石川喬司
石川 喬司(いしかわ たかし、1930年9月17日 - 2023年7月9日)は日本の作家、評論家。愛媛県出身[1]。
略歴
[編集]愛媛県伊予三島市(現・四国中央市)出身。曾祖父は松山藩主の剣道御指南番[2]。幼稚園から中学時代までを新居浜市で過ごす。戦時中は、住友の化学工場に学徒動員[2]していた。旧制愛媛県立松山中学校(現・愛媛県立松山東高等学校)を経て旧制第六高等学校に進み、旧制高校時代は織田作之助や太宰治に傾倒し、詩やエッセイを発表[2]。東京大学文学部仏文学科に進み、渡辺一夫や鈴木信太郎に師事し、飯島耕一や東野芳明、村松剛、栗田勇らと同人誌『カイエ』を作る[2]。
1953年大学を卒業し、同年、毎日新聞社に入社。新聞記者・『サンデー毎日』編集者の傍ら文筆生活に入る。日本初めての本格的SF評論家として盛んに評論活動を行い、1963年3月5日、福島正実、星新一、小松左京ら10人と共に日本SF作家クラブを設立。また、あわせてミステリ評論も行った。
出版局編集次長を経て、1971年に毎日新聞社を退社。1972年から1973年、編集長として雑誌『TAU 現象としての建築雑誌』(商店建築社)を刊行[3][4]。
1978年、『SFの時代』により日本推理作家協会賞受賞[1]。SF作家としても活動し、代表作に自らの悲惨な戦争体験に基づく「魔法つかいの夏」がある。
1979年には東京大学にて「文学と時間」と題する講義をおこない、日本の大学における最初のSF講座として話題を呼んだ[1]。このほか、NHKでレギュラー番組を持っていた事もある。
競馬にも造詣が深く、競馬評論家としても知られ、フジテレビ「チャレンジ・ザ・競馬」にレギュラー出演していた。当人は馬家(ばか)を自称。また、競馬を始めとして、ギャンブルを題材とした小説を対象にしたアンソロジーを数多く編纂している。
日本推理作家協会常任理事。日本文芸家協会、日本ペンクラブ、日本SF作家クラブ、アジア・アフリカ作家会議の各会員。競馬国際交流協会評議員。日本SF大賞、江戸川乱歩賞、横溝正史賞などの選考委員。日本SF評論賞の選考委員長を第1回から第3回までつとめた。
2013年、他のベテラン作家とともに日本SF作家クラブの名誉会員となる[5]。
2024年2月、第44回日本SF大賞功績賞を受賞した[7]。
人物
[編集]競馬好きとして知られ、星新一からは「あいつは作家でなくて馬家(ばか)だ」と言われるほどだった[8]。
作品
[編集]小説
[編集]- 『魔法つかいの夏』 早川書房(1968年)
- ハヤカワ文庫(1975年)
- 『走れホース紳士』祥伝社(1974年)
- 徳間文庫(1982年)
- 『アリスの不思議な旅』 ハヤカワ文庫(1974年12月)
- 『競馬聖書』 グリーンアロー出版社〈グリーンアロー・ブックス〉(1975年)
- 徳間文庫(1983年)
- 『世界から言葉を引けば』 河出書房新社(1978年11月)
- 『エーゲ海の殺人』 集英社(1980年12月)
- 旺文社文庫(1986年3月)
- 『彗星伝説』 講談社(1982年1月)
- 講談社文庫(1985年12月)
- 『傑作競馬小説集』 実業之日本社(1984年)
- 『ホース紳士奮戦す』 徳間文庫(1987年12月)
- 『絵のない絵葉書』 毎日新聞社(1986年5月)
- 集英社文庫(1991年4月)
評論・エッセイ
[編集]- 『極楽の鬼 推理小説案内』 早川書房(1966年)
- 『極楽の鬼 マイ・ミステリ採点表』 講談社(1981年1月)
- 『SFの時代 日本SFの胎動と展望』 奇想天外社(1977年11月)
- 双葉文庫〈日本推理作家協会賞受賞作全集〉(1996年11月)
- 『SF・ミステリおもろ大百科』 早川書房(1977年11月)
- 『夢探偵 SF&ミステリー百科』講談社文庫(1981年)
- 『馬家物語 人はなぜ競馬をするか』 現代評論社(1978年10月)
- 徳間文庫(1984年1月)
- 『IFの世界』 毎日新聞社(1978年12月)
- 講談社文庫(1983年1月)
- 『紳士は競馬がお好き 馬家先生、世界を駆ける』 現代評論社(1983年10月)
- 徳間文庫(1986年5月)
- 『ターフの誘惑 Endless dreams for pegasus』 廣済堂出版(1996年5月)
- 『競馬場の歩き方 ガイドエッセイ地方競馬の魅力』 ミデアム出版社(1999年11月)
石川喬司競馬全集
[編集]- 『走れホース紳士・紳士は競馬がお好き』 ミデアム出版社(1992年)ISBN 4944001312
- 『競馬聖書・馬家物語』 ミデアム出版社(1992年12月)ISBN 4944001339
- 『新編ホース紳士奮戦す・女か馬か・明日の手帖・面長の恋人たち』 ミデアム出版社(1993年6月)ISBN 4944001363
編書・アンソロジー
[編集]- 『世界SF全集(35) 日本のSF(短篇集)現代篇』 福島正実 共編 早川書房(1969年)
- 『世界SF全集(34) 日本のSF(短篇集)古典篇』 早川書房(1971年)
- 『世界ミステリ全集〈18〉37の短篇』 早川書房(1973年)
- のち、18作品が『天外消失』(2008年、ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
- のち、12作品が『51番目の密室』(2010年、ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
- 『本命 競馬ミステリー傑作選』 光文社(1976年、カッパ・ノベルス)
- 徳間文庫(1985年)
- 『夢の中の女 ロマンSF傑作選』 伊藤典夫 共編 ベストブック社(1976年)
- 旺文社文庫(1984年1月)
- 『日本SF・原点への招待 「宇宙塵」傑作選』(全3冊) 柴野拓美 共編 講談社(1977年5月)
- 『SFファンタジア』1 - 7 小松左京、松本零士、野田昌宏 共編 学習研究社(1977年 - 1980年)
- 『四次元の殺人 SFミステリー傑作選』 光文社(1977年、カッパ・ノベルス)
- 光文社文庫(1990年3月)
- 『世界のSF文学総解説』 伊藤典夫 共編 自由国民社(1978年)、のちの新版は伊藤典夫の単独編
- 『エラリイ・クイーンとそのライヴァルたち』 山口雅也 共編 パシフィカ(1979年)
- 新版 西武タイム(1987年5月)
- 『一攫千金の夢』 日本ペンクラブ編、石川喬司選、集英社文庫(1983年1月)
- 『黄金の指 ギャンブル小説傑作集1』 結城信孝 共編 光文社(1984年9月)
- 『華麗なる賭け ギャンブル小説傑作集2』 結城信孝 共編 光文社(1984年9月)
- 『女は一回勝負する ギャンブル小説傑作集3』 結城信孝 共編 光文社(1984年10月)
- 『「名勝負(ギャンブル・ロマン)」傑作大全』 上・下巻、結城信孝 共編 光文社(1993年6月)
- 『黄金の腕 ギャンブル小説傑作集』 結城信孝 共編 光文社文庫(1993年8月)
対談本
[編集]- 『SF作家オモロ大放談』 小松左京、筒井康隆、星新一、大伴昌司、平井和正、矢野徹、豊田有恒 共著 いんなあとりっぷ社(1976年)
- 『おもろ放談 SFバカばなし』 角川文庫(1981年)
- 『SFへの遺言』 小松左京、大原まり子、高橋良平、森下一仁、笠井潔、巽孝之 共著 光文社(1997年6月)
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ a b c “会員名簿 石川喬司”. 日本推理作家協会. 2022年8月17日閲覧。
- ^ a b c d 『SFマガジン』1964年7月号。
- ^ TAU(Trans Architecture and Urban)現象としての建築雑誌(ハモニカ書房)
- ^ TAU・現象としての建築雑誌・各巻(東塔堂)
- ^ 『日本SF短篇50(1)』早川書房
- ^ “作家の石川喬司氏死去”. 時事ドットコム. 時事通信社 (2023年8月29日). 2023年8月29日閲覧。
- ^ 『第44回 日本SF大賞決定のお知らせ』(プレスリリース)一般社団法人日本SF作家クラブ、2024年2月23日 。2024年3月20日閲覧。
- ^ 鈴木学 (2023年9月2日). “【甘口辛口】「ペーパー・オーナー・ゲーム」の草分け 馬家(ばか)と呼ばれた石川喬司さんをしのぶ”. サンスポ. 2023年12月13日閲覧。