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阪急9000系電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
阪急9000系電車
阪急9000系電車
(王子公園駅 2020年1月)
基本情報
運用者 阪急電鉄
製造所 日立製作所笠戸事業所
アルナ車両[* 1]
製造年 2006年 - 2013年
製造数 11編成88両
運用開始 2006年7月31日
投入先 神戸線宝塚線
主要諸元
編成 8両編成(3Ⅿ5T)
軌間 1,435 mm(標準軌
電気方式 直流1,500 V架空電車線方式
最高運転速度 宝塚線:100 km/h
神戸線:115 km/h
設計最高速度 130 km/h
起動加速度 2.6 km/h/s
減速度(常用) 3.7 km/h/s
減速度(非常) 4.2 km/h/s
編成定員 1,028(座席388・立席640)
車両定員 【先頭車】
121(座席44・立席77)
【中間車】
131(座席50・立席81)
編成重量 240.4t(9000F、9001F)
241.7t(9002F)
241.1t(9003F)
242.0t(9004F)
241.6t(9005F)
240.9t(9006F)
全長 19,000 mm
全幅 2,750 mm
全高 4,095 mm
車体 アルミニウム合金A-train
台車 モノリンク式ダイレクトマウント空気ばね台車
M車:FS-565・T車:FS-065
主電動機 かご形三相交流誘導電動機
(形式:SEA415)
主電動機出力 200 kW × 4 (1時間定格)
駆動方式 WNドライブ(改造車含む)
TD平行カルダン駆動方式
歯車比 5.33
編成出力 2,400 kW
制御方式 IGBT素子VVVFインバータ制御
(ベクトル制御・純電気ブレーキ対応、1C2M)
制御装置 東芝製 SVF084-A0
制動装置 全電気指令式電磁直通空気ブレーキ
電力回生優先ブレーキ対応)
保安装置 AF軌道回路方式ATS
パターン式ATS
デッドマン装置
備考
  1. ^ 9003F・9006F・9008Fの艤装のみ
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阪急9000系電車(はんきゅう9000けいでんしゃ)は、2006年平成18年)より製造を開始した阪急電鉄(阪急)の通勤形電車である。

概要

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「すべてのお客様に快適な移動空間」をコンセプトとして、「快適な車内空間の提供、優れたサービス機器の導入、交通弱者に対するバリアフリー」を目的に開発された。基本編成の新造車としては、神戸線では1992年の8020F以来14年ぶり、宝塚線では1992年の8007F以来15年ぶりの導入となった。

京都線用の9300系と同様に日立製作所で製造され、2006年5月22日から5月25日にかけて正雀工場に第1編成(8両)が搬入され、同年6月25日西宮車庫へ回送した。

ファンクラブ会員のみを対象にした試乗会が神戸線で同年7月29日に実施され、7月31日に神戸線で営業運転を開始し、翌2007年(平成19年)9月18日に宝塚線でも営業運転を開始した。

編成は8両固定編成で、MT比は9300系と同じく3M5Tである[1]6000系7000系8000系8200系 (2両組成車) との併結による10両編成運転も可能である。

車両概説

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車体

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A-trainをベースとしたアルミニウム合金製車体で、9300系と基本的なデザインは変わらないが、9300系より全長が100mm長く、全幅が50mm短くなっている。これは従来からの神宝線規格に合わせたものである。

窓高さは880mmとなっている[1]

内装

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座席は全てロングシートで、座席に仕切り板を設置した[1]。表地はゴールデンオリーブのテレンプに戻った[1]。各車に車椅子スペースが設けられたが、収納式座席は設置されていない[1]

照明は9300系に引き続き間接照明で、9002編成以降は車内照明がLEDに変更された。また、貫通扉は9300系同様自動扉である。車内案内表示装置には液晶ディスプレイ(LCD)を採用し、千鳥配置で1両に3か所の側扉の上部にそれぞれ2基ずつ設置されている。

主要機器

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制御装置や主電動機をはじめとした床下の電気機器は、神宝線用車両の慣例により東芝製である。本系列ではIGBT素子による純電気ブレーキ対応VVVFインバータを採用。主電動機定格出力は200kW、定格回転数は1,980rpm、最大回転数は4,716rpmである。9300系と同様に定速制御も装備している[1](阪急内部では惰行制御と呼称)。

駆動装置はTDドライブWNドライブが混在している[2]

台車には9300系に引き続き住友金属工業製FS565(電動台車)、FS065(付随台車)を採用。ブレーキ装置には踏面片押し式ユニットブレーキユニットブレーキを装備。

種別・行先表示器は正面・側面ともにフルカラー式LEDを採用した。表示形式はグラフィック方式を採用することで字幕式と同じフォントを再現することが可能となり、雀丘屋敷のように、字幕式と同様の文字を強調した表示も可能となっている[注 1]。なお、山陽電気鉄道との直通運転廃止後に製造されたが、「須磨浦公園」行きの表示も収録されていた(後継の1000系も同様。2019年の大阪梅田駅改称後に「夙川」行きに差し替え)。

マスコンハンドルは、8000系までは神宝線用車両の慣例により東芝製を採用していたが、本系列からは京都線用と同じ東洋電機製造製に変更された[3]

前照灯は当初はシールドビーム式のものだったが、2013年頃より順次HIDのものに更新された。

形式

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2017年9月に形式呼称が変更された。右が変更後の形式[4]。電動車は、2017年ごろより可とう歯車継手変更の改造が進められており、改造後は形式末尾に「-1」が追加されている。なお、新形式呼称でのハイフン以下の枝分けは、2021年以降は廃止された[5]

9000形/Mc9000形
大阪梅田駅寄りの制御電動車(Mc1)。VVVFインバータ2組、蓄電池シングルアーム式パンタグラフを搭載。
9100形/Mc9100形
新開地駅宝塚駅寄りの制御電動車(Mc2)。VVVFインバータ2組と蓄電池を搭載。
9500形/M9500形
新開地駅・宝塚駅寄りから2両目に連結される中間電動車(M1)。VVVFインバータ2組、蓄電池とシングルアーム式パンタグラフを搭載。
9550形・9560形/T9550形
補助電源装置として静止形インバータ2組と電動空気圧縮機を搭載する中間付随車(T1)。9550形は梅田駅寄りから2両目、9560形は新開地駅・宝塚駅寄りから3両目に連結される。
9570形/T9570形
特別な機器は搭載しない中間付随車(T2)。

在籍数

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2013年4月1日現在、8両編成11本が在籍しており、そのうち6編成が宝塚線、5編成が神戸線に所属している[6]。2012年度は2編成が増備され、6月に宝塚線、10月には神戸線に各1編成が配置されている[7][8]

全編成に神戸・宝塚両線の方向幕を装備しており、2012年より9000系各編成が宝塚線・神戸線の両線で使用されていた。2016年現在、以下の編成が相手路線への貸し出し経歴を持っている。2017年以降は神宝線間の車両貸し出しは1000系1010F・1012Fが担っている。

  • 宝塚線→神戸線へ貸出
    • 9001F - 2012年12月3日〜2013年2月28日[9][10][注 2]、2015年4月16日〜5月20日
    • 9003F - 2013年3月19日〜12月13日[11]
    • 9007F - 2013年7月3日〜22日[12]
  • 神戸線→宝塚線へ貸出
    • 9002F - 2014年7月10日〜9月9日[13]、2015年3月3日〜6日、2016年11月2日〜2017年5月25日
    • 9004F - 2012年10月1日〜10日[14]、2013年12月18日〜25日、2014年10月21日〜11月1日、2015年1月13日〜28日、2016年1月12日〜3月24日[15]、2016年4月15日〜10月4日
    • 9006F - 2016年11月9日〜2017年4月13日[16]
    • 9008F - 2015年6月3日〜9月28日

編成

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2013年12月13日現在[6]

竣工 所属 備考
9000
(Mc1)
9550
(T1)
9570
(T2)
9580
(T2)
9590
(T2)
9560
(T1)
9500
(M1)
9100
(Mc2)
9000 9550 9570 9580 9590 9560 9500 9100 2006年7月25日[17] 神戸線 本編成のみ、荷物棚の形状が異なる
9001 9551 9571 9581 9591 9561 9501 9101 2007年9月14日[17] 宝塚線  
9002 9552 9572 9582 9592 9562 9502 9102 2010年12月15日[1] 神戸線 本編成以降車内LED照明を採用
9003 9553 9573 9583 9593 9563 9503 9103 2011年3月25日[1] 宝塚線 艤装工事はアルナ車両が担当[6]
9004 9554 9574 9584 9594 9564 9504 9104 2011年6月24日[1] 神戸線
9005 9555 9575 9585 9595 9565 9505 9105 2011年12月12日[1] 宝塚線
9006 9556 9576 9586 9596 9566 9506 9106 2012年2月7日[1] 神戸線 艤装工事はアルナ車両が担当[18]
9007 9557 9577 9587 9597 9567 9507 9107 2012年6月1日 宝塚線 [6]
9008 9558 9578 9588 9598 9568 9508 9108 2012年10月29日 神戸線 艤装工事はアルナ車両が担当[6]
9009 9559 9579 9589 9599 9569 9509 9109 2013年3月15日 宝塚線 手すりの形状が変更されている[6]
9010 9650 9670 9680 9690 9660 9510 9110 2013年3月27日 宝塚線 手すりの形状が変更されている[6]

装飾車両

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9002Fは2010年12月17日の営業開始から2011年3月31日まで、「未来のあかり号」としてラッピングを施して運行された[19]

2014年3月21日から12月24日まで宝塚線の9009Fが、今津線の7000系7001Fとともに、宝塚歌劇100周年を記念したラッピング列車「宝塚歌劇トレイン」として運行された[20][21]

2020年11月26日から2021年2月15日まで、絵本『リサとガスパール』の日本出版20周年を記念し実施されたスタンプラリーに合わせ、各線1編成ずつにオリジナルヘッドマークが掲示され、神戸線では9000F、宝塚線では9007Fに掲げられた[22]

その他

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2011年3月27日には、9003Fの導入を記念したイベントが箕面駅で開催され、それに伴う臨時列車(梅田発箕面ゆき臨時)が同編成を使用して運行された[23]

脚注

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注釈

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  1. ^ 他鉄道事業者におけるLED式表示器のフォントは明朝体ゴシック体のどちらかを採用しており、8200系では側面に明朝体のLED表示を採用していた。
  2. ^ 鉄道ファンの記事では9001編成については「神戸線へ転属」、レイル・マガジンでは「一時的なのものか正式な転属であるのかは不明」となっている。

出典

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  1. ^ a b c d e f g h i j k 山口益生『阪急電車』224頁。
  2. ^ 広岡友紀『日本の私鉄 阪急電鉄』, 毎日新聞社, 2011年, p.106
  3. ^ 阪急公式アカウントのツイート(2015年6月20日)
  4. ^ 「大手私鉄ファイル 車両配置表」『鉄道ファン』2019年8月号付録、交友社
  5. ^ 『大手私鉄車両ファイル2021』、『鉄道ファン』2021年8月号付録、交友社。
  6. ^ a b c d e f g 阪急電鉄鉄道ファンクラブ会報vol.64による
  7. ^ 【阪急】9000系9008編成が営業運転開始 - Rail Magazine公式サイト RMニュース (ネコ・パブリッシング)2012年11月1日
  8. ^ 【阪急】9000系9008編成が京都線で試運転 - Rail Magazine公式サイト RMニュース(ネコ・パブリッシング) 2012年10月23日
  9. ^ 【阪急】9000系9001F 神戸線で運用|2012年12月7日掲載|レイル・マガジン
  10. ^ 「阪急9000系9001編成が神戸線へ転属|鉄道ニュース|2012年12月7日掲載|鉄道ファン・railf.jp」
  11. ^ 阪急9000系9009編成が宝塚線で営業運転を開始railf.jp
  12. ^ 阪急9000系9007編成が神戸線にrailf.jp
  13. ^ 阪急9000系9002編成が宝塚線にrailf.jp 2014年7月13日
  14. ^ 阪急9000系9004編成,宝塚線で運用railf.jp
  15. ^ 阪急9000系9004編成が宝塚線へrailf.jp
  16. ^ 阪急9000系9006編成が宝塚線で運用されるrailf.jp
  17. ^ a b 山口益生『阪急電車』223頁。
  18. ^ 阪急9000系9006編成が試運転 - 交友社『鉄道ファン』railf.jp鉄道ニュース 2012年1月30日
  19. ^ 未来のあかり号”. 阪急電鉄. 2016年12月26日閲覧。
  20. ^ 宝塚歌劇100周年を記念して「宝塚歌劇トレイン」の運行を開始します〜宝塚歌劇団生徒による1日駅長及び、宝塚歌劇トレインの出発式を行います〜” (PDF). 阪急電鉄 (2014年3月6日). 2016年12月26日閲覧。
  21. ^ 「阪急「宝塚歌劇トレイン」運転開始 - 交友社『鉄道ファン』railf.jp鉄道ニュース 2014年3月22日
  22. ^ Let's enjoy Tokyoリサとガスパールのスタンプラリー
  23. ^ 「阪急9000系9003編成によるイベント列車運転 - 交友社『鉄道ファン』railf.jp鉄道ニュース 2011年3月28日

参考文献

[編集]
  • 山口益生『阪急電車』JTBパブリッシング、2012年。ISBN 4533086985

関連項目

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外部リンク

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