金切裂指物使番

金切裂指物使番（きんのきっさきさしものつかいばん）とは、使番衆・馬廻衆の中から豊臣秀吉が特に選抜して取り立てた者で、金地の指物（旗指物）の幟の端を切り裂いて風になびきやすくした「金の切裂の指物」を授けられた家臣。

指物は幟状の旗であったと思われるが、鎧の背などに付けたり、指物持の従者に持たせたりした^[1]。一部の新参衆を除いて豊臣氏の譜代家臣で、数名は大名にまでなっている。

構成

山鹿素行の『武家事紀』は下記の32名を金切裂指物使番として列挙している。

『武家事紀』にある金切裂指物使番

蒔田主水正（政勝）
石川兵蔵（貞清）
三上与三郎（季直）
山城小才次^[2]（宮内）
左田三六^[3]
水原石見守（吉一）
水野久右衛門尉^[3]^[4]
熊谷内蔵允（直盛）
屋松治右衛門尉^[3]
佐久間河内守（政実）
滝川豊前守^[5]（忠征）
杉山源兵衛尉^[6]
奥村半平^[7]
佐藤駿河守（堅忠）^[8]
松平藤助^[9]
小田喜四郎^[3]
森十蔵^[3]
新庄越前守（直定）
大屋弥八^[10]
河原長門守^[3]
渡辺与一郎^[3]
大田半二^[3]
竹中貞右衛門尉^[11]（重定）
毛利兵吉（重政）
西川与右衛門尉（方盛）
山田久三郎^[3]
小川清右衛門尉
美部四郎三郎^[12]（美濃部美濃守）
石田備前守^[3]
佐尾左衛門尉^[3]
垣見和泉守（一直）
布施屋飛騨守^[13]（伏屋飛騨守）

これ以外にも、小瀬甫庵の『太閤記』の御使番衆15名の中には、金切裂指物使番となった者が（重複を除いて）3名いる。

『太閤記』にある金切裂指物使番

友松次右衛門尉^[14]（盛保）
布施屋隠岐守^[3]
松井藤助^[9]

同様に、太田牛一の『大かうさまくんきのうち』の御使番衆24名の中には、金切裂指物使番となった者が（重複を除いて）1名いる。

『大かうさまくんきのうち』にある金切裂指物使番

伏屋小兵衛（為長）

脚注

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^ 「指物」『日本大百科全書(ニッポニカ)』。コトバンクより2020年7月11日閲覧。
^ 山代とも書く。関ヶ原の後は徳川家康に仕えて、大坂の陣の際には堀の埋め立て工事奉行となった。のち日光東照宮の普請の際、本多正盛と諍いとなり切腹。
^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g ^h ⁱ ^j ^k ^l 人物不詳。
^ 来島長親の正室は福島正則の養女であるが、この養女の実父を水野とする説がある。同資料に拠れば、関ヶ原の合戦の翌年から、福島氏の家臣となったとされている。また、水野の室は福島正則の妹である、とする説がある。
^ 木全忠澄の子。滝川一益の家臣で滝川姓を名乗った。
^ 秀吉の馬廻衆で使番を兼ねた。天正18年以後の消息は不明。
^ 賤ヶ岳の戦いの戦功者14人の1人。慶長の役の際に浅野幸長に対し慰問の使者となって以後の消息は不明。
^ 文禄3年（1594年）、伏見城の普請奉行を務めた。
^ ^a ^b 人物不詳。同一人物か。
^ 秀吉・秀頼に仕えて、慶長9年の豊国神社臨時大祭の奉行を務めた。以後の消息は不明。
^ 竹中重光の次男。重利の弟。
^ 美濃部四郎三郎、通称は三郎四郎とも。朝鮮出征中の松浦鎮信の陣中に使者として赴いた。
^ 伏屋とも書く。関ヶ原の合戦にも参加し、のち徳川氏と豊臣氏の間の使者を何度も務めた。慶長9年の豊国神社臨時大祭の惣奉行の1人。大坂夏の陣における上本町合戦において、森可春に討たれた。
^ 友松忠右衛門の弟。慶長9年の豊国神社臨時大祭の惣奉行の1人。駿府城普請の人足奉行。大坂落城後は山内忠義に預けられ、そのまま土佐で仕える。

参考文献

桑田忠親『太閤家臣団』新人物往来社、1971年、80-88, 125-131頁。 ASIN B000J9GTRU

史料

山鹿素行「国立国会図書館デジタルコレクション第十四続集」『武家事紀. 上巻』山鹿素行先生全集刊行会〈山鹿素行先生全集〉、1915年、555-556頁。
小瀬甫庵『国立国会図書館デジタルコレクション太閤記』第22、林甚右衛門、1646年。

構成

脚注

参考文献

関連項目