許されざる者 (1960年の映画)
許されざる者 | |
---|---|
The Unforgiven | |
監督 | ジョン・ヒューストン |
脚本 | ベン・マドウ |
原作 |
アラン・ルメイ 『許されざる者』 |
製作 | ジェームズ・ヒル |
出演者 |
バート・ランカスター オードリー・ヘプバーン |
音楽 | ディミトリ・ティオムキン |
撮影 | フランツ・プラナー |
編集 | ラッセル・ロイド |
製作会社 | ヘクト=ヒル=ランカスター |
配給 | ユナイテッド・アーティスツ |
公開 |
1960年4月6日 1960年10月6日 |
上映時間 | 125分 |
製作国 | アメリカ合衆国 |
言語 | 英語 |
製作費 | $5,000,000 |
配給収入 | 1億3330万円[1] |
『許されざる者』(ゆるされざるもの、原題: The Unforgiven)は、1960年のアメリカ合衆国の西部劇映画。監督はジョン・ヒューストン、出演はバート・ランカスターとオードリー・ヘプバーンなど。
ストーリー
[編集]テキサスの平原に牧場を営むザカリー家は長男のベンを筆頭に、母親のマティルダ、次男のキャッシュ、三男のアンディ、養女レイチェルの5人暮らし。インディアンに殺された亡き父の跡を継いだベンは、思慮深く、周囲からの信望厚く、牧場経営も順調に軌道に乗っていた。
そんなベンを近隣の牧場主ゼブ・ローリンズは信頼し、一家を厚遇。ゼブは、美しく成長したレイチェルを長男チャーリーの嫁に、キャッシュの嫁に長女を、と考える。しかしその一方で、レイチェルは秘かにベンを愛していた。
順風満帆に思えた矢先、エイブ・ケルシーという怪しい老人が近辺をうろつき、「レイチェルにはインディアンの血が流れている」との噂を吹聴する。一家は人々の疑惑の中でひっそりと日々を送る。
やがて、カイオワ族インディアンの首領ロスト・バードがザカリー家を訪ね、幼き日に別れた妹を返せと迫る。妹は白人だ、と要求を拒絶するベン。だがある夜、レイチェルとの婚約のため一家を訪ねたチャーリーが、帰途待伏せたカイオワ族に惨殺されてしまう。ゼフの妻はレイチェルを罵り、一家は窮地に立たされる。
ベンは仲間とともに、災厄の源であるケルシーを捕らえる。処刑場に引きずり出すと、ケルシーは恐ろしい過去を明かす。
かつて、ケルシーはベン達の父ウィルのパートナーだった。十数年前、ウィルはインディアンに襲われた移民の赤ん坊を助けたと偽り、カイオワ族の赤ん坊を盗んだのだ。後にカイオワ族がケルシーの息子を捕らえた時、ケルシーはレイチェルを返して息子をとり戻すようウィルに頼んだ。しかし、ウィルはそれを拒み、ケルシーの息子は殺害される。ケルシーはザカリー家を呪い、一家を追って復讐を願い続けて来たのだ。
ケルシーは絞首刑に処され、ゼブはザカリー家と絶縁。一家は孤立無援となる。
事の真相を知った兄弟達はレイチェルの処遇を巡り分裂。キャッシュは家を出ていく。一方レイチェルは、家族のためにその身をカイオワ族に投じようとする。そこへベンが温くレイチェルを抱きしめる。ベンの愛の深さを知ったレイチェルは一家と共に戦うことを決意。
その夜、カイオワ族の襲撃を受ける一家。味方もなく、夜が明ける頃には銃弾は底をつき、マティルダも負傷し息を引き取った。絶体絶命の中、ベンは捨て身の作戦に打って出る。そこへキャッシュも戻り合流。カイオワ族を退けることに成功する。だが、レイチェルの元にロスト・バードが迫る――。その時、レイチェルは夢中で銃の引き金を引いた。妹、と叫んで彼は倒れる。
いとわしい過去と縁を切ったザカリー家は再び団結を得るのだった。
キャスト
[編集]役名 | 俳優 | 日本語吹替 |
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NETテレビ版 | ||
ベン・ザカリー | バート・ランカスター | 久松保夫 |
レイチェル・ザカリー | オードリー・ヘプバーン | 池田昌子 |
キャッシュ・ザカリー | オーディ・マーフィ | 愛川欽也 |
ジョニー・ポーチュガル | ジョン・サクソン | 野田圭一 |
ゼブ・ローリンズ | チャールズ・ビックフォード | 早野寿郎 |
マティルダ・ザカリー | リリアン・ギッシュ | 河村久子 |
チャーリー・ローリンズ | アルバート・サルミ | |
エイブ・ケルシー | ジョセフ・ワイズマン | 前沢迪雄 |
ヘイガー・ローリンズ | ジューン・ウォーカー | 麻生美代子 |
ジョージア・ローリンズ | キップ・ハミルトン | 三木弘子 |
ジュード・ローリンズ | アーノルド・メリット | |
アンディ・ザカリー | ダグ・マクルーア | 関根信昭 |
ロスト・バード | カルロス・リヴァス | |
不明 その他 |
村瀬正彦 富山敬 西山連 緑川稔 増岡弘 杉田俊也 北見順子 | |
演出 | 小林守夫 | |
翻訳 | 木原たけし | |
効果 | ||
調整 | ||
制作 | 東北新社 | |
解説 | 淀川長治 | |
初回放送 | 1968年10月6日 『日曜洋画劇場』 |
オードリー・ヘプバーンのフィックス声優である池田昌子が初めてヘプバーンの吹替を担当した作品である[2]。
日本語吹替音声はハピネットから2023年2月3日に発売の「吹替シネマ2023」シリーズ第1弾『許されざる者-日本語吹替音声収録 HDリマスター版-』に収録。一部音源の無い部分はオリジナル音声・日本語字幕となる[3][4]。
スタッフ
[編集]- 製作:ジェームズ・ヒル
- 監督:ジョン・ヒューストン
- 脚本:ベン・マドウ
- 原作:アラン・ルメイ『許されざる者』[5]
- 撮影:フランツ・プラナー
- 美術:スティーブン・グライムズ
- 編集:ラッセル・ロイド
- 音楽:ディミトリ・ティオムキン
- 録音:ベイジル・フェントン・スミス
- 衣装:ドロシー・ジーキンス
- 特殊効果:デイヴ・ケーラー
エピソード
[編集]- オードリー・ヘプバーンは撮影中の1959年1月28日に落馬して脊椎を骨折し[6]、緊急輸送機で運ばれて入院した[7]。映画の撮影にコルセットを着けながら復帰できたのは3月10日だった[8]。さらに当時妊娠していたヘプバーンは撮影中は大丈夫だと医者に言われていたものの、撮影終了後の5月末に2度目の流産をしてしまう[7][9][10]。
- ヘプバーンが落馬して入院していた間、専任介護に当たったのは『尼僧物語』でヘプバーンが演じたシスター・ルークのモデルとなったマリー=ルイーズ・アベだった[7][11][10]。
- 監督のジョン・ヒューストンがこの仕事を引き受けたのは、キャストが気に入ったのと、休暇を過ごしていた家族の場所に近かったことであった[7]。ヒューストンによると、「私は人種的不寛容の物語に、共同社会のモラリティの実態に対する批評にしたかった。しかし彼ら(ユナイテッド・アーティスツとバート・ランカスター)が望んでいたのは大活劇映画だった」ということで[12]、脚本に満足していたわけではなかった[7]。後年自伝では「自分の作品で嫌いなのは『許されざる者』だけだ。全体のトーンが大袈裟で肥大しすぎている。登場人物がみな実物大以上だ」と述べている[13][14]。
- しかし日本では評価が高く、大ヒットして1960年度の配給収入第5位に入っている[15]。雑誌『スクリーン』で “ぼくの採点表”というコーナーを持っていた映画評論家双葉十三郎の採点では☆☆☆★★(70点)と点数自体はすば抜けて高くはないが[16]、双葉は1960年度の第10位にこの作品を推している。
- ヘプバーンはこの作品の次にアルフレッド・ヒッチコック監督のヘンリー・セシル原作『判事に保釈なし』に出演予定であったが、レイプシーンがあったので断っている[17][7][10][14]。相手役はローレンス・ハーヴェイ、父の判事役は『麗しのサブリナ』でも父親の役で共演したジョン・ウィリアムズと決まっていた[10][17]。ヘプバーンの最後のパートナーだったロバート・ウォルダーズは「オードリーはヒッチコックの映画が好きではなかった。あまりにもシニカルだと思っていた。一度『判事に保釈なし』について質問したところ、そんな映画を作る話があったことさえ覚えてなかった。」と話している[18]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ 『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』(キネマ旬報社、2012年)171頁
- ^ @newline_maniacs (2023年1月1日). "NewLine Corp.のツイート". X(旧Twitter)より2023年1月1日閲覧。
- ^ “「吹替シネマ2023」2023年2月より全12タイトル、6ヶ月連続リリース決定!” (2022年10月21日). 2022年12月26日閲覧。
- ^ “許されざる者-日本語吹替音声収録 HDリマスター版-” (2022年10月21日). 2022年12月26日閲覧。
- ^ アラン・ルメイ 著、蕗沢忠枝 訳『許されざる者』新潮社、1960年7月20日初版発行。
- ^ パリス 上巻 1998, pp. 328–329.
- ^ a b c d e f チャールズ・ハイアム『オードリー・ヘプバーン 映画に燃えた華麗な人生』近代映画社、1986年3月15日初版発行、186-191頁。
- ^ パリス 上巻 1998, p. 331.
- ^ パリス 上巻 1998, p. 337.
- ^ a b c d アレグザンダー・ウォーカー『『オードリー リアル・ストーリー』』アルファベータ、2003年1月20日、230,227頁。
- ^ パリス 上巻 1998, pp. 329–330.
- ^ パリス 上巻 1998, p. 327.
- ^ パリス 上巻 1998, p. 333.
- ^ a b イアン・ウッドワード『オードリーの愛と真実』日本文芸社、1993年12月25日、240,243頁。
- ^ 『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』p171. キネマ旬報社. (2012)
- ^ 双葉十三郎 (1988年6月30日初版発行). 『ぼくの採点表II 1960年代』p649. 株式会社トパーズプレス
- ^ a b パリス 上巻 1998, pp. 339–340.
- ^ パリス 上巻 1998, p. 340.
参考文献
[編集]- バリー・パリス 著、永井淳 訳『オードリー・ヘップバーン 上巻(2001年の文庫版タイトルは『オードリー・ヘップバーン物語』)』集英社、1998年5月4日。ISBN 978-4087732894。