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軍需局副長官

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
最後の軍需局副長官サー・ヒュー・ダルリンプル・ロス英語版ウィリアム・ソルター英語版画、1830年代。

軍需局副長官[1](ぐんじゅきょくふくちょうかん、: Lieutenant-General of the Ordnance)は、イギリス軍需局英語版の役職であり、軍需総監英語版の副官にあたる。1544年に設立され、1855年に廃止された。

解説

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終身任命を受けた最後の軍需局副長官ウィリアム・レッグヤコブ・ユイスマンス画。

1509年時点の軍需局英語版では軍需総監英語版の役職があったものの、軍需局副長官の役職はなかった[2]。1544年初、軍需総監サー・クリストファー・モーリス英語版が降格されて最初の軍需局副長官となり、軍需総監には代わりにトマス・シーモア(国王ヘンリー8世の3番目の王妃ジェーンの弟)が就任した[3]。シーモアが軍事に無知というわけではなく、1540年代にイングランド軍を指揮したことはあったが、歴史学者クリフォード・S・L・デイヴィス(Clifford S. L. Davies)によれば、「頂点に名誉職が作られ、実際の職務が副長官に移った」形であり、モーリスの賃金も総監時代の倍にあたる日当100マークに上がった[3]。この制度変更により、それまでの海軍委員会の長官であるロード・ハイ・アドミラル英語版の地位が軍需局の長官である軍需総監の地位より高い、という状況が解消された[3]

任命は国璽が押印された特許状(letters patent)の形で行われ、任期は1670年まで終身任命(ただし、途中で解任されることもある)で、それ以降は陛下の仰せのままにとなった[4]。賃金は特許状で日当100マークと記載され[4]、1750年代のジョージ・サックヴィル卿のときには年俸1,500ポンドとされた[5]

軍需局副長官の創設時点では軍需局財務長官英語版の役職がなく、1544年から1547年まではロンドン塔管理長官が財務を担当した[2]。1547年以降は軍需局副長官と軍需局測量総監英語版が共同で担当し[2]、1670年に軍需局財務長官が創設されると財務は財務長官の担当となった[6]海軍財務長官と違い、軍需局に支出への最終決定権がなく、支出が監査人に否決される可能性もあったが、実務上では数年前の支出を否決することが困難であり、エリザベス1世の治世には軍需局が毎月会議を行い、必要な支出を文書にして枢密院に提出することが規定された[6]

19世紀初には陸軍将校の出世コースとされた[1]。1855年5月22日に軍需局が戦争省に統合され、軍需総監や軍需局副長官を含む軍需局の役職は廃止された[7]。最後の軍需局副長官サー・ヒュー・ダルリンプル・ロス英語版は代わりにadjutant-general of artilleryに任命された[7]

一覧

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1689年から1702年までの軍需局副長官第2代準男爵サー・ヘンリー・グッドリック英語版、1695年画。

出典

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  1. ^ a b 板倉, 孝信「カスルレーとカニングによる外相と下院指導者の兼任(3・完)」『早稲田政治公法研究』第105巻、早稲田大学大学院政治学研究科、東京、2014年、44頁、hdl:2065/41425ISSN 0286-2492NCID AN00258448 
  2. ^ a b c Davies 1965, p. 286.
  3. ^ a b c d Raymond, James (2007). Henry VIII's Military Revolution: The Armies of Sixteenth-century Britain and Europe (英語). Tauris Academic Studies. p. 177, 179. ISBN 978-1-84511-260-8
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at au Sainty, John Christopher (May 2002). "Ordnance Lieutenant 1545-1855". Institute of Historical Research (英語). 2017年9月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年10月29日閲覧
  5. ^ Chichester, Henry Manners (1890). "Germain, George Sackville" . In Stephen, Leslie (ed.). Dictionary of National Biography (英語). Vol. 21. London: Smith, Elder & Co. p. 233.
  6. ^ a b Davies 1965, p. 287.
  7. ^ a b Vetch, Robert Hamilton (1897). "Ross, Hew Dalrymple" . In Lee, Sidney (ed.). Dictionary of National Biography (英語). Vol. 49. London: Smith, Elder & Co. p. 263.

参考文献

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  • Davies, C. S. L. (April 1965). "The Administration of the Royal Navy under Henry VIII: The Origins of the Navy Board". The English Historical Review (英語). Oxford University Press. 80 (315): 268–288. JSTOR 560133