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脱出速度

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

脱出速度(だっしゅつそくど Escape velocity)とは、力学(特に軌道力学)において、推進力を持たない自由な物体が、大きな質量を持つ別の物体(ここでは重力点と呼ぶ)の重力から脱出する、つまり無限遠まで移動するのに必要な最低速度。重力点の質量とその中心からの距離関数である。

噴射によって常に加速されているロケットは、いかなる距離においても脱出速度に達する必要がない。燃料の噴射により運動エネルギーが補給されるからである。脱出するために物体を加速する力を確保するための、適切な推進モードと、十分な推進剤があれば、いかなる速度でも脱出が可能である。

とくに多用される地球及び太陽に関しては、地球表面の脱出速度が第二宇宙速度、地球上における太陽からの脱出速度が第三宇宙速度とも呼ばれる。脱出速度は、移動物体の運動エネルギー重力ポテンシャル位置エネルギー)が等しくなる速度である。脱出速度に達した物体は、表面にとどまることも、衛星軌道にとどまることもない。重力点の地表面から離れる方向への脱出速度を持つ物体は、速度を落としながらもいつまでも離れていき、速度がゼロになることはない。脱出速度に達した物体は、脱出の動きを続けるのに追加の推進力を必要としない。別の云い方をすれば、脱出速度を得た物体は、距離が無限大に近づくにつれ速度がゼロに限りなく近づいていき、決して戻って来ることがない。脱出速度より大きな速度を持つ物体の場合は、無限遠において正の速度を持つ。

天体などの球形の重量物質を重力点とし、空気抵抗等を考慮しないとした場合、脱出速度Veは以下の式で表される。

地球から太陽系外への脱出速度の場合等は、地球の公転速度を加味する必要がある。

脱出速度の一覧

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位置 対象 脱出速度 Ve (km/s)[1] 位置 対象 脱出速度 Ve (km/s)[1] 系からの脱出速度 Vte (km/s)
太陽表面 太陽の重力 617.5
水星表面 水星の重力 4.25 水星 太陽の重力 ~ 67.7 ~ 20.3
金星表面 金星の重力 10.36 金星 太陽の重力 49.5 17.8
地球表面 地球の重力 11.186 地球 太陽の重力 42.1 16.6
月の重力 2.38 地球の重力 1.4 2.42
火星表面 火星の重力 5.03 火星 太陽の重力 34.1 11.2
ケレス表面 ケレスの重力 0.51 ケレス 太陽の重力 25.3 7.4
木星表面 木星の重力 60.20 木星 太陽の重力 18.5 60.4
イオ表面 イオの重力 2.558 イオ 木星の重力 24.5 7.6
エウロパ表面 エウロパの重力 2.025 エウロパ 木星の重力 19.4 6.0
ガニメデ表面 ガニメデの重力 2.741 ガニメデ 木星の重力 15.4 5.3
カリスト カリストの重力 2.440 カリスト 木星の重力 11.6 4.2
土星表面 土星の重力 36.09 土星 太陽の重力 13.6 36.3
タイタン表面 タイタンの重力 2.639 タイタン 土星の重力 7.8 3.5
天王星表面 天王星の重力 21.38 天王星 太陽の重力 9.6 21.5
海王星表面 海王星の重力 23.56 海王星 太陽の重力 7.7 23.7
トリトン トリトンの重力 1.455 トリトン 海王星の重力 6.2 2.33
冥王星表面 冥王星の重力 1.23 冥王星 太陽の重力 ~ 6.6 ~ 2.3
太陽系(銀河系中心からの位置) 銀河系 492–594[2][3]
事象の地平線 ブラックホールの重力 299,792.458 (光速
  • 水星及び冥王星は、公転軌道の軌道離心率が大きいため、太陽からの脱出速度は、その時点の太陽からの距離によって変化する。

参照

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  1. ^ a b For planets: Planets and Pluto : Physical Characteristics”. NASA. 18 January 2017閲覧。
  2. ^ Smith, Martin C.; Ruchti, G. R.; Helmi, A.; Wyse, R. F. G. (2007). “The RAVE Survey: Constraining the Local Galactic Escape Speed”. Proceedings of the International Astronomical Union 2 (S235): 755–772. arXiv:astro-ph/0611671. doi:10.1017/S1743921306005692. 
  3. ^ Kafle, P.R.; Sharma, S.; Lewis, G.F.; Bland-Hawthorn, J. (2014). “On the Shoulders of Giants: Properties of the Stellar Halo and the Milky Way Mass Distribution”. The Astrophysical Journal 794 (1): 17. arXiv:1408.1787. Bibcode2014ApJ...794...59K. doi:10.1088/0004-637X/794/1/59.