神経系酸素中毒の診断は困難である。しかし、これらの症状は、[[高気圧酸素治療]]を受けている患者の酸素中毒の初期段階を診断するのに役立つ可能性がある。いずれの場合も、[[てんかん]]の既往歴があるか、検査で[[低血糖症|低血糖]]が指摘されていない限り、{{Convert|1.4|bar||lk=on}}を超える分圧で酸素を吸入している状況で発作が起きた場合、酸素中毒の診断が示唆される<ref name="NBDHMT" />。 |
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[[呼吸困難]]を伴う新生児の[[気管支肺異形成症|気管支肺異形成]]の診断は、最初の数週間は困難である。しかし、この時期に乳児の呼吸が改善しない場合は、血液検査とX線検査で気管支肺異形成を確認することができる。さらに、[[心臓超音波検査|心エコー図]]は、[[先天性心疾患]]や{{仮リンク|肺動脈性肺高血圧症|en|pulmonary arterial hypertension|redirect=1}}などの他の可能性のある原因を除外するのに役立つ<ref name="nih bpd_Diagnosis" />。 |
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乳幼児の未熟児網膜症の診断は、通常、臨床環境によって示唆される。未熟児、低出生体重、および酸素曝露歴が主な指標であるが、遺伝性因子によるパターンは示されていない{{Sfn|Regillo|Brown|Flynn|1998|p=178}}。 |
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=== 鑑別診断 === |
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{{Seealso|血液ガス分析}} |
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臨床診断は、動脈血酸素濃度で確認できる<ref name="Cooper et al 2022" />。酸素中毒と混同される可能性のある他の疾患には、以下のようなものがある<ref name="Cooper et al 2022" />。 |
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*[[一酸化炭素中毒]] |
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*[[脳血管障害]]([[脳卒中]]) |
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*{{仮リンク|毒物注入|en|Envenomation|redirect=1}}または[[毒素|毒物]]摂取 |
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*{{仮リンク|高炭酸ガス血症|en|Hypercapnia|redirect=1}}(CO<sub>2</sub>ナルコーシス) |
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*[[過換気]] |
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*[[低血糖症|低血糖]] |
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*[[感染症]] |
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*[[片頭痛]] |
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*[[多発性硬化症]] |
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*[[てんかん]] |
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== 予防 == |
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[[ファイル:Cylinder mod.jpg|thumb|潜水用ボンベのラベルには、酸素を豊富に含む{{仮リンク|呼吸ガス|en|breathing gases|redirect=1}}ガス(36%)が入っていることが記載されており、最大運用深度(mod)が太字で記されている({{Convert|28|m}})。|alt=Closeup of a diving cylinder with a band reading "NITROX". A hand-printed label at the neck reads "MOD 28m 36% O2", with the 28 in much larger size.]] |
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酸素中毒の予防は、完全に環境次第である。水中でも[[宇宙]]でも、適切な予防措置を講じることで、最も悪質な影響を排除することができる。[[未熟児]]の場合、早産による合併症の治療のため、酸素の補充が一般的に必要となる。この場合、[[気管支肺異形成症|気管支肺異形成]]や[[未熟児網膜症]]の予防は、乳児の生命を維持するのに十分な酸素供給を損なうことなく行わなければならない<ref name="Nursing guidelines" />。 |
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=== ダイビング === |
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{{See also|{{仮リンク|最大運用深度|en|maximum operating depth|redirect=1|label=最大運用深度(maximum operating depth: MOD)}}|{{仮リンク|潜水ガス管理|en|Scuba gas management|redirect=1}}|{{仮リンク|リブリーザー潜水|en|Rebreather diving|redirect=1}}|飽和潜水}}酸素中毒は、[[スクーバダイビング]]における壊滅的な危険であり、{{仮リンク|発作 (脳)|en|seizure|label=発作|redirect=1}}が発生すると溺死の高いリスクが伴う{{Sfn|Lang|2001|p=7}}<ref name="Doolette and Mitchell 2018" />。発作は突然発生し、警告症状がないこともある{{Sfn|U.S. Navy Diving Manual|2011|p=44|loc=vol. 1, ch. 3}}。その影響として、突然の痙攣や[[意識消失]]が起こり、その間に被害者は[[レギュレータ (ダイビング)|レギュレーター]]を失い、溺れる可能性がある<ref name="Mitchell2012" />{{Sfn|Clark|Thom|2003|p=375}}。{{仮リンク|フルフェイスマスク|en|full-face diving mask|redirect=1|label=フルフェイスダイビングマスク}}の利点の一つは、発作が発生した際にレギュレーターの喪失を防ぐことができる点である。マウスピース固定ストラップは、これと似ているもののやや効果の低い機能を持つ比較的安価な代替手段である<ref name="Doolette and Mitchell 2018" />。高深度、長時間のダイビング、酸素濃度の高い{{仮リンク|呼吸ガス|en|breathing gas|redirect=1|label=呼吸ガス}}を使用するダイビングでは中枢神経系酸素中毒のリスクが高まるため、ダイバーは酸素濃度の高い呼吸ガスに対して{{仮リンク|最大運用深度|en|maximum operating depth|redirect=1|label=最大運用深度(maximum operating depth: MOD)}}を計算する方法を教わり、そうした混合ガスが入った[[ボンベ]]はその深度の明確な表示がなされるべきである<ref name="padi" />{{Sfn|Lang|2001|p=195}}。 |
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発作のリスクは、酸素分圧と曝露時間の累積的な組み合わせである「[[投与量]]」の関数であるようだ。発作が決して発生しない酸素分圧の[[閾値]]は確立されておらず、多くの変数、特に個人差に依存する可能性がある。個人の感受性、運動強度、そして呼吸負荷によって影響される二酸化炭素の血中濃度に応じて、リスクは大きく異なる可能性がある<ref name="Doolette and Mitchell 2018" />。 |
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酸素曝露が重大なリスクレベルに達する可能性のあるダイビングモードにおける{{仮リンク|ダイバー訓練|en|diver training|redirect=1|label=ダイバー訓練}}コースでは、ダイバーは潜水時の「酸素時計」を計画・監視する方法を教わる{{Sfn|Lang|2001|p=195}}。これは仮想的なアラーム時計であり、酸素圧が高くなるほど早く進み、[[アメリカ海洋大気庁|NOAA]]のダイビングマニュアルで推奨される最大単一曝露限界に達すると作動するように設定されている<ref name="padi" />{{Sfn|Lang|2001|p=195}}。酸素部分圧が以下の場合、それぞれの限界は次の通りである:{{Convert|1.6|bar|abbr=on}}では45分、{{Convert|1.5|bar|abbr=on}}では120分、{{Convert|1.4|bar|abbr=on}}では150分、{{Convert|1.3|bar|abbr=on}}では180分、{{Convert|1.2|bar|abbr=on}}では210分。ただし、酸素中毒の症状がいつ発生するかを信頼性をもって予測することは不可能である<ref name="Butler3727183" /><ref name="Butler15233156" />。多くの{{仮リンク|ナイトロックス|en|nitrox|redirect=1|label=ナイトロックス}}対応の{{仮リンク|ダイブコンピュータ|en|dive computer|redirect=1|label=ダイブコンピュータ}}は、酸素負荷を計算し、複数回の潜水にわたってそれを追跡できる。目標は、呼吸ガス中の酸素分圧を低減するか、酸素分圧の高いガスを呼吸する時間を短縮することで、アラームを作動させないようにすることである。酸素分圧は、呼吸ガス中の酸素濃度と潜水深度に応じて増加するため、ダイバーは浅い深度で潜るか、酸素濃度の低いガスを呼吸するか、酸素濃度の高いガスへの曝露時間を短縮することで酸素時計の時間を延ばすことができる{{Sfn|Clark|Lambertsen|1970|pp=157–62}}<ref name="Baker2000" />。この機能は、いくつかのテクニカルダイビング用減圧コンピュータやリブリーザーの制御および監視ハードウェアによって提供されている<ref name="Perdix" /><ref name="ap vision" />。 |
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空気で{{Convert|56|m|ft|abbr=on}}以上の深度で潜ると、酸素分圧が{{Convert|1.4|bar|abbr=on}}を超えるため、酸素中毒の危険性が高まり、21%未満の酸素を含む[[混合ガス]](hypoxic mixtureと呼ばれる)を使用する必要がある。[[窒素]]の割合を増やすことは、中毒性の強い混合物を生み出すため、実用的ではない。しかし、[[ヘリウム]]は催眠作用がないため、{{仮リンク|ガス混合|en|Gas blending|redirect=1}}によって窒素を完全にヘリウムに置き換える(結果として{{仮リンク|ヘリオックス|en|heliox|redirect=1|label=ヘリオックス}}と呼ばれる混合物が生成される)、または窒素の一部をヘリウムに置き換えて{{仮リンク|トリミックス|en|Trimix (breathing gas)|redirect=1|label=トリミックス}}を生成することができる{{Sfn|Hamilton|Thalmann|2003|pp=475, 479}}。 |
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肺の酸素中毒は、ダイビング中では完全に回避可能な事象である。ほとんどのダイビングが限られた時間で自然に断続的となるため、これはダイバーにとって比較的稀であり、それに加え、可逆的な合併症でもある{{Sfn|Clark|Lambertsen|1970|p=270}}。 定められたガイドラインに従えば、ダイバーは肺の酸素中毒のリスクを計算することができる<ref name="repex1" /><ref name="repex2" /><ref name="spums" />。[[飽和潜水]]では、活動エリア内のガス中の酸素含有量を0.4バール以下に制限することで、酸素中毒を回避することができる<ref name="EOW" />。 |
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====スクリーニング==== |
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[[酸素耐性テスト]]を使用した[[スクリーニング (医学)|スクリーニング]]の目的は、潜水作業中や減圧症の高気圧治療中に酸素痙攣を起こしやすい、低耐性のダイバーを特定することである。このテストの有効性については疑問が呈されており、統計的研究によれば、標準的な高気圧治療スケジュール中の発作の発生率は低いため、一部の[[海軍]]ではこのテストの使用を中止しているが、他の海軍では引き続き全ての候補ダイバーに対してこのテストを要求している<ref name="Ghosh et al 2015" />。 |
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耐性のばらつきや作業負荷などの他の変動要因により、アメリカ海軍は酸素耐性のスクリーニングを廃止した。1976年から1997年までに実施された6,250件の酸素耐性テストのうち、酸素中毒が観察されたのは6例(0.1%)に過ぎなかった<ref name="Gould" /><ref name="pmid3705251" />。 |
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[[インド海軍]]が使用する酸素耐性テストは、[[アメリカ海軍]]および[[アメリカ海洋大気庁]]の勧告に従い、[[BIBSマスク]]を介して100%酸素を[[絶対圧]] 2.8バールの周囲圧で30分間、乾燥した高気圧チャンバー内で安静時に呼吸するというものである。付添者は中枢神経系酸素中毒の発作が起きた場合の緊急処置の訓練をあらかじめ受けていなければならない<ref name="Ghosh et al 2015" />。 |
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=== 高圧環境 === |
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発熱や{{仮リンク|発作 (脳)|en|seizure|label=けいれん発作|redirect=1}}の既往がある場合は、[[高気圧酸素治療]]の[[禁忌 (医学)|相対的禁忌]]である<ref name="Latham2008" />。[[減圧症]]の治療に使用されるスケジュールでは、発作や肺損傷の可能性を減らすために、100%の酸素ではなく空気を吸う期間(空気休憩)を設けている。米海軍では、100%酸素と空気を交互に使用する期間に基づく治療表を使用している。例えば、米海軍の第6表では、水深18メートルに相当する{{Convert|2.8|atm|lk=in}}で75分間(酸素20分/空気5分を3回)を必要とする。この後、酸素で30分かけて{{Convert|1.9|atm|}}までゆっくりと減圧する。その後、患者はさらに150分間(15分空気/60分酸素を2回)、より低い圧力にとどめおかれ、酸素吸入で30分かけて大気圧まで減圧する{{Sfn|U.S. Navy Diving Manual|2011|p=41|loc=vol. 5, ch. 20}}。 |
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[[ビタミンE]]と[[セレン]]は、肺酸素毒性に対する潜在的な保護方法として提案されたが、後に却下された<ref name="Schatte" /><ref name="pmid1852722" /><ref name="GUEdvd" />。しかし、ビタミンEとセレンが生体内での[[脂質過酸化反応|脂質過酸化]]とフリーラジカルによる、損傷防止の助けとなり、したがって反復的な高気圧酸素曝露後の網膜の変化を防ぐというラットにおける実験的[[エビデンス (医学)|エビデンス]]がいくつかある<ref name="pmid2744583" />。 |
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=== 大気圧環境 === |
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[[気管支肺異形成症]]は、初期段階では低分圧酸素での中断時間を挟むことで可逆的であるが、進行すると最終的に不可逆的な肺損傷を引き起こす可能性がある。そのような損傷を引き起こすには、酸素投与中断なしで1〜2日間の曝露が必要である<ref name="Patel" />。 |
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[[未熟児網膜症]]は、[[スクリーニング (医学)|スクリーニング]]によって大部分が予防可能である。現在のガイドラインでは、{{仮リンク|妊娠週数|en|Gestational age (obstetrics)|redirect=1}}が32週未満での出生、または出生時体重が1.5 kg未満のすべての赤ちゃんが、少なくとも2週間ごとに未熟児網膜症のスクリーニングを受ける必要があるとされている<ref name="rcpch" />。1954年の「National Cooperative Study」では、補助酸素と未熟児網膜症の因果関係が示されたが、補助酸素の制限により乳児死亡率が増加した。[[低酸素症]]と未熟児網膜症のリスクをバランスさせるために、現代のプロトコルでは、酸素を受けている未熟児の血中酸素レベルの[[モニター (医学)|監視]]が求められている<ref name="Silverman" />。 |
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酸素中毒のリスクと長期治療で使用される酸素の量を最小限に抑えるためには、目標とする酸素化レベルを達成しつつ、供給濃度を慎重に[[滴定投与|調整する]]ことが重要である<ref name="Helmerhorst et al 2015" />。酸素療法を受ける際の典型的な[[酸素飽和度]]の目標は、[[正期産]]児でも[[早産児]]でも91-95%の範囲である<ref name="Nursing guidelines" />。 |
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=== 低圧環境 === |
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酸素の割合が高いことではなく、酸素の分圧が高いことによって酸素中毒は引き起こされるため、低圧環境では避けることができる。これは、低圧で活動しなければならない宇宙服での純酸素の使用や、初期の宇宙船、例えば[[ジェミニ計画]]や[[アポロ宇宙船]]での高酸素濃度と通常の大気圧よりも低い機内圧力の使用によって例証される<ref name="pmid2730484" />。[[船外活動]]のような応用では、呼吸ガスの酸素の割合が100%に近づいても、酸素は無毒である。これは、酸素分圧が{{仮リンク|慢性毒性|en|Chronic toxicity|redirect=1|label=慢性的}}に{{Convert|0.3|bar|psi}}を超えるようになっていないためである<ref name="pmid2730484" />。 |
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== 治療 == |
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高気圧酸素療法では、患者は通常、約2.8気圧(280kPa)に加圧された高気圧チャンバー内で、マスクから100%の酸素を吸入する。この間に発作が起きれば、患者からマスクを外して吸入酸素分圧を0.6気圧(60kPa)以下に下げる{{Sfn|U.S. Navy Diving Manual|2011|p=44|loc=vol. 1, ch. 3}} |
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水中での発作時は、可能な限り早くダイバーを水面に引き上げなければならない。長年、[[空気塞栓|動脈ガス塞栓症]](AGE)の危険性から、発作そのものが起きている間はダイバーを浮上させないことが推奨されてきたが{{Sfn|U.S. Navy Diving Manual|2011|p=45|loc=vol. 1, ch. 3}}、[[声門]]が完全に気道を閉鎖するわけではないという[[エビデンス (医学)|エビデンス]]もある<ref name="RBW2008" />。これにより、潜水医学および高気圧医学協会のダイビング委員会(Diving Committee of the Undersea and Hyperbaric Medical Society)は、{{仮リンク|発作 (脳)|en|seizure|label=発作|redirect=1}}の痙攣(けいれん)期に[[レギュレータ (ダイビング)|レギュレーター]]がダイバーの口にない場合には、溺れる危険が[[空気塞栓|動脈ガス塞栓症]](AGE)の危険よりも大きいため、ダイバーを引き上げるべきだが、そうでない場合は痙攣期が終わるまで浮上を遅らせるべきだという現在の推奨を行っている<ref name="Mitchell2012" />。救助者は、痙攣期中に自身の安全が損なわれないようにする。その後、被害者の空気供給が確立されていることを確認し、{{仮リンク|浮力制御下での引き上げ|en|controlled buoyant lift|redirect=1|label=浮力制御下での引き上げ(controlled buoyant lift)}}を行う。意識の無い体を引き上げる技術は、多くのレクリエーション{{仮リンク|ダイバー訓練|en|diver training|redirect=1}}施設では高度な技術として教えられており、プロのダイバーにとっては基本的な技術である。なぜなら、これは[[送気式潜水]]の待機ダイバーの主要な役割の一つであるからである。水面に到達したら、さらなる合併症が医療の介入を必要とする可能性があるため、必ず緊急医療サービスに連絡する<ref name="DANoxtox" />。水中で発作以外の症状が現れた場合、ダイバーは直ちに酸素分圧の低いガスに切り替えるか、[[減圧義務]]が許す限り浅い深度に浮上するべきである。水面に[[減圧チャンバー]]がある場合は、[[水面減圧]]が推奨される選択肢である。[[アメリカ海軍|米国海軍]]は、[[再圧タンク]]がすぐに利用できない場合、減圧を完了するための手順を公開している{{Sfn|U.S. Navy Diving Manual|2011|pp=37–39|loc=vol. 2, ch. 9}}。実際の{{仮リンク|呼吸ガス|en|breathing gas|redirect=1}}の組成に基づき、潜水時間や減圧症予防のための浮上時間を計算する携行用コンピュータもある<ref name="Perdix" />([[ダイブコンピュータ]])。 |
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気管支肺異形成症や[[急性呼吸窮迫症候群]]の症状が現れた場合、投与する酸素濃度を下げ、曝露時間を短縮し、通常の空気を供給する(酸素の)中断時間を増やすことで対処する。他の疾患(特に乳児の場合)の治療のために補助酸素が必要な場合、肺組織の膨張を維持するために[[人工呼吸器]]が必要になることがある。この場合、人工呼吸の圧力と曝露時間は段階的に減少させ、[[気管支拡張薬]]や[[肺サーファクタント]]などの薬剤が使用されることがある<ref name="MPBPD" />。 |
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ダイバーは、実験に基づくエビデンスによって一般的に許容可能とされるレベルに酸素曝露を制限することで、肺損傷のリスクを管理する。これは、特定の分圧での曝露時間に基づく酸素中毒単位(oxygen toxicity unit: [[酸素中毒#OTU|OTU]])のシステムを使用する。[[減圧症]]の緊急治療の場合、より重大な症状を治療するために通常の酸素曝露限界を超える必要があることがある<ref name="NOAA Diving Manual 2001" />。 |
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未熟児網膜症は自然に[[軽快]]することがあるが、疾患が閾値(連続5時間または累積8時間の[[未熟児網膜症#International classification|ステージ3の未熟児網膜症]]と定義)を超えて進行した場合、{{仮リンク|凍結手術|en|cryosurgery|redirect=1|label=}}と{{仮リンク|レーザー手術|en|laser surgery|redirect=1|label=}}の両方が[[失明]]のリスクを減少させることが示されている。疾患がさらに進行した場合、{{仮リンク|強膜バックル|en|Scleral buckle|redirect=1|label=}}や{{仮リンク|硝子体手術|en|vitrectomy|redirect=1|label=}}などの[[手術]]が網膜の再接着に役立つ場合がある{{Sfn|Regillo|Brown|Flynn|1998|p=184}}。<gallery> |
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ファイル:Human eye cross section detached retina.svg|網膜(赤)が眼球の上部で剥離している。 |
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ファイル:Human eye cross section scleral buckle.svg|網膜剥離に対する{{仮リンク|強膜バックル|en|scleral buckle|redirect=1}}、青色部分)治療。 これにより眼球の壁が剥離した網膜に接触し、網膜が再接着される。 |
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</gallery> |
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===反復暴露=== |
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<!--target for redirects [[Repex]], and [[Repetitive exposure]] -->呼吸ガス中の潜在的に毒性のある酸素濃度への繰り返しの曝露は、特に[[高気圧酸素治療]]、[[飽和潜水]]、[[海中居住施設]]、そして反復的な{{仮リンク|減圧潜水|en|decompression diving|redirect=1|label=}}など、高気圧環境では一般的に起こり得る。[[アメリカ海洋大気庁]](NOAA)での{{仮リンク|ロバート・ハミルトン|en|Robert William Hamilton Jr.|redirect=1}}らによる研究は、単回および繰り返しの曝露に対する許容レベルを決定した。急性および慢性毒性に対する許容曝露は区別されるが、これらは実際には可能な連続的な曝露範囲の両極端である。さらに、日常的な曝露と緊急治療が必要な曝露を区別することができる。後者では、より危険な傷害を軽減するために、特に比較的安全な管理・[[モニター (医学)|モニター]]された環境下で、より高い酸素中毒のリスクが正当化される場合がある<ref name="NOAA Diving Manual 2001" />{{Sfn|U.S. Navy Diving Manual|2011|p=41|loc=vol. 5, ch. 20}}{{Efn|例えば、重症の酸素中毒から[[急性呼吸窮迫症候群]]に至った場合は、[[肺]]の[[ガス交換]]能力が低下しているために[[人工呼吸中]]の酸素濃度を高濃度にせざるを得ない。}}。 |
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1988年に開発されたRepex(反復曝露)法は、大気圧下で100%酸素を1分間吸入することに相当する単一の用量値を{{Visible anchor|酸素耐性ユニット|OTU}}(Oxygen Tolerance Unit: '''OTU''')<ref>{{Cite web |title=Suunto EON Core - 参照 - ダイビング用語 |url=https://www.suunto.com/ja-jp/Support/Product-support/suunto_eon_core/suunto_eon_core/reference/dive-terms/ |website=Suunto |access-date=2024-10-12 |language=ja-JP}}</ref>と呼び、これを用いて酸素中毒の用量を計算し、数日間の作業曝露による酸素毒性による影響を回避することができる。測定された水深と選択された呼吸ガス混合物に基づいて自動的にOTUを記録・追跡する潜水作業用のコンピュータがある。これにより、計算された制限値により、最近曝露していない人はより多くの曝露が許容され、連続した曝露日数が増えるにつれて1日の許容用量が減少する<ref name="NOAA Diving Manual 2001" />。しかし、これらの値は、現在のデータで完全に裏付けられているわけではないかもしれない<ref name="Arieli 2019" />。 |
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{| class="wikitable" |
|||
|+ 複数日の全身酸素暴露における[[アメリカ海洋大気庁|NOAA]] REPEX限界値<ref name="NOAA Diving Manual 2001" /> |
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|- |
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! 曝露日数 !! 1日平均量 (OTU)!! 合計量 (OTU) |
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|- |
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| 1 || 850 || 850 |
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|- |
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| 2 || 700 || 1400 |
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|- |
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| 3 || 620 || 1860 |
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|- |
|||
| 4 || 525 || 2100 |
|||
|- |
|||
| 5 || 460 || 2300 |
|||
|- |
|||
| 6 || 420 || 2520 |
|||
|- |
|||
| 7 || 380 || 2660 |
|||
|- |
|||
| 8 || 350 || 2800 |
|||
|- |
|||
| 9 || 330 || 2970 |
|||
|- |
|||
| 10 || 310 || 3100 |
|||
|- |
|||
| 11 - 30 || 300 || 300×日数 |
|||
|} |
|||
{| class="wikitable" |
|||
|+ 様々な分圧下での分あたり酸素中毒単位(Oxygen toxicity units: OTU)<ref name="NOAA Diving Manual 2001" />。1気圧が基準値1。 |
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|- |
|||
! P<sub>O<sub>2</sub></sub> (atm) !! OTU per minute |
|||
|- |
|||
| 0.50 || 0.00 |
|||
|- |
|||
| 0.55 || 0.15 |
|||
|- |
|||
| 0.60 || 0.27 |
|||
|- |
|||
| 0.65 || 0.37 |
|||
|- |
|||
| 0.70 || 0.47 |
|||
|- |
|||
| 0.75 || 0.56 |
|||
|- |
|||
| 0.80 || 0.65 |
|||
|- |
|||
| 0.85 || 0.74 |
|||
|- |
|||
| 0.90 || 0.83 |
|||
|- |
|||
| 0.95 || 0.92 |
|||
|- |
|||
| 1.00 || 1.00 |
|||
|- |
|||
| 1.05 || 1.08 |
|||
|- |
|||
| 1.10 || 1.16 |
|||
|- |
|||
| 1.15 || 1.24 |
|||
|- |
|||
| 1.20 || 1.32 |
|||
|- |
|||
| 1.25 || 1.40 |
|||
|- |
|||
| 1.30 || 1.48 |
|||
|- |
|||
| 1.35 || 1.55 |
|||
|- |
|||
| 1.40 || 1.63 |
|||
|- |
|||
| 1.45 || 1.70 |
|||
|- |
|||
| 1.50 || 1.78 |
|||
|- |
|||
| 1.55 || 1.85 |
|||
|- |
|||
| 1.60 || 1.92 |
|||
|- |
|||
| 1.65 || 2.00 |
|||
|- |
|||
| 1.70 || 2.07 |
|||
|- |
|||
| 1.75 || 2.14 |
|||
|- |
|||
| 1.80 || 2.21 |
|||
|- |
|||
| 1.85 || 2.28 |
|||
|- |
|||
| 1.90 || 2.35 |
|||
|- |
|||
| 1.95 || 2.42 |
|||
|- |
|||
| 2.00 || 2.49 |
|||
|} |
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2019年の研究では下式による中毒指数(Toxicity Index: TI)も提案されている<ref name="Arieli 2019" />。 |
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TI = t<sup>2</sup> × P<sub>O<sub>2</sub></sub><sup>c</sup> |
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t: 時間、c: [[べき乗]]項、P<sub>O<sub>2</sub></sub> : 酸素分圧 |
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これは、[[活性酸素]]または[[活性窒素種]]を生成する化学反応から導き出されたもので、中枢神経系毒性についてはc=6.8、肺毒性についてはc=4.57で、良好な予測が得られることが示されている<ref name="Arieli 2019" />。 |
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肺毒性については、時間は時間単位であり、P<sub>O<sub>2</sub></sub>は[[絶対圧]]であり、TIは250に制限されるべきである<ref name="Arieli 2019" />。中枢神経系毒性については、時間は分単位、P<sub>O<sub>2</sub></sub>は絶対圧で大気圧、TIは26,108で1%のリスクを示す<ref name="Arieli 2019" />。 |
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== 予後 == |
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中枢神経系の酸素中毒によって引き起こされるけいれんによって、偶発的に被害者が怪我をする可能性があるが、発作後の神経系への損傷が起こりうるかどうかは長年不確かなままで、いくつかの研究がそのような損傷の証拠を探した。2004年のビッターマンによるこれらの研究の概要は、高濃度の酸素を含む呼吸ガスを除去した後では、{{仮リンク|発作 (脳)|en|seizure|label=発作|redirect=1}}による長期的な神経学的損傷は残らないと結論づけた<ref name="Bitterman" /><ref name="FennRahn" />。 |
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[[気管支肺異形成症]]の発症後に生存した乳児の大多数は、最終的にほぼ正常な[[肺機能検査|肺機能]]を回復する。これは、肺が生後5〜7年間成長を続け、気管支肺異形成症によって引き起こされた損傷がある程度可逆的だからである(成人でも)。しかし、彼らは生涯を通じて[[呼吸器感染症]]にかかりやすくなる可能性が高く、後の感染症の重症度は同年齢の他の人々よりもしばしば大きくなる<ref name="nih bpd_WhatIs" /><ref name="kidshealth" />。 |
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乳児の[[未熟児網膜症]](ROP)は、しばしば介入なしで[[退縮]]し、後年の視力は正常になることがある。疾患が手術を必要とする段階まで進行した場合、ステージ3 ROPの治療結果は一般的に良好だが、ステージ後期ではかなり悪化する。手術は通常、目の解剖学的構造を修復するのには成功するが、疾患の進行による神経系への損傷により、視力回復の結果は比較的悪い。他の合併症も存在すると、好ましい[[アウトカム (医学)|アウトカム]]が得られる可能性が低下する{{Sfn|Regillo|Brown|Flynn|1998|p=190}}。 |
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補助酸素の提供は重症患者の生命維持に重要であり続け、一部の慢性疾患では生存率を高めることができるが、高酸素症と[[活性酸素種]]の生成はいくつかの生命を脅かす疾患の病因に関与している。高酸素の毒性の影響は特に[[肺]]で顕著であり、血管変化が起こると脳循環と冠循環がリスクにさらされる。長期的な高酸素症は免疫応答を害し、感染性合併症と組織損傷への感受性が高まる<ref name="Helmerhorst et al 2015" />。 |
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== 疫学 == |
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[[ファイル:Incidence of ROP.svg|thumb|400px |alt=Percentage of severe visual impairment and blindness due to ROP in children in Schools for the Blind in different regions of the world: Europe 6–17%; Latin America 4.1–38.6%; Eastern Europe 25.9%; Asia 16.9%; Africa 10.6%. |1997年の未熟児網膜症(ROP)は、新生児集中治療サービスが増加している中所得国でより多かった。問題に対する認識が高まり、予防措置につながったが、まだ十分ではなかった<ref name="Gilbert" />。]] |
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第二次世界大戦以降、ダイバーの中枢神経系毒性の発生率は減少している。これは、曝露と吸入酸素分圧を制限するプロトコルが開発されたためである。1947年、ドナルドは純酸素を呼吸する深度を{{Convert|7.6|m|ft|abbr=on}}に制限することを推奨した。これは酸素分圧{{Convert|1.8|bar|}}に相当する{{Sfn|Donald, Part II|1947}}。 時間とともにこの制限は低下し、現在では[[レクリエーションダイビング]]中は{{Convert|1.4|bar|}}、浅い減圧停止中は{{Convert|1.6|bar|}}の制限が一般的に推奨されている{{Sfn|Lang|2001|p=183}}。ただし、酸素{{仮リンク|リブリーザー|en|rebreather|redirect=1}}を使用する軍のダイバーは、より大きなリスクを伴いながら、限られた期間でより深い深度で活動することがある<ref name="Wingelaar et al 2017" />。酸素中毒は現在、機器の故障や人為的ミス以外では稀な出来事となっている。歴史的に、米海軍は酸素中毒事故を減らすために、海軍潜水マニュアルの空気および混合ガス表を改良してきた。1995年から1999年の間、ヘリウム-酸素表を使用した405回の水面支援下潜水の報告があり、そのうち6回の潜水(1.5%)で酸素中毒症状が観察された。その結果、米海軍は2000年にスケジュールを修正し、150回の潜水の現場テストを実施した。これらの潜水では酸素中毒の症状は一切見られなかった。改訂された表は2001年に発表された<ref name="Gerth" />。 |
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耐性の変動性や作業負荷などの他の変動要因により、米海軍は酸素耐性のスクリーニングを廃止した。1976年から1997年の間に行われた6,250回の酸素耐性テストのうち、酸素中毒のエピソードは6回(0.1%)しか観察されなかった<ref name="Gould" /><ref name="pmid3705251" />。 |
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高圧酸素療法を受けている患者の中枢神経系酸素中毒は稀であり、個人の感受性や治療プロトコル、おそらく[[適応 (医学)|治療の適応]]や使用機器など、多くの要因の影響を受ける。1996年のヴェルスラウの研究では、107,264人の患者集団のうち16件の事例(0.015%)が報告され、2003年のハンプソンとアティクの研究では発生率は0.03%であった<ref name="pmid15485078" /><ref name="pmid12964858" />。イルディズ、アイ、キルデディは、1996年から2003年の間の36,500件の患者治療の要約で、酸素中毒事例はわずか3件で、発生率は0.008%だったと報告している<ref name="pmid15485078" />。その後の80,000件以上の患者治療のレビューでは、さらに低い発生率0.0024%が明らかになった。この発生率の低下は、酸素を供給するのにフードではなくマスクを使用するようになったことが一因かもしれない。マスクの方が[[死腔#Mechanical dead space|死腔]]が少ないためである<ref name="pmid15559001" />。 |
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中枢神経毒性の全体的なリスクは2000〜3000回の治療に1回程度かもしれないが、圧力によって変動し、2.8〜3.0 [[絶対圧力|絶対圧(ATA)]]より高圧の治療スケジュールでは200回に1回程度まで高くなることがあり、2 ATA以下のスケジュールでは10,000回に1回程度まで低くなることがある<ref name="Cooper et al 2022" />。 |
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気管支肺異形成症は[[早産|早産児]]の最も一般的な合併症の一つであり、その発生率は[[極低出生体重児]]の生存率が向上するにつれて増加している。しかし、補助酸素の管理が改善されたことで重症度は低下し、現在ではこの疾患は主に高酸素症以外の要因に関連していると考えられている<ref name="Bancalari" />。 |
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1997年の先進国の[[新生児集中治療室]]の研究のまとめによると、[[低出生体重児]]の最大60%が未熟児網膜症を発症し、出生時体重が1 kg未満の[[超低出生体重児]]では72%まで上昇した。しかし、重症例の頻度は遥かに低く、出生時体重が1.5 kg未満の超低出生体重児の失明率は8%以下であることが分かった<ref name="Gilbert" />。 |
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補助酸素の投与は[[救急医療]]や[[集中治療医学]]で広範かつ効果的に使用されているが、過剰な酸素化によって生じる活性酸素種は、主に肺において[[細胞傷害|細胞損傷]]、[[細胞死]]、[[炎症]]を特徴とする組織傷害の悪循環を引き起こす傾向があり、補助酸素が治療として意図された組織酸素化の問題を逆に悪化させる可能性がある。同様の問題は、低酸素症を伴う慢性疾患の酸素療法でも起こりうる。生理的必要性を超える過剰を最小限に抑えるよう酸素供給を慎重に調整することで、肺の高酸素曝露も合理的に実行可能な最小限に抑えられる<ref name="Helmerhorst et al 2015" />。 酸素中毒の肺症状の発生率は約5%で、抗がん剤の[[ブレオマイシン]]など、一部の薬剤がリスクを高める可能性がある<ref name="Cooper et al 2022" />。 |
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==歴史== |
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[[ファイル:Paul Bert 01.jpg|左|サムネイル|フランスの[[生理学者]]{{仮リンク|ポール・ベール|en|Paul Bert|redirect=1|label=ポール・ベール(Paul Bert)}}は、1878年に初めて酸素の毒性について述べた。]] |
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中枢神経系の酸素毒性は、1878年に{{仮リンク|ポール・ベール|en|Paul Bert|redirect=1|label=ポール・ベール(Paul Bert)}}によって初めて記述された<ref name="Bert" /><ref name="BSAC" />。彼は酸素が昆虫、[[クモ綱]]、[[多足類]]、軟体動物、ミミズ、菌類、発芽中の種子、鳥類、その他の動物に対して毒性があることを示した。中枢神経系の毒性は「ポール・ベール効果」と呼ばれることがある<ref name="Patel" />。 |
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肺への酸素毒性は、1899年に{{仮リンク|ジェームズ・ロレイン・スミス|en|James Lorrain Smith|redirect=1|label=ロレイン・スミス}}によって初めて記述された。彼は中枢神経系の毒性に注目し、マウスと鳥類を用いた実験で、{{Convert|0.43|bar|abbr=on}}では影響がないが、{{Convert|0.75|bar|abbr=on}}の酸素は肺に刺激を与えることを発見した<ref name="Smith" />。肺毒性は「ロレイン・スミス効果」と呼ばれることがある<ref name="Patel" />。最初に記録されたヒトへの曝露は、1910年にボーンスタインによって行われ、2人の男性が30分間{{Convert|2.8|bar|}}の酸素を呼吸し、彼自身は48分間まで症状なく続けた。1912年、ボーンスタインは51分間{{Convert|2.8|bar|abbr=on}}の酸素を呼吸している間に手足のけいれんを起こした<ref name="Acott" />。その後スミスは、酸素の少ない呼吸ガスに断続的に曝露することで肺が回復し、肺毒性の発症を遅らせることを示した<ref name="Smith" />。 |
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1935年、{{仮リンク|アルバート・ベーンケ|en|Albert R. Behnke|redirect=1}}らが初めて、{{Convert|1.0|bar|}}から{{Convert|4.1|bar|}}の潜水で{{仮リンク|視野 (生物)|en|Visual field|label=視野|redirect=1}}が狭くなる({{仮リンク|視野狭窄|en|tunnel vision|redirect=1}})のを観察した<ref name="Behnke Johnson" /><ref name="Behnke Forbes" />。[[第二次世界大戦]]中、ドナルドとヤーブローらは閉鎖式酸素{{仮リンク|リブリーザー|en|rebreather|redirect=1}}の初期使用を支援するために、2,000回以上の酸素毒性実験を行った<ref name="NEDU47" />{{Sfn|Donald|1992}}。リブリーザー潜水の初期の海軍ダイバーたちは、海軍実験潜水部隊の「ウェットポット」(水を満たした{{仮リンク|高圧チャンバー|en|hyperbaric chamber|redirect=1}})の底に潜んで不用心なダイバーを捕まえる"Oxygen Pete"という怪物についての神話を作り上げた。彼らは酸素中毒発作を起こすことを「Peteに捕まる」と呼んだ<ref name="pete" /><ref name="davis1955" />。 |
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第二次世界大戦後の10年間で、{{仮リンク|クリスチャン・ランバーツェン|en|Christian J. Lambertsen|redirect=1}}らは加圧下での酸素呼吸の影響と中毒の予防法についてさらなる発見を行った<ref name="Penn" /><ref name="Vann 2004" />。 酸素耐性の延長のための断続的曝露と、肺機能に基づく肺酸素毒性予測モデルに関する彼らの研究は、高圧酸素を呼吸する際の[[Standard Operating Procedure|標準作業手順書]]の開発における重要な文書である{{Sfn|Clark|Lambertsen|1970}}。中枢神経系症状の発症時間を短縮する二酸化炭素の影響を示したランバートセンの研究は、当時の曝露ガイドラインから、その後の{{仮リンク|スキューバセット|en|Scuba set|redirect=1}}設計に至るまで影響を与えている<ref name="rebreather2.0" /><ref name="padi" />{{Sfn|Lang|2001|pp=81–86}}。 |
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未熟児網膜症は第二次世界大戦以前には観察されなかったが、その後の10年間で補助酸素が利用可能になり、急速に先進国での乳児失明の主要な原因の一つとなった。1960年には、酸素の使用はリスク要因として特定され、その投与は制限された。その結果、未熟児網膜症は減少したが、乳児死亡率と[[低酸素症]]関連の[[合併症]]が増加した。それ以来、より洗練された[[モニタリング (医学)|モニタリング]]と診断により、低酸素状態と未熟児網膜症の問題のバランスを取ることを目的とした酸素使用のプロトコルが確立された<ref name="Gilbert" />。 |
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気管支肺異形成症は1967年にノースウェイによって初めて記述され、診断につながる条件が概説された<ref name="pmid5334613" />。これは後にバンカラリによって拡張され、1988年にシェナンが、36週での補助酸素の必要性が長期的な結果を予測できると提案した<ref name="pmid3174313" />。しかし、1998年にパルタらは、[[X線撮影]]所見が長期的な影響の最も正確な予測因子であると結論づけた<ref name="pmid9470001" />。 |
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[[ファイル:Robert W Hamilton Jr.png|thumb |upright |{{仮リンク|ロバート・ハミルトン・ジュニア|en|Robert William Hamilton Jr.|redirect=1}}、[[アメリカ海洋大気庁|NOAA]]での許容反復曝露限界の主任研究者。]] |
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1986年と1995年、ビッターマンらは[[照明|暗闇]]と[[カフェイン]]がラットの[[脳波]]活動の変化の発症を遅らせることを示した<ref name="pmid3705247" /><ref name="pmid8574677" />。それ以来、中枢神経系毒性に関する研究は予防法と安全な耐性延長の方法に焦点が当てられてきた<ref name="natoliMS" />。中枢神経系の酸素毒性への感受性は、[[概日リズム]]、薬物、年齢、性別などの要因の影響を受けることが示されている<ref name="pmid5130131" /><ref name="pmid15622741" /><ref name="pmid5061633" /><ref name="pmid17672171" />。1988年、{{仮リンク|ロバート・ハミルトン・ジュニア|en|Robert William Hamilton Jr.|redirect=1}}らは[[海中居住施設]]運用のための酸素曝露限界を設定するために、[[アメリカ海洋大気庁]](NOAA)のための手順を作成した<ref name="repex1" /><ref name="repex2" /><ref name="spums" />。しかし、今日でも、肺酸素毒性の予測モデルは高分圧酸素曝露のすべての結果を説明できていない<ref name="Shykoff2007" />。 |
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== 社会と文化 == |
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{{See also|{{仮リンク|ナイトロックス|en|Nitrox|redirect=1}}|酸素バー}} |
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{{仮リンク|Recreational diving|en|Recreational diving|redirect=1|label=レクリエーションスキューバダイバー}}は一般的に40%までの酸素を含む{{仮リンク|nitrox|en|nitrox|redirect=1|label=ナイトロックス}}を呼吸し、[[テクニカルダイビング|テクニカルダイバー]]は減圧を加速するために純酸素や80%までの酸素を含むナイトロックスを使用する。空気(21%)以上の酸素濃度を呼吸するダイバーは、酸素中毒の危険性とそのリスク管理方法について教育を受ける必要がある{{Sfn|Lang|2001|p=195}}。ナイトロックスを購入するには、ダイバーは関連する資格の証明を示すよう求められることがある<ref name="BSACnitrox" />。 |
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1990年代後半以来、酸素の娯楽的使用が酸素バーによって推進されており、顧客は{{仮リンク|nasal cannula|en|nasal cannula|redirect=1|label=鼻カニューレ}}を通して酸素を呼吸する。これが[[ストレス (生体)|ストレス]]を軽減し、活力を増加させ、[[二日酔い]]や[[頭痛]]の影響を軽減するという主張がされているが、それを裏付ける[[科学的証拠]]は不足している<ref name="Bren" />。また、体内の毒素を除去し、体脂肪を減少させるという主張とともに、「酸素マッサージ」や「酸素デトックス」を提供する装置も販売されている<ref name="o2planet" />。{{仮リンク|アメリカ肺協会|en|American Lung Association|redirect=1|label=アメリカ肺協会(American Lung Association)}}は「バーで使用される低流量の酸素が正常な人の健康に危険であるという[[エビデンス (医学)|エビデンス]]はない」と述べているが、米国の{{仮リンク|医薬品評価研究センター|en|Center for Drug Evaluation and Research|redirect=1|label=医薬品評価研究センター(Center for Drug Evaluation and Research)}}は、心臓や肺の疾患を持つ人は補助酸素を慎重に調整する必要があり、酸素バーを使用すべきではないと注意を促している<ref name="Bren" />。 |
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[[ヴィクトリア朝]]時代、社会は、急速に拡大する科学分野に魅了されていた。1872年に[[ジュール・ヴェルヌ]]が書いた短編小説「[[オクス博士の幻想]]」では、主人公の博士が{{仮リンク|水の電気分解|en|electrolysis of water|redirect=1|label=水を電気分解}}して酸素と水素を分離する。そして、純酸素をキケンドン町全体にポンプで送り込み、いつもは穏やかな住民とその動物を攻撃的にし、植物を急速に成長させる。オクス博士の工場での水素と酸素の爆発により、彼の実験は終わりを迎える。ヴェルヌは、物語で描かれた酸素の効果は彼自身の創作であり([[経験的証拠]]によって裏付けられるものではない)と説明して、物語を要約している<ref name="Verne Dr Ox" />。また、彼の「[[月世界旅行]]」にも酸素中毒の短いエピソードがある<ref name="Verne 1877" />。 |
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== 脚注 == |
== 脚注 == |
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{{Reflist|colwidth=30em|refs= |
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{{脚注ヘルプ}} |
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<ref name="Donald1947a"> |
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{{Harvnb |Donald|1947a }} |
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=== 注釈 === |
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=== 出典 === |
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| first = Chris |
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Translated by: Hitchcock, Mary Alice; Hitchcock, Fred A |
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|last1=Hess |
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|title = Oxygen Bars: Is a Breath of Fresh Air Worth It? |
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|first = Linda |
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|title=Effect of dietary antioxidant level and oxygen exposure on the fine structure of the proximal convoluted tubules |
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|date = November–December 2002 |
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|journal=Aerospace Medicine |
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|magazine = FDA Consumer |
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|pmid = 12523293 |
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|access-date = 25 March 2020 |
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| volume = 36 |issue=6 |pages=9–11 |
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|year=1971 |
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|df = dmy-all |
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|pmid=5155150}} |
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{{Cite book |
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|last=Clark |
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| author = British Sub-aqua Club |
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|first=John M |
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| title = Sport diving : the British Sub-Aqua Club diving manual |
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|title=The toxicity of oxygen |
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| publisher = Stanley Paul |
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|journal=American Review of Respiratory Disease |
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| location = London |
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|volume=110 |
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| year = 1985 |
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|issue=6 Pt 2 |
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| page = 110 |
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|pages=40–50 |
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| isbn = 0-09-163831-3 |
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|year=1974 |
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| oclc = 12807848 }} |
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|pmid=4613232}} |
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<ref name="Brubakk-360"> |
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<ref name="BSACnitrox"> |
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{{Harvnb |Brubakk|Neuman|2003| page=360}} |
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{{Cite web |
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|url = http://www.bsac.org/uploads/moved/documents/Resources/Nitrox/OD_Nitrox_Workshop_Student_Workbook_V00bh.pdf |
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|archive-url = https://web.archive.org/web/20110716153025/http://www.bsac.org/uploads/moved/documents/Resources/Nitrox/OD_Nitrox_Workshop_Student_Workbook_V00bh.pdf |
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|url-status = dead |
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|archive-date = 16 July 2011 |
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|title = The Ocean Diver Nitrox Workshop |
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|author = British Sub-Aqua Club |
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|year = 2006 |
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|publisher = British Sub-Aqua Club |
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|page = 6 |
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|access-date = 15 September 2010 |
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}} |
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</ref> |
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<ref name="Bitterman"> |
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<ref name = "Butler"> |
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{{cite journal |
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{{Cite journal |
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|author=Bitterman, N. |
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| last1 = Butler |
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|title=CNS oxygen toxicity |journal=Undersea and Hyperbaric Medicine |
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| first1 = Frank K |
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| last2 = White |
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|pages=63–72 |
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| last3 = Twa |
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|year=2004 |pmid=15233161 |
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This forum post's author chairs the diving committee of the Undersea and Hyperbaric Medical Society.</ref> |
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<ref name = "repex2"> |
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{{Cite journal |
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| title = Repex habitat diving procedures: Repetitive vertical excursions, oxygen limits, and surfacing techniques |
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| last1 = Hamilton |
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| first1 = Robert W |
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<ref name = "Schatte"> |
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{{Cite journal |
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| last = Schatte |
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| first = CL |
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| title = Dietary selenium and vitamin E as a possible prophylactic to pulmonary oxygen poisoning |
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| journal = Proceedings of the Sixth International Congress on Hyperbaric Medicine, University of Aberdeen, Aberdeen, Scotland |
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| year = 1977 |
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| isbn = 0-08-024918-3 |
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| pages = 84–91 |
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| oclc = 16428246 }} |
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<ref name = "Shykoff2007"> |
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{{Cite journal |
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| title = Performance of various models in predicting vital capacity changes caused by breathing high oxygen partial pressures |
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| last = Shykoff |
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| first = Barbara E |
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| year = 2007 |
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| journal = Nedu-Tr-07-13 |
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| last = Shykoff |
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| first = Barbara E |
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| title = Repeated Six-Hour Dives 1.35 ATM Oxygen Partial Pressure |
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<ref name = "Silverman"> |
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{{Cite book |
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| last = Silverman |
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| first = William |
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| title = Retrolental Fibroplasia: A Modern Parable |
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| url = http://www.neonatology.org/classics/parable/ |
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| pages = 39, 41, 143 |
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| isbn = 978-0-8089-1264-4 }} |
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</ref> |
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<ref name = "smerz"> |
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{{Cite journal |
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| last = Smerz |
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| first = RW |
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| title = Incidence of oxygen toxicity during the treatment of dysbarism |
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| journal = Undersea and Hyperbaric Medicine |
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| pages = 199–202 |
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| access-date = 30 April 2008 }} |
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<ref name = "Smith"> |
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{{Cite journal |
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| last = Smith |
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| first = J Lorrain |
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| title = The pathological effects due to increase of oxygen tension in the air breathed |
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Note: 1 atmosphere (atm) is 1.013 bars. |
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<ref name = "spums"> |
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{{Cite journal |
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| last = Hamilton |
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<ref name = "Vann 2004"> |
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{{Cite journal |
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| first = Richard D |
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{{Cite book |
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| last = Verne |
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| first = Jules |
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| chapter = VIII |
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| trans-chapter = At seventy-eight thousand one hundred and fourteen leagues |
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| access-date = 2 September 2009 |
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| isbn = 2-253-00587-8 }} |
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Translated from French |
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<ref name = "Verne Dr Ox"> |
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{{Cite book |
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| last = Verne |
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| first = Jules |
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| isbn = 978-1-84391-067-1 |
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Translated from French |
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<ref name="Wingelaar et al 2017" > |
|||
{{Cite journal |
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|pmid=28790955 |
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|year=2017 |
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|last2=van Ooij |
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|first2=P.A.M |
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|last3=Van Hulst |
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|first3=R.A. |
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|title=Oxygen Toxicity and Special Operations Forces Diving: Hidden and Dangerous |
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|journal=Frontiers in Psychology |
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|page=1263 |
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|doi=10.3389/fpsyg.2017.01263 |
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|pmc=5524741 |
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|doi-access=free |
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}} |
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</ref> |
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<ref name = "Wittner"> |
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{{Cite conference |
|||
| last1 = Wittner |
|||
| first1 = M |
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| last2 = Rosenbaum |
|||
| first2 = RM |
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| title = Pathophysiology of pulmonary oxygen toxicity |
|||
| work = Proceedings of the Third International Conference on Hyperbaric Medicine |
|||
| publisher = NAS/NRC, 1404, Washington DC |
|||
| pages = 179–88 |
|||
| year = 1966 }} |
|||
– and others as discussed by {{Harvnb|Clark|Lambertsen|1970|pp = 256–60}} |
|||
</ref> |
|||
}} |
}} |
||
== 参考文献 == |
== 参考文献 == |
||
* {{cite book |author=Clark, James M.; Thom, Stephen R. |title=Bennett and Elliott's physiology and medicine of diving |edition=5th |editor=Brubakk, Alf O.; Neuman, Tom S |year=2003 |publisher=Saunders Ltd |location=United States |chapter=Oxygen under pressure |pages=358–418 |isbn=0-7020-2571-2 |oclc=51607923 |ref=CITEREFBrubakkNeuman2003 }} |
|||
* {{Cite book |
|||
* {{cite journal |title=Pulmonary oxygen tolerance in man and derivation of pulmonary oxygen tolerance curves |author=Clark, John M.; Lambertsen, Christian J. |year=1970 |publisher=Environmental Biomedical Stress Data Center, Institute for Environmental Medicine, University of Pennsylvania Medical Center |journal=IFEM Report No. 1-70 |location=Philadelphia, PA |url=http://archive.rubicon-foundation.org/3863 |accessdate=2008-04-29 |ref=CITEREFClarkLambertsen1970}} |
|||
| last1 = Clark |
|||
* {{cite journal |author=Donald, Kenneth W. |title=Oxygen poisoning in man—part I |journal=British Medical Journal |issue=4506 |pages=667–72 |year=1947 |pmc=2053251 |doi=10.1136/bmj.1.4506.667 |ref=CITEREFDonald1947a |volume=1 }} |
|||
| first1 = James M |
|||
* {{cite journal |author=Donald, Kenneth W. |title=Oxygen poisoning in man—part II |journal=British Medical Journal |issue=4507 |pages=712–7 |year=1947 |pmc=2053400 |doi=10.1136/bmj.1.4507.712 |ref=CITEREFDonald1947b |volume=1 |pmid=20248096 }} |
|||
| last2 = Thom |
|||
: Revised version of Donald's articles also available as: |
|||
| first2 = Stephen R |
|||
: {{cite book |title=Oxygen and the diver |last=Donald |first=Kenneth W. |year=1992 |publisher=Harley Swan, 237 pages |location=UK |isbn=1-85421-176-5 |oclc=26894235 |ref=CITEREFDonald1992 }} |
|||
| year = 2003 |
|||
* {{cite book |title=DAN nitrox workshop proceedings |editor=Lang, Michael A. |year=2001 |publisher=Divers Alert Network, 197 pages |location=Durham, NC |url=http://archive.rubicon-foundation.org/4855 |accessdate=2008-09-20 |ref=CITEREFLang2001 }} |
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| chapter = Oxygen under pressure |
|||
* {{cite book |last=Regillo |first=Carl D. |author2=Brown, Gary C.|author3= Flynn, Harry W. |title=Vitreoretinal Disease: The Essentials |location=New York |publisher=Thieme, 693 pages |year=1998 |isbn=0-86577-761-6 |oclc=39170393 |ref=CITEREFRegilloBrownFlynn1998 }} |
|||
| pages = 358–418 |
|||
* {{cite manual |author=U.S. Navy Supervisor of Diving |title=U.S. Navy Diving Manual |version=SS521-AG-PRO-010, revision 6 |date=2008 |publisher=U.S. Naval Sea Systems Command |url=http://supsalv.org/pdf/DiveMan_rev6.pdf |format=PDF |accessdate=2009-06-29 |ref=CITEREFU.S._Navy_Diving_Manual2008 }} |
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| location = United States |
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| isbn = 978-0-7020-2571-6 |
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|||
| ref = harv |
|||
}} |
|||
* {{Cite journal|last1=Clark|first1=John M|last2=Lambertsen|first2=Christian J|year=1970|title=Pulmonary oxygen tolerance in man and derivation of pulmonary oxygen tolerance curves|publisher=Environmental Biomedical Stress Data Center, Institute for Environmental Medicine, University of Pennsylvania Medical Center|journal=IFEM Report No. 1-70|location=Philadelphia, PA|ref=harv|url=http://archive.rubicon-foundation.org/3863|access-date=29 April 2008|archive-date=7 October 2008|archive-url=https://web.archive.org/web/20081007194143/http://archive.rubicon-foundation.org/3863|url-status=usurped}} |
|||
* {{Cite journal |
|||
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|||
| first = Kenneth W |
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}} |
|||
* {{Cite journal |
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| last = Donald |
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| first = Kenneth W |
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| year = 1947 |
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| doi = 10.1136/bmj.1.4507.712 |
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| ref = {{SfnRef|Donald, Part II|1947}} |
|||
}} |
|||
** Revised version of Donald's articles also available as: |
|||
** {{Cite book |
|||
| last = Donald |
|||
| first = Kenneth W |
|||
| year = 1992 |
|||
| title = Oxygen and the diver |
|||
| publisher = Harley Swan, 237 pages |
|||
| location = UK |
|||
| oclc = 26894235 |
|||
| isbn = 1-85421-176-5 |
|||
| ref=harv |
|||
}} |
|||
* {{Cite book |
|||
| last1 = Hamilton |
|||
| first1 = Robert W |
|||
| last2 = Thalmann |
|||
| first2 = Edward D |
|||
| year = 2003 |
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| chapter = Decompression practice |
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| pages = 475–79 |
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| editor1-last = Brubakk |
|||
| editor1-first = Alf O |
|||
| editor2-last = Neuman |
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| editor2-first = Tom S |
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| edition = 5th |
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| location = United States |
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| oclc = 51607923 |
|||
| ref=harv |
|||
}} |
|||
* {{Cite book |
|||
| title = DAN nitrox workshop proceedings |
|||
| editor-last = Lang |
|||
| editor-first = Michael A |
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| ref=harv |
|||
}} |
|||
* {{Cite book |
|||
| last1 = Regillo |
|||
| first1 = Carl D |
|||
| last2 = Brown |
|||
| first2 = Gary C |
|||
| last3 = Flynn |
|||
| first3 = Harry W |
|||
| title = Vitreoretinal Disease: The Essentials |
|||
| location = New York |
|||
| publisher = Thieme, 693 pages |
|||
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|||
| isbn = 978-0-86577-761-3 |
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|||
| ref=harv |
|||
}} |
|||
* {{Cite book |
|||
|author = U.S. Navy Supervisor of Diving |
|||
|title = U.S. Navy Diving Manual |
|||
|version = SS521-AG-PRO-010 0910-LP-106-0957, revision 6 with Change A entered |
|||
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|||
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|||
|url = http://supsalv.org/pdf/Dive%20Manual%20Rev%206%20with%20Chg%20A.pdf |
|||
|access-date = 29 January 2015 |
|||
|ref = {{SfnRef|U.S. Navy Diving Manual|2011}} |
|||
|url-status = dead |
|||
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|||
|archive-date = 10 December 2014 |
|||
|df = dmy-all |
|||
}} |
|||
==関連文献== |
|||
* {{Cite book |last=Lamb |first=John S. |title=The Practice of Oxygen Measurement for Divers |publisher=Best Publishing, 120 pages |location=Flagstaff |year=1999 |isbn=0-941332-68-3 |oclc=44018369 }} |
|||
* {{Cite book |title=The Diving Emergency Handbook |author1=Lippmann, John |author2=Bugg, Stan |location=Teddington, UK |publisher=Underwater World Publications |year=1993 |isbn=0-946020-18-3 |oclc=52056845}} |
|||
* {{Cite book |author1=Lippmann, John |author2=Mitchell, Simon |title=Deeper into Diving |publisher=J.L. Publications |location=Victoria, Australia |year=2005 |edition=2nd |pages=121–24 |chapter=Oxygen |isbn=0-9752290-1-X |oclc=66524750 }} |
|||
==関連項目== |
|||
* [[窒素中毒]] |
|||
* [[全身麻酔]] - 高濃度酸素を用いることがあるが、現実的に酸素中毒はほとんど問題になっていない。 |
|||
{{呼吸生理学}}{{集中治療医学}} |
|||
{{Medical resources |
|||
| ICD10 = {{ICD10|T|59|8|t|51}} |
|||
| ICD9 = {{ICD9|987.8}} |
|||
| MeshID = D018496 |
|||
}} |
|||
{{DEFAULTSORT:さんそちゆうとく}} |
{{DEFAULTSORT:さんそちゆうとく}} |
||
[[Category:集中治療医学]] |
|||
[[Category:酸素]] |
|||
[[Category:呼吸器疾患]] |
|||
[[Category:潜水]] |
[[Category:潜水]] |
||
[[Category:労働安全衛生]] |
[[Category:労働安全衛生]] |
||
[[Category:中毒]] |
[[Category:中毒]] |
||
[[Category: |
<!-- [[Category:Neurobiological brain disorders]] --> |
||
[[Category: |
<!-- [[Category:Underwater diving disorders]] --> |
||
<!-- [[Category:Underwater diving medicine]] --> |
|||
<!-- [[Category:Element toxicology]] --> |
|||
<!-- {{Poisoning and toxicity}} --> |
|||
<!-- {{Underwater diving|divmed}} --> |
2024年10月30日 (水) 11:26時点における最新版
酸素中毒 | |
---|---|
別称 | 酸素毒性 |
1942年から1943年にかけて、英国政府はダイバー[要曖昧さ回避]の酸素毒性に関する広範なテストを実施した。室内は3.7 barの空気で加圧されている。中央の被験者は、マスクから100%の酸素を吸入している[1]。 | |
概要 | |
診療科 | 潜水医学、高気圧酸素治療、新生児学 |
分類および外部参照情報 |
酸素中毒(さんそちゅうどく、oxygen intoxication[2]、または酸素毒性(英: oxygen toxicity)[注釈 1])とは、分圧が上昇した酸素分子(O2)を吸入することで生じる有害な生体への影響である。その影響は中枢神経系、肺、および目に最もよく見られ、重症の場合、細胞損傷が進行して死に至る可能性がある。歴史的に、中枢神経系の状態はポール・ベール効果、肺の状態はロレイン・スミス効果と呼ばれ、19世紀後半にそれらを発見して記述した研究者にちなんで名付けたものである。ダイバー、高濃度の酸素吸入を受けている人、高圧酸素療法を受けている人は酸素中毒に留意する必要がある。
呼吸中の酸素分圧を増加させると、高酸素症となる。これは要するに体組織内に酸素が過剰に存在しているということである。身体は、酸素曝露の種類に応じてさまざまな方法で影響を受ける。中枢神経系の毒性は、大気圧よりも高い酸素分圧に短時間さらされることによって引き起こされる。肺および眼の毒性は、常圧下で高濃度酸素への長時間の曝露に起因する。症状には、見当識障害、呼吸障害、近視などの視力悪化などがある。正常値を超える酸素分圧への長時間の曝露、または非常に高い酸素分圧への短い曝露により、細胞膜の酸化ストレス、肺胞の虚脱、網膜剥離、および発作を引き起こす可能性がありる。酸素中毒の管理は、曝露されている酸素の濃度を減らすことによる。長期的には、ほとんどのタイプの酸素中毒から、着実に回復が可能であることが研究により示されている。
圧縮呼吸ガスを使用する潜水、高圧酸素療法、新生児医療、有人宇宙飛行など、通常よりも高い分圧で酸素を呼吸する分野では、高酸素症の影響を回避するためのプロトコルが存在する。これらのプロトコールにより、酸素中毒による発作はますます稀になり、肺や眼球の障害は、未熟児の管理にほぼ限定されるようになった。
近年、酸素は酸素バーで娯楽的に利用できるようになった。米食品医薬品局は、心臓や肺に疾患のある人は酸素バーを使用しないよう警告している。スキューバダイバーは最大100%の酸素を含む呼吸ガスを使用するため、そのようなガスを使用するための特別な訓練を受ける必要がある。
分類
[編集]酸素中毒の影響は、影響を受ける臓器によって分類され、次の3つの主な形態がある[3][4][5]。
- 高気圧条件下で起こるけいれん発作とそれに続く意識消失を特徴とする中枢神経系症状
- 長時間にわたって高分圧の酸素を吸入した場合に起こる呼吸困難と胸部の痛みを特徴とする肺症状
- 長時間にわたって高分圧の酸素を吸入した場合に起こる目の変化を特徴とする眼症状(網膜症[要曖昧さ回避])。
中枢神経系の酸素中毒は、発作、短時間の硬直から痙攣や意識消失を引き起こすことがあり、大気圧を越える水圧に遭遇するダイバーにとっては脅威である。肺の酸素中毒は肺傷害から、胸の痛みや呼吸困難を引き起こす[3]。眼の酸化的損傷は、近視や網膜の部分剥離を引き起こすことがある。肺および眼への障害は、治療の一環として酸素吸入が行われる場合、特に新生児に最も起こりやすいが、高気圧酸素療法中にも懸念される[6][7]。
酸化的障害は体内のどの細胞にも起こりうるが、最も影響を受けやすい3つの臓器(脳、肺、目)への影響が最も懸念される。赤血球(溶血)[8][9]、肝臓[10]、心臓[11]、内分泌腺(副腎、性腺、甲状腺)[12][13][14]、または腎臓[15]、および細胞全般の損傷にも関与している可能性がある[3][16]。
特殊な状況では、他の組織への影響が観察されることがある。宇宙飛行士においては、高濃度の酸素が骨障害の一因になる可能性が疑われている[17]。高酸素症は、慢性閉塞性肺疾患などの肺疾患や中枢性呼吸抑制を有する患者において、間接的にCO2ナルコーシスを引き起こすこともある[17]。海面気圧の酸素分圧は0.21 バール(21 kPa)であるのに対し、0.3 バール(30 kPa)以下では酸素による毒性は生じないため、大気圧下での空気の過換気は酸素中毒を引き起こさない[18]。
症状と徴候
[編集]曝露 (分) | 人数 | 症状 |
---|---|---|
96 | 1 | 長時間の眩暈、激しい痙攣性嘔吐 |
60–69 | 3 | 激しい唇のぴくつき、多幸感、吐き気とめまい、腕のぴくつき |
50–55 | 4 | 激しい唇のぴくつき、眩暈、唇の水ぶくれ、睡眠、意識朦朧 |
31–35 | 4 | 吐き気、めまい、唇のぴくつき、けいれん |
21–30 | 6 | 痙攣、眠気、激しい唇のぴくつき、上腹部不快感、腕のぴくつき、健忘 |
16–20 | 8 | 痙攣、めまいと激しい唇のぴくつき、上腹部不快感、痙攣性呼吸; |
11–15 | 4 | 吸気優位、唇のぴくつきと失神、吐き気と錯乱 |
6–10 | 6 | 眩暈と唇のぴくつき、パレステジア、めまい、横隔膜痙攣、激しい吐き気 |
中枢神経系
[編集]中枢神経系の酸素中毒は、視覚の変化(特に視野狭窄)、耳鳴り、吐き気、筋痙攣(特に顔面)、行動の変化(過敏性、不安、昏迷)、めまいなどの症状として現れる。数秒間の激しい筋収縮(強直期)と、筋弛緩と筋収縮が交互に起こる急激な痙攣(間代期)の2相からなる強直間代発作を伴うこともある。この発作後は、意識が消失する(postictal state発作後状態)[19][20]。発作が起こるかどうかは、呼吸ガス中の酸素分圧と曝露時間次第である。しかし、発症までの曝露時間は予測不可能であり、個人間でも同一人物でも日によっても大きなばらつきがあることが研究で示されている[19][21][22]。さらに、水中への浸漬、寒冷への曝露、運動など多くの外的要因により、中枢神経系症状の発症までの時間が短縮される[1]。この]耐性の低下は、二酸化炭素の血中濃度と密接に関連している[23][24][25]暗闇やカフェインなどの他の要因は、実験動物において耐性を増加させるが、これらの効果はヒトでは証明されていない[26][27]。
肺
[編集]潜水、飛行前の酸素予備吸入、高気圧療法など、0.5気圧を超える酸素分圧への暴露は、肺の中毒症状の発現と関連している[28]。肺の中毒症状は、肺につながる気道から始まり、肺そのものに広がる炎症に起因する。 症状は、上胸部(胸骨下ないしは気管分岐部)に現れる[29][30][31]。これは、吸気時の軽いくすぐったさから始まり、頻繁な咳へと進行する[29]。酸素分圧が高い状況で呼吸し続けると、患者は、咳が制御不能となり、時折息切れ(呼吸困難)を生じ、吸気時の軽い熱感を自覚する[29]。肺毒性に関連する身体所見には、聴診器で聴こえる水泡音、発熱、鼻粘膜の充血などがある[31]。組織学的検査では、間質腔の幅の増大がみられることがある[28]。肺のX線検査では、短期的にはほとんど変化がみられないが、長期間の高濃度酸素暴露により、両肺全体にびまん性陰影が増加する[29]。スパイロメトリーでは、肺機能が低下する。すなわち、肺が保持できる空気の量(肺活量)が減少し、呼気機能および肺弾性が悪化する[31][32]。肺拡散能は低下し、最終的には低酸素血症に至る[28]。動物実験では、中枢神経系毒性にみられるのと同様の耐性のばらつきが示され、種間でも大きなばらつきがある。0.5バール(50 kPa)以上の酸素への曝露が断続的である場合、肺の回復が可能となり、中毒症状発現が遅れる[33]。同様の経過はすべての哺乳類に共通である[28]。数日間酸素曝露しても低酸素血症による死亡が生じない場合、増殖期に移行し、肺胞膜の慢性的肥厚と肺拡散能の低下が生じる。これらの変化は正常酸素濃度環境に戻ればほとんど可逆的であるが、完全な回復に要する時間は不明である[28]。
眼
[編集]未熟児の場合、眼球の障害(未熟児網膜症)の徴候は、眼底検査で乳児の網膜の血管のある領域と血管のない領域の境界として、観察される。この境界の程度は、以下の4つの病期に分類される。(I)境界は線状。(II)境界が隆起。(III)新生血管が隆起の周囲で成長している。(IV)網膜が眼球の内壁(脈絡膜)から剥離し始める[6]。
原因
[編集]酸素中毒は、高酸素症、すなわち身体が通常曝される酸素分圧よりも高い分圧の酸素に曝されることによって引き起こされる。これは、潜水[34]、高気圧酸素療法[35]、そして集中治療(特に未熟児に対する酸素補給[36])や慢性疾患の長期治療目的の酸素吸入[37]、という3つの主な状況で生じる。それぞれの場合において、危険因子は著しく異なる[34][35][36]。
通常の、または低下した周囲圧の下では、高酸素症の影響は、最初は直接曝露される肺に限定されるが、長期間の曝露後または高気圧環境では、他の臓器が危険にさらされる可能性がある。通常の吸入酸素分圧では、血液中に輸送される酸素の大部分はヘモグロビンによって運ばれるが、オキシヘモグロビンの飽和がほぼ完了する100mmHg(0.13 バール)を超える動脈酸素分圧では、溶存酸素量が増加する。高濃度では、高酸素症の影響は肺以外の身体組織にも広く及ぶ[38]。
中枢神経毒性
[編集]通常の大気圧分圧の約8倍である約1.6バール (160 kPa)を超える酸素分圧に数分から数時間さらされることは、通常、中枢神経系の酸素中毒と関連しており、高気圧酸素療法を受けている患者やダイバーに最も起こりやすい。海面気圧は約1バール (100 kPa)であるため、中枢神経系毒性は、周囲圧力が通常より高い高気圧条件下でのみ起こりうる[35][39]。水深60m(200フィート)を超える深度で空気を呼吸するダイバーは、酸素中毒の発作のリスクが高まる。ナイトロックスのような酸素が濃縮された混合ガスを吸入するダイバーも同様に、その混合ガスで許容される最大運用深度(MOD)より深くまで潜降すると、発作を起こすリスクが高まる[40]。中枢神経系毒性は、高二酸化炭素分圧、ストレス、疲労、寒さによって悪化するが、これらはすべて、高気圧療法よりもダイビングの方がはるかに起こりやすい[41]。
肺毒性
[編集]肺と気道は、人体で最も高濃度の酸素にさらされるため、最初に酸素による毒性が生じる臓器である。肺の酸素毒性は、0.5バール (50 kPa)を超える酸素分圧にさらされた場合にのみ発生する。肺毒性の最も早い徴候は、95%以上の酸素で4時間から22時間の無症状期間の後、気管気管支炎、すなわち上気道の炎症で始まる[[42]41]が、このレベルの酸素では、通常約14時間後に症状が始まることを示唆する研究もある[43]。
2~3 バールの酸素分圧(大気圧の2~3倍で100%酸素)では、これらの症状は酸素暴露後3時間で始まる可能性がある[42]。1~3バール(100~300kPa)の圧力で酸素を吸入したラットの実験から、酸素中毒の肺症状は、常圧条件と高気圧条件とでは同じではないかもしれないことが示唆されている[44]。肺機能検査で測定される肺機能の低下所見は、100%酸素に連続暴露して24時間という短時間で生じることがあり[43]、びまん性肺胞傷害の所見と急性呼吸窮迫症候群の発症は、通常100%酸素に48時間暴露した後に生じる[42]。大気圧下100%酸素の吸入も最終的には肺胞の虚脱(無気肺)ももたらすが、加圧下での同じ酸素分圧では、かなりの分圧の不活性ガス(典型的には窒素)が存在することでこの影響が防止される[45]。
早産の新生児は、高濃度の酸素に長時間さらされることで、気管支肺異形成症のリスクが高くなることが知られている[46]。酸素中毒のリスクが高い他のグループは、吸入酸素濃度が50%を超える人工呼吸中の患者、化学療法剤ブレオマイシンなど酸素毒性のリスクを高める化学物質にさらされた患者である[43]。そのため、集中治療室で機械換気を行っている患者に対する現在のガイドラインでは、酸素濃度を60%未満に保つことが推奨されている[42]。同様に、減圧症の治療を受けるダイバーは、ダイビング中の酸素曝露に加えて、高気圧条件下での長時間の酸素呼吸にさらされる治療が必要となるため、酸素中毒のリスクが高くなる[35]。
眼毒性
[編集]高濃度酸素吸入に長期間さらされると、網膜に損傷が生じる[47][48][49]。常圧で高酸素吸入率にさらされた乳幼児の発達中の眼球への傷害は、高気圧条件下で成人ダイバーに起こる眼球傷害とはメカニズムも影響も異なる[50][51]。高酸素症は、乳児の未熟児網膜症(ROP)と呼ばれる障害の一因である可能性がある[50][52]。早産児では、網膜の血管が十分でないことが多い。未熟児網膜症は、網膜血管系の発達が停止し、その後異常に進行することによって起こる。新生血管の成長に伴って線維組織(瘢痕組織)が収縮し、網膜剥離を引き起こすことがある。酸素補充は危険因子ではあるが、本疾患発症の主な危険因子ではない。補助酸素の使用を制限しても未熟児網膜症の発症率が低下するとは限らず、低酸素症に関連した全身合併症のリスクを高める可能性がある[50]。
高酸素性近視は、閉鎖回路のリブリーザーを用いる潜水士が長期にわたって酸素に曝露した場合に発生している[51][53][54]。また、高気圧酸素療法を繰り返し受けた場合にも起こりやすい[48][55]。眼軸長や角膜形状測定では近視シフトの原因となるような角膜や眼球測定の所見が明らかではないため、これは水晶体の屈折力の増加によるものである[55][56]。この病変は時間が経てば通常可逆的である[48][55]。
高気圧酸素療法の副作用として考えられるのは、白内障の初期発症または進行である。白内障とは、眼の水晶体の混濁の増大であり、視力を低下させ、最終的には失明に至る可能性がある。これは、酸素濃度上昇に生涯さらされることに関連するまれな事象であり、非常にゆっくりと発症するため、見落とされている可能性がある。原因は完全には解明されていないが、酸素濃度が上昇すると、水晶体のクリスタリンが架橋によって変性し、光を散乱させる凝集体が形成されるため、硝子体の劣化が促進される可能性があることが示唆されている。これは、高気圧治療に関連して、より多く見られる近視シフトの最終段階である可能性がある[7]。
機序
[編集]酸素毒性の生化学的基盤は、酸素が1つまたは2つの電子によって部分的に還元され、活性酸素種を形成することである[57]。これらは酸素の通常の代謝の自然な副産物であり、細胞シグナル伝達において重要な役割を果たしている[58]。体内で生成される一種の超酸化物アニオン (O−
2)[59]は、鉄の獲得に関与している可能性がある[60]。酸素濃度が通常より高いと、活性酸素濃度が増加する[61]。酸素は細胞代謝に必要であり、血液が体のすべての部分に酸素を供給している。酸素が高い分圧で呼吸されると、酸素過剰状態が急速に広がり、最も血管が豊富な組織が最も影響を受けやすくなる。ストレス環境の時期には、活性酸素のレベルが劇的に増加し、細胞構造に損傷を与え、酸化ストレスを引き起こすことがある[22][62]。
これらの活性酸素が体内でどのように作用するかのメカニズムはまだ完全には理解されていないが[63]、酸化ストレスの最も反応性が高い生成物の一つはヒドロキシルラジカル(·OH)であり、これは細胞膜内の不飽和脂質における脂質過酸化反応の有害な連鎖反応を引き起こす可能性がある[64]。高濃度の酸素は、一酸化窒素、過酸化亜硝酸塩、トリオキシダンなどの他のフリーラジカルの生成も増加させ、これらはデオキシリボ核酸(DNA)やその他の生体分子に損傷を与える[22][65]。体内にはグルタチオンなどの酸化ストレスを防ぐための多くの抗酸化物質システムが存在するが、非常に高い濃度の遊離酸素が存在すると、これらのシステムは最終的に飽和し、細胞損傷の速度がシステムが防御または修復する能力を上回るようになる[66][67][68]。その結果、細胞損傷や細胞死が引き起こされる[69]。
診断
[編集]視覚障害、耳の症状、めまい、錯乱、吐き気などの症状は、窒素中毒、うっ血、寒冷など、水中環境に共通する多くの要因による可能性があるため、発作前のダイバーにおける中枢神経系酸素中毒の診断は困難である。しかし、これらの症状は、高気圧酸素治療を受けている患者の酸素中毒の初期段階を診断するのに役立つ可能性がある。いずれの場合も、てんかんの既往歴があるか、検査で低血糖が指摘されていない限り、1.4バール (140 kPa)を超える分圧で酸素を吸入している状況で発作が起きた場合、酸素中毒の診断が示唆される[70]。
呼吸困難を伴う新生児の気管支肺異形成の診断は、最初の数週間は困難である。しかし、この時期に乳児の呼吸が改善しない場合は、血液検査とX線検査で気管支肺異形成を確認することができる。さらに、心エコー図は、先天性心疾患や肺動脈性肺高血圧症などの他の可能性のある原因を除外するのに役立つ[71]。
乳幼児の未熟児網膜症の診断は、通常、臨床環境によって示唆される。未熟児、低出生体重、および酸素曝露歴が主な指標であるが、遺伝性因子によるパターンは示されていない[72]。
鑑別診断
[編集]臨床診断は、動脈血酸素濃度で確認できる[41]。酸素中毒と混同される可能性のある他の疾患には、以下のようなものがある[41]。
予防
[編集]酸素中毒の予防は、完全に環境次第である。水中でも宇宙でも、適切な予防措置を講じることで、最も悪質な影響を排除することができる。未熟児の場合、早産による合併症の治療のため、酸素の補充が一般的に必要となる。この場合、気管支肺異形成や未熟児網膜症の予防は、乳児の生命を維持するのに十分な酸素供給を損なうことなく行わなければならない[73]。
ダイビング
[編集]酸素中毒は、スクーバダイビングにおける壊滅的な危険であり、発作が発生すると溺死の高いリスクが伴う[40][74]。発作は突然発生し、警告症状がないこともある[20]。その影響として、突然の痙攣や意識消失が起こり、その間に被害者はレギュレーターを失い、溺れる可能性がある[75][76]。フルフェイスダイビングマスクの利点の一つは、発作が発生した際にレギュレーターの喪失を防ぐことができる点である。マウスピース固定ストラップは、これと似ているもののやや効果の低い機能を持つ比較的安価な代替手段である[74]。高深度、長時間のダイビング、酸素濃度の高い呼吸ガスを使用するダイビングでは中枢神経系酸素中毒のリスクが高まるため、ダイバーは酸素濃度の高い呼吸ガスに対して最大運用深度(maximum operating depth: MOD)を計算する方法を教わり、そうした混合ガスが入ったボンベはその深度の明確な表示がなされるべきである[25][77]。
発作のリスクは、酸素分圧と曝露時間の累積的な組み合わせである「投与量」の関数であるようだ。発作が決して発生しない酸素分圧の閾値は確立されておらず、多くの変数、特に個人差に依存する可能性がある。個人の感受性、運動強度、そして呼吸負荷によって影響される二酸化炭素の血中濃度に応じて、リスクは大きく異なる可能性がある[74]。
酸素曝露が重大なリスクレベルに達する可能性のあるダイビングモードにおけるダイバー訓練コースでは、ダイバーは潜水時の「酸素時計」を計画・監視する方法を教わる[77]。これは仮想的なアラーム時計であり、酸素圧が高くなるほど早く進み、NOAAのダイビングマニュアルで推奨される最大単一曝露限界に達すると作動するように設定されている[25][77]。酸素部分圧が以下の場合、それぞれの限界は次の通りである:1.6 bar (160 kPa)では45分、1.5 bar (150 kPa)では120分、1.4 bar (140 kPa)では150分、1.3 bar (130 kPa)では180分、1.2 bar (120 kPa)では210分。ただし、酸素中毒の症状がいつ発生するかを信頼性をもって予測することは不可能である[78][79]。多くのナイトロックス対応のダイブコンピュータは、酸素負荷を計算し、複数回の潜水にわたってそれを追跡できる。目標は、呼吸ガス中の酸素分圧を低減するか、酸素分圧の高いガスを呼吸する時間を短縮することで、アラームを作動させないようにすることである。酸素分圧は、呼吸ガス中の酸素濃度と潜水深度に応じて増加するため、ダイバーは浅い深度で潜るか、酸素濃度の低いガスを呼吸するか、酸素濃度の高いガスへの曝露時間を短縮することで酸素時計の時間を延ばすことができる[80][81]。この機能は、いくつかのテクニカルダイビング用減圧コンピュータやリブリーザーの制御および監視ハードウェアによって提供されている[82][83]。
空気で56 m (184 ft)以上の深度で潜ると、酸素分圧が1.4 bar (140 kPa)を超えるため、酸素中毒の危険性が高まり、21%未満の酸素を含む混合ガス(hypoxic mixtureと呼ばれる)を使用する必要がある。窒素の割合を増やすことは、中毒性の強い混合物を生み出すため、実用的ではない。しかし、ヘリウムは催眠作用がないため、ガス混合によって窒素を完全にヘリウムに置き換える(結果としてヘリオックスと呼ばれる混合物が生成される)、または窒素の一部をヘリウムに置き換えてトリミックスを生成することができる[84]。
肺の酸素中毒は、ダイビング中では完全に回避可能な事象である。ほとんどのダイビングが限られた時間で自然に断続的となるため、これはダイバーにとって比較的稀であり、それに加え、可逆的な合併症でもある[85]。 定められたガイドラインに従えば、ダイバーは肺の酸素中毒のリスクを計算することができる[86][87][88]。飽和潜水では、活動エリア内のガス中の酸素含有量を0.4バール以下に制限することで、酸素中毒を回避することができる[89]。
スクリーニング
[編集]酸素耐性テストを使用したスクリーニングの目的は、潜水作業中や減圧症の高気圧治療中に酸素痙攣を起こしやすい、低耐性のダイバーを特定することである。このテストの有効性については疑問が呈されており、統計的研究によれば、標準的な高気圧治療スケジュール中の発作の発生率は低いため、一部の海軍ではこのテストの使用を中止しているが、他の海軍では引き続き全ての候補ダイバーに対してこのテストを要求している[90]。
耐性のばらつきや作業負荷などの他の変動要因により、アメリカ海軍は酸素耐性のスクリーニングを廃止した。1976年から1997年までに実施された6,250件の酸素耐性テストのうち、酸素中毒が観察されたのは6例(0.1%)に過ぎなかった[91][92]。
インド海軍が使用する酸素耐性テストは、アメリカ海軍およびアメリカ海洋大気庁の勧告に従い、BIBSマスクを介して100%酸素を絶対圧 2.8バールの周囲圧で30分間、乾燥した高気圧チャンバー内で安静時に呼吸するというものである。付添者は中枢神経系酸素中毒の発作が起きた場合の緊急処置の訓練をあらかじめ受けていなければならない[90]。
高圧環境
[編集]発熱やけいれん発作の既往がある場合は、高気圧酸素治療の相対的禁忌である[93]。減圧症の治療に使用されるスケジュールでは、発作や肺損傷の可能性を減らすために、100%の酸素ではなく空気を吸う期間(空気休憩)を設けている。米海軍では、100%酸素と空気を交互に使用する期間に基づく治療表を使用している。例えば、米海軍の第6表では、水深18メートルに相当する2.8標準気圧 (280 kPa)で75分間(酸素20分/空気5分を3回)を必要とする。この後、酸素で30分かけて1.9標準気圧 (190 kPa)までゆっくりと減圧する。その後、患者はさらに150分間(15分空気/60分酸素を2回)、より低い圧力にとどめおかれ、酸素吸入で30分かけて大気圧まで減圧する[94]。
ビタミンEとセレンは、肺酸素毒性に対する潜在的な保護方法として提案されたが、後に却下された[95][96][97]。しかし、ビタミンEとセレンが生体内での脂質過酸化とフリーラジカルによる、損傷防止の助けとなり、したがって反復的な高気圧酸素曝露後の網膜の変化を防ぐというラットにおける実験的エビデンスがいくつかある[98]。
大気圧環境
[編集]気管支肺異形成症は、初期段階では低分圧酸素での中断時間を挟むことで可逆的であるが、進行すると最終的に不可逆的な肺損傷を引き起こす可能性がある。そのような損傷を引き起こすには、酸素投与中断なしで1〜2日間の曝露が必要である[17]。
未熟児網膜症は、スクリーニングによって大部分が予防可能である。現在のガイドラインでは、妊娠週数が32週未満での出生、または出生時体重が1.5 kg未満のすべての赤ちゃんが、少なくとも2週間ごとに未熟児網膜症のスクリーニングを受ける必要があるとされている[99]。1954年の「National Cooperative Study」では、補助酸素と未熟児網膜症の因果関係が示されたが、補助酸素の制限により乳児死亡率が増加した。低酸素症と未熟児網膜症のリスクをバランスさせるために、現代のプロトコルでは、酸素を受けている未熟児の血中酸素レベルの監視が求められている[100]。
酸素中毒のリスクと長期治療で使用される酸素の量を最小限に抑えるためには、目標とする酸素化レベルを達成しつつ、供給濃度を慎重に調整することが重要である[38]。酸素療法を受ける際の典型的な酸素飽和度の目標は、正期産児でも早産児でも91-95%の範囲である[73]。
低圧環境
[編集]酸素の割合が高いことではなく、酸素の分圧が高いことによって酸素中毒は引き起こされるため、低圧環境では避けることができる。これは、低圧で活動しなければならない宇宙服での純酸素の使用や、初期の宇宙船、例えばジェミニ計画やアポロ宇宙船での高酸素濃度と通常の大気圧よりも低い機内圧力の使用によって例証される[101]。船外活動のような応用では、呼吸ガスの酸素の割合が100%に近づいても、酸素は無毒である。これは、酸素分圧が慢性的に0.3バール (4.4 psi)を超えるようになっていないためである[101]。
治療
[編集]高気圧酸素療法では、患者は通常、約2.8気圧(280kPa)に加圧された高気圧チャンバー内で、マスクから100%の酸素を吸入する。この間に発作が起きれば、患者からマスクを外して吸入酸素分圧を0.6気圧(60kPa)以下に下げる[20]
水中での発作時は、可能な限り早くダイバーを水面に引き上げなければならない。長年、動脈ガス塞栓症(AGE)の危険性から、発作そのものが起きている間はダイバーを浮上させないことが推奨されてきたが[102]、声門が完全に気道を閉鎖するわけではないというエビデンスもある[103]。これにより、潜水医学および高気圧医学協会のダイビング委員会(Diving Committee of the Undersea and Hyperbaric Medical Society)は、発作の痙攣(けいれん)期にレギュレーターがダイバーの口にない場合には、溺れる危険が動脈ガス塞栓症(AGE)の危険よりも大きいため、ダイバーを引き上げるべきだが、そうでない場合は痙攣期が終わるまで浮上を遅らせるべきだという現在の推奨を行っている[75]。救助者は、痙攣期中に自身の安全が損なわれないようにする。その後、被害者の空気供給が確立されていることを確認し、浮力制御下での引き上げ(controlled buoyant lift)を行う。意識の無い体を引き上げる技術は、多くのレクリエーションダイバー訓練施設では高度な技術として教えられており、プロのダイバーにとっては基本的な技術である。なぜなら、これは送気式潜水の待機ダイバーの主要な役割の一つであるからである。水面に到達したら、さらなる合併症が医療の介入を必要とする可能性があるため、必ず緊急医療サービスに連絡する[104]。水中で発作以外の症状が現れた場合、ダイバーは直ちに酸素分圧の低いガスに切り替えるか、減圧義務が許す限り浅い深度に浮上するべきである。水面に減圧チャンバーがある場合は、水面減圧が推奨される選択肢である。米国海軍は、再圧タンクがすぐに利用できない場合、減圧を完了するための手順を公開している[105]。実際の呼吸ガスの組成に基づき、潜水時間や減圧症予防のための浮上時間を計算する携行用コンピュータもある[82](ダイブコンピュータ)。
気管支肺異形成症や急性呼吸窮迫症候群の症状が現れた場合、投与する酸素濃度を下げ、曝露時間を短縮し、通常の空気を供給する(酸素の)中断時間を増やすことで対処する。他の疾患(特に乳児の場合)の治療のために補助酸素が必要な場合、肺組織の膨張を維持するために人工呼吸器が必要になることがある。この場合、人工呼吸の圧力と曝露時間は段階的に減少させ、気管支拡張薬や肺サーファクタントなどの薬剤が使用されることがある[106]。
ダイバーは、実験に基づくエビデンスによって一般的に許容可能とされるレベルに酸素曝露を制限することで、肺損傷のリスクを管理する。これは、特定の分圧での曝露時間に基づく酸素中毒単位(oxygen toxicity unit: OTU)のシステムを使用する。減圧症の緊急治療の場合、より重大な症状を治療するために通常の酸素曝露限界を超える必要があることがある[34]。
未熟児網膜症は自然に軽快することがあるが、疾患が閾値(連続5時間または累積8時間のステージ3の未熟児網膜症と定義)を超えて進行した場合、凍結手術とレーザー手術の両方が失明のリスクを減少させることが示されている。疾患がさらに進行した場合、強膜バックルや硝子体手術などの手術が網膜の再接着に役立つ場合がある[107]。
-
網膜(赤)が眼球の上部で剥離している。
-
網膜剥離に対する強膜バックル、青色部分)治療。 これにより眼球の壁が剥離した網膜に接触し、網膜が再接着される。
反復暴露
[編集]呼吸ガス中の潜在的に毒性のある酸素濃度への繰り返しの曝露は、特に高気圧酸素治療、飽和潜水、海中居住施設、そして反復的な減圧潜水など、高気圧環境では一般的に起こり得る。アメリカ海洋大気庁(NOAA)でのロバート・ハミルトンらによる研究は、単回および繰り返しの曝露に対する許容レベルを決定した。急性および慢性毒性に対する許容曝露は区別されるが、これらは実際には可能な連続的な曝露範囲の両極端である。さらに、日常的な曝露と緊急治療が必要な曝露を区別することができる。後者では、より危険な傷害を軽減するために、特に比較的安全な管理・モニターされた環境下で、より高い酸素中毒のリスクが正当化される場合がある[34][94][注釈 2]。
1988年に開発されたRepex(反復曝露)法は、大気圧下で100%酸素を1分間吸入することに相当する単一の用量値を酸素耐性ユニット(Oxygen Tolerance Unit: OTU)[108]と呼び、これを用いて酸素中毒の用量を計算し、数日間の作業曝露による酸素毒性による影響を回避することができる。測定された水深と選択された呼吸ガス混合物に基づいて自動的にOTUを記録・追跡する潜水作業用のコンピュータがある。これにより、計算された制限値により、最近曝露していない人はより多くの曝露が許容され、連続した曝露日数が増えるにつれて1日の許容用量が減少する[34]。しかし、これらの値は、現在のデータで完全に裏付けられているわけではないかもしれない[109]。
曝露日数 | 1日平均量 (OTU) | 合計量 (OTU) |
---|---|---|
1 | 850 | 850 |
2 | 700 | 1400 |
3 | 620 | 1860 |
4 | 525 | 2100 |
5 | 460 | 2300 |
6 | 420 | 2520 |
7 | 380 | 2660 |
8 | 350 | 2800 |
9 | 330 | 2970 |
10 | 310 | 3100 |
11 - 30 | 300 | 300×日数 |
PO2 (atm) | OTU per minute |
---|---|
0.50 | 0.00 |
0.55 | 0.15 |
0.60 | 0.27 |
0.65 | 0.37 |
0.70 | 0.47 |
0.75 | 0.56 |
0.80 | 0.65 |
0.85 | 0.74 |
0.90 | 0.83 |
0.95 | 0.92 |
1.00 | 1.00 |
1.05 | 1.08 |
1.10 | 1.16 |
1.15 | 1.24 |
1.20 | 1.32 |
1.25 | 1.40 |
1.30 | 1.48 |
1.35 | 1.55 |
1.40 | 1.63 |
1.45 | 1.70 |
1.50 | 1.78 |
1.55 | 1.85 |
1.60 | 1.92 |
1.65 | 2.00 |
1.70 | 2.07 |
1.75 | 2.14 |
1.80 | 2.21 |
1.85 | 2.28 |
1.90 | 2.35 |
1.95 | 2.42 |
2.00 | 2.49 |
2019年の研究では下式による中毒指数(Toxicity Index: TI)も提案されている[109]。
TI = t2 × PO2c
t: 時間、c: べき乗項、PO2 : 酸素分圧
これは、活性酸素または活性窒素種を生成する化学反応から導き出されたもので、中枢神経系毒性についてはc=6.8、肺毒性についてはc=4.57で、良好な予測が得られることが示されている[109]。
肺毒性については、時間は時間単位であり、PO2は絶対圧であり、TIは250に制限されるべきである[109]。中枢神経系毒性については、時間は分単位、PO2は絶対圧で大気圧、TIは26,108で1%のリスクを示す[109]。
予後
[編集]中枢神経系の酸素中毒によって引き起こされるけいれんによって、偶発的に被害者が怪我をする可能性があるが、発作後の神経系への損傷が起こりうるかどうかは長年不確かなままで、いくつかの研究がそのような損傷の証拠を探した。2004年のビッターマンによるこれらの研究の概要は、高濃度の酸素を含む呼吸ガスを除去した後では、発作による長期的な神経学的損傷は残らないと結論づけた[22][110]。
気管支肺異形成症の発症後に生存した乳児の大多数は、最終的にほぼ正常な肺機能を回復する。これは、肺が生後5〜7年間成長を続け、気管支肺異形成症によって引き起こされた損傷がある程度可逆的だからである(成人でも)。しかし、彼らは生涯を通じて呼吸器感染症にかかりやすくなる可能性が高く、後の感染症の重症度は同年齢の他の人々よりもしばしば大きくなる[111][112]。
乳児の未熟児網膜症(ROP)は、しばしば介入なしで退縮し、後年の視力は正常になることがある。疾患が手術を必要とする段階まで進行した場合、ステージ3 ROPの治療結果は一般的に良好だが、ステージ後期ではかなり悪化する。手術は通常、目の解剖学的構造を修復するのには成功するが、疾患の進行による神経系への損傷により、視力回復の結果は比較的悪い。他の合併症も存在すると、好ましいアウトカムが得られる可能性が低下する[113]。
補助酸素の提供は重症患者の生命維持に重要であり続け、一部の慢性疾患では生存率を高めることができるが、高酸素症と活性酸素種の生成はいくつかの生命を脅かす疾患の病因に関与している。高酸素の毒性の影響は特に肺で顕著であり、血管変化が起こると脳循環と冠循環がリスクにさらされる。長期的な高酸素症は免疫応答を害し、感染性合併症と組織損傷への感受性が高まる[38]。
疫学
[編集]第二次世界大戦以降、ダイバーの中枢神経系毒性の発生率は減少している。これは、曝露と吸入酸素分圧を制限するプロトコルが開発されたためである。1947年、ドナルドは純酸素を呼吸する深度を7.6 m (25 ft)に制限することを推奨した。これは酸素分圧1.8バール (180 kPa)に相当する[114]。 時間とともにこの制限は低下し、現在ではレクリエーションダイビング中は1.4バール (140 kPa)、浅い減圧停止中は1.6バール (160 kPa)の制限が一般的に推奨されている[115]。ただし、酸素リブリーザーを使用する軍のダイバーは、より大きなリスクを伴いながら、限られた期間でより深い深度で活動することがある[116]。酸素中毒は現在、機器の故障や人為的ミス以外では稀な出来事となっている。歴史的に、米海軍は酸素中毒事故を減らすために、海軍潜水マニュアルの空気および混合ガス表を改良してきた。1995年から1999年の間、ヘリウム-酸素表を使用した405回の水面支援下潜水の報告があり、そのうち6回の潜水(1.5%)で酸素中毒症状が観察された。その結果、米海軍は2000年にスケジュールを修正し、150回の潜水の現場テストを実施した。これらの潜水では酸素中毒の症状は一切見られなかった。改訂された表は2001年に発表された[117]。
耐性の変動性や作業負荷などの他の変動要因により、米海軍は酸素耐性のスクリーニングを廃止した。1976年から1997年の間に行われた6,250回の酸素耐性テストのうち、酸素中毒のエピソードは6回(0.1%)しか観察されなかった[91][92]。
高圧酸素療法を受けている患者の中枢神経系酸素中毒は稀であり、個人の感受性や治療プロトコル、おそらく治療の適応や使用機器など、多くの要因の影響を受ける。1996年のヴェルスラウの研究では、107,264人の患者集団のうち16件の事例(0.015%)が報告され、2003年のハンプソンとアティクの研究では発生率は0.03%であった[118][119]。イルディズ、アイ、キルデディは、1996年から2003年の間の36,500件の患者治療の要約で、酸素中毒事例はわずか3件で、発生率は0.008%だったと報告している[118]。その後の80,000件以上の患者治療のレビューでは、さらに低い発生率0.0024%が明らかになった。この発生率の低下は、酸素を供給するのにフードではなくマスクを使用するようになったことが一因かもしれない。マスクの方が死腔が少ないためである[120]。
中枢神経毒性の全体的なリスクは2000〜3000回の治療に1回程度かもしれないが、圧力によって変動し、2.8〜3.0 絶対圧(ATA)より高圧の治療スケジュールでは200回に1回程度まで高くなることがあり、2 ATA以下のスケジュールでは10,000回に1回程度まで低くなることがある[41]。
気管支肺異形成症は早産児の最も一般的な合併症の一つであり、その発生率は極低出生体重児の生存率が向上するにつれて増加している。しかし、補助酸素の管理が改善されたことで重症度は低下し、現在ではこの疾患は主に高酸素症以外の要因に関連していると考えられている[46]。
1997年の先進国の新生児集中治療室の研究のまとめによると、低出生体重児の最大60%が未熟児網膜症を発症し、出生時体重が1 kg未満の超低出生体重児では72%まで上昇した。しかし、重症例の頻度は遥かに低く、出生時体重が1.5 kg未満の超低出生体重児の失明率は8%以下であることが分かった[36]。
補助酸素の投与は救急医療や集中治療医学で広範かつ効果的に使用されているが、過剰な酸素化によって生じる活性酸素種は、主に肺において細胞損傷、細胞死、炎症を特徴とする組織傷害の悪循環を引き起こす傾向があり、補助酸素が治療として意図された組織酸素化の問題を逆に悪化させる可能性がある。同様の問題は、低酸素症を伴う慢性疾患の酸素療法でも起こりうる。生理的必要性を超える過剰を最小限に抑えるよう酸素供給を慎重に調整することで、肺の高酸素曝露も合理的に実行可能な最小限に抑えられる[38]。 酸素中毒の肺症状の発生率は約5%で、抗がん剤のブレオマイシンなど、一部の薬剤がリスクを高める可能性がある[41]。
歴史
[編集]中枢神経系の酸素毒性は、1878年にポール・ベール(Paul Bert)によって初めて記述された[121][122]。彼は酸素が昆虫、クモ綱、多足類、軟体動物、ミミズ、菌類、発芽中の種子、鳥類、その他の動物に対して毒性があることを示した。中枢神経系の毒性は「ポール・ベール効果」と呼ばれることがある[17]。
肺への酸素毒性は、1899年にロレイン・スミスによって初めて記述された。彼は中枢神経系の毒性に注目し、マウスと鳥類を用いた実験で、0.43 bar (43 kPa)では影響がないが、0.75 bar (75 kPa)の酸素は肺に刺激を与えることを発見した[33]。肺毒性は「ロレイン・スミス効果」と呼ばれることがある[17]。最初に記録されたヒトへの曝露は、1910年にボーンスタインによって行われ、2人の男性が30分間2.8バール (280 kPa)の酸素を呼吸し、彼自身は48分間まで症状なく続けた。1912年、ボーンスタインは51分間2.8 bar (280 kPa)の酸素を呼吸している間に手足のけいれんを起こした[4]。その後スミスは、酸素の少ない呼吸ガスに断続的に曝露することで肺が回復し、肺毒性の発症を遅らせることを示した[33]。
1935年、アルバート・ベーンケらが初めて、1.0バール (100 kPa)から4.1バール (410 kPa)の潜水で視野が狭くなる(視野狭窄)のを観察した[123][124]。第二次世界大戦中、ドナルドとヤーブローらは閉鎖式酸素リブリーザーの初期使用を支援するために、2,000回以上の酸素毒性実験を行った[47][125]。リブリーザー潜水の初期の海軍ダイバーたちは、海軍実験潜水部隊の「ウェットポット」(水を満たした高圧チャンバー)の底に潜んで不用心なダイバーを捕まえる"Oxygen Pete"という怪物についての神話を作り上げた。彼らは酸素中毒発作を起こすことを「Peteに捕まる」と呼んだ[126][127]。
第二次世界大戦後の10年間で、クリスチャン・ランバーツェンらは加圧下での酸素呼吸の影響と中毒の予防法についてさらなる発見を行った[128][129]。 酸素耐性の延長のための断続的曝露と、肺機能に基づく肺酸素毒性予測モデルに関する彼らの研究は、高圧酸素を呼吸する際の標準作業手順書の開発における重要な文書である[130]。中枢神経系症状の発症時間を短縮する二酸化炭素の影響を示したランバートセンの研究は、当時の曝露ガイドラインから、その後のスキューバセット設計に至るまで影響を与えている[24][25][131]。
未熟児網膜症は第二次世界大戦以前には観察されなかったが、その後の10年間で補助酸素が利用可能になり、急速に先進国での乳児失明の主要な原因の一つとなった。1960年には、酸素の使用はリスク要因として特定され、その投与は制限された。その結果、未熟児網膜症は減少したが、乳児死亡率と低酸素症関連の合併症が増加した。それ以来、より洗練されたモニタリングと診断により、低酸素状態と未熟児網膜症の問題のバランスを取ることを目的とした酸素使用のプロトコルが確立された[36]。
気管支肺異形成症は1967年にノースウェイによって初めて記述され、診断につながる条件が概説された[132]。これは後にバンカラリによって拡張され、1988年にシェナンが、36週での補助酸素の必要性が長期的な結果を予測できると提案した[133]。しかし、1998年にパルタらは、X線撮影所見が長期的な影響の最も正確な予測因子であると結論づけた[134]。
1986年と1995年、ビッターマンらは暗闇とカフェインがラットの脳波活動の変化の発症を遅らせることを示した[26][27]。それ以来、中枢神経系毒性に関する研究は予防法と安全な耐性延長の方法に焦点が当てられてきた[135]。中枢神経系の酸素毒性への感受性は、概日リズム、薬物、年齢、性別などの要因の影響を受けることが示されている[136][137][138][139]。1988年、ロバート・ハミルトン・ジュニアらは海中居住施設運用のための酸素曝露限界を設定するために、アメリカ海洋大気庁(NOAA)のための手順を作成した[86][87][88]。しかし、今日でも、肺酸素毒性の予測モデルは高分圧酸素曝露のすべての結果を説明できていない[140]。
社会と文化
[編集]レクリエーションスキューバダイバーは一般的に40%までの酸素を含むナイトロックスを呼吸し、テクニカルダイバーは減圧を加速するために純酸素や80%までの酸素を含むナイトロックスを使用する。空気(21%)以上の酸素濃度を呼吸するダイバーは、酸素中毒の危険性とそのリスク管理方法について教育を受ける必要がある[77]。ナイトロックスを購入するには、ダイバーは関連する資格の証明を示すよう求められることがある[141]。
1990年代後半以来、酸素の娯楽的使用が酸素バーによって推進されており、顧客は鼻カニューレを通して酸素を呼吸する。これがストレスを軽減し、活力を増加させ、二日酔いや頭痛の影響を軽減するという主張がされているが、それを裏付ける科学的証拠は不足している[142]。また、体内の毒素を除去し、体脂肪を減少させるという主張とともに、「酸素マッサージ」や「酸素デトックス」を提供する装置も販売されている[143]。アメリカ肺協会(American Lung Association)は「バーで使用される低流量の酸素が正常な人の健康に危険であるというエビデンスはない」と述べているが、米国の医薬品評価研究センター(Center for Drug Evaluation and Research)は、心臓や肺の疾患を持つ人は補助酸素を慎重に調整する必要があり、酸素バーを使用すべきではないと注意を促している[142]。
ヴィクトリア朝時代、社会は、急速に拡大する科学分野に魅了されていた。1872年にジュール・ヴェルヌが書いた短編小説「オクス博士の幻想」では、主人公の博士が水を電気分解して酸素と水素を分離する。そして、純酸素をキケンドン町全体にポンプで送り込み、いつもは穏やかな住民とその動物を攻撃的にし、植物を急速に成長させる。オクス博士の工場での水素と酸素の爆発により、彼の実験は終わりを迎える。ヴェルヌは、物語で描かれた酸素の効果は彼自身の創作であり(経験的証拠によって裏付けられるものではない)と説明して、物語を要約している[144]。また、彼の「月世界旅行」にも酸素中毒の短いエピソードがある[145]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
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