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龍笛

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
竜笛から転送)
龍笛奏者(神奈川県鎌倉市)
龍笛

龍笛(りゅうてき、竜笛)とは、雅楽で使う管楽器の一つで、横笛(おうてき、おうじょう)とも呼ばれる。吹き物。

概要

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龍笛は篠竹の管で作られ[1]、表側に「歌口(うたぐち)」と7つの「指孔(ゆびあな)」を持つ横笛であり、能管篠笛など和楽器横笛全般の原型・先祖であるとも考えられている。現在では入門用にABS樹脂でできた物(通称「プラ管」)も存在する。更に、ABS樹脂製より高価で、竹製より安価な花梨製の物も作られている。

雅楽の楽器の中では広い2オクターブの音域(古典曲で使用する範囲は、平調(E5)〜壱越(D7))をもち、低い音から高い音の間を縦横無尽に駆け抜けるその音色は「舞い立ち昇るの鳴き声」と例えられ、それが名前の由来となっている。同じ運指(指使い)であっても、息の吹き方によって、低音である和(フクラ)と高音である責(セメ)とに吹き分ける事ができる。また、竹製の「本管」は竹の種類や使用年数などで、別の龍笛と音階がズレる事も多い(元々龍笛自体が絶対的な音階で作られたものではない)。

音量を高めるために、管の中にを入れたり、外側をで巻いたりするなど意匠が凝らされている。

奈良時代の楽人、尾張浜主が龍笛を広めたといわれ、「笛之楽祖」と称えられる[2]

龍笛は古くから貴族や武将に好まれ、堀河天皇源義経源博雅(みなもとのひろまさ)などの、龍笛にまつわるエピソードはいくつも伝えられている。また、清少納言も『枕草子』の中で、「楽器の中では、がとても良い」と書いている。

合奏では、主旋律を篳篥が担当し、龍笛はその音域の広さを活かし、主旋律に絡み合うように演奏する。また通常、楽曲の最初の部分は龍笛のソロ演奏となっている。このソロ演奏は、その楽曲の龍笛パートのリーダー(音頭(おんど)、または主管とも呼ぶ)が担当する。

雅楽における龍笛の楽譜は、唱歌がカタカナで書いてあり、その左側に小さく書かれている漢字が運指を表す。龍笛の唱歌の旋律は篳篥の旋律に近い。

龍笛は唐楽をはじめ、催馬楽朗詠などでも用いられる。雅楽の横笛には龍笛のほか、神楽で用いられる神楽笛と、高麗楽などで用いられる高麗笛があるが、前者は龍笛より全音(長2度)低く、後者は龍笛より全音(長2度)高い音域を持つ。

横笛の起源は一説では中央アジアが発祥といわれており、これがシルクロードを経て中国に伝わり龍笛となり、日本に伝来されたといわれている。龍笛がシルクロードを経て、ヨーロッパフルートになったという説もあるが、フルートの起源は諸説あり、真偽のほどは定かではない。[要出典]

製作方法

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  1. 笛材には篠竹を用い、頭部には真竹など節の太い竹を用いる[1]。両者を接いで成形する[1]
  2. 物差(ぶさし)に従って、孔を開ける[1]。その後、管の内側と外側に砥の粉などを混ぜた漆や朱漆を塗り重ねる[1]。指孔や歌口の部分は竹材の外皮を削る(「谷グリ」)[1]。竹の繊維を掻き取って筋をつける(「猫掻キ」)場合もある[1]
  3. 笛全体にふくらみをつけるため、節・歌口・指孔以外に薄い杉製のヘギ板や和紙を巻き、下地を作る[1]。指孔の間は麻糸を巻いて下地とする場合もある[1]。制作時期が古いものでは、この部分に溝を作って糸を巻く方法もあった[1]
  4. セミを意匠化したものを頭部にはめこむ[1]
  5. 紐状にした樺桜を巻き、黒漆を塗布する[1]。演奏する際のバランスを取るため、頭部に鉛の錘を入れる[1]。頭部先端に錦の裂でくるんだ木栓を詰める[1]

指孔名(譜字)と音程

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龍笛の指孔は、吹き口に近い順に「六」「中」「夕」「丄」「五」「〒」「ン」と名付けられている。運指の形もそれぞれの孔名と同じ名称を用いるが、その場合は孔名の指孔を開け、その直前までの指孔を閉じた形を基本とするが、「丅」など孔名にない運指もある。

名称
読み かん じょう しゃく ちゅう ろく
和の音程 (C#5) (D#5) E5 F5-F#5 G5 A5 B5 C6-C#6 D6
責の音程 (C#6) (D#6) E6 F6-F#6 G6 A6 B6 C7-C#7 D7

このうち全ての指孔を閉じた形である「口」と「ン」は実際の曲(少なくとも現行の古典曲)では用いられない。また、責より高い3オクターブ目の音も構造上は多少出すことができるが、これも古典曲では用いられない。実際にはここに掲げた音程の他、指孔半開や吹き方による調整によってG#やA#等の音を出すこともできる。

神楽笛と高麗笛には「ン」に相当する指孔がない。

脚注

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n 高桑いづみ「紀州徳川家伝来の龍笛・能管について」『国立歴史民俗博物館研究報告』第166巻、2011年3月31日、131–152頁、doi:10.15024/00001923ISSN 0286-7400 
  2. ^ 『神社有職故実』神社本庁発行、1951年(昭和26年)7月15日、102頁

参考文献

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関連項目

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